てくてくミーハー道場

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2018年04月07日(土) 宝塚歌劇団月組公演『カンパニー』『BADDY』(東京宝塚劇場)

花組公演の興奮もさめやらぬうち、今日しかチケットが獲れなかったのでやってまいりました。



ミュージカル・プレイ『カンパニー−努力(レッスン)、情熱(パッション)、そして仲間たち(カンパニー)−』

今回はマンガではなく現代小説が原作。

事前に読んでおきたいと思っていたのだが、思いのほか早い時期の観劇になってしまったので間に合わなかった。

なので、どの辺まで原作通りか、どこら辺が宝塚独自の脚色なのかは分からないで観ました。

「努力、情熱、そして仲間たち」という副題は、日本の老若男男の約100%の生き方に影響を与えたであろう『週刊少年ジャンプ』のキャッチコピー「努力、友情、勝利」を思わせる。が、これは同時に宝塚歌劇団に代表されるような、「メンバー間が濃密な関係を築いている集団」(そして日本人はこれが大好き)をズバリ表現しているように思われる。

これをダーイシではなく、原作者の伊吹有喜センセイがつけたというのが意外な驚きだった。

というのも、カリスマ性抜群のトップに組子たちが「ついていく」のではなくて、若いトップを組子たちが支え、一緒に走ってる感じがする今の月組によく似合うコピーだからだ。

お話の内容は、大枠はリーマンものだが、題材がバックステージもの風味なので、タカラヅカの客として「生徒に言ってほしいこと」がセリフとして出てくる(後述)という嬉しい出来になっていた。

原作の主人公・青柳誠一(劇中では「誠二」)は、実は四十代のしょぼくれた中年男で、妻も、最期まで夫を愛したまま病いでこの世を去ったのではなく、“子供を連れて逃げてった”らしい。

さすがにそこを忠実にやれるほどスミレコードはゆるくなかったようだ。

本人も、何のとりえもない事なかれ主義の男ではなく、柔道空手書道合わせて十段、というイケメン。

原作通りなら滝藤賢一が演りそうな主人公だが(こら)、ヅカ版をテレビドラマか映画にリメイクするなら、坂口憲二などが演りそうだ(坂口さんのご病気が治癒しますことを心よりお祈りいたします)

そんな頼りがいのありそうな主人公なので、彼が崖っぷちからスタートする、という危機感は冒頭シーンからは感じられなかったので、エンディングでも「こんな人間でも諦めなければこんな大きなことができるんだ!」といったカタルシスはなかったのだが、その代わりに、タカラヅカならではの甘々しい建前(口が悪いですよ!ておどるさん)が、人生に疲れたおばさんのカッサカサに乾いた心にじんわりと沁みてきたのであった。

たいして打ちひしがれてなさそうな青柳は、どちらかというとマンガ『いいひと。』の北野優二のイメージである(あくまで、テレビドラマではなく原作漫画の方の)

主人公だけでなく、登場人物たちはそれぞれに「思い通りにいかない現実」を抱えているのだが、全体的にどの人のその現実もあまりきつく感じなかったのは、やはりタカラヅカという空気感のせいなのかもしれない。

いや、それでも過去に「現代モノ」があって、今のぼくたちと同じような悩みの中でもがいている登場人物たちを描いてきた作品はあった。

たいてい正塚先生とか、正塚先生とかの()作品であった。

それに比べると、なんか今回の登場人物たちは、みんな「のほほん」としてるように見える。

ずばり言っちゃって、それが今の月組、のほほんとした生徒代表と言えるたまきち(珠城りょう)の個性のせいなのではないかと思う(カケルところのダーイシの作劇)

いやもちろんたまきちだって、今の地位に上り詰めるまでは、悔しい思いもしたであろう、人知れず泣いた日々もなくはなかったであろう。いや知らないけど。←

だけど、いや、だからこそ、そういうのを感じさせない明るい個性の若いトップがいる今の月組の存在は、とても貴重だと思う。

時に、どの組も同じような感じになってしまうことがある昨今のタカラヅカなので、今の月組の個性は本当に良いなあと思う。

頼れる大輪の花・ちゃぴ(愛希れいか)がいなくなったらどうなるのかという不安はあるが、(おそらく次のトップ娘役に完全内定)くらげちゃん(海乃美月)がしっかりしているので(なんか既視感というか、今回のミヤ様(美弥るりか)とくらげちゃんのカップル芝居は、かつてのノンちゃん(久世星佳)と優子ちゃん(風花舞)を彷彿とさせた。ほっこり優しい大人の関係。それぞれの雰囲気は全然違うのにね)大丈夫であろう。

ちゃぴについては、本編よりもむしろショーでその存在感、頼りがいをひしひしと感じて逆に寂しい気持ちになってしまった(今からめそめそすんな)

本編でも、原作ではたぶんそんな関係にならないであろう青柳と美波(読んでないから分からんが)に、「今夜は月がきれいですね」(ここでも「月」をかけていて、タカラヅカって本当にこういうところ、ズルいですね。でも好き←)のセリフを当てたりして、イヤになるくらい(イヤになるなよ!)のキザさにノックアウトされましたよおばさんは。


ミヤ様演じる高野悠は、設定が熊川哲也で()キャラ造形はYOSHIKIみたいな感じでした。

登場人物中一番てっぺんを極めた人間。だけどその人生も、下り坂に差し掛かっているという苦しみを抱えている。世界に認められた舞台人という設定なので、前述した「観客が舞台人に言ってほしいセリフ」を言う。

「スポンサーのために踊るんじゃない、お客のために踊るんだ」「舞台は観客の拍手があって初めて完成する。観客も仲間、カンパニーなんだ」「不完全なものを見せるぐらいならやらないほうがましだ」

こういうことをジェンヌに言われちゃったら、お客はキュンキュンせざるを得んでしょうが!(なぜ怒る?)

ほんとに、そういう気持ちで作品を作ってくださいよね、先生方(あれ?生徒には言わないのね?)

そりゃねえ、建前だってのは分かってんですよ。生徒にだっていろんな子がいることぐらい察してるんですよ。でも、夢を見させてくださいよ。夢を見に行ってるんだからこっちは(それ以上やさぐれないで!)

ダーイシらしく、さらっと「このご時世、何かあったらSNSでたたかれて一巻の終わりですし」とかいうセリフも出てきましたし、夢の花園タカラヅカだってSNSの攻撃から無傷でないことも痛いほど実感されていることだろうと思いますが!()

ここではそういうこと言いっこなしにしましょうや(誰だよアンタ)


いつ見てもイケメン(←贔屓100%)のれいこ(月城かなと)は人気パフォーマンスグループのナンバーワン水上那由多という、ガンちゃん(岩田剛典)みたいな()青年の役。

見た目よりまじめな青年という役どころも、劇中劇(バレエですが)の王子衣装もお似合いで、ファン冥利につきました。

だが、なぜタカラヅカでのああいう(エグ・・・いやバーバリアンでしたすんません)グループの楽曲は実在するものとかなりセンスがかけ離れてるんだろう?永遠の謎だ(_ _;)


(早乙女)わかばちゃん演じる社長令嬢でバレエ団のプリマという有明紗良は、明らかにモデルがいそうな(ゴホゴホ)・・・まあ、あの方も実際お父さんがどうこうなんて関係ないほど素晴らしい実力でプリマの地位に駆け上がった方ですからね。

紗良は劇中の『白鳥の湖』で引退するという設定でしたが、わかばちゃんも今回の公演がサヨナラ。ここらへんのダブルミーニングは宝塚のお手の物。紗良が那由多を励ますシーンも、きゅんとくるものがありました。退団はちょっともったいない感じがしますねえ。

そしてもう一人、バーバリアンのリーダー(つまりHIROさん?←違うわ!)阿久津仁を演じたとしさん(宇月颯)も今回がサヨナラ公演。高野とはまた違った意味で芸能人としてのプライドをしっかりと持った渋い男。としさんにぴったりの素敵な役でした。

ううう、寂しい。


あと大きな役でいうと、バレエ団の若手ダンサー蒼太君を演じたアリちゃん(暁千星)。元気な男の子、という“まんま”役どころはともかく、バレエの実力で目を惹きました。まあとにかくめっちゃ可愛い。これからどんな男役に育っていくのか、楽しみでしょうがないですよねえ奥様(誰なんだオマエpart2)

とまあ、本編はほっこりじんわりとした良作でした。


覚悟してたほどしょーもないオヤジギャグもなかったし(余計な事書くな)



ショー・テント・タカラヅカ『BADDY−悪党(ヤツ)は月からやって来る−』

月組は、かつてマミ(真琴つばさ)トップ時代に『LUNA』『BLUE・MOON・BLUE』という、「どこまで“月”にこだわるねん!」という作品を上演したことがあるが、今回も月にかわって・・・じゃなかった、月にこだわった作品がお目見えしました。

作・演出は、泣かせるメロドラマの名手・上田久美子先生。ショーの演出はお初ということで、どんなものを作るのか期待と興味でいっぱいでの観劇とあいなりました。





(おなじみの行空けシリーズ)





アンタって、天才?!(◎_◎;)めっちゃ誉め言葉

うぬー、すごいですウエクミちゃん。オギー(荻田浩一)以来の鬼才ですな。

ショーというか、名作『ノバ・ボサ・ノバ』を彷彿とさせる、世界観がしっかりと構築されたストーリーショーで、もー全編たのしたのし(≧∇≦)

サイコーだわあ、ウエクミちゃん。

そして、ダーイシもびっくりの攻めた()内容。

「清く、正しく、美しい」世界なんてくだらねえ!壊しちまえ!みたいな開き直りには思いきり脱帽しました。

数年前から、映像作品は無論のこと、舞台作品でも喫煙シーンが排除されるという異常な(とあえて書きます)最近の世の中。

実はぼくは生まれてこの方ずっと非喫煙者で、態度には出しませんが嫌煙家でもあります。

だけど、今日のこのショーにはめっちゃスッキリしました。

一種、偽善の塊のようなこの劇団(こ、こ、こ、こ、こらあっ!!/大汗)がこういうことを率先してやっちゃうてのが面白い。

路線の生徒に着ぐるみかぶらせるダサさがすごい(誉めてるんです!)

ミヤ様はゲイが似合いすぎて(ただし女装は普通に「美女」になってしまい、妖しさはむしろ男でいるときの方が出てる)恐ろしい(ほ、ほめてるんです!/汗)

ミヤ様で『ドリアングレイの肖像』を再演してくれないだろうか。

れいこが三枚目、路線らしくて楽しい(何やってもれいこに甘いな・・・)

こっちでも元気いっぱいのアリちゃん。体はデカいが(ゲホゴホ)少年らしさ満点。

としさんのキザさが愛しい。としさんの貴重な置き土産を、月組の男役たちが受け継いでくれることを心から望みます。



そして、トップコンビの大階段のデュエットダンスが、「対決しながら」というものすごさ。

攻めてます(2回目)ウエクミちゃん。

長身の娘役であるちゃぴを軽々と振り回す(リフトと言って!)たまきち。拍手喝采です。

娘役を軽々とリフトする男役って、やっぱ惚れるわ。これからもブンブン娘役を振り回してね、たまきち(一体何を期待してるんだ?)





あー面白かった。正直「タカラヅカって、こんなんで良いの?」って感じだけど、そういうところが月組らしいような気がして(振り返れば、スミレコードをはみ出すのが月組の伝統って気がしてきた。大地真央さんあたりから・・・いや、榛名由梨さんあたりから。てか、その前のタカラヅカをぼくは知らん)

次回作はドル箱『エリザベート』

これはさすがに「ノーブル」「退廃」「耽美」でいかなきゃならん。はっちゃけ月組は今回の公演で出し切って、美麗にちゃぴを見送ろう。

ううう、なんか今から寂しくなってきた(涙)←気が早いなあもう


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