「前々から言った方がいいかとは思ってたんですけど」 「ああごめん。今悪いけどあなたのお小言聞いてる余裕ない」 なにせわたしはソファーでブランケットをかぶってまるまっている状態。お小言など聞きたい状態ではない。お腹が痛くて脂汗が出てくる。 「今言わなくていついえば良いんですか。やったその時に叱るというのが鉄則だと聞きましたが……マスター、あなた馬鹿ですよね?」 KAITOの呆れた声。普段であれば猛烈抗議をしているし、そもそもそんなこと言わせない。が、今、この状態ではそう言われても仕方ない。無言を通すしかない。 と、テーブルにマグカップが置かれたのが見えた。微かにシナモンの香りが漂う。 「今のマスターに効くとは思えませんが、一応シナモンは腹痛に効くと言いますから。適度に冷めてますからマスターでも飲めると思います」 「うううう。すまないねえ」 もそもそと起き上がり、マグカップを両手で持つ。確かにすごく熱いわけではなく、猫舌のわたしでも飲むことが出来そうだ。 「……そう思ってるんでしたら、アイスの馬鹿食いはやめたほうがいいかと思いますけどね?」 にっこり。そんな擬音が聞こえてきそうなとてもいい笑顔でこちらを見つめるKAITOには気が付かないふりをして、マグカップに口をつける。アップルシナモンティとかこじゃれた物を出してくるあたり侮れない。VOCALOIDなのに何この主夫力の高さ。 冷え切ったお腹が温まるのを感じる。 「別に、マスターのお金で買ったアイスですし、居候の俺がちょっと楽しみにしていたとかそんなこと言える立場ではないですけれど、でもファミリーパック全部食べると言うのはちょっと問題があると思いますがそこら変動お考えでしょうね、マスター?」 「いやあの、うん。取っておこうとは思ったんだけどね」 満面の笑み。それが手にとるように判る。……それがものすごく怒っていると言う事も。 もちろん、わたしがKAITOの分のアイスまで食べてしまったから怒ってるわけではないことも判ってる。……まあ少しぐらいは食い物の恨みの気配は感じるけれど。 「思っただけでは何の意味もありませんよね?」 とす、とわたしの隣に腰を降ろす。そのまま抱き込まれてしまう。 「え、ちょ。KAITO!?」 じたばたもがくがやんわりとブランケットでくるまれて身動きがとれない。何こいつ。何この手際!? 「今のマスターに拒否権はないと思うんですけどね」 じたばたもがいているとKAITOの手がお腹に当てられる。思っていたより温かくて思わず動きを止めた。 「しばらくそうやって大人しくしててください。……全く。俺はカイロではないんですけど」 ぼやく声音はそれでもやさしい。 それに免じてわたしは痛みが引くまで大人しくすることにした。 うん。あとでちゃんとアイスを買ってきてあげよう。
オチもなくおわっとけ。
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