舌の色はピンク
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2022年04月10日(日) ピザ注文、執筆、さよならコンポ、廊下広縁ソファ

8時起床。晴れ。朝だけちょっと肌寒い。
休日トーストを食べてOKストアへ。
入浴。洗濯。

四隣人の食卓、読み終えた。
面白かったな…。
文章がとてもよかった。
現代的で、小説的で……
まさに自分に欠けてる能力だから勉強になる。

11時、妻は友人宅へ。
僕はピザを注文して、しばしゆっくりした。
2年前の、祖母の米寿祝いパーティーの映像を見てみた。
親族30人が集まった会の映像を、僕が編集したもの。
ここに映し出されているのは、一つの幸福の凝集だ。
人生のいろいろを経てきた積み重ねの結晶としての一日。
癌で余命幾ばくもなかった叔父が主催したパーティーのなかで、
祖母の人生および一族の歩みを写真で振り返るスライドショーを、
叔父はメインに据えていた。
これは叔父から名指しで依頼されて僕が手掛けたものだ。
叔父は病床で、何度も何度も…何百回も見ては泣いたという。
その話ありきで見ると、僕もまた泣けてきてしまう。
「みんな仲良く」という主題を、今回書いているトキノには込めている。
正確には、「みんな仲良く」が、生の祝福に紐付けられるというものだ。
僕の子供時代には、たしかに祝福が感じ取れていたと、
これらの古い写真を見返していくと実感する。


さてピザを食べたら書き始めるぞというつもりでいるのに、こない。
12時15分から30分の間に指定してあり、
予約確認ページにおいては到着予定時刻が12時15分とされている。
12時35分になって、店に電話を入れてみた。
「いまオーブンに入れたところですので……」という返答。
ああー……その返事よお……通じねえやつだぞ!と思い、
今回ははっきり訊いた。
「予定より遅れてるってことですか?」
「はい……」
「大分遅れてますよね。10分程度待ってても来ないってことですか?」
「はい」
「どのくらいになるか教えてもらっていいですか?」
「20分ほど…だと思います」
となると、提示してきた予定時刻より40分遅れということだ。
別に遅れるなら遅れるでもいいのだが、
さすがそこまでの遅れになるなら一報くれよ…。
という思いを押し殺して、丁重によろしく頼んで電話を切った。
で12時55分、ようやく到着。
何一つお詫びの言葉はなかった。まあいいけど……。
ドミノピザデラックスL1枚。
これを庭で食べてみた。うめえ。
のどかでのんびりして…よい。
しかし、思いのほか暑かった。
3切れだけ食べて、残りは部屋でいただいた。

13時20分。
予定よりだいぶ遅れたが、執筆体勢を整えた。
音楽は無し。
テーブルにノートPCだけのっけて、座布団に座り文を打つ。
途中5分や15分程度の休憩をはさみつつ、18時まで向き合って、
ようやく全体の95%くらいはできあがった。
達成感ある……。
16時過ぎからは涼しい風が入ってきて、
めちゃくちゃ気分気持ちよかった。
帰途についている妻から電話がかかってきてからラストスパートをかけた。
ちょっと遅れて帰ってきてくれたおかげで捗った部分もある。

19時近くなって帰宅した妻に、窓際の席を勧めた。
普段は居間に置いているソファのうち一つを
今日は窓際の廊下に移動してみたのだが、
旅館の広縁のようになるし
風が間近に感じられて恍惚的なのだ。
妻もうっとりしていた。
僕は大急ぎで夕飯の支度を始めた。
生春巻きのために鶏むね肉を茹で、
人参千切りを塩もみ、大根とキュウリも千切りにしておいて、
ライスペーパーにリーフレタスを置き、それぞれを包んでいく。
並行して、ニンニク長ネギ味噌醤油みりんで、
ご飯のお供も用意した。

19時半のダーウィンにはなんとか間に合った。
でも飯はちょっと失敗した。
スイートチリソースが開栓してから随分経っていて、
味が変わってしまったようだ。
それに、サラダと生春巻きで野菜過剰なところに、
別の肉や油っけがなかったから、ちょっと物足りなかったか。
とはいえかたや昼飯ピザ、
かたや昼飯バーベキューだったのだから
1日のトータルで見ればちょうどよくはある。

ダーウィンは森のなかで産卵するペンギンの特集。
森のなかにはアシカもいてオドロキ空間だった。

食後、かけそこなっていた掃除機をかけた。
こう遅くなってしまったのは不本意ながら
それでもサボらないのは我ながらエライ。

で、改めて窓際の廊下にソファを置いた。
向き合う格好で1席ずつ。
妻と二人、何もしない贅沢な時間を楽しんだ。

友人宅でも楽しく過ごしたようだったが、
新築建売のその家は、やはり好みではなかったようだ。
ケチを付けられるような物件ではない。
駅チカ4LDKの、広く、明るく、お利口な家だ。
だが、ときめかないという。よくわかる。
クルミのパウンドはその場で食べたそうだが、
クルミが上部に固まっていたようで、
「クルミって浮くんだっけ?」となったらしい。
もちろん浮かない。それどころか、沈む。
沈むから、底面に集まらないように、
生地の中段から上段にかけて散りばめて焼成するのだが、
今回はびびりすぎて、結果的に全然沈みもしなかったようだ。
味はよかったらしい。


コンポ捨てた。思い切って…。
19歳の、一人暮らしを始めた当時に買った思い出の品だった。
CD5枚を切り替えて聞ける優れもの。
音質とかはわからないから実用性だけで選んだ。
たいへん世話になった。
引っ越しに際しても処分できず
大量のCDとともに持ってはきたのだが…
結局はダンボールに詰められていたし、
今後登場する機会があるとしたら、さらなる引越し後だろう。
そのときにはさすがに新調するか、と思い切った。

思い切りのよい男になりたくもあり、
一方でウジウジと不合理に悩んでいたい自分も維持していたい。
今回は現実がまさった。


早めの入浴を済ませて、風呂上がりの火照った身体で、
再び窓際で夫婦向き合った。
夜風が気持ちよすぎるのだ。
ぽつりぽつりと、話したり黙ったりしつつ、
22時半からはまた執筆に入らせてもらった。
おかげで、98%くらいまではいった。
あと数日あれば書き終わる。
めちゃくちゃ楽しく、めちゃくちゃ恐ろしい。
誰もに読ませたいし、誰にも読ませたくない。


民話読み聞かせて寝た。


2022年04月09日(土) 庭掃除、求肥大失敗、それでも春

洗濯。
普段は日曜日にしている布団の洗濯、
先週が雨で洗えなかったからせめて一日前倒しをと、
今日とりかかった。
それに兄からもらったバウンサーの布地も。
これは汚れがあるわけじゃないけれども、
甥のにおいが染みついている。
べつに臭いとかじゃなく、ただよその家のにおいが
我が家に漂うのを好まないだけ…なんだけど
なかなか強く染みついていて
水曜日に一度洗って天日干しして放置してもまだまだ残ってるから
今日は柔軟剤の力も借りて洗濯。

でOKストアへ。
洗濯もの干して、続けて西荻へ。
DVDを借りた。

昼飯は庭でラーメン。
よく晴れている。
幸せすぎる……

食後、庭掃除。
草刈りはストレス解消になると、
これ多くの男性に教えてあげたいな。
一心不乱になれることもそうだし、
あと獲物を握っていれば、暴力性も発揮できる。
草を…刈るッ! 抜くッ! ぶった切るッ!
すっきりします。
僕はねじり鎌という道具を気に入った。
延々作業していられる。
ただ妻は、庭に現れる生き物を楽しみにしているから、
僕がなんの草でも刈ろうとするのをいやがる。
僕は刈りたすぎるし、妻は刈ちたがらなさすぎる。
ちょうどいいバランスだと思う。

妻によると水曜日には今年はじめてのカナヘビさんと遭遇したらしい。
ちょっと楽しみにしていたが、今日は姿を見せなかった。


その後、案外時間を持て余して居間でのんびりした。
庭など眺めてとても気持ちがいい。
ゴロゴロしたくなって漫画読んじまった。
原恵一郎の麻雀漫画。
トラックの荷台が賭場になっててアジールだなこれって思った。


15時近くになって、
おやつに求肥作ろうと思って白玉粉で大失敗こいた。
へこんだ…
以前つくったときはあっさりだったのにな。
白玉粉100g,砂糖100g、水200mlを耐熱ボウルに入れて混ぜて
レンジで3分温めてよく混ぜて
さらにレンジで1分温めてゴムベラで練って…。
という段階でかなり水っぽくって
軽量が正確じゃなかったのかも。
パットに片栗粉散らして求肥生地を乗せたら
ちょっとだけ固まったけど結局はベチャッとなって
これじゃ食べられん…と断念。へこんだ。
勉強料だと思おう。

代わりのおやつとして、じゃがいもを薄めにスライスして素揚げした。
塩振るだけで美味い、簡易版ポテトチップス。
あんまりパリッとせんかったな。
揚げる前に水分抜かないとふにゃふにゃ。


夕方、映画鑑賞。
処女の泉。
ベルイマンの白黒映画。
天真爛漫のイイコが、賊に……。
で父親がきれて……。
で最後に……。
奇跡。
すごかった。これぞ奇跡っていう。ああー美し。
これ好っきだなあ。
人にすすめるには抵抗あるけど、僕のツボにはドンピシャだ。


夕飯はテレビで見かけて美味しそうだった玉ねぎのコンソメスープ、
この前神保町のスペイン料理点で美味しかったマッシュルームのアヒージョ、
それにシーザーサラダとカジキマグロのバジルソテー。
玉ねぎは皮向いて両端だけ切り落としたまるごとの状態でバターで炒めて、
水を注いで蓋してひたすら煮る。味つけはコンソメキューブと塩こしょうだけ。
アヒージョはフライパンにたっぷりのオリーブオイル入れて
つぶしたニンニク2片入れてじっくりあげて、
それから半分に割っていったマッシュルームを入れて塩振るだけ。
シーザーサラダの具はルッコラとトマトと海老で、
ドレッシングがなかったから自分で用意してみた。
にんにくチューブと牛乳とマヨネーズとブラックペッパー。
かなり覚えのある味になったけどちょっと牛乳が多くなってしまった。
カジキマグロのソテーは焼けばいいというもの。
ご飯と、今日は特別にバゲッドを切って焼いて出した。
アヒージョ美味かったけどニンニク足りなかったな。
スープも美味しかったけどコンソメが強すぎた。
いずれも、けどけど尽くしながら、まぁ満足の行く夕飯ではあった。

夕食後、無限にあると思われていた無塩バターの不足に気づき、
本日二度目のOKストアへ、
ついでに西荻にDVDも返しにいった。
22分の旅。
家を出る直前にくるみを170度のオーブンで20分ローストしていったのだが
帰ってみると焦げ果てていた。
……よう見たら、もともとローストされてあるものだこれ。

あらためて、くるみのヌガーパウンドケーキと向き合う。
妻に明日持たせるためのもの。
[くるみヌガー]
・くるみ 40g
・バター 8g
・ハチミツ 5g
・グラニュー糖5g
・生クリーム5g
・インスタントコーヒー 小さじ1/2
1.くるみを天板に広げ、170度に温めたオーブンで20分ほど、香ばしくなるまで焼き、手で細かく割る
 ローストしてあるものなら細かく割るだけでOK
2.小鍋にバター、ハチミツ、グラニュー糖、生クリームを入れて中火にかけ、
煮立って泡がゆっくり弾けるようになったら火を止め、インスタントコーヒーを加えて混ぜ、
くるみを加えて木べらでからめるようにし、ボウルに移して熱を取る

[くるみのヌガーパウンド]
・くるみヌガー 50g
・全卵 2.3コ
・無塩バター 105g

・三温糖 45g
・粉砂糖 45g

・ハチミツ 25g
・ラム酒 15g

・薄力粉 105g
・アーモンドP 30g
・ベーキングP 小さじ1

1.室温に戻して泡立てたバターをボウルに入れて泡立て器で織り交ぜ、
 合わせた砂糖を数回に分けて加え、ふんわりするまで泡立てる
2.全卵をほぐして湯せんにかけ、フォークで混ぜながら人肌程度に温め、数回に分けて1に加え、
 その都度バターと馴染むまで混ぜ合わせる
3.別のボウルにラム酒とはちみつを入れて湯せんで温め、
 2に加えて混ぜ合わせ、大きめのボウルに移し替える
4粉類を再びふるいながら加えて、ゴムヘラで切り混ぜ、ツヤが出るまで混ぜる
5.準備しておいた型に生地とくるみヌガーを交互に入れ、最後に残りのヌガーをふりかける
6. 180度に予熱しておいたオーブンで15分(+1分)焼き、170度に下げて30分(+4分)焼く
7. アプリコットジャムと水飴を塗り、刻んだくるみとで飾り付け

なんか今回めっちゃ膨らんで盛々の見た目になった。
生地量も多かったのかな。
香りはいいし、美味しいとは思う。
味見できないのが惜しい。


妻が原稿に勤しむ予定もあったはずだが、
花粉と眠気にやられていて、ろくに作業できないようだ。
無料公開中のゴールデンカムイを読んでいる。
僕は1時間少々、トキノの執筆にとりかかった。
執筆は明日の日中が本命となる。
22時半くらいに切り上げて風呂へ。
入浴後は本読んで、家事して、民話読み聞かせて寝た。


2022年04月08日(金) 下手なごまかし、三島論、甘ったれの顔

晴れ。あたたか!
6時半に目が覚めて完全に土曜日だと勘違いしながら
居間に行ってから金曜だと気づいた。
べつにショックとかなかった。

弁当は昨日の残りのスタミナ。
あっためてごはんに乗せただけのもの。


うちの部署の仕事を一部請け負うことになった後輩が育たない。
正確には、求めてもないのに上の浅はかな判断で
こちらのごくカンタンな仕事を渡すよう義務付けられた相手だけれど…。
教えるにあたって、彼女の席での指導は制されている。
「密になるから」とのお達しだ。
したがって僕ら側の席へ呼び込んで教えなくちゃならないのだが
もとより密度はこちらの方が高い。馬鹿か?
でもまあ従ってるわけです。
おかげでものすごく非効率的で、
当然のごとく育たないのだけど。
あの上司の経験と見識が浅いからこういうことになるんだよな。
「密になるから」は名目に過ぎず
別の事情を覆い隠すためのお為ごかしであるんだろうけどへたくそ過ぎる。
実損こうむってる後輩がかわいそうなのでなるべく丁重に扱ってる。


夕飯はサバの味噌煮。
妻は喜ばないが、ごちそうばかりではいられない。

テレビをだらだらと観た。
三島の自決。
三島の自決に際する主張とかって
ほとんど必ず三島論になるの嘆かわしい。
というか相当苛立たしい。
檄文なんかも、それそのものが語られることはまずなくって、
「このとき三島は」とかいって三島研究になっちゃう。


網野善彦先生の無縁、公界…を読んでるけど
あれ…? あんまり楽しめない。
難しい、というよりは退屈なのか。
いや意味内容の充実した本ではあるはずだ、
ただ僕の方に、カタメの歴史事情を味わえる適性がない。
もったいないことだ。


妻と、下の世代の甘ったれ顔についての話をした。
男たちの顔につまりは殺気がない。
「でも殺気を奪われてきたわけでしょう。だめだよって」
まさにその通りだ。
そんな話をしばらくした。
僕は、命かけられるかどうかだと思う。
それは趣味でもなんでもいい。
男は守るべきもんがあれば楽なのだ。
女とか。
でも今や、守らせてもらえない。
女性は庇護対象ではないと、民主主義の発展が決定しつつある。
女に比べて、男は器用じゃない。
女は何事につけ、スパンが早い。
なかなか、なにか一つを大事にしようとし続けない。
ファッションをはじめとする消費活動がわかりやすい例だが
これは悩みかたでもそうだと思う。
たくさんの悩みを同時に抱えて、
しかもその悩みがつらくて大変で、
「わからなく」なっちゃったりする。
対して男は、比べれば悩みが限られている。
そして明確だ。たしかな悩みが重くのしかかっている。
これにおいても、女の方が生存的に器用だ。
そんなような話をした。


民話を読み聞かせて寝た。


2022年04月07日(木) 言いたいお礼、交番のやりとり、スマホ充電残酷物語

晴れ。かなり春。桜は散ってきている。
7時半に起き、
7時につくよう設定しておいた暖房が
たかだか30分で部屋を暖めてくれているのを
しみじみ実感して意気揚々停止させる。

弁当は鶏もも肉とキャベツのポン酢炒め。
換気扇が機能していてうれしい…。


出勤途中ぼんやり歩いてて
なんとなく同窓会がしたいなあと思った。
中学の。

中2の6月に父親が死んで、
葬式だので数日学校休んでから登校してみたら
ことさらに優しくふるまうクラスメイトもいれば
わざとらしいほどいつも通りのクラスメイトもいた。
その中で、たまに軽口をたたき合う程度だった女子が、
つらくなったら言ってね、別に何ができるわけじゃないけど、
私には言っていいからね、と声をかけてくれた。
僕は心配されるほど傷ついてはいなかったし、
そのときも軽口で応答しておしまいだった。
でもあのとき声をかけてもらったことは心に残っている。
別に仲良しでもなく、
隠れた好意を寄せる相手でも全くなく、
それだけに純粋な善意だと信じられて、
「世の中捨てたもんじゃないんだな」
と思えた。
言われたその時よりも、以後に振り返る度そう思えた。
とても感謝している。
礼がいいたい。

…けど、実際その礼は伝えにくい。
相手が忘れているだろうことは構わない、
言葉並びがくさくなろうが今更テレも恥じらいもない。
ただ、どうしてもきっと、口説くみたいになってしまう。
勿論そんな気はない。
でも表面上はそうなる。
だから礼を言う機会がもてない、って、
おお、なんだか不条理だな。
老人になってからなら美談になるかな。


九段下に降り立ってみると大量の若者。
大学の入学式のようだ。
スーツを着慣れない男ばかりがあふれかえっていたのだけど
顔つきがまるで子供でびっくりした。
18歳ってこんなガキだったか。
大学出たての新入社員の顔つきに締まりがない、
というのには慣れてたつもりだっったけど
18歳があまりにも…中学生みたいな幼さで…
いや時代だけじゃなく世代の差はもちろんあるんでしょうよ、
おれもおっさんになったなあガハハで済む話でもあるかもしれない、
しかし自分の18歳は確実にここまで幼くはなかった。
精悍には程遠いにせよ、
あんなに甘ったれの洟垂れ小僧ではけっして……。
……これオモテには出さんほうがいいな。
どうしたって訳知り顔でさとされるやつだ。

一方で
この中にどれだけのヤングケアラーがいることだろう。
過酷な状況に置かれている子たちは大学進学を諦めてる方に多いだろうし、
またこの子らよりさらに下の世代の方がおそらく自体は深刻だ。
顔つき一つじゃどれだけの絶望かかえてるかなんてワカランからな。


昼休みをつかって千代田図書館へ返却。
論語のCDはブックポストでは返せない。
9階まで行き来する必要があり
時間のロスは著しいのだが
まだ12時半だしと余裕のつもりで行って
ちょびっとだけ本を物色して降りて12時40分。
そっから近隣の交番へ。
50過ぎとみられる、スマートさからは程遠い警察官がひとり。
落とし物の届け出をしたいのですがと口を切り、
簡潔に事情を伝える。
ちょっとした反応の一つ一つにに不安を覚える。
個人的には好きなタイプのオッチャンなのだが、
こちらの情報を正確に受け取っていないフシがある。
それに休憩時間の終わりも迫っている。
無駄なやりとりは避けたいが…。
書類を記入し終えて、彼がさぁ然るべきところへの
電話を入れるぞというところで、交番に来訪者。
「拾いました。すみません時間無いんで渡すだけ。これ」
と、青年が運転免許証を警察官に手渡す。
「おおどうもありがとうございます。どのあたりで?」
「急いでます。神田のあたりです」
「拾ったのは何時頃?」
「ちょっとね、1時までに戻らないといけないんで」
「はい、はい。何時頃に拾いました?」
「ついさっきです」
「はいどうもー」
「じゃっ」
……ものの1分程度のやりとりだったが、いろいろなことを思った。
まずこちらの手続きを阻害されたこと。
1時までに戻らないといけないのは僕も同じなのだ……。
しかしその、「1時までに戻らないといけないんで」という、
主観的に過ぎる言葉の意味の不確かさ。
彼の世界だけで成立している文法に呆れた。
仕事でもこの文法の答え方するんだろうな。
『それあと何分くらいで終わる?』
『今これとこれをやってるところなので…。その後これをやったら終わりです』
みたいな。
呆れかえる。
ただそれはともかく、急いでいるのだけは伝わる。
なのに警察官はのんびりしていたわけだ。
「場所と時間だけ教えてくださいねー」と先に言えば済むのに、
あれでは届けた方もどれだけ質疑応答が続くかもわからず、たしかに難儀する。
で、彼が立ち去ってからそんなような考えを巡らせていたところに、
警察官の嘆息が漏れ聞こえた。
「1時までにって言われても、困っちゃうよねえ」
そうなんよ。
いや本当そうなんよ。
でも事情だけでいうとおれも同じなんよ、
本当はおれだってその事情を開陳したくはあるんよ……。
『休憩時間を利用して来ているので、12時55分までに手続きを完了させるか、
その時点で切り上げさせてください』
と明瞭な申し出をぶつけたいんよ。
でももうできない。

警察官は僕が記入した書類の情報を電話相手に読み上げながら、
遺失物センターにいま届いているかどうかを確認しているようだった。
遺失物センターへの電話連絡はしたと…12時52分…
最初に伝えたんだけどな…12時53分…
「まだ届いてないみたいんですねー」
そうだろうとも…12時54分…
「これからもし届いたらそちらへ電話いきますんでね」
はじめからその一言だけが欲しかった。
そのためだけの遺失物届け出なのだ…はじめに言ったけど…12時55分。
「どうも。よろしくお願いします。ありがとうございました」
交番を去って目の前の信号につかまりもしたけれど
小走りで会社に戻って時間に間に合いはした。


18時退勤後、飯田橋の遺失物センターに寄りたかったが
小説に気を取られて乗り過ごしてしまった。
数秒早く気づいていれば…。
隣の神楽坂駅も反対行きの電車はホームが違うし、
続く早稲田駅も同様で、戻る気力を失ってしまった。
こうなるともう小説も読めたもんじゃなく、
ただダラダラと荻窪駅まで行った。気分は悪い。

荻窪のOKストアにサラダ菜が売っておらず、
サニーレタスも売り切れていてげんなりした。
ここの店は売り切れが多い。
今夜の予定は生春巻きだったが
適した葉がないとなると無理に作る気までは起こらない。
白菜は売っていたので
余ってる牛肉を使ってスタミナにすることにした。


昨晩はスマホが接触不良で充電されておらず
今日一日ほとんど起動せずに乗り切ったのだが
途中でChromeアプリがあほだから
ページの読み込みが途中までされた後に
 読み込めまてーん
とかなって
そーっすっとガンガン充電減ってくのよな。
 余力を振り絞って通信するね
って。
しかも読み込めないのだから始末に負えない。
通常、10分ほどの連続使用で1%ほど減るにすぎないはずが、
この2分くらいで6%ほど使われたんですねー。
急きょSafariに切り替えたらあっさり読み込めたし。
Googleってそのうちあほの代名詞にならんかな。
PCではChromeつかってないけど
メモリのバカ食いが有名ですね。
さんざん侮られてきたマイクロソフトのEdgeのほうが
今やよっぽど優秀なんだとか。

で昼間にそういう罠にかかって
夕方には充電残り3%、
LINEのメッセージだけ確認しておくかと起動してみたら
これまで全然なかったのに
いきなり問答無用の動画広告が再生され始めてびっくりした。
停止ボタン無いし。
15秒くらい? 勝手に再生されてなけなしの充電食われていった。
しかも動画には僕の嫌いな宮迫が。
そりゃあ戦争なくならないよなって実感できるほど
平和的精神がすりへった。


帰宅後即調理。
もやしだけ先に炒めてとっておいて、
たまねぎ人参白菜牛肉をゴマ油でいためて
ウスターソースとオイスターソースと醤油とみりんと塩こしょうで調味、
水溶き片栗粉でとろみをつける。
うん美味しい。こういうのでいいんだよっていう。

食後はフィナンシェを食べて、
それから妻がどうしても眠たくてしかたないというから
寝室に付き合い風光るを1冊だけ読んだ。


今夜は早めの入浴。
風呂から出てみるとEテレで料理版のソーイングビーがやっていた。
全体を通してはパンと菓子作りがメインらしい。
まだ1回目らしいが、どうにも出演者が味気ない。
今回のお題はケーキ。
作ろうとしているプランの時点で見た目に華やかさがなく、
予想される味も野暮ったい。
イギリスのイメージには合う。
よく言えば気取っておらず、地に足がついているという感じ。
僕はわかりやすく美味しく気取った見た目のケーキばかりやってきたから、
伝統菓子は避けちゃってるんだよな。

0時に寝室へ。
風光るを読み、今夜も民話を読み聞かせて寝た。


2022年04月06日(水) キーケース見つからず、換気扇修復、「殺せ」

晴れ。あったかめ。
弁当は生姜おかかの振りかけに
冷凍の春巻き、サラダだけ。
早くまともに料理したい。


約束のネバーランド、読みはじめ。
脱獄モノに外れなしとは聞くが、まぁ面白い。
ただ比較的最近、辺獄のシュヴェスタ、ヘンタイ・プリズンという
濃い目の牢獄-脱獄を楽しんでしまっていたし、
子どもたちのためにデザインされた箱庭はアメイジング・グレイス、
全体的なネタ出しが7SEEDSを彷彿させるところもあって、
いまいち乗り切れない。

帰り道、最寄りの警察署に電話してみたが
それらしいキーケースは届いていないという。
マジか…。
まだ妻に言えないでいる。
ひょっこりでてきたりしないものか。


換気扇が修復された。
日中に無事業者がやってきて
新品と交換してくれたものらしい。
大きな違いとしては、フィルターが紙で、
これは4ヶ月に一度くらいのスパンで変える必要があるそうなのだが、
スーパーなどで買えるのか
それともメーカー直販でしか買えない品なのかがわからない。
後者だったら汚い商売だなと思うけど
今日来た作業員はそのへん詳しくないらしく
調べてみないとわからないとのことだった。
今度西友で見てみよ。

さて料理しようとしたところで
床に置きっぱなしとなっていたゴム手袋を発見した。
不気味。
作業員さんが忘れていったものらしいが
コロナ禍でもあるし処分したい。
念のため一報差し上げるか悩みもしたものの
時間も経ってるし見るからに使い捨てだし
黙って捨てることにした。


夕飯は妻の希望に沿って、ぶっかけにした。
妻がプレイしているトライアングルストラテジーは
今や最終局面だそうで
飯食べながら続けさせてやった。
食後にはフィナンシェを温め直して食べ、
それから昨日届いていたギフトカタログの製品を開けた。
赤子向けの積み木、シロフォンセット。
実際に使うのは1年以上先になるだろうけれども、
義祖母への香典返しにいただく品としては、
ひ孫への贈り物になる品がいいだろうという企図だ。
ちょっとずつ赤子用の物品が増えていく。

妻のゲームはその後も長引いて、一向に入浴できない。
23時半を前に最終戦を切り上げてもらった。


団地と移民、という本を呼んでいるが、
2009年あたりに、外国人への排斥運動が熱を帯びて、
一部の団体がおこなったデモをが紹介されていた。
在日コリアン、中国人が多く住む団地に向けて、
「出て行け」「死ね」「殺せ」といった声をあげていたそうだ。
言論の是非は置いといて、
「出て行け」と「死ね」まではわかるとして(ダメだけど)、
「殺せ」というのはむちゃだろ…。笑ってしまった。
誰が殺すんだよって話だし
「殺すぞー!」ならわかるけど(ダメだけど)
その辺の人が殺してまわるのを望んでるのだとしたら
究極的に治安最悪だし
あるいはナチス的な大量殺戮をけしかけているのか。
でもその場の叫びとしては成立するんだよな。
「出て行けー!」「死ねー!」「殺せー!」
って
音楽的にはきっと自然な成り行きなのだ。
それでも一部の参加者は思っちゃんじゃないかな。
(殺せ…? え、誰が??)
という戸惑い。


妻は寝室のカーテンが買えないと嘆いている。
電話問い合わせで悶着あったらしい。
工場の生産ラインが停滞しているそうだ。
ちょっと見通しが立たないとのこと。
それについて質問を重ねていくなかで、
どうにも要領を得ない対応をされてしまったようだ。
予算は4万くらいにしてみているらしい。オー…。


月曜日のたわわが話題になっている。
日経だかなんだかの新聞に一面広告が打たれたんだとか。
相変わらずTwitter上では両陣営の議論が噛み合っていない。
どっちの意見が正しいだの間違ってるだのじゃなく、
噛み合っていない。
バカバカしいったらありゃしない。


民話読み聞かせは今夜もモロッコ。
二人の樵が山に来て
ライオンの足跡を発見して
それにびびった一人は山を登り
もう一人はそのままその辺で木を切った。
そしたらライオンがあらわれて、彼を食べようとする。
しかし待てと。
俺には脳みそがない、食べても美味くなんかないぞと。
ライオンはライオンで、
いや嘘をつくなと。
脳みそのない人間なんかいるものかと。
するとこの男は、
いやいや嘘はつかんと。
もし俺に脳みそがあったら
ライオンの足跡を発見して
なおその場にとどまるなんてするわけないと。
そして脳みそのある人間は山の頂上に向かったと。
……これを聞いたライオンは、山を登っていった。
モロッコ民話面白い。
よくできてる。そして倫理観が危うい。


2022年04月05日(火) 嫌いな歌、1秒の愚か、モロッコ民話

晴れ。
朝は肌寒いけど春の陽気は感じられる。
しかし弁当を鶏の照り焼きにしてしまったので、
煙がモワモワ出る。
窓を開ける。寒い。
改めて換気扇の威力を知る。
大変働いていたのだなあ。


昨日の夜立て続けに地震があった。
震度2や3程度だったが、震源地が関東とのことで、
一部では首都直下型地震の初期微動だとか騒がれていた。

江戸時代の流れを見ると
徳川幕府の歴代将軍はあの手この手で安定を計っているのに
結局は度重なる天災にぶち壊されてしまっている。
大地震は起こりうるものだと思っといたほうがいいんだろうな。


NHKの朝ドラ、代々主題歌が気に食わないのだけど
今期はとくに僕の大嫌いな歌声がばってきされていて滅入る。
ほんのわずかでも耳に入るとずっと残るんだよな。
夕方脳内でリピートされちまって不快。
これも有名人への中傷にあたるのかな……。
反吐が出るほど厭わしく具合悪くなるのだけど……。
本人が知ったらショックだよなあ。
でも歌声に加えて歌詞も表現しようとしているものも
何もかも疎ましく煩わしく鬱陶しいんだよなあ。
あんなの売り出すなよっていうのが一番か。
「嫌い」はまごうことなき純粋な自己本来の心だから
これはこれで大事にしたいのだ。
誰にとっても開かれている、
しかし誰が読むわけでもないこの日記で嘆くくらいは許してほしい。


夕飯はマグロ丼。
2割引きになっていた本マグロを
醤油とみりんの漬け汁に漬けておく。
米が炊けるまで。
その間にフィナンシェの生地を用意した。
なにしろ卵白も無塩バターも余っているので。
今回は久しぶりにプレーンのものを
ガシガシとこしらえて一旦は冷蔵庫で休ませた。
あまりの時間でほかの家事などをする。
キーケース、見つからない。
ちょっとやばいかもしれない。

今日のマグロ丼には完熟のアボカドを足した。
前回はウールガイの味が強くてよくわからんかったのよな。
今回はすさまじい美味しさだった。
まず本マグロのトロの味が強烈。
その旨味を口の中にめいっぱい広げるアボカド。
そこへ海苔とわさびのアクセントが効いて、
味噌汁をすするともう…タマラナイ。
本マグロが割り引かれて500円、
アボカドが200円だから
外食に比べれば圧倒的に安いとはいえ
普段の食卓と比べるとやや割高。
でも月イチくらいでやりたい。

食後すぐフィナンシェを焼いた。
210度で5分半、190度で8分。
しかし色づかない。
様子を見ながらもう3分程焼いた。
色は薄いが焼けている。
だいぶ柔らかいが型から取り出せはする。
メチャウマ。
プレーンは久々だったけど…びっくりするなコレは。

さらに残った生地を追加で焼く。
今度は上手く焼けていた。


入浴後、警視庁の遺失物登録リストのページで
キーケースを検索してみた。
便利な世の中だなあ。
なかったけど…。

こんなことになるならキーケースに
名前と住所を書いたメモを入れておけばよかったと
思った一秒後にその愚かさに失笑した。
今のところは失くしただけで、
誰かに拾われたところで
悪用されようがないのが救いだな。

1秒の愚かといえば
妻とベビーカーについて話していて
でも僕はベビーカー使ってた記憶ないんだけどなあ
と思ったのだった。
まったくもって当たり前だ。


妻がわがままし放題であるので
今後はきみを無視して
お腹の子だけ可愛がってやろうかなとうそぶいてみた。
「どうやって?」
「お腹の方にだけ語りかける」
「いやだなあ」
「君のことは母体と呼ぶ」
「産む機械だなあ。それほんとヒドイなあ」
二人で笑っているのだが
よそには聞かせられない冗談だ。 


民話。モロッコ。くるってた。
商人が神に請うてようやく授かった少年。
でも放蕩で金を使い尽くしてしまう。
生活が困窮して、母親は
「この子を魔術使いにでもしなければ」
と画策する(働かせろよ)。
母親は貢物を用意して少年を魔術使いのもとへ弟子入りさせる。
だが魔術使いは何も教えない。部屋に閉じ込めておくだけ。
少年は暇を持て余し、部屋の書物を片っ端から読んでいく。
それで魔法使いの魔法をすべて覚えてしまう(カンタンだな!)。
だが魔法をこっそり覚えたことが
魔法使いに知れたなら大変な目に合うわよと女中が教えてくれる。
そして少年は魔術使いのもとから逃げ出す(自分から弟子入りしておいて)。
母親のもとに帰り、金銭を稼ぐため騾馬を売る提案をする。
向こうの方へ歩いていけば騾馬が拾えるからそれを市場で売って、と。
母親は言われた通りに騾馬を売りようやくまとまった金を手にした。
実のところその騾馬は、魔法で化けた少年なのである(詐欺罪)。
ところがその騾馬が、追ってきた魔法使いに捕まってしまった。
少年は様々な動物に化けて逃げる。
魔法使いも同様に化けて追う。
最終的には王宮で、少年は魔法使いをみごとに殺害(ひどい)。
少年の叡智と勇気をたたえて、王は美しい王女を差し出し、
二人は結婚しましたとさ。なめとんのか。おっと失礼。


2022年04月04日(月) 朝からいらいら、ベビーカー話し合い、自由と責任と運命


寒い。雨。部屋の中がくらい。
Eテレの朝は今日から新編成となるのか、
見慣れない企画をしていた。絵を描いていた。

弁当は電子レンジのシュウマイと、
醤油みりんめんつゆをひと煮立ちさせて野菜あげを浸したもの。
早く換気扇復活してほしい。
月曜なのにゴミ箱がすかすか。
通常なら週末にわんさか溜まるはずの生ゴミが出ていないから。
まぁ楽だけども。

炊飯器の電源が昨晩からつけっぱなしになっていた。
というのも、この炊飯器は洒落ぶって、
操作ボタンがすべてタッチパネルになっている。
でこのタッチパネル、度々反応しない。
指に付着した水気や静電気などの問題ではなく、
何をどうしてもダメなときはダメ。
調べても同じ悩みを持つ購入者は少なくないようだ。
メーカーも仕様だとして開き直っている。
タッチパネルをやめろよ…。
物理ボタンならオンオフすら効かないってことはまずない。
タッチパネル式はちょっとした不具合が致命的にダメで、
商品として売り出せる品質に達していない。
とてもとても苛立たしい。
それこそ物理的に電源ケーブルを引っこ抜けば動作は当然止まる。
だがもう一度差すと、あろうことか保温モードになるよう記憶している。
それを解除できない。
ただ何時間か待てばこのアホパネルも反応することはわかっている。
だから昨日は苛立ちながらいったん放っておいたのだが、
そのまんま朝を迎えてしまったわけだ。
うーん間抜けだねえ、で済むかアホボケカス。
なんでこっちが反省しなきゃならんのだ。
と思ってひたすらむかむかした。

むかむかといえばこの前買ったバターケース。
こいつは密閉することだけが役割なのに
それが果たされていない。
蓋がすぐに開く。なんだこいつ。
じゃあタッパー…ジップロックでいいだろ…て話だ。
こいつ…こいつは本当になんなんだろう。
ケース、っていうならまだわかる。
ケースではある。
それでも蓋は閉まっていてほしいが、
密閉度が高くなくともケースはケースだ。
でもお前はバターケースなので…。
憤懣やるかたない。

そうして家を出てみても外は冷たい雨だし
イヤホンは断線。
朝から苛立ちがやまない。
九段下に着いてからコンビニに寄りゃあレジが混んでいる。
モップがけをしていた店員が随分遅れてレジカウンターに加わろうとする。
しかし客の列に阻まれて進めない。なんだこの店。
いやに時間を食って店を出ると9時27分。
大通り一本挟んで会社は目の前とはいえ遅刻しかねない。
しかも信号が変わらない。長い。
そういえばこの通りはストレスフルなんだった。長い。
ようやく信号が切り替わりビルへと駆け込む。
雨で足元が濡れる。
遅刻はしなかったが気分が悪い。
ものすごく悪い。

あとキーケースが見つからない。
家にないのだから
ウッカリ会社に置き去りにしてきてしまったものかと思われきや
まったく見つからない。
しかし家のどこかにある可能性が高まったともいえる。
コレに関しては自分のせいだししっかり省みよう。
焦らない焦らない。


夕飯はレトルトカレー。
煙が出ないから。
早く並の料理がしたい…。


妻はトライアングルストラテジーが最終局面とのことで
随分と込み入ったラストバトルに苦戦していた。
さきほどお義母さんと電話したらしく、
何を買ってもらおうか、
とりあえず来々週末に一緒に百貨店に繰り出す予定を立てたとのこと。

その流れもあって、ベビーカーについての話し合いをした。
使いやすさを重視する妻に対して、僕は安全面の追求を論じた。
ベビーカーを使う時点でリスクがある。
この世に自動車というものがなければいいが、あるので、
ガードレールのない歩道にはキケンがつきまとう。
あらゆる道具は身体を延長させる。
スポーツをしている、してきた人間にとって、
身体感覚の延長は馴染みがある。
しかし僕ら夫婦のような人間には、この認識は難しい。
ましてや妻は体力の無さに加えて機転がきかず、
そういう手合が赤ん坊を乗せた大型のベビーカーを
車の走るすぐ横でどれだけ安全に操れるものか、疑わしいのだ。
こちらに自責が問われずとも大小の事故は起こりうる。
これが、赤子が1歳や1歳半ともなれば
段々と日常的な危険性も減ってくるものだが、
半年やそこらでベビーカーに乗せて
外へ引っ張り出す機会は、僕は避けたい。
日常的な散歩なら抱っこひもで十分なのだ、
用途をシミュレーションしてみれば
産まれた当初からベビーカーがなくともいいだろう、
と長々論じた。
安全性重視については呑み込んでくれたようだが、
じゃあ取り回しし易いベビーカーにするね、
と話をまとめているあたり、論旨の勘所はつかめていないようだった。

アルベール・カミュは随分な自動車嫌いだったそうで、
他の手段があるなら自動車に乗ってこなかったし、
自身が運転する際には決して急がずとろとろ走らせていたようだ。
自動車事故で死ぬほど馬鹿げた話はない、という言葉を残してさえいる。
である日、友人だかなんだかの車に乗って移動せざるを得なくなって、

事故にあって死んだ。

これは大変強烈なエピソードなわけだけど
僕もあんまり 車が車が と言ってるの、
それこそが怖いんだよな。


ああ、「運命」の話もした。
社会の発展…正確には欧米の目指す民主主義的な近代社会の実現によって
民衆に自由が獲得されていくごとに、
選択が迫られ、責任が発生し、後悔の種が蒔かれる。
この無限の選択肢は現代の人々を日々疲弊させきっている。
絶えず責任逃れに窮して後悔に怯え、大きく息を吸い込めないでいる。
インドのカースト制は近代的な視点から見れば問題だらけで、
諸外国を知る若者たちは職業選択の自由を叫んでもいるが、
この文化に親しむ現地人や宗教者、研究者からすれば
素晴らしくよくできた社会制度でもあるという。

僕は
「自分への言い訳」
こそを、当世の地獄の本分であると見定めている。
すると天国には
「自分への言い訳」
がない。
完全に調和のとれた世界では、
あらゆる言い逃れの余地が無いのだ。
自由にはどうしたって責任がつきまとい、
責任の裏には言い逃れという影が常に落とされる。
不自由には責任が求められない。
奴隷は仕方なく奴隷をしているのであって、
どんなに日々を嘆き世を呪おうとも、それは彼のせいではない。
だが奴隷制が解放された状況で尚もその境遇から脱しようと努めないのなら、
彼は自己責任を追求されてしまう。

仕方ないと受け入れる、
自身の境遇を受認するにあたっては、
選択の余地がない不自由のほうが都合いいことがある。
おかげで吐ける毒もある。

無限の選択肢は、オモテ面では民主主義の綺麗事に飾り立てられるが、
ウラ面では大量消費社会が支配する耕地となる。
大量消費社会と「不安」の心理は相性がいい。
「不安」あってこその大量消費社会とすらいえる。
ここには論理の転倒が仕掛けられている。
「満たされるとは素晴らしいことだ(幸福モデルの設定)」
「あなたは満たされていない(渇望の惹起)」
が円環的に結び付けられて
必要でないものを必要と思い込む。
絶えず刺激される”不安感”からより良い安寧を求めるようになる。
新製品には”差異”がいる。
というより”差異”さえあればモノは新製品となる。

人々が選択の余地なく
先祖代々から受け継がれた道具だけを使い続けては、
消費社会は困ってしまうわけだ。
その場合においては、様々な不合理な現実もある。
古い、ぼろい、ださい、手入れが手間である、……
しかしトータルで見ればよっぽど健全だと思う。
なにしろ自己責任の余地がなく、後悔が発生しない。
究極に合理的だ、とすら思う。
目先の合理性を追求して人々の精神が圧迫され
いずれは自殺に導くような現行の社会を、
僕は合理的だとは決して認めない。

アメリカでは
精神科医にかかるメンタルケアが社会に普及しているのに
日本では未だに精神科医の効果的に使われておらず嘆かわしい、
というような記事を読んだ。
まぁアメリカさんはそれでいいかもしれない。
自由と自己責任、目先の合理性の高速回転、
高度なソリューションの社会でやってってください。
しかし日本には全くそぐわない。
折口信夫の風土による文化的価値観解析、
いろいろと批判されてもいるようだけれども
大筋において僕は支持する。
日本人には受容、受忍が合っている。
選択肢は無ければ無いほどいい…とはいいすぎだが、
あればあるほどいいわけじゃない、と僕は強く主張する、
不自由の価値を見直しておくれ。
「運命の出会い」は地に足の着いた自由とかけ離れた天空にある。


今夜の民話読み聞かせはパキスタン。
世界のどこの国もすーぐ美少女を登場させて結婚させたがるな。


2022年04月03日(日) 修復職人、実家バウンサー、まぐろラーメン

9時に休日トースト。
それから早く家を出たいのにEテレの番組に見入ってしまった。
修復職人。
修復といえばギャラリーフェイクの藤田が想起されるが、
主には骨董品を手がけているらしい。
先代から受け継いだ技術を当代は継承し、
さらに息子も同職に携わっている。

仕事場はマンションの一室で、
貸主に許可は得ているのか疑問に思った。
多くの賃貸では、居住以外の用途を制限しているはずだ。
接客業ではないにしても、薬品の取り扱いなど多くあるだろう。
でもまあいいんかな。黙認か。

陶器を熱してから液状の樹脂を流し込む。
すると樹脂がヒビ割れに垂れ込んで溝を埋める。
不思議だ。
どこでどう培われた技術なのやら知れない。

職人の業界に通じる用語はかっちょいいのが多い。
今日心に残ったのは「呼び接ぎ」。
ある磁器から欠けてなくなった部位を、
他の磁器や物品の欠片によって補う。
つまりは欠片がお呼ばれするわけだ。
素敵な表現。好き。

自分が新作を…ゼロから作ってみたくはならないのだろうか。
おそらくは長年を通じて、作品への畏敬、
先人への恐れ多さを積んできたのだろうけれども、
それだけに、やてみたくはならないのだろうか。

できあがった修復品は文句の付け所がない見事なできで、
ツギハギのあとなど微塵も見られなかった。

図書館ではたまごクラブと、
取り寄せをお願いしていた本を二冊借りた。
OKストアで買い物して帰宅。
妻は雑誌を喜んでいた。
「雑誌が借りられるって、いいよね。
返すから邪魔にならないし」
「そうそう、2週間という期限もちょうどいい」
「うん。最近ね、ちょっと何もしたくないなあってときに、
なんとなく手に取れるから、雑誌に大分助けられてるんだよ」
「何もしたくないけど何かしなければって心境にもぴったりだね。
たまごクラブなら。読んでるだけで、やることやってる気になれる」
実際、図書館でもっといろいろの雑誌を借りてきてもいいくらいだ。
まぁ借りてしまった分だけ他の利用者から機会を奪うことになるから
結局は最低限しか借りないわけだけど。

改めてドライブ・マイ・カーがろくでもねーという話をした。
単品で、ただこちらが個人的に気に食わない、
というまでなら話はシンプルだけれども、
なまじっかアカデミー賞なんかで評価されやがって、
するとあの作品で描出された主題が
世間に肯定的に認められるということになる。
男の女々しさ、情けなさが認められることになる。
強がらなくていいんだよというしょうもない甘言。
おっさんが若い女の胸に抱かれて弱音を吐く…なんだこいつ…。
聖闘士星矢を読め。

いやそうして当たり前化されてきた男性的規範からの
脱皮を遂げたんでしょうよ、ものすごい低い次元において。
全然聖闘士星矢的な美徳を越えられてないと思う。
都合がいいだけで。
あんなのは優しさとか許容とか良心じゃなくて
目先の甘やかしに過ぎない。
全然世のためにならない。
とふいに激した。


洗濯物を干してから風呂へ。気持ちいい。
しばらく読み返していた三島由紀夫の純白の夜が
もうじき終わる。
この作品、比喩表現で戯れている。
子供が引き合いにだされる表現が多い。
あんまり高価な土産物に引け目を感じる子供のように、とか。
みごとだよなあ。

昼飯は炊き込みご飯。
火も油も使わないで済む。
でも炒り卵は用意した。
それから味噌汁で暖まる。
いつもは休日の昼飯にはサラダを用意しないが
昨日に続き今日も夕飯を外でとるつもりでいるから
今日の昼は多めのトマトとサラダ菜を共した。


しばしダラダラと過ごした後、掃除。
あちらこちらと片付けていって
掃除機をかける。
本来ならば冬物をしまい込んでいくつもりが
昨日今日の思わぬ寒さで断念せざるを得なくなってしまった。


一通りの準備を終えて、14時半過ぎに妻と家を出た。
西荻の三井住友で預金。
それぞれ335万円。
二人合わせて現金総資産は1200万円ほどとなった。
もう家買えんじゃねーの、と妻が言う。
たしかに買うだけならできそうだな。

高円寺からバス乗って25分、16時に実家着。
とりあえず麦茶を出してもらい温まる。
こちらからも、昨日仕入れた和ハーブティーをやった。
おしゃべり好きの母親は問わず語りに
次から次へと話題を紡ぐ。
ほとんどしゃべりっぱなしで、
僕は半分聞き流しながらたまに相槌を打つ程度だから楽だが
妻はかえって大変かもしれない。
こちらからは娘の名前候補を提示した。
いずれでも良いようだった。
その流れで、名付けに関する話を聞いた。
僕の名前にある吉の字は三兄弟に共通している。
長兄は当初、父親の意向で万吉と名付けられるはずだったが
母親がそれだけはやめてくれと懇願して別の名になった、
という話は知っていたが、今日聞いたことには、
万吉の名は一度は役所に提出してしまったらしい。
出生直後に。父が。勝手に。
で翌日大騒ぎの末、なんとか届け出の訂正を聞き入れてもらったとのことだ。
めちゃくちゃだな。
また、吉の字は父が世話になっていた兄貴分…
本筋のヤクザモンで、この人が
お前はこっちの道に入るなと強く諭してくれたから
父は極道にならずに済んだ、だから恩人なのだという…
その人から拝借したのだとも聞き知っていたが、
その名は今回始めて聞いた。
吉三郎といったらしい。
ずいぶんとこれはまた…。

母親はコーヒー党で
普段は茶を気に入ってないらしかったが、
今回やった和ハーブティーは好みのようだった。
やはりアマチャの甘みが面白い。
ティーパック10袋で2000円弱と割高ではあるが
ちょっとした珍しさが面白いし追加購入を決意した。

18時においとましてまぐろラーメンへ。
数年ぶり。
しかし客がいない。一人も。
いつも行列をなしていたものだけれど…
やはり営業形態が夜向きなのだろう。
今はコロナ禍で20時までの営業としているようだが、
長い間、20時くらいから深夜の3時近くまでオープンしていたのだ。
ただ単純に、空いている分には助かりもする。
僕はラーメンの大盛りを、妻はラーメン丼を注文した。
ああ美味しすぎる。
唯一無二の味。
こんなに美味しいラーメンはない。
とびっきり濃い目のラーメン丼も…
見た目は残飯のようなのに旨味の塊。
ラーメン丼を食べると
ラーメン丼を注文しておくべきだったと後悔してしまう。
あっという間に食べ終わり席を立つ。
気づけば店内は満員になっていた。
なんだ今もやっぱり人気店じゃないか…。
このタイミングでマスターと奥さんが挨拶をしてくれた。
何年ぶりに来ても、必ず声をかけてくれる。
中学生の頃から通い始めて、とうとう結婚したし、
今度子供が産まれるんです、と報告できて嬉しかった。

店を出てバス停へ向かう。
まぐろラーメンを食べている時間は夢見心地で、
ほんの一瞬で終わってしまった。
体感的には一口だ。
恍惚として雨の中を歩く。

帰りのバスでは妻が寄ってしまった。
高円寺駅で休憩。
上島珈琲に入り、これからの話などをした。
購入品の中でベビーカーは重くのしかかる。
数万円する買い物…という費用もさることながら、
今からどの製品がいいものか調べなおして、
比較検討して、下見して…というタスクが、端的にいって面倒だ。
もらうのならば選択の余地がないから楽だった。

上島の会計は1000円。
昨日今日でそれなりに散財してしまった。
なにしろ久しぶりだからいいけど。
いいけど…やっぱ使いすぎたな。
荻窪着いてからさらにバス。
昨日と同じく歩くのを諦めて。
妻の不調に加えて雨だしバウンサーも持ちっぱなしだし。

帰宅は20時。
なんだかすごく疲れた。
洗濯物は乾いていない。
乾きそうなところへモノを入れ替えていった。
しばしくたばった。
スーパーマリオコレクション。
おおお懐かしいぜ。
ちょっとした効果音や音楽に感じ入る。
マリオブラザーズ3をプレイしてみた。
一面ごとがやけに短く感じた。
ボリューミーなゲームに知らぬ間に慣れしまってんだなあ。
続けてツインビーもプレイしてみた。
ベルを撃つと色が変わる仕掛けが懐かしくってたまらない。
懐かしさだけでプレイしているから5分で満足。

妻と交代して、僕は借りてきた本を読むことにした。
韓国の小説。四隣人の食卓。
共同体とか隣近所とか特異な生活とか、
いま僕が興味のある領分で満たされた作品と思われるのだけど、
2ページだけ読んでみてなんとなく気分がのらない。
そもそもあっちの登場人物名全然覚えられないし序盤はかったるい。
で、小説は諦めてもう一冊の本を読んだ。
団地に関する本。
面白い。
今でこそ古臭い昭和の象徴で、活気がなく、
孤独な高齢者の生ける墓場のような場所となっているが、
かつては全く逆で、団地中がまるごと家族のような結びつきがあり、
いつも喧騒にまみれていた……。
著者の経験に根ざしてもいる記述には団地の息遣いが感じられる。

21時過ぎ。動けない。
動けないが風呂には入りたい。
入りたいが動けない。
「ミュークルドリーミーがないから動けない。
ちあふるタイムがないからやる気になれない」
と呻くと妻がちあふるタイムの真似事をした。
その声とともに動いた。
「これで動かないと、
ちあふるタイムを否定してしまうことになるからな…」
「便利だなこれ」


入浴後、バナナジュース。
生のバナナ1本と
冷凍してあったバナナ1本をブレンダーにかける。
いつもは冷凍バナナは事前にやや解凍するのだが
今回は試しにそのまんまガリガリとやってみた。
ちゃんと砕かれジュースになる…が、
刃が傷つきそうだから今度からはやめておこう。
でも冷え冷えのめちゃうまバナナジュースに仕上がりはした。


23時からしばし一人の時間をもらった。
1時間ほどかけてトキノの推敲を進めていく。
推敲は文を書き進めるわけじゃないから
かける時間の割に停滞感に見舞われる。
でもこれで、2章までは完成した。
全体量の3割くらいか。


寝る前に風光るをちょっとだけ、
第一巻だけ読みきった。
これ面白くなるの、と妻。
幕末の時代の動きを追っかける面白さがあるよと答えた。
僕の感想を正直に言えば、
この漫画の基軸である主人公と沖田総司の
鬱陶しい掛け合いさえなければ面白い作品だ、と思う。
というか皆いいキャラしてるのに
主人公セイと関わるやいなやナヨナヨしい種無し野郎になるのが惜しすぎる。
最後までデレない土方が良心。


新たに借りてきた民話集を読み聞かせた。
スラブ民話集。
イスラム文化圏の国々の民話がぎょうさん載っている。
今日読んだのはちょっと凄惨だった。
神に祝福された美少女が
口を開く度にジャスミンと百合の花びらがこぼれる
というのは途方もなく素敵だったけれど
これに嫉妬した叔母は彼女を砂漠へと連れ出して
水と引き換えに彼女の右目をえぐりだす。
さらに同様に、左目もえぐり出す。
でまぁ最終的にはこの叔母の娘の両目もえぐり出されて
その目玉が祝福された美少女の方につけられて
王子様と結婚してハッピーエンド☆みたいな終わり方してるんだけど
叔母とその娘がどうなったかを思うと…。


2022年04月02日(土) 代官山ベビー用品、ダセえ渋谷、神保町パエリア

9時過ぎまで惰眠を貪ってやるぜという
昨晩の意気込みむなしく6時半に目が覚めてしまった。
肌寒いが晴れていて気持ちがいい。
だらだらと原神をやった。
今はもう螺旋をクリアするだけ。
しかるのち洗濯。
9時前に休日トースト。
OKストア行って帰宅、洗濯物干して10時。
風呂入って読書。
11時過ぎから飯作って11時半に飯。
焼きうどん。
毎度のことながら美味い。

12時に家を出て荻窪に向かう。
妻はあちこちの花を指差してはしゃいでいる。
「そうか、きみは春がうれしいんだ。
花が咲き始めたから」
「うんうれしい。春好き」
「こういう妻を持つと、夫は幸せかもしれない」
という僕の褒め言葉も耳に入れず、
妻はあの花はこの花はと矢継ぎ早に解説をたたみかける。
しかし僕は僕で解説の一切を耳に入れてなかった。


荻窪からは中央線で新宿へ。
山の手線で渋谷へ。
東横線で代官山へ。
久しぶりの代官山は、降り立った瞬間にもう
フレッシュな陽の気にあてられた。
知った街を知らない風に、うすのろに歩いて行く。

気まぐれに立ち寄ったunicoではカーテンと照明を見た。
売り場は変わらず魅力的だけれども
今では家に必要なものがなかなか揃っているので
以前ほどには惹かれずに済む。
店を出たところで不動産業者から電話。
換気扇の修理は次の水曜日となるようだ。
それならまだいいか。水曜日に決着がつくのなら。

洒落た道を通り抜けて歩道橋を渡り、
今日の目当てであるベビー用品店に入った。
マールマール。
店内の全品がとてつもなく可愛い。
デザインがいいし、
モデルに商品を着用させた写真も上手い。
くまを模したおめかし服が妻のねらいだったようで、
これはたしかにモノスゴク可愛かった。
とはいえ、新生児サイズにつき
着させるのはせいぜい2,3回だという。
それで値段は1万以上する。
この店は駅前であるし、
また後で来ようということで、いったんは出た。

続けてデンマークのキッズ服専門店に入った。
しかし僕は腹の調子を壊してしまい、
やむなくアドレス代官山でしばし休んだ。
遅れて妻もやってきて、
それから施設内の店にいくつか入ってから、
喫茶店に行こうと八幡通りに出た。
昔何度も利用した珈琲店があったはずだが見当たらない。
5分ほど探したものの、どうやら閉店してしまったようだと諦め、
まぁ代官山ならいくらでも店はあるからと路地に入り、
古い教会を抜けて狭い階段を降りたところで、
和ハーブティーというのを売ってる店を見つけた。
「入る?」
「入る」
店内は狭かったが、どうやら奥ではマッサージを施しているらしい。
どうやらマッサージが本業で、
肉体を総合的に健康にしていくにあたり
茶にも目をつけたということのようだ。
試飲ができるというから4つ試させてもらった。
はじめのブレンドが僕には衝撃だった。
漢方のような香りに反して飲みやすく、
口の中で噛むように飲むと豊かな甘さが広がる。
砂糖を入れているわけでもないらしい。
ブレンドに含まれているアマチャの茶葉が、
砂糖よりもずっと甘いのだそうだ。
そして身体が芯から温まる。
疲労が快復していくような心地にもなった。
続く二杯目はミントの風味が強く、好みではなかった。
三杯目はヨモギ。
茶なのにヨモギ団子の味がして面白かったが
ただただヨモギ団子が食べたくなる。
四杯目は一杯目と似通っていたが、甘さがない。
僕は断然一杯目推しだった。
だがちょっとだけ高い。
妻は次の週末に遊びに行く友達の家への手土産品として、
あまり高くない四杯目のティーパックを三袋買い、
さらに明日僕の実家へ行く手土産として、
一杯目のティーパックを十袋分買った。
「ネット通販はしてないんですか?」
「してない…んですが、リピーターのお客様には、
電話での注文を受け付けてはいます」
なるほど、それならばあるいはまた買ってしまうかもしれない。
そのくらい気に入った。


それからSNSカフェという世にも恥ずかしい店を通り過ぎ、
アドレスに面した交差点へ戻ってきて、
妻はタイル専門店に寄りたがった。
僕は外で待っていたが、妻は15分ほど吟味して、
店の人と語らってもいた。

どこのカフェに入るかは決まっていなかった。
昔と違い今は喫煙席を探さなくてもいい。
ある意味ではどの喫茶店でもカフェでもいいわけだ。
「もう、今日は、いいぜ。パンケーキ屋に入っても…」
僕の誘いに妻は乗った。
まったくいつ代官山に来てもパンケーキ屋には
若い客が大勢立ち並んでいたが
今日はうっかり入れそうだった。
果たしてノータイムで着席。
妻はキャラメルバナナにバニラアイスをトッピングして、
僕は黒蜜抹茶にした。
店員は一人で切り盛りしている。
はっきりいってこ汚いおっさんが…
一人でパンケーキを焼いて注文を聞いて配膳して会計している。
店内には多くのジャニーズグッズがあった。
こんな店だとは思いもしなかった。
しかしなんであれ、パンケーキさえ美味しければ問題ない。
実際美味かった。
しっとりふわふわする。
妻は幸せだ、幸せだと繰り返していた。
ずっと仕事が辛く、家にいるばかりの生活にも飽き飽きで、
それがこのバカ甘いパンケーキを食べたときに
数直線の真反対の多幸感に見舞われたのだろう。
今日は天気もよく、二階の席から見渡す代官山の町並みは
いかにもデートの風情で
くさくさした気分を吹き飛ばしてくれる。

向かいの店にはベランダのように外にせり出した
半テラス席とでもいえるスペースを備えたカフェが見え、
あの外に向かって席を設置した空間は
ぜひとも未来の我が家にほしいと思った。

結局マールマールで1万する新生児用の服を買った。
本棚にとっておけるという箱も可愛らしい。
いよいよ7月が楽しみになってくる。
店員さんから刺繍はいかがするかと問われたが
まだ名前が決まっていないからとその点は辞した。
どこもメルカリで売り買いされないように
いろいろ対策考えてるみたいだね、と妻は憶測していた。
「もちろん、ここの刺繍がそのためとは限らないけどね」
僕は直感的に、これはアリだ!と思った。
メルカリ云々を抜きにしても、
商売として正しいやり方をしていると直感的に思った。
マールマール、応援していきたい。

妻が体力に余裕ありそうだったので
やや足を伸ばしてこどもBeamsとやらに寄ったり、
Familiaというベビー用品店に寄ったりした。
見聞は深まる。
そして見れば見るほどマールマールの見事さが際立っていく。

今日は二十代前半にさんざん来ていたはずの代官山の、
これまで縁のなかった一面を満喫できた。
あと店が点在して生きているの、スバラシイ。
地の力のある街という感じだ。やっぱ好きだな。


東横線で一駅、渋谷に着いて、
こちらは一転ツマラナイ街に堕している。
それでも今日は割り切って、
スクエアという商業施設に踏み入ってみた。
繁盛している。
エレベーターはかなりの混雑。
10Fがライフスタイル雑貨だからと昇ってみると、
なんてことはない、フロア一面が東急ハンズだった。
今どきありがちなつまらねえ施設だなと心底軽蔑した。11Fは半分がTSUTAYAブックショップとスタバ。
もう半分が、なんて名前だったか、
たまに見かける和のデザインショップ。
こちらは洒落た雑貨がいくつもあった。
2万円ほどする提灯にはかなり惹かれた。
妻は赤黒い漆の豆皿に目をつけたが、
これから洒落た食卓は激減するからと諦めてもらった。

続けてヒカリエにも寄った。
ヒカリエはオープン当初に来て以来
ずっと不人気のイメージがあり
判官贔屓の心境で応援しているのだった。
ビル内を歩いているとすべてに
「何かのカンチガイで」とつけたくなる。
入っている店の一つ一つにはそれなりに愛着あったりする。
コンロンショップが潰れたのは残念だったけれども
相変わらずオッと思われされる品が
延々歩いていれば見つかりはする。
今回はたまたま見かけた三つ足のマグカップが可愛らしく、
…まるでナメック星の宇宙船のようだったけれども
とにかく可愛らしく、
妻は友人に買ってやるかずいぶん悩んでいた。
「1コ買ってあげようかな…どうしようかな」
「マグカップでセットにしないのか…」
「やっぱまずいかな」
「あげる名目による」
「持ち家祝い?」
「向こうは夫婦で家買ってるわけだから…」
「やなんだもん、私は離婚しろって思ってるくらいなんだから」
結局買ってはいなかった。


渋谷駅は長い工事を段階的に終えつつあり
従来の鉄鋼くささを廃した近未来的な姿を表している。
ものすごいダサい。
近未来風って一番ダセえからな。
光の放射とか敢えての黒とか
計算しつくされた幾何学模様とか
空間の使い方がことごとくダセえ。
ダセえ、ダセえと夫婦で毒づきながら渋谷を去った。


半蔵門線で神保町へ。
出口からものの1分で目当ての店に到着。
オーレオーレ。
妻はここのパエリアをとてもひいきにしている。
しかし来るのは10年ぶり近くなるか。
この店にはいわゆる「クセが強い」従業員がいる。
だが妻はその覚えはないという。
今日のそのオジサンが接客してくれた。
テキパキとオーダーをうかがいながら、ボケてくる。
僕は今も昔も相手にしない。
不快なわけではなく、
無理に付き合わないことでこちらなりの礼を示しているのだ。
ドリンクは僕はウーロン茶を、妻は店員に相談の上、
ノンアルコールのスパークリングワイン…
白ぶどうジュースにガスを入れたもの?を注文した。
フードは4品注文。
3品にとどめるつもりだったけれども、
店員の強い勧めに従ってアラカルトを足した。
まずはタパスの盛り合わせ。
タルタルソースでいただく海老、
クミンなどスパイスの効いたトリッパ、オムレツ、
マカロニサラダ、冷製ラタトゥイユなどいずれも美味しい。
レバーパテにはマスタードがよく合った。
家庭で食べない、店だからこそ食せる味というのがうれしい。
二皿目が店員おすすめの、マッシュルームのアヒージョ。
アヒージョといえばむやみに油まみれで
一口目より後はウェップとなるのが常だったが
今回は後味もよく過去最高のアヒージョだった。
何より、かるく焼かれたバゲットに
このアヒージョのガーリックオイルを浸すと実にたまらない。
たまらないからバゲットはおかわりをした。
追加の方は焼かれていなかったがそれでも十分美味しい。
ぺろりと平らげてしまう。
三皿目、子羊のロースト。
これも店のものが食べたくて仕方なかった。
分厚く柔らかいローストに、甘めのバルサミコソースと、
付け合せのグリル野菜が合うこと。
そして4皿目がパエリア。
店員さんが取り分けてくれた。
米は一部におこげをまとわせながらも、水分を多分に含んでいる。
トマトと魚介の旨味がたっぷり染み込んでいる。
美味しい。感服。
コロナを警戒して長居はしなかったが
総じて大満足だった。

会計は7000円弱。けっこういったな…。
でもいいのだ、たまにだから。

満腹感に心地良く夜風を浴びながら
神保町から九段下までを歩く。
日常的に目にする町並みとは打って変わって
今夜の神保町は美しかった。
ほんと日常嫌いなんだな。
でも日常あっての非日常だから、
とても日常を大事にしている方だとも自負している。

帰りの電車で、セトウツミを最後まで読み切った。
荻窪駅に着くまさにその瞬間に最後のページを読みきった格好。
それからバスで帰路。
環八をよぎるだけで数分待たされる。
歩いた方がマシだが妊婦連れでは仕方ない…。仕方ないのだよ…。

20時過ぎに帰宅。
くたくたのテイで、何はさておきシーツを取り込み
ベッドに横たわれるよう用意をした。
僕もしばし休んだ。
カービィボウルを完全クリアした。
いずれの面も、20年前の記憶で
どう攻略すべきか覚えているのは我ながら驚がくだった。
また一方で、当時どれだけ考えても
それ以上の最適解が得られなかった攻略法に、
今回アッサリ新ルートを開拓できたりして感動した。
まぁ単にやり直しできるから大胆な真似が試せるってわけですが。


入浴前に兄からメッセージが届いた。
今日実家に置いてきたというベビーカーが、
なんとそのタイミングで壊れてしまったらしい。
どうやら久しぶりに物置から引っ張り出したそれを、
こうして使うのだとレクチャーする動画を撮っている最中に倒してしまい、
それであえなく壊れたと。
であるならばいずれにしても頂戴して少し経った頃には壊れたろうし、
あっさり諦めはついた。
バウンサーはもらえるようだし十分だ。


およそ3週間楽しませてくれた読みくらべ民話集、今夜がラスト。
あとがきの後に収録されていた富山の民話を読んだ。
これだけ特別扱いされているのに中身は忘れた。


2022年04月01日(金) エイプリルフール、肌色、発想による問題提起

エイプリルフールを楽しんだ日って別にないな。
「この日ぐらいはやりすぎちゃってもいい」
という特別な日が、
「やりすぎのラインを見極める共同認識の確認日」
みたいになってる。
踏切線のあんまり手前だとつまらないし
踏切線越えたら顰蹙買うし、
ギリギリ中のギリギリだけが面白いけど
そこんとこ狙ってきたのねって作為が冷める。
もはや顰蹙買っても「やりすぎ」をした方がいいとすら思う。
 アップデートされた現代的価値観
とかいう安い幻想におもねらずにな。

でとりあえず耳に入ってきたのは
ネクストンの30周年記念企画。
先週あたりに樋上いたる起用でちょっと話題になってて
ONEリメイクをにおわせていたのが
今日になってMoon.リメイクの情報を披露してきた。
ありえそうでなさそうで…いいトコはついてきてる。
でもNintendoSwitchでとあったし、それは無茶だろうと思われた。
だいいちMoon.リメイクが売れるとは到底見込めない。
個人的にはまた鬱ゲーの時代が到来したら面白いと期待したいものだけど。

あと、サクラノ刻の発売日のお知らせ。
11月だそうだ。
ちょうど育休も終わって、てんやわんやの時期となる。
なにがなんでもプレイしたい作品ではあるが
タイミングは難しい。


肌色について。
肌色という色を日本人は名付けて当たり前みたいに使ってるけど
あくまで黄色人種ベースの、
もっといえば日本人にしか通用しない勝手な表現だよね、
という批判の仕方がある。
まぁ実際にそういう声を聞いたことがあるわけじゃないけど
少なくとも僕は高校ぐらいのときに思い至った。
で。
今日ふと感づいたことには、
哺乳類も毛を抜いていけばその多くは、
我々が親しむところの「肌色」をしていないだろうか。
桃色に近くはあるだろうが、白人や黒人の肌と比べれば、
ずっとあの「肌色」に近い気がする。

とそんな話を妻にしてみたところ、
本当にそうだろうかと、反証可能性をさぐってきた。
しかし僕にとってはこの場合、極端な言い方をすれば、
“事実がどうであれ、それは瑣末なこと”だ。
「日本人にしか通用しない勝手な表現」という批判への
さらなるカウンターとして
考えなしを諌める劇物になればいいのであって、
その役目は問題提起の時点でまっとうしている。

たぶん松本人志が、この憂き目によく見舞われていた。
彼のたぐいまれな認識能力によって
ある常識とされている物事から問題ごとが導出される、
その問題提起自体に意味があり、また面白いのに、
一部の人間から実際の事実関係を指摘する「マジレス」が届いてしまう。
それは「無粋」などという
逆説的にある美徳を確保してしまえそうな表現で済まされる性質ではなく、
ただただ、この手合は発言者の論法を読み取れていないのだ。
発言者は問題提起そのものの命題化をねらっているのに、
真っ正直に問題だけを見据えてかかるのはお角ちがい…なのだが、
この批判精神をただすのは難しい。
“理屈ぶった感情論”の持ち主だから
どの角度から攻めても彼の世界は閉じられている。
こういうやつ、ものすごいたくさん見てきた。


ぼくらはみんな河合荘。読んだ。
はじめはドタバタしてるだけで
全然ノレんくて
キャラクターにも白けてたけど
林さんあたりを契機に掛け合いがグイグイよくなってって
後半はメチャ面白かった。
黒川さんは格好いいし愛美さんも絶妙なバランスしてる。
8〜11巻は素晴らしかった。
あと湿りそうで湿りきらない。
安直な恋愛偶像劇にしてやるもんか…という意地を感じる。


妻は炊き込みご飯、
僕は卵かけご飯にした。
ほんのちょびっとごま油垂らしたフライパンに
卵入れてほんのちょびっとだけ熱を通してご飯へ。
味付けは醤油のみ。
美味かった…けどkろえなら生卵でもよかったか。
味噌汁がよく合った。
余っていたきゅうりの浅漬けも嬉しい。


風呂入って早々寝室へ。
民話を読み聞かせて寝た。


れどれ |MAIL