てくてくミーハー道場

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2018年09月23日(日) 『オセロー』(新橋演舞場)

〈予告〉ばっかりじゃ半永久的にまともなエントリにならないので、今日ぐらいは真面目に記事を書きます。





ほんとーに歌舞伎を観なくなってしまったぼくですが、松竹製作の芝居はちょこちょこ観ておりまして、ここんとこ連荘で演舞場に来場。

ひょっとしたら襲名後の(中村)芝翫を観るのはこれが初めてかも(そんな、まさか)

・・・うーん、思い出せない。

ま、いいや←

で、シェイクスピア劇。

出演者や演出(井上尊晶さん)からして、おそらくどう考えても正統派のシェイクスピアであろう。眠気対策大丈夫か自分(おいっ!)と若干ワナワナ緊張しつつ鑑賞したのですが、これがもう眠気どころか。



めっちゃ感動させていただきました(T-T)


いやーすばらしい。

尊晶さんといえば蜷川ジュニア(?)というべきお方。確かにニナガワ風味はありましたが、それよりもストレートに外連味のない「ザ・シェイクスピア」でありました。

そして、この「一言ずつで済む会話を何十倍もの形容詞をぶらさげて長々としゃべる(こら)」沙翁劇を、ダレることなく、息切れすることなく演じきった実力派の出演者たちに手が痛くなるほど拍手して来ました。

芝翫にはもちろん1ミリの心配もしてなかったんです。沙翁四大悲劇なんて、彼の力をもってすれば、丸本物1本分の体力で十分演じきれると思ってたし、実際そのとおりでした。

イアーゴーの口車に乗ってどんどん妻への疑いを募らせていくシーンは、ほとんど俊寛か熊谷直実かてな感じ。

「神谷町!」と声がかからないのが不思議なくらい(いや、実際かかったらイヤだけど)

ちょっとでも気を抜けば右から左へ抜けていきそうなシェイクスピア台詞を、ビシッビシッとど真ん中ストレートに投げてくる豪腕ぶりでした。





実は、ほぼ期待してなかったのが(失礼ね)メニエール再発のせいで降板したつばっちゃ(今井翼くん―たきつば解散しましたね・・・事務所退所も悲しいです。が、いつかつばっちゃには舞台で会えると堅く信じていますので、サヨナラは言いません―)の代役として出演した神山智洋くん。

このぼくが、いよいよメンバーの名前が全員言えなくなった()ジャニーズ新世代グループ“ジャニーズWEST”の一員です。担当色も知りません()

なので逆に先入観まったくなかったので良かったのかもしれない。

冒頭シーンでの台詞第一声を聴いてびっくり。

めっちゃうまいじゃないですか。

そりゃあ、いくらジャニーズでも(ド偏見)、いまどき学芸会に毛が生えたような子を松竹が出演させるとは思いませんよ。でも、その予想以上にうまかった。何より、沙翁劇のメインキャスト(イアーゴーって相当セリフ多いし)を息切れせずに演じきれる芝居体力に感心。

一幕の幕切れなんて、この人が幕をおろした(つまり、そのシーンの主人公になった)もんなあ。演舞場の舞台にたった一人存在してもビビらない豪胆さ。いやいやびっくりした。

そして何より、イアーゴーが“イケメン”(実は顔はぼくの視力では全然わかりませんでした。存在感が“イケメン”だったという意味です)だったことが素敵だった。

イアーゴーって言ってみれば大悪役じゃないですか。ほんと、観客全員から「しんでほしいわ、まじで」と思われる大悪党。

でも、イケメンだとなんかその憎悪に一抹の隙が生じるというか(お前、最低だな)

そういえば2013年6月にぼくは別バージョンの『オセロ』を観てるんですが(参照)、そのときイアーゴーを演じたのが赤堀雅秋さんで、要するにイアーゴーはイケメンではなくて(ド失礼)、それには演出・白井晃さんの思惑があるんじゃねえか?的な感想を途中まで書いてほっぽり出してました。

つまり当時もぼくはイアーゴーは本来イケメンキャラなんだと思ってたわけなのよね。つまり、今回のキャスティングというか演出が正統派だったと。

実際どうなのかは分かりませんが、イアーゴーのオセローへの憎悪は「劣等感」ではなくて「差別意識」からくるものというのが定石なんだとぼくは何となく思ってたと申せます。

それもすごい複雑で、その憎悪がストレートにオセローに向かうんじゃなく、一回寄り道してキャシオーに向かうというか、キャシオーはどんな演出でも基本的にイケメンなので、キャシオーへは劣等感でオセローへは差別意識なのかとか、エミーリアという女房持ちのくせにどうやらデズデモーナへも邪心持ってそうな雰囲気とか、イアーゴーって、最高に演じがいのある良い役なんですよねえ(観客には一人残らず憎まれるけど)

そんなすごい役をこの若さ(25歳はジャニーズにしては若くはないが、舞台人としては若手ど真ん中)で見事に演じきった神山君ブラボーでした。大拍手。



そして次にぼくが涙流して感動したのが、檀ちゃん(檀れい)as デズデモーナであります。

ほんっとうに素晴らしかった。

デズデモーナはただ美人であればそれでいい(上の別バージョン『オセロ』の感想ご参照)とか生意気ぬかしてごめんなさい←

こんなに心が清らかで愛くるしい女性だったんですね。

徹頭徹尾、オセローを愛して信じて笑い、戸惑い失望のどん底に落とされ死んでゆくデズデモーナ。この女のために涙しない者がいたら、そいつは鬼だ!(熱いっすねぇ、ておどるさん)と思わせてくれる、とても美しいデズデモーナ(演・檀れい、演出・井上尊晶)でした。

んで、ほかの方々もご自分の力を十分に発揮されていて良かったんですが、とにかく今回はこの三人が抜きん出て素晴らしかったので(まあ、役の重要度もこの三人がダントツだからなあ)、感想はここまでにしたいと思います。



あっ、ひとつつけたし。

この『オセロー』は言わずもがなシェイクスピアの四大悲劇のひとつなんですが、シェイクスピアって一筋縄ではいかない人で、“悲劇”と称していても全編深刻に進むわけではなく、「なんでここでそういうギャグ(?)が入んの?」ってところが必ずある。らしい。

冗長(こら)な古典英語のセリフを翻訳するときにカットする翻訳者もいるらしいんですが、今回の台本(河合祥一郎先生)では、2ヵ所ほどぼくのツボに入ったシーンが残ってました。

1つは、デズデモーナがオセローに浮気の濡れ衣を着せられ罵られて気絶するシーン。

オセローが去った後、エミーリアに助け起こされて「眠くなって」と言いつくろうセリフがぼくのツボに入って笑ってしまったんだけど、ほかのお客さんが全然笑ってなくて恥ずかしかった。

面白くない?!このセリフ。(しらんがな)

あと、デズデモーナがエミーリアに「旦那様が何故だか私が浮気したと思い込んでるの」と訴えるシーンで、エミーリアが「そんなのどこかの悪党が嘘ついて陥れたに違いありません!誰そいつ?!ほんと信じられないクズ!しねばいいのに(ておどる意訳)」とわめき散らすシーンに同席してる張本人イアーゴー(エミーリアの夫)とか。

ここ最大のギャグでしょ。

でも誰も笑ってなかったなぁ(当たり前田亜季←やめろオヤジギャグ/汗)

シルバーウィークにふさわしい格調の高い作品に感動しといてこれだもんなあ。すんませんホントこういう性格なもんで(^^ゞ





まあ、久しぶりにずっしり感のあるてくてく、満足いたしました。


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