MUSIC春秋
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 2006年08月20日(日)
最後の日




私が通っていた幼稚園のすぐ近くには
小さなデパートがあった。

そのデパートのことで覚えているのは
カメ好きだった私に両親が
大きなカメのぬいぐるみを買ってくれたことと、
ほとんど休みながら嫌々通っていた幼稚園を
やっと卒園できた日に
最上階のレストランで母親と二人で食べた
カツカレーがとてもおいしかったこと。

それから数年後にそのデパートは
渋谷に次いで2店目となる
PARCOに生まれ変わったが
開店から当分の間
私が足を踏み入れることはなかった。
それはそこが小学生には縁のないファッションビル
だったためでもあるが、
当時、なぜPARCOに行かないのかと家族にきかれた時
「山勝(旧デパート)で
 カメのぬいぐるみを買ってもらったから」
などと答えた(答えになっていないと大笑いされた)のは
愛着のあったデパートを潰したPARCOが憎かった
という意味だったと思う。
PARCOがデパートを潰したわけではなかったと思うが
子供の頃から頑固親父のような性格だったようだ。

しかし中学生にもなると
同級生に連れられて
地下のファンシーな菓子売り場に行くようになり
高校生にもなれば
いっちょまえに服やレコードを選んだり
友だちと水着の争奪戦でケンカなどするようになった。
そしてカメのことはすっかり忘れ
当たり前にそこを利用するようになる。

今は無きフリーペーパー「GOMES」を
手に入れるためだけに立ち寄ったり
イベントで来店したピーターバラカン氏を見に行ったりと
その後は数々の思い出もありつつ
このごろは今流行の服が自分に似合わないからという理由で
また足が遠いていた。

大型スーパー、路面電車、
駅ビルの百貨店が無くなって
そしてまたここも。

先日、静岡から嫁に来たという女性に
「岐阜が好きですか?」と訊かれて
私は言葉に詰まった。



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