ヒカゲメッキ by 浅海凪

 ネタです


 少女は泣いた。
 夢の帳はすでに下ろされ、二度と上がることはない。その向こう、灯りもない闇に取り残してきた姉の、うつくしい髪の輝きだけを頼りに。

 知らぬ名を呼ぶことも、知らぬ顔立ちを思うこともかなわず、少女は泣いた。
 自分が生まれたために命を落とした姉。見えることなく世を去っていった肉親の孤独を、一幅の絵に見い出して。

 少女は泣いた。
 役目を果たした身のうちに、うつろな悲しみだけを満たして。



2007年01月05日(金)
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