「銀色の糸」内田善美デビュー第2作 りぼん1974年10月号掲載P357〜387(31ページ) (「この娘に愛のおめぐみを」大矢ちき、「秋にのって」陸奥A子掲載号)
●フレッシュ読みきり★少女の手に握られた銀色の糸が、少年とのただひとつの結びつきだった。 霧の中にくりひろげられる感動物語。
(あらすじ) アンソニーとポーリンは仲の良い兄と妹。 体の弱いアンソニーの転地療養のため、空気のきれいな街に引っ越してきた。 10月の落ち葉が蝶のように舞うこの街をポーリンは気にいったのだが、 困ったのはアンソニーのクラスメートのルシアンだ。 ことあるごとに、ポーリンをからかうので、ポーリンは彼が苦手だった。 でも、アンソニーとポーリンが上級生の不良にいじめられた時には、 仕返しをしてくれたりして、そんなに悪いやつでもないということがわかってくる。 両親が無く、おばの家で暮らすルシアンは仲の良い二人がうらやましかったのだ。
ある日、うさぎを追いかけてポーリンは森の中で、迷ってしまう。 蝶を捕るために森に来たルシアンは、彼女を見かけ、森の奥まで 探しに来て、ふたりは一緒に森の出口を探す。 ポーリンはルシアンの優しさを知り、彼の夢を聞く。 一晩たっても助けがこないので、ルシアンは釣り糸の端をポーリンにわたし 森の出口を探しに行くと言う。この銀色の糸がふたりを結びつけることになる。 ポーリンは待つことをやめて、ルシアンと一緒に行くことにした。 夜明けに森から出たふたりは、いつか夢を追って、いっしょに行こうと 約束をしたのだった。
(コメント) 作品としてはさほど印象深いものでは無いのですが、デビュー2作目にして、 内田善美のエッセンスがつまっているなあ、と今回読み返して思いました。 ルシアンの夢はヨットに乗って東へ行くこと、未知の世界へいつか行くことです。 全くストーリーとは関係のないこの夢が、作者にとっては1番大事なことだということは 一目瞭然です。 そこへ、萩尾作品の影響がかくし味のようにそこ、ここに見えて楽しいです。 ラストページにはなぜか、突然、一条ゆかりさん関係者のアシストが見られて、 ああ、捕まったのね、ということがよくわかります。 (内田善美さんの投稿作を見て、一条さんと大矢さんは「これだ!」と声をあげたそうな。 アシスタントに最適だ!って)
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