弱Sonファイブ
月のない夜だった。 月は人の心に何らかの感傷を 思い出させる力があると言うが、 それはその月が持つ 引力によるところのものだろうか。 などと考えながら GMCサファリを 夜の港に横付けする。 ターボライターで マルボロに火をつけ、 俺はさっさと仕事にとりかかる。 なぜ自分がこのようなことを しなければならないか ということを考えるのは、 対価としてもらう 金という相対的価値を 認めた日以来やめた。 ドボン。 ガラガラガラ。 俺の手から離れた 業務用の照明は 水に飛び込むときだけ それなりに自己主張をしたが、 それからは 強引に与えられる快感から 逃れることをあきらめた女のように ゆっくりと沈んでいく。 ゆらゆら。 ゆらゆら。 地球の重力に 身を委ねた照明から 発せられる光の束は 月の水面から 760ヘクトパスカルの表層へ ただまっすぐに進む。 いつまでも現れない 月に向かってただ進む。 ... 光は何も 月だけではない。 要は何らかのきっかけが あればいいだけだ。 気のいい大人が 夜光虫とまちがえてくれるのかも しれない。 それを 海ほたると呼ぶのかもしれない。 大切なことは その光の束が 夜光虫と形容されても 海ほたると形容されても それはひとつの形容である ということにちがいない。 要は何らかのきっかけが あればいいだけだ。 恋ってそんなもんだ。 コラボレーション to 華さん・薫さん |