Web Masterの日記



リトラクタブルヘッドライト

2023年06月16日(金)

1970年代後半に大旋風を巻き起こしたスーパーカーや、
1980年代に若者を夢中にさせたスポーツカーやスペシャリティカーの
多くが採用し、スポーティな車の象徴的な装備として流行っていた
リトラクタブル(格納式)ヘッドライト。
空力性能に優れ、何よりもスマートでフロントノーズが精悍に見えるが
あれだけ流行ったのに現在では量産車の採用例は全く無い。

ちなみに「リトラクタブルヘッドライト」とは、普段はヘッドライトを
ボンネット前端部に格納し、点灯時にポップアップしたり、
反転して突出するヘッドライトのこと。
フロントノーズを低くシャープにデザインでき、空力性能も向上できることから
1970年代から1980年代にかけて多くの車に採用されていた。
車大国のアメリカでは、キャデラックなどで戦前に誕生していた
リトラクタブルヘッドライトだが、国産車で初めて採用されたのは
1967年に登場し、映画007のボンドカーにもなった
トヨタの幻の名車「トヨタ2000GT」だ。
そして1970年代後半には漫画「サーキットの狼」の影響もあり、
日本でスーパーカーブームが起こり、ランボルギーニカウンタックや
ランボルギーニミウラ、フェラーリ365GT4BB、ランチャストラトス、
マセラッティボーラなど多くのスーパーカーが採用していた。
このスーパーカーブームからリトラクタブルヘッドライトが注目を浴びる。
国内での流行の火付け役となったのは1978年に登場した
マツダの「サバンナRX-7」だろう。
以降、トヨタから「スプリンタートレノ(AE86)」「セリカXX(2代目)」
三菱は「スタリオン」日産から「シルビア(2代目)」「パルサーEXA」、
ホンダの「プレリュード(2&3代目)」、マツダ「ユーノス(NA型)ロードスター」
などが採用したことで、スポーツカーや当時ブームになっていた
スペシャリティカーの定番装備となり、ホンダの「アコード(3代目)」や
トヨタ「ターセル/コルサ(3代目)」といった大衆車まで採用が拡がった。

実はリトラクタブルヘッドライト普及の背景には、見た目のかっこよさだけでなく
北米の安全基準に適合するためという理由もあった。
当時のヘッドライトに要求された安全基準の地上高を満たすことと、
低いノーズのスタイリッシュなデザインを両立させる手段が
まさにリトラクタブルヘッドライトであり、世界最大の北米市場に
輸出するためには必須装備だったのだ。

当時は「スポーツカーといえばリトラクタブルヘッドライト」というほど
流行していたが、2000年を迎える頃にはすっかり廃れ、
日本では2002年に生産終了したマツダの3代目「RX-7」、
世界では2005年に生産を終えたGMシボレーの「コルベットC5」が
リトラクタブルヘッドライトを採用した最後のモデルとなった。
リトラクタブルヘッドライトが採用されなくなった一番の要因は、
普及のきっかけでもあった北米の安全基準が緩和されたことだ。
1990年代に入ると北米のヘッドライトに関する規格や高さの規制が緩和され、
リトラクタブルヘッドライトを採用しなくても、ある程度シャープな
フロントノーズが実現できるようになったし、他にも保安基準の突起物規制で、
歩行者との衝突事故時に引っ掛けたり、大ケガを引き起こす
ボディの鋭い突起物がないことが定められたことで、
リトラクタブルヘッドライトを採用することが難しくなったことも衰退の原因だろう。
北米の保安基準が変わると同時にトヨタの「スープラ」や三菱「GTO」は
フルモデルチェンジし、スタイルはほぼ同じながら、
リトラクタブルヘッドライトから普通のヘッドライトに変更になった。
また、プロジェクターヘッドライトのようなヘッドライトの技術進化も
リトラクタブルヘッドライトが不要となった一因といえる。
配光が自在にコントロールできるようになり、ヘッドライトのレンズを
スラントさせたり、レンズ形状を自由に変更できるようになったことで、
空力性能への影響を軽減できるようになった。
さらに、リトラクタブルヘッドライト装着によるコストアップや
重量増加なども大きな障壁だったのだろう。

現在、量産車では世界的に見ても17年以上、リトラクタブルヘッドライトを
採用した車は現れていない。
ヘッドライトの技術も進んでいる現在、コストや重量面でハンデのある
リトラクタブルヘッドライトを選ぶ理由はなく、おそらく今後も
出現する可能性は低いだろうね。
しかし、薄め目横長のLEDヘッドランプが多い昨今の車において、
まばたきやウィンクするように開く大きなリトラクタブルヘッドライトは
むしろ新鮮な感じもする。
コストと重量のハンデは避けようがないし、安全面でも問題は多いが
安全性やオートライトなどとの相性をクリアすれば、多少割高になっても
デザイン性に特化した車やBEVのような先進的な車の装備として、
再登場する価値はあるんじゃないのかと、密かに期待している。

日本が元気だった1980年代、男にとって車の魅力的な三大装備といえば
「オープンカー」「ガルウイング」そして「リトラクタブルヘッドライト」だった。
この三大装備の中で一番、現実味があったのも「リトラクタブルヘッドライト」
子供の頃にスーパーカーブームを経験し、大人になったら絶対に
リトラクタブルヘッドライトの車に乗りたいという夢があった。
そして大学時代、2台目に乗った「スプリンタートレノAE86」で実現し、
4台目に乗った三菱「GTO」でもリトラクタブルヘッドライトを経験、
2台ともスタイリッシュでオシャレだったし、何より目立って注目を浴びる車だった。
開かなくなるといった故障もなく、2台とも楽しく乗れたなぁ。
先の見えない今の世の中じゃ、遊び心のある車など無理な時代かもしれないが、
無個性車の多い今、リトラクタブルヘッドライトのような夢のある車、
どこかのメーカー、冒険して造ってくれないかな。
個人的にはリトラ車、昔から好きなんだよな。

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