舌の色はピンク
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2015年03月09日(月) 蓋をめぐる冒険

僕が漫画など読むためにしつらえた小部屋にはお飾りの机があって、
お飾りらしく机としては全く機能していない。
なもんだから同じく機能していない雑貨のたぐいが散らばったりしてる。

それらは僕の知覚から離れて自立している。
ふと全く覚えのないブリキ缶の蓋付き灰皿をみとめ、
手に取ってみたらやけに重い。
何かがぎっしり詰まっている…。

何かが。

あんまり考えたくない。
考えたくないが自明的に、なまものの重みを感じる。
いやそんなわきゃあない。
どうして僕が自ら、灰皿に詰めるというのだ、その、
あまり考えたくない何かを。
サイコ野郎か。
それも無意識にって。
いずれ下世話なコンビニ本の題材になったりするのか。


なけなしの勇気振り絞って開けてみると
中身は用済みの電池たちでした。
あーホッとした。
安堵のあまり泣きそうに。
電池と知った瞬間にも小さくヒッ!って言ったもんな。

/

どうあれ閉ざされた蓋が怖いのだ。
という私論があるのです。
蓋がされていればすなわち恐怖もやってくる。
実家にいたころ
ただいまと帰宅して誰も家にいなかった日には
浴槽の風呂ふた開けるたび
 アー絶対家族のバラバラ死体入ってるわ…
と震えてた。必ず。

実際の中身がなんであれ、
知覚をあしらって未知が浮上するなら、
想像力は限りなく湧きたつ。
じゃあ蓋の裏側には何がある?
恐怖の本質だと思う。


2015年03月08日(日) 脅威的教育的指導

恋人との交際記念日につき丸の内でお買い物。
寒さを見越し野球拳で15回負けても
なお裸にならずに済む装備にて右往左往した。
丸ビル新丸ビル大丸と通し歩き洗剤と台ふきんを購入。
テンション上がった。
主婦としては欠かせないよねっ!

ディナーは豪勢に、以前いちど行って大感動した荻窪のイタリアンへ。
今回もやばかった。

…ジブン、かねてより全身が敏感でして
我が身の事情は把握しているつもりでしたが、
まさか身体の内部にも性感帯があったとは
っっってくらい快感がやばかった。
メインの佐賀牛イチボ肉で達した。

/

あまりに美味しい料理を食べると
自炊の気力が失くなる
と見せかけてあまりに次元が違ったからもはや気にならない。
至上の美味は精神を駆逐して肉体だけを支配してくれる。
身一つがよすがなんだと力技で押さえつけてもくれる。
教育して導いてくれる。
あたまでっかちの無力感を煽ってくれる。
よろしい、ならばもっとあたまでっかちになって立ち向かってみせよう
と意気込むにはまだ到底至らず今はただ圧倒されきり陶酔に浸る。


2015年03月07日(土) 夢をみてもひとり

気がつくと原っぱにいました。
もうサバイバルには慣れっこだったので
初めて来た場所では役に立ちそうな道具や
道具になりそうな自然物を見つけるぞと収集に努めました。
仲間らしき数人がしきりにひとところで
やんややんや賑わってるのを尻目に
私は雑木林の奥へと広がる草原にひとり抜け出してみました。

鳩がいました。
まっとうな生き物を目にするのは珍しく、
どうにか獲れないものかと小石など投げてみるのですが、当たりません。
すると視界の端に一介の影が過ぎりました。
梟でした。
まだ幼いのか、私の手のひらに収まりそうなほどに小さく、
愛嬌たっぷりの、可愛らしいなりをしています。
私の心はすっかり射止められてしまいました。
よくみれば猛禽類の生態はさておき、草を食んでいるではありませんか。
私は足元の草をもぎり、小梟にそっと寄せてみました。
食べてくれました。

これは鳩どころではない。
獲物なんかより愛玩だ。
これだけ可愛い梟を愛育できたなら
仲間たちもずっと喜ぶぞ。
生き抜くために必要なのは食糧だけじゃないんだ。
すわ、義に則り、私は彼が好んでいるらしい草、
厚みと潤いに富んで葉脈だけが緑の上に馴染みきらない、
オオバコに女性味を足したようなその草を見つけては、
もぎり、与え、離れ、寄せて、
すこしずつ、すこしずつもと居た原っぱに彼を誘導しました。

彼の食欲はすばらしく、いくら食べても飽き足らない風情で、
餌を平らげるごとどんどん大きくなっていきます。
いつのまにか人間で言うところの4歳児ほどにまで体躯は育ち、
また人間で言うところの下半身らしきものまで備え、
心なしか顔貌までが人間に似てきた気がします。
もうちっとも可愛くありません。
私は怖くなってきました。
今にもついばまれてしまいそうな気がして、駆け出しました。

「やっぱり飼おうとなんてするんじゃなかった。
だいたいが、聞いたことあるぞ、梟はいくら餌をもらっても
飼い主なんかとは認識しなくって、絆を深めるのは至難だって。
人間……。人間の、仲間がいちばんだ。
そうだ人間だ! 人間。人間人間人間……」
ひとりごちていると、梟がおどろおどろしい声でささやきます。
「人間がそんなにいいものか。
おれだって、人間になりたくてなっているんじゃない」

振り返ってみれば視界は真っ黒い雨に塗りつぶされて、
もう何も見えません。
発声もままならず、耳に届くはべちゃべちゃいう足音だけでした。
両手で頭を覆い、二度か三度、深呼吸した覚えがあります。


2015年03月06日(金) ブリリアントな快楽を探そう

花粉ぐらい勧善懲悪の敵方に相応しい手合いは
そうそうないと思うんですけどね。
どうしておとぎ話でとっちめられてないのか理解に苦しむ。
鬼退治とか言ってる場合じゃないでしょ。
鬼とかあんま見たことないし。

/

我が骨太の信念をあり合わせの惰性で折り曲げ
マスク装着。
ひるがえるなー。思想が。
快適ったらありゃしない。良。良。
皆も皆が着けている意味がわかった。
なにより表情を隠せるから優。
顔の下半分だけ昆虫の形態模写などしてても
一向に悟られないもの。暴れ放題逸し放題。
ストリーキングの緊張に近いものがある。

そうして全幅の信頼を預け装着したマスクが
顔型に対してだいぶ小さいタイプだったことを
夕方に及んでようやく気づいたのであった。
もうちょっと鏡を見る習慣があれば。
さすれば今日一日僕とすれ違った人たちも
不意打ちの気味悪さを覚えずに済んだろうに。
彼らも顔をしかめていたんだろうな
各々の顔型に見合うマスクのその下で!
舌を! 出していたのだろ!
ふてぇ! とんでもねぇやつらだ!

/

イエローモンキー熱再燃中。
近頃の垢抜けたバンド色にあてられるたんび
イエモンの泥臭さがたまらなくなってさあ。
SICKSどこいったんだろう。二度はなくしてる。
たぶん人に貸したかあげたか。
また買おうか。
4回までは買っていいだろう。
根拠ないくせになぜか頷ける妥当な数字。


2015年03月05日(木) ドラマは日常のなかに 日常はドラマのなかに

今朝道すがら財布を拾うイベントが発生。
財布…というより定期入れ?
小銭や鍵が入ってた。

明らかに駅に向かう道だし定期も入ってるし
ドッキリなんじゃねえのってくらいわかりやすく落ちてたから
まだ落としたてに違いなく
今にも改札あたりから落とし主が引き返してくるものと見越して
目立つよう拾得物を掲げながら駅前交番にゆっくり歩ん



で、い、く、あいだ、
スゲェーこうふんした。
わっかりやすく慌てふためいて路上を血眼んなって
コレ探してる人間が現れると考えたらさ!
小走りでかけよるわけ、で、
ぁ、あの!
っつって。善人らしく低姿勢、
もちろん屈んでいるであろう落とし主の目線に合わせてだ。
そうしてこちらを見やる、
探し物を視認して2人の間に電光石火事情が通じる。
向こうの第一声はありがとうございます!だろうか?
はたまたウオアアアアアアッ!ッッーーー!だろうか?
劇的に見合うだけの気の利いたセリフ用意しとかなきゃな。
怪しまれるような印象もたれちゃいけないぞ。
今日服着てきてたっけ?

など考えてる間に交番に到着して
人情味のない公務に応じ無表情で応じ
早歩きで立ち去り群衆と同化して電車に乗った。


2015年03月04日(水) オクトパスバーン

今日は春も尻尾巻いて逃げ出すほど暖かくなると聞いて
まんまと騙された。
冷え冷えはしなかったけど。
おひさまと仲良くなれる気でいたんだ。
おひさまに悪いことをしてしまった心持ち。
あいつ天に居座ったまま何ひとつ責任引き受けないからな。
全部こっちのせい。

/

毎日行き来する商店街にたこ焼き屋がオープンしそうでオープンしない。
寒い間にオープンできないと大損害に違いないのに。
たこ焼き屋って
「人生最後の大博打」
みたいなイメージがあって(すいません)
判官贔屓というんですか、応援したくなる。
たこ焼きはいくらでも厳しく採点できるけれども
寒けりゃうまく食えるってのも実情としてある。
だから早くオープンしろ。
何回言えばわかるんだ。とりあえず一回目だ覚えとけ。

/

アゴの傷が治ってきた。
まる2ヶ月?
克己心欠如の現れ。さいきん克己心鍛えてないな。
今は口ん中の肉噛む癖がやめられない。
日に日に顔の形が歪んでいく経過に付き合わされている。


2015年03月03日(火) 脳波ビッグウェーブ

共通の友人、仲間、グループとか呼ばれる輪の中で
一人だけ催しごとに呼ばれなかったりするのが
あんまり気にならない。

いや気にならないっつうことはねえか。
いっぱしに寂しさらしきものを感知するだけの機能は備わっていて、
なんだけどもその寂しさが心地よいというか。
自分のいないところで世界が豊かに運動してる!
と思うと、安らぎを得る。
世界が僕を必要としてない感じ。まるで。


一方!


殺し屋イチという漫画で
(以下ネタバレ)
裏で糸引いてた黒幕であるところのジジイの行動原理が
「俺が死んだ後に何も面白いものを残したくない」
みたいな理念に支えられていたけども、
それもわかるんだけども、
僕には「自分だけが知っている面白いもの」が確信的にあって、
それを託さない限りはおちおち安らげず、世は去れない。
自分のいない世界は
自分がいたかもしれない世界よりも豊かであってほしい。
いい話だろ。
そのへんのガキに聞かせたら泣くぜ。

/

寒くて花粉て。
ゲームバランス崩れすぎ。
クソゲーか。
それともテストプレイ中か。
これからデバッグしていくんか。
俺らの人生ベータ版か。


2015年03月02日(月) 断言

僕は目がとても悪く
まぁ0.01以下とかいうとありふれてるんですが
裸眼だと世界のすべてがぼやけて見えるといういわゆるそれ。
いわゆるそれでありながら本日行水中に湯気の粒子を
つぶつぶを
紛れなく
ハッキリ見たことをここに申し上げます。
催眠術だとか幻覚だとかそんなチャチなもんじゃ断じてねー。
見入ってやったね。

/

恋人に小学校時代の話を聞く。
通信簿に「友達を大事にしない」と書かれたらしい。
本人には申し訳ないが大笑いした。
もし仮にじじつ友達を大事にしない児童だったとして
それが担任教師の目に明らかで
証拠か現場を押さえられていて
しかも保護者に報告の必要ありと見なされているのだ。笑うしかない。

御母堂は学校に抗議したらしい。そりゃそうだ。


2015年03月01日(日) かたりがたり

オチのあるなしについて。

オチのある話は完結しきっており、
一人語りで成立して、尊重の精神が求められる。
聞き手のコメントは総じて半畳を入れるにひとしく
厳しくいえば次いで自らも新作を披露するほかない。

一方オチのない話は開かれていて、
聞き手の茶々や想像力が縦横無尽に飛び交うなら
合作の感がずっと予期され体験的な心地よい話運びとなる。


舌の色はピンクなどと自明なことを言って、
誰にもだからどうしたなどと指摘されることのないこの場は
意識的に前者の装いで営業している。
これはWeb上のテキストとしては古い手口で、
SNSであれば交流の了解が先置かれているだけに
断然完結しきらない話の方が機に恵まれやすく
場を移せば自分もそれに倣っているところはある。
話を投げっぱなしにして聞き手を参加させるのは
ストイックには程遠いともいえる一方、
着地点が見定まらないままの歩みにはある種の勇気が要り、
聞き手の役割は増しに増し、信頼の度合いも試されて、
単語ひとつの緊張だって強張り、ずっと戦闘的だ。
時代を主語に想像力の需要拡大を信ずる僕には
先進的であるとも断じられ、
適応させていかなければならない焦りは危機感とすら呼べる。

現実世界の会話でも似たところはあり、
語るならオチという蓋で閉じない話のほうが先進的であると、
最近になってつよく認識し始めてきた。
一度認めると頭のなかを占めてやまない。
試しに実践してみる。うまくいかない。
いかに今まで甘えた語りに興じてきたか痛感する。


…なんだか、最終回のようだ。
タイトルまで引き合いに出して。
当ページはひとりきりの慰労の場、
飽きない限り今の構えのまま続けるし
飽きたらいつでもやめる。

/

追記。
ことここにいたって、
英語圏の「ジョーク」が大嫌いな理由が
ひとつ明らかにされたようであり、
これには溜飲が下がった。
あんな前々々々々時代のものはすぐさま滅びて、
百年後にでも嘲笑的に甦ればいい。贄や糧でいい。
もしくは落語よろしく伝統芸化すればいい。
世に溢れかえるジョークの数々を淘汰しきって
ごく僅か残っただけをひたすら洗練していけばいい。
それも極端に残らなければ尚いい。
1個あればいい。


2015年02月26日(木) 超能力

親しく付き合ってきた同僚が退職するとの由。
そんな素振り、気配、兆しのたぐいは
一切見せることのなかった彼から、
いつもの調子で今日お茶でもしませんかと誘われ、
二人で喫茶店に向かい雨降りの交差点を待っている間、
「あ、今日別れを告げられる」
と不意に感知した。
完全に男と女のそれ。
機微の交信。
わたしたち今日で終わりなのね。

/

また傘を電車に忘れた。
傘を。
今朝買ったばかりの傘を。
事前に天気予報は見ていたのに
家を出るときに降ってなかったものだから
うっかり持ち出し忘れてしまったものの
駅に着いてから大人力を発揮し帰宅時のため買っておき
僕の命より大事な500円を投げうって買っておき
お昼休みの5分間大活躍してくれたあの傘を。

それでも明日はやってくる。
明日なんて。


れどれ |MAIL