| 2008年04月09日(水) |
地方財政の危機(地方自治体が設置する病院の行方) |
北海道の夕張市以外でも財政危機に見舞われている地方自治体が多いようだ。 地方自治体にとって大きな負担となっているのが、地方自治体が設置している公立病院なのである。そもそも、地方自治体が設置する病院が全国に約968もあること事態が可笑しいように思う。
読売新聞の全国調査によると、2004年度以降に少なくとも93病院の141診療科が、医師不足などを理由に入院の受け入れ休止に追い込まれている。総務省によると、地方公営企業法が適用される公立病院968病院の内06年度決算では、4分の3が赤字運営を強いられている。多額の赤字を抱える公立病院は切り捨てられる構図となっている。
公立病院は切り捨てられる理由は、大きな赤字を抱えると、その地方字自体が北海道の夕張市同じように財政破綻(はたん)団体の指定を受けるのである。 具体的には自治体財政健全化法で、公立病院などの公営企業会計を市の普通会計と連結決算する「連結実質赤字比率」が08年度から導入される。30%を超えれば、財政破綻(はたん)状態とみなされるのである。
医師不足で患者を増やせずさらに赤字が膨らむ、という悪循環から公立病院が抜け出せる糸口はないようだ。病院の経営であり地域貢献の意識など、しっかりとした理念のない病院は、消滅せざるを得ないのではないかと思う。
参考資料 公立93病院で入院休止、経営悪化や医師不足など理由…読売調査 2008年4月6日 読売新聞 地方財政の危機(その1) 北海道・赤平市 破綻寸前、綱渡り 2008年3月24日毎日新聞 産婦人科・小児科 目立つ休止日本病院団体協議会調べ 2007年10月16日 読売新聞 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 公立93病院で入院休止、経営悪化や医師不足など理由…読売調査 2008年4月6日 読売新聞
地方自治体が設置している公立病院のうち、2004年度以降に少なくとも93病院の141診療科が、医師不足などを理由に入院の受け入れ休止に追い込まれていたことが、読売新聞の全国調査でわかった。 さらに少なくとも49の公立病院が経営悪化などで廃院したり診療所への転換や民間への移譲など運営形態を変えたりしたことも判明。公立病院を拠点とする地域医療が、各地で崩壊しつつある実情が浮き彫りになった。 地方自治体が設置する病院は全国に約1000あり、調査は都道府県を対象に、医師不足の契機になったとされる新医師臨床研修制度が導入された04年度以降について実施した。 今年2月までにいずれかの診療科で入院を休止したことのある病院は、公立病院の状況を把握していない10道県を除く37都府県で93病院。うち6病院は入院を再開した。休止理由について回答のあった42病院の9割は「医師不足」をあげた。 診療科別では、産婦人科・産科の休止が44病院あり、次いで小児科の19病院。両科は、訴訟のリスクや不規則な勤務などで全国的に医師が不足しているといわれており、公立病院でもその傾向が表れた。 北秋田市立阿仁病院(秋田県)では昨年5月から、小児科など五つの全診療科で入院を休止。湖北総合病院(滋賀県)は医師の退職で05年4月以降、3診療科で入院を休止した。 一方、自治体財政の悪化などから、福岡県では四つの県立病院が民営化された。岩手県では06、07両年度、県立など計6病院を診療所に切り替えた。 地域医療問題に詳しい本田宏・埼玉県済生会栗橋病院副院長は「地域医療の疲弊ぶりが如実に表れた。医療空白地帯が加速度的に拡大し、地方を中心に病院で受診できない人が続出するのではないか。医師確保を急がねばならない」と話している。 [解説]膨らむ赤字「切り捨て」加速 地域医療を支える砦(とりで)が悲鳴を上げている。厚生労働省は「市町村合併に加え、病院間の機能集約や連携が進んだことで『無駄』がなくなりつつある」とみているが、その感覚は青息吐息の現場とあまりにもかけ離れている。 今年度決算から、自治体財政に新たな健全化の指標が導入され、病院事業など特別会計も含む「連結実質赤字比率」が40%を超えた市町村は財政再生団体に指定される。総務省によると、地方公営企業法が適用される公立病院968病院の06年度決算では、4分の3が赤字運営を強いられている。多額の赤字を抱える公立病院の「切り捨て」が今後、加速するのは必至だ。 医師不足で患者を増やせずさらに赤字が膨らむ、という悪循環から公立病院が抜け出せる糸口は、見えてこない。地域住民の命を守ってきた病院を支える抜本的な対策を、国は急がねばならない。(大阪本社社会部 桑原尚史、竹村文之) 新医師臨床研修制度 国家試験に合格した新人医師に2年間、現場の病院での研修を義務づける制度。研修医が原則自由に研修先を選べ、症例の豊富な都市部の民間病院に人気が集中するようになった。人手不足になった大学病院などが公立病院などに派遣していた医師を引き揚げたため、全国的な医師不足が生じたとされる。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 産婦人科・小児科 目立つ休止日本病院団体協議会調べ 2007年10月16日 読売新聞 医師不足が深刻化する中、産婦人科と小児科の診療を休止する病院が増えていることが15日、日本病院団体協議会の初の調査でわかった。 医師の採用枠を満たせない病院も4分の3に上り、協議会は「医師不足が予想以上に進んだことや、医療費抑制による経営圧迫の影響」と分析している。 調査は今年8〜9月、アンケート方式で行い、全国の病院の32%に当たる2837病院から回答を得た。 それによると、2004年度以降に診療科を休止した病院は、回答した病院の16%にあたる439病院。このうち、産婦人科の診療を休止した病院が71病院、小児科の休止も67病院と多かった。以下、精神科の34病院、耳鼻咽喉(いんこう)科、皮膚科の各33病院などが続き、激務や訴訟リスクの高さなどで医師確保が難しいと指摘される産婦人科と小児科の休止が突出していた。 産婦人科は都道府県立など自治体運営の病院で、小児科は民間の医療法人の病院で休止が多かった。 06年度に医師を募集した病院のうち、計76%が医師を十分確保できなかった。 06年度は全体の43%が赤字。協議会では「病院医療の崩壊が現実になりつつある。奈良の妊婦が受け入れを次々に拒否された問題は氷山の一角。いつ日本中で起こってもおかしくない」と指摘している。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 地方財政の危機(その1) 北海道・赤平市 破綻寸前、綱渡り 2008年3月24日毎日新聞 ◇35%が65歳以上 病院縮小や増税も 朝は、まだ氷点下の冷え込みだ。北海道のほぼ中央部にある赤平(あかびら)市。商店街はシャッターを下ろした空き店舗が目立つ。閉鎖された小学校や公民館は、雪に埋もれたまま。夕張市で閉鎖中の屋内プールの屋根が雪の重みで崩落したが、赤平市でも売却先や撤去のめどの立たない遊休施設の管理は悩みの種だ。 四つの炭鉱を抱え、かつては約6万人が暮らした。石炭を満載した貨車でにぎわった赤平駅は、貨物発送量日本一を誇ったこともあるという。だが94年に最後の炭鉱が閉山。今、人口は約1万3000人だ。65歳以上の高齢者が35%を占める。 自治体財政健全化法は、公立病院などの公営企業会計を市の普通会計と連結決算する「連結実質赤字比率」を、08年度から新たな指標として導入する。30%を超えれば、夕張市と同様に財政破綻(はたん)状態とみなされる。 病棟改築などで市立赤平総合病院が抱える不良債務24億円が加わると、赤平市の07年度の比率は77・6%の見込みだ。この4年で医師が18人から10人に減った病院。患者受け入れを制限せざるを得ず、収益も悪化している。 炭坑で働いていた小坂寛司さん(70)は、じん肺を患う。「近所は気心のしれた炭坑仲間ばかり。今さら都会に住む気はない。でもこの街で安心して暮らしていくため、病院だけは維持してもらわないと困る」と言う。市は病院存続のため、一般病床160床を120床に減らし、産婦人科と皮膚科を休止。職員の人件費を27%ほど削減する。 総務省も、赤平総合病院のような不良債務を償還期間7年程度の特例債に振り替えることを認め、その分を連結実質赤字比率から外す措置を決定。破綻基準30%も、当面40%に緩める。北海道も短期低利融資で病院経営を支援。しかし、それでも赤平市の08年度の比率は、基準ぎりぎりの39・2%の見通し。綱渡りの状態が続く。 赤平の炭鉱資料を収集保存している吉田勲さん(66)は訴える。「自治体に連結決算を押しつける前に、政府こそ、特別会計を連結にしてもっと透明にしろと言いたい。道路財源の使い方を見ると腹が立つ。廃れた地方の声に、政治家は耳を傾けてほしい」 赤平市は、財政破綻回避のため、軽自動車税や市営住宅家賃の引き上げなど市民の負担増を求めてきた。そしてさらなる歳出削減のため、職員給与の30%削減を打ち出した。 先月29日、高尾弘明市長(63)は市職員を前に呼びかけた。「乾いた雑巾(ぞうきん)をさらに絞ってもらいたい」【与那嶺松一郎】 * * 次の衆院選に向けた選択の手引。今回は、地方財政の危機を取り上げる。地方の悲鳴、新たな取り組みから見ていこう。
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