ヒカゲメッキ by 浅海凪

 月夜の騎士・新年小ネタ

「……そろそろ、母君に楽をさせて差し上げてはいかがかな?」
 あからさまなその言葉を聞くまでもなく、騙された、と、ロージアスは苦々しく考えた。けれども、その気持ちを表に出したりはしない。
 自慢の顔には、にこやかな笑み。社交界を渡っていくなら必要な技術だ。
 当然そんなことは知っているだろうに、さきほど紹介されたばかりの令嬢の頬は赤く染まり、瞳は陶酔という名の輝きをのせている。
 愚かな女性(ひと)だ、と、ロージアスは笑顔の下で冷淡に断じた。
 新年早々、こんなつまらない宴に出てきたのは、家業に利する人物と引き合わせると匂わされたからこそ。
 ロージアスは自他共に認める華やかな女性遍歴の持ち主だが、姑息な手を使わなければ自分の前に進み出ることも叶わないような低レベルの女性に、興味を向ける価値があるとは考えない。
「私たちが何を言っても、母の方が薔薇から離れないのですよ。あのひとは、父ではなく薔薇園と結婚したようなものですからね」
 微笑の中に、困ったものだ、という気配を混ぜて、軽くいなす。招待主は何事か食い下がろうとしたようだったが、出入口のほうから沸きあがったざわめきに気を取られて口を閉じた。
 いとし子、とか、将軍の、といった囁きが、興奮まじりに交わされている。ほどなく、並み居る人の間のすり抜けて、近頃よく見る顔が現れた。
「……エリアス君?」
 闖入者は、ロージアスを見とめて口の端を上げたが、すぐに招待主に向き直った。


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 エタの暗黒具合に疲れてきたので、息抜きーと思ったんですが、眠くなってきたので続きは明日。


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 あれ……とっくに更新したと思っていたのに、されてない。
 すんません、もうなかみ覚えてないっす。思い出したら続くかも。

2008年01月03日(木)
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