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2004年09月02日(木) さよならウココちゃん

我が家は犬2頭とネコ1匹と烏骨鶏1羽とじょりぃを1匹飼っているわけですが。きょんが。

以前、にわとり騒動のときに、そのにわとりは無事にもらわれていったのですが、その後すぐに、やはり近所の公園に捨ててあった烏骨鶏を、きょんが保護してしまったのです。
もとい、保護したのです。

ワタシには邪魔な存在でございました。
なにしろ、鶏インフルエンザ全盛期の折でございます。
だからきっと捨てられちゃったんだと思うんですが。
インフルエンザはたいして怖くなかったのですが、近所の眼が怖かったんですよねえ。
親にもきっちり怒られましたし。「考えがなさすぎる」と。

ワタシったら、あちこちに板挟み。むぎゅうううう。

なので、邪魔ーーーー! ひと部屋占領されたしーーーー! と思っていたのですが。

まあ、飼ってしまえばかわいいもので、きょんの前では悪態をつきながらも、ウココちゃん(烏骨鶏の名前です)のそばを通るときは必ず声かけてやったりしちゃうワタシったら案外いい人だったりするのですが。
暑い日は重い鳥かごをわっせわっせと抱えて、暑い2階のウココ部屋からエアコンの効いた1階の部屋に移してやったりですね。
ワタシもぐだぐだ言うくらいなら、いっそ、きょんのいないスキに、焼き鳥にして食ってしまうくらいの気概が欲しいところです。
何をやっても中途半端なじょりぃは、まあ、そんな風にウココちゃんをうっかりかわいがってしまっていたのですよ。


3日前に、きょんが仕事部屋にやってきて

「ウココちゃん、死んじゃうかも」と。

一緒に様子を見に行きましたら、  確かに。
春先に保護して、すぐに医者に診て貰ったときに「年取ってるかも」とは言われていたのですが。

老衰?

足が変な風に弛緩していて、羽も開きがちでぐったりしております。
鳥が死ぬ時って、こういうんですよね。
ワタシ子供の頃ずっと鳥を飼っていたので、この様子には見覚えがありました。

「ううううううむ・・・・」 唸るじょりぃ。
「死んじゃうかな」と、きょん。
「・・・・まだわかんないよ」
「うん」

きょんはもうべそべそ泣いておりますし。

何しろ日頃から顔色の悪いウココちゃんでございますから。
ほら。


顔色から様子がはかれないんですわ。
って、たいていの動物は顔色って難しいですけど。
それにしたって、ウココちゃんたら、日頃から真っ青な顔してましたからねえ。

この様子だとその夜のウチにでも逝ってしまわれるかと思ったのですが、踏ん張りましてね、ウココちゃん。

ひとりぼっちで死んじゃうのはかわいそうなので、ワタシもきょんもかわるがわる様子を見に行っていたのですが。

なんだか、どんどん平べったくなっていきます。
苦しいのかい、ウココちゃん。

「どう?」
「まだがんばってる」

こんな会話が数え切れないほど繰り返されまして。


今日の夜。

仕事をしておりましたら。


「じょりぃ」ときょんが仕事部屋に。
「ん?」
「ウココちゃん、死んじゃった」
「・・・・・そうか」

結局、ワタシもきょんも見ていないときに死んじゃいました。

かわいそうなことしたな、なんて思うのは人間様の傲慢でございますが。
やっぱり最後は一緒にいてあげたかったな、できれば。

なんてことはワタシもきょんも言いませんけど。
きょんは「ゴメンね」と、ウココちゃんを撫でながら呟いておりました。


きょんは静かに大泣きしております。
ワタシは涙は出ませんでした。 実は悲しみもあまりなかったんですが。
今までそこにいたものがいなくなってしまった、というぽっかり感だけを感じておりました。

正直なところ、ウココちゃんより、きょんのほうがかわいそうでした。
ウココちゃんはきょんが保護しなければ、一緒に公園に捨てられていた他の2羽のように、ネコかカラスに殺されていたでしょうから、彼女はシアワセだったと思います。
きょんが毎日、ウココちゃんの好物のお米やら青菜やら果物やら貢いでおりましたし。
真夜中過ぎに「ウココちゃんに明日の朝あげる菜っぱがないよー。じょりぃ、一緒につきあってー」と、24時間営業のスーパーに車を走らせたのも一度や二度ではありませんでした。


「小さくなっちゃった。 どんどん小さくなってく気がする」とワタシ。
きょん、無言。

「やっぱり21g減ったのだろうか」 ふたたびワタシ。

きょん、無言。

減ってるよな、これ。
魂の重さの分、小さくなっちゃったんだ。



明日焼いてもらうために、きょんがウココちゃんの体を箱に入れてあげようと手頃なものを持ってきたのですが。

「入るかな?入らないかな?」という、微妙な大きさ。
「ちょうどいいように見えるけど、足が伸びちゃってるから、その分無理かも」とワタシ。

きょんは動物病院の看護師という名の雑用係でございます。
こういうものの扱いには慣れております。


ここからが本題というか、ワタシが書きたかったことなんですが。

きょん、ウココちゃんの遺体を持ち上げ、片手で支えたあとに

「うん。 死後硬直は始まってはいるけど、これなら大丈夫かな」

と言って、


ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ  


と、人形の固い間接の足でも曲げるみたいに、力ずくで曲げております。


ひいいいいいいいいいそんなことして大丈夫なんですか。
お、お、お、折れないんでしょうか。

が、ウココちゃんの足は、損傷することなく、きれいに曲がりまして。

両足とも、お行儀の良いいつものウココちゃんの姿勢になりました。
とんでもない格好になっていて、かわいそうだったので、良かったなあという思いとともに。


ワタシにはできない。 と思いました。
折れそう、と思っちゃうし、力の加減とかあんばいとかがさっぱりわかりませんし。

それに「何言ってんの」と思われてしまいそうですが、死体に触るのが怖いんです。
弱虫ですからあたち。

何事も、プロの仕事ってたいしたもんだなあと思いました。


首の角度も直してあげて、眼も閉じさせてあげて。


ウココちゃんは、気持ちよさそうに、箱の中に収まりました。


ワタシは、ウココちゃんがぐったりしてからずっと、口のまわりが汚れていたのが気になっていたので。
女の子ですからね、ウココちゃんも。

「顔、キレイにしてあげていい?」ときょんに訊ねましたら「いいよ、ありがとう」と言ってくれたので、怖がりながらも、元のきれい好きで美人なウココちゃんに戻してあげまして。
真っ白でふわふわだった頭の毛も汚れていたので、こちらも根気強くキレイにしまして。
きょんはウココちゃんの、この真っ白な頭の羽が大好きだったものですから。


まあ、そんなわけで。

きょんは明日仕事なので、ワタシひとりでウココちゃんを焼いてもらいに行って参ります。
鳥を焼くというと、なんだか、こう、アレですけど。<不謹慎


邪魔にしてゴメンね。
キミ、きょんと出会えてよかったね。
いい公園に捨ててもらったものだ。


一度だけ卵を産んでくれたねそういえば。


天国ではコロコロ産んで、神様に精を付けてやってくれたまえ。
高く売れるらしいよ、烏骨鶏の卵って。 
神様に高く売りつけて、今度はウチに貢いでくれ。


さよならウココちゃん。
今度は檻のない広いところだよ。


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