幼い兄弟の話。学校から帰ると母親がいない。そこへ父親が帰ってくる。玄関でそろえなかった靴を口実に、兄のカイは殴られる。「肋骨がなおったばっかりなのに・・・」そしてカイはつぶやく。「お父さんは壊れている・・・・」家という密室で彼らには逃げ場がない。しかしそんな父親でさえ、いないよりはずっとましなのだった。
私は初期の吉野さんが好きだったので、破滅にひかれつつぎりぎりのところをいったり来たりするようなお話は、読んでも今ひとつ入りこめない感じがありました。その後、どうやら日常に降りてこられて、犯罪や心理について描かれるようになっても、ちょっと距離があると思っていました。この本も最初は幼児虐待についての彼女の関心をきれいにまとめていくのかな？と読んでいたんだけれど、だんだんそれだけではない展開になったので、読み終わる頃には続きが楽しみになりました。どんなに才気にあふれていても、鋭い考察や感覚があったとしても、登場人物を大事にしないお話は魅力がありません。ステレオタイプの人物じゃものたりない。この話の父親は狂っているようで正気だったりするし、教師は生徒のためといいながら、自分の傷あとをなめているし、守るべき弟はもしかしたら悪魔かもしれません。がんばれカイ君。少年時代を生き抜いて大きくなってね。
小学館から出ている月間ｉｋｋｉという雑誌に連載されているそうです。本屋でその雑誌を見てみましたが、とっても地味な感じでした。第二部は7月号から連載開始だって。
おっと、こんなところにタイムリーなインタビューが
http://www.walkerplus.com/tokyo/20030902/bo1594_pkup.html
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