スラダンを貸してくれたお友達が、おまけにつけてくれた数冊の中の一冊。 紺野キタさんの『ひみつの階段』 掲載誌が偕成社の雑誌だったので、最近まで知らなかったけど 『ひみつのドミトリー』は持っている。こちらは、未収録作品がまとまったものなので 本編を読むのはこれが初めて。 これはちょっと好きな人にはたまらない世界かもしれない。 舞台は女子高の寄宿舎。寄宿舎の古い建物は夢を見る。 むかし明るく笑いさざめいていた女の子達の夢。 今、さみしくて泣いている女の子の夢。 夢と夢がクロスして、少女達は時間を超えた空間に紛れ込む。 ガラス越しの光。校舎の暗がり。窓の外の木々の影。
私の入学した高校は、木造の古い建物で、廊下の板がぎしぎしと鳴った。 中庭がいくつかあり、迷路のような校舎の中には、行き止まりの使っていない階段があった。 窓枠の中のガラスは古くてゆがんでいた。 ずいぶん前に建てなおして味もそっけもない鉄筋の校舎になってしまったけれど。
『ひみつの階段』を読んで、その校舎のことを思いだした。 そこに通っていた頃、読んでいたいろいろな本のことも。 著者と読者は、たくさんのものを共有している。 セリフのひとつひとつ、引用される様々なものが、「ね?知ってるよね?」 と目配せをしているようだ。「もちろん知ってる。あの頃は良かったね」 思わずそう答えてしまうような、そんな作品。 女の子達がとてもかわいいので見ていて楽しいわ。
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