『日々の映像』

2010年06月22日(火) 角界底なし汚染:角界の伝統文化は何だ。


大相撲:野球賭博問題 いら立つ武蔵川理事長、頭下げず
                       毎日新聞 2010年6月21日
社説:角界底なし汚染 理事長の責任は重大だ
                      2010年6月22日  毎日新聞

 まさに「底なし」の様相を呈してきた相撲界の賭博汚染である。大関や若手の期待力士の名前が次々と浮上し、現役の親方も野球賭博に手を染めていたというからどうにもならない。

 深刻なのは、協会トップの武蔵川理事長が師匠を務める部屋の元大関・雅山関も野球賭博に加担していたという。野球賭博の胴元は主に暴力団で、その資金源になっているとされる。相撲関係者が「社会悪」に組み込まれている現実に唖然としている人が多いだろう。

 協会は21日の臨時理事会で第三者機関の調査委員会の設置を決めた。名古屋場所を開催するかどうかと、賭博に関与した親方や力士の処分は調査委の報告を受け、来月4日の理事会で決めるとしているが、問題が明らかになってからの対応のスピードが遅いといわねばならない。

 「土俵際」「仕切り直し」「うっちゃり」など、日常生活でも使われる相撲用語は多くある。それほど相撲はわれわれ日本人の生活にとけ込んでいるのである。その日本固有の伝統文化としての相撲が薄汚れた見せ物になり下がる瀬戸際に立っている。


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大相撲:野球賭博問題 いら立つ武蔵川理事長、頭下げず
                      毎日新聞 2010年6月21日
 「100年に1度の不祥事。今後、協会も厳しい処分で臨みたい」。大相撲の賭博問題で揺れる日本相撲協会の武蔵川理事長(62)=元横綱・三重ノ海=は21日、理事会後の記者会見で決意を語った。理事会では「名古屋場所開催は7月4日の臨時理事会で決める」と結論を先送りした。「おかしいんじゃないの、あんた」。関与した力士の名前が次々と報じられ、名古屋場所中止も現実味を帯びる中、理事長は謝罪する一方で、記者の質問にいら立ちも見せた。
 武蔵川理事長は会見で「協会設立以来の危機を感じる。全国のファンにおわびし、信頼回復のために全力を挙げて取り組んでいきたい」とコメントを読んだ。反省と謝罪の言葉を並べたが、頭を下げる場面はなかった。
 報道陣からは、武蔵川理事長の進退に質問が集中。「途中で責任を取っても解決にならない。今、答えなければいけないのか」とコメント文を机上に放り投げて怒りをあらわにし、隣に座った出羽海親方(61)=元関脇・鷲羽山=に制される場面もあった。
 今後の調査について特別調査委員会座長の伊藤滋・東大名誉教授が「腰を据えてやりたい」と答えたのに対し、武蔵川理事長は名古屋場所について「開催に向けて進めたい」と明言するなど、収束に要する時間についての認識の差も垣間見えた。【篠原成行】
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社説:角界底なし汚染 理事長の責任は重大だ
                     2010年6月22日  毎日新聞
 全国の大相撲ファンがどれだけ腹立たしい思いをし、寂しい思いをしていることか。そのことを日本相撲協会は真剣に受け止め、痛みを感じているのだろうか。
 まさに「底なし」の様相を呈してきた相撲界の賭博汚染である。日本人最高位の大関や若手の期待力士の名前が次々と浮上し、現役の親方も野球賭博に手を染めていた。
 加えて深刻なのは、協会トップの武蔵川理事長が師匠を務める部屋の元大関・雅山関も野球賭博に加担していたことだ。
 野球賭博の胴元は主に暴力団で、その資金源になっているとされる。すでに多くの相撲関係者が「社会悪」に組み込まれている。現役大関の琴光喜関は野球賭博の口止め料として元暴力団組員に現金を脅し取られた疑いが強まっている。これほど明白な危機に直面していながら協会の対応は手ぬるすぎる。
 協会は21日の臨時理事会で第三者機関の調査委員会の設置を決めた。名古屋場所を開催するかどうかと、賭博に関与した親方や力士の処分は調査委の報告を受け、来月4日の理事会で決めるとしたが、一連のスピード感に欠ける対応は、実質的な「先送り」としか映らない。
 当面、名古屋場所は開催する方向で準備を進め、野球賭博をしていた力士の出場を見合わすこともあるという。協会が親方や力士名の公表をためらっている間に報道が先行し、大相撲のイメージは低下するばかりだ。疑惑に口をぬぐい、素知らぬ顔で土俵に上がる力士の相撲を誰が見たいと思うだろうか。賭博と無縁な対戦相手にも失礼だ。
 武蔵川理事長の責任も明確になっていない。今月11日、協会が野球賭博をしていた力士名を公表しなかったことについて、私たちは「指導責任を問われるべき師匠や親方を守ろうとしているのではないか」と指摘した。しかし、協会トップの「指導責任」を問う事態にまで至るとは想定していなかった。
 協会トップが部屋の不祥事の責任を回避したまま改革は進むのだろうか。ここにも重大な懸念が残る。
 「土俵際」「仕切り直し」「うっちゃり」など、日常生活でも使われる相撲用語は山ほどある。それほど相撲はわれわれ日本人の生活にとけ込んでいる。その日本固有の伝統文化としての相撲が一部の協会幹部や現役の親方たちの悲しいばかりの不見識と指導力不足で社会からレッドカードを突きつけられている。
 伝統ある大相撲を薄汚れた見せ物にしてはならない。協会は早急に体制を一新し、裏社会との不明朗な関係を断絶する以外に大相撲が国民娯楽として生き残る道はない。

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石田ふたみ