舌の色はピンク
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2021年04月04日(日) 日々の過ごし方と、褒められと貶され

ミュークルドリーミーおわつちまつた。
来週から続編だけど。
オープニングとエンディングがめちゃくちゃ好きだったので
それだけでも切ない。
二次裏覗いてみたら
やっぱりというか
ぎょうさんオープニングへの愛が語られてて
ちょっと救われた。

イザベルという映画を見た。
ポルトガルから中国へ返還される直前の
マカオを舞台とした香港映画。
不良刑事のもとに娘を名乗る女子高生が転がり込んでくる。
母が娼婦だったらしい。その母と主人公が関係してできた子らしい。
そのあたりの筋書やら
ちょっとしたカット、構図とか
人物の飛び跳ね具合が
いい感じに日本の90年代のマンガやドラマっぽくて
しかもそれをハイレベルにやってくれてるものだから感激した。
ガラス瓶の叩き割り方を指南してるところめちゃくちゃよかった。
「次は二本構えろ。意味はないが、景気がいい」


本は
文鳥に関する本と
多元的共生社会がどうのこうのって本を読んだけど
一日中眠くて頭入ってこないし頭働かないし
あまり身にならなかった。


スーパーで買い物した後久しぶりに八百屋へ行った。
個人商店を応援したい気持ちが強いので
多少割高であっても
野菜だけなるべく特定の八百屋で買おうとしていた時期があって
しかし四年通い詰めてるのに
ろくろく愛想もらえてないなとほとんど毎回思ってて
ちょっといじけてこの一ヵ月は顔出してなかったんでした。
一ヵ月ぶりでもあまり変わらない。そういうものか。
慣れ慣れしくされても嫌だしな…こんなもんって思ってた方がいいのか。
他のお客様へはフレンドリーなんだけど…。


昨日買ったフライパンをデビューさせようと
餃子つくって焼いた。
こびりつかないどころじゃない。つるつる。
お料理がうまくいくと一日が救われた気分になりますね。


週7で三食メシつくって
週6で洗濯して
趣味といえば本読んで映画見て音楽聞いて
書いて描いて菓子作って
チャリンコこいで
それら全部足しても月に1万もかかんなくて
ギャンブルしないし酒飲まないし
夜遊びせず人付き合いもほとんどなく
仕事の愚痴も吐かないし
読んだ本の面白いとこだけ抜粋して言い聞かせるし
まいんち三回皿洗いして
マッサージまでしてやれる、
おれはがんばってる。がんばってるぞー
ということをここに残しておく。
いつまでこんな生活続けられるかわかんないし。

あとどれだけ褒められポイント高めても
ふるまい一つで人品は容易くひっくり返るからあやうい。
余裕は全然ない。
過去二回、面と向かって「いやなやつ」と人から言われたこと、
どれだけ年月経っても自分の核を蝕むように巣食ってる。
言われといてよかったんだろうな。


2021年04月03日(土) 休日でしかない

早めに目え覚まして
声が出るほどいい天気で
飯作って洗濯して食って干して掃除機かけて
妻との共同口座に3月分の預金しに行ったら
通帳もカードも忘れててこの世を呪う。
自分が悪いんだけど。

仕事用の靴とフライパン買った。
どっちも間に合わせのやすいやつ。
それでも8000円。
この4月から総額表示のはずなのに
さらに消費税加わって体感痛かったな。
美容院も行ってスーパー行ってパン屋でパンぽこぽこ買って、
なんにも「これ」という買いもんしてないのに
どかどか金が出ていく。

で図書館に行く。
3月は1日1冊くらいのペースで本を読んだ。
読書メーターによるとまいんち平均200ページ読んでたらしい。
20冊くらいは図書館から借りたもの。
ゼロ円。
図書館スゲー。

でも出版業界に
というか著作者にお金入ってほしいし
月あたりの本への支出額増やすことにした。


天気のよさと風のよさに負けて
どうしてもソフトクリームが食べたくなり
コンビニを探すもセブンイレブンしかなくて参った。
僕はセブンイレブンが嫌いなのです。嫌いの上に大がつく。
コンビニエンスストアがまだ出たての頃
セブンイレブンは同地域に複数店舗を置くようにして
移送コストの低減を実現した
というのはビジネス展開の成功例として有名なんか知りませんが
こいつらが街をめちゃくちゃにぶっ壊した
くらいに思ってる。
だいたいどこ行っても店員の教育できてないし。
どうしても他にやりようがない
か
同行者に気を遣う
でもなければセブンイレブンは利用しません。


夜なんとなくつけてたNHKで
カネオくんですか
今はもうカネっつうか商品やらサービスなどの
トレンドぶった事業を追う番組と化してるけど
今回はボードゲーム特集で
人生ゲームがその主軸に据えられていて
何年代はどうのこうの、何年版はこうで、
などとその歴史を振り返ってた。
そもそもはアメリカのゲームらしい。
当時のタカラトミーの社長だか部長だかが日本で売り出そうとしたら
社員から猛反対をくらったらしい。
売れないと。
子供がお金儲けするなんてはしたないことだと。
反感くらうと。
50年以上前のことらしいからさもありなんという。
が、その社長(部長?もういいや)は
「子供たちにお金の大切さを知ってほしい」
とゆー信念があったらしく
くじけず企画をガンバッて
なんとか発売してみるや大ヒット。
以降も時代に即したアレンジを加えていき定番商品に。
その社長も「私の信念が認められて、受け継がれ、それは本当に誇らしい」
みたいなコメントしていた。
で。
時代ごとにアレンジしていってるという人生ゲーム、
令和版は初めて、$をなくしたらしい。
人生ゲームといえば$の多寡を競って勝敗を決するゲーム。
では何になったでしょう?
というクイズが出題されて。
ウーン、円かな、いやそれじゃクイズにならないか、
令和らしくってことなんだろうし、仮想通貨とかそういう…
と、思いめぐらそうとした一秒後にピーンときた。
正解だった。
"フォロワー"。
くっだらね!
という感想はさておき、社長がかわいそうすぎやしませんか?
信念が受け継がれて…とかゆってたのに。
テレビ画面に向けてオイっつっちった。


この前妻とのラインで
夫は上機嫌でいるのが家での仕事だからな
とかなんとか言ってみたら
気に入ったらしく
ほらニコニコしてろよ
くらいの言いぐさで上機嫌を強いてくる。
「妻は?」
「妻は、いらいらするのが仕事だから…」
「夫への誹謗中傷は、ほどほどにね」
「ほどほど」
「しないのは無理だろうから」
「無理」
仲はいいです。


2021年04月02日(金) 苦悩の正体

電車を乗り換えようと人混みを歩いてるさなか
前のおじさんのかかと部分をかるく踏んづけてしまって
おじさんの方も
一瞬だけ振り返るような素振りをみせて
でも立ち止まるわけでもないし
なんとなく謝る機を逸してしまった。

でもあれ
踏んづけられたクソー
と思ってるのはほとんど間違いないだろうし
謝りたかった。謝るべきだった。
あーいう場面でキチンと謝れず
しかもその後うだうだ思い悩んだりしてるから
自己嫌悪ばかりはかどる。
生きてるとこんなんばっかりだな。

別件。
駅を歩いていて
照明の明るさにハッとして
暗いと歩きづらいもんなあ
駅に限らずこの世の中は
すみからすみまで
人間が生きやすいように
なるべく快適に過ごせるように
すこしでも不満がなくなるように
あらゆる工夫がされているのだなあ
それで、コレ?
という疑念がぐるぐる渦巻いてしまいやばかった。
人は人になるべく迷惑をかけないように
醜いものや汚いものは隠して美しいものを増やすように
がんばってがんばって
で
コレ?
っていう。

でもどこぞの庭先の花壇に植えられた
今まさに咲かんとするチューリップを見たら
なんか元気出た。
チューリップの良さがわかんなくて
なんであんなに持ち上げられてるんだろう別にキレイでもないのに
と否定的だったわけですが
あいつら
おりゃっ
と垂直に天に向かって咲こうとするんですな。
恥じらいもなく…。
なんかそれはカッコイーんじゃないかというか
勇気がもらえる感じがした。


えー 会社が嫌です。
この手の愚痴、
上司がクソ とか 働くのがつらい とか
出勤が、満員電車が、会議が、
とかそういう愚痴、
口にした瞬間自分がモブに成り下がるというか
雑魚っぽい感じがして
全然表に出せない。思ってるのに。
しかも仮に人に正確に伝えようとすると
「いやそれに関してはそこまでひどいわけじゃないんだけどさ」
「いやその人もそこまでおばかではないんだけどさ」
などとなぜか敵をかばうような言葉を挟みつつになるはずで、
その根底にあるのは
「そこまで低い次元で悩んでるわけじゃないから」
みたいないけ好かない自意識なのであります。

でも実際そういうもんでしょうよおおおよう。
わっかりやすい愚かさとか悪意とか理不尽とかも
いちじるしく悪感情をまねくけど
多くのことって
相手の理念や打算や感情もわかる、
でもこちらにも理念や打算や感情がある、
そのあいだの、ある正当性と別の正当性が重なり合う
どうしようもないねじれ空間があって
そこでなかなか人にはわかってもらえない苦悩てのが
発生するんじゃないですか。

そういうことを今回の読みものに込めてみたい。


読みもの書くのは今のところめちゃくちゃ楽しい。
いろんな人に読んでもらいたい。
でも実際どんなに多くても3人くらいだと思う。
しかも半端に長いし
結末はおろか話が転がり始めるまでも時間がかかる。

箸の件だけでも思い悩んじゃったもんな。
すでに書けてたのに、投稿直前になって。
もともと「使用済みの割り箸を燃やす」という悪趣味に
興じている女だったわけですが
これさすがに気持ち悪いな、
奇想的な気持ち悪さより衛生的な嫌悪感が先立つな、
ということで脳内ホイッスルが鳴り響き
急遽設定を変更、
花を燃やすだとか服を燃やすだとか
いろいろ代替案考えてみたけど
結末を見越すとどうしても箸がちょうどいい…
そんで結局「使用済みの割り箸」を
「洗浄済みの使い古しの塗り箸」に変更したんです。
惜しかったけど…。
気持ち悪くて読む気しない、ってあるもんな。
こんな冒頭でそんな気ぃいだかせちゃいかん。
誰がそんな主人公の話を見たいんだよっていう。


2021年04月01日(木) 日記の復権

Twitterを読みものの投稿場にしちまったから
日常のよしなしごとをこっちに書いていこうと思う久しぶりに。
このスペースはほぼ誰にも観測されてないと思われるし
あけっぴろげに日々を打ち明けていってしまおう。
決して文章を練ったりせずに。

4月1日ということで
真新しいスーツ姿の若えお兄ちゃんやお姉ちゃんが
町にはわんさか。
通勤電車でもスーツ女子三人がきゃぴきゃぴしていて
それを眺めるおっさんスーツがいて不快だった。
吊革にだらしなく体重預けてぐねぐねしながら
スーツ女子をねめつけて。
なんとか嫌がらせしてやりたかったけどできんかった。

昼飯どき、木曜は週に一度の外食解禁デイだぜわぁいと
両手上げて会社近くのおしゃれダイニングみたいなとこ食べに行ったら
隣席の先輩スーツが若いスーツに何かと「すげえなお前」と言っていて
一番キライな「お前」だと思った。
別に後輩スーツの彼はなんとも思ってないかもしれないけど。
やたら後輩をお前呼ばわりするスーツ野郎の文化には近寄りたくない。

帰り道 アジアンな女性が
チョットスイマセン
と話しかけてきて
手元を見ると
 生活に困窮してます大学も辞めました
 お菓子を買ってください 500円
といった情報が印字されてる紙。
ごめんなさい
の一言で断ち切ってしまってから
いや今のは立ち去るべきじゃなかったよなあ
500円でも1000円でも買ってやったらよかった
と、考え直したのは割と早かった。
五歩目くらいだった。
でも踵返せんかった。
結局立ち去った
一歩一歩現在進行形で後悔しつつ。
自分はそういうとこある。

アパートの歴史を物語からたどるみたいな本読んでる。
アジールって用語を知った。
イスラム圏で聖域とか逃げ場所とかそういう意味らしい。
日本語にはないニュアンスの言葉。
こいつあいただきだ。
読みものに採用したい。


えらい時間かけてツナミノさんの過去日記…
15年くらい前のをあるだけ読み直してみたら
全然色あせずえらい面白いし触発されるところもあって
やる気わいてきた。

自分のなかにあるどうしようもないかっこつけを捨て去って
どうにかしようとするひょうきんな姿勢があって
当時それがめちゃくちゃ格好いい憧れるぅと思って
長年後追いしてたけど
かっこつけでやっていきたいという本心もあるし
後追いじゃ絶対肩を並べられんよなと深刻に思い悩んで
悩んで悩んで
何年か前たもとを分かつことにしたんでした。

これまで死に物狂いで育んできた
大事な大事な価値観をかなぐり捨てるということで
蓄積させてきた自信の核心も失くすことになるし
なんもかんもレベル0からのやり直し。
非常に苦しいことだったけれど
そのほかに道はないと思われたのです。
あれはたいへん勇気ある決断だった。
そうして選んだ進路は間違ってないと思う。
あとはそれを証明せな。

がんばらんとなあ。
何をがんばったらいいかわからない
という若者らしい懊悩はとっくに乗り越えて
今は何をがんばるべきかもわかってるのだし。


2020年05月04日(月) 好物ベスト50[25-1]

25.オペラ
自作のオペラはクルミの風味たっぷりのケーキ。
スポンジ生地にもクルミペーストを溶き合わせ、焼き上がってからもクルミの糖衣がけを忍び込ませる。
チョコレートのグラサージュは難しくも楽しい作業。
つややかに仕上がれば美味しそうに見えるし、美味しそうに見えると美味しさが増す。


24.ビビンパ
一大アトラクション。
ほうれん草のナムル…さっと茹でて、すりおろしにんにく、ごま油、塩胡椒砂糖、醤油と混ぜ合わせる。
ぜんざいのナムル…さっと茹でて、塩胡椒、醤油と混ぜ合わせる。
人参のナムル…細切りにしておいて塩をなじませ、水分を絞り、すりおろしにんにく、醤油と混ぜ合わせる。
もやしのナムル…さっと茹でて、塩胡椒、ごま油、醤油ちょびっと混ぜ合わせる。
牛肉…焼いて、エバラ焼き肉のたれを絡める。または酒、塩胡椒砂糖、醤油。
キムチ…市販品を適量。
目玉焼き…ごま油で片面焼き。
この全てをドカッとのっけたビビンパを、我が家では茶目っ気込めてフルビビンパと呼ぶ習わし。
目ん玉飛び出るね。


23.ペペロンチーノ
ペペロンチーノは、こと自作にあたってはチャーハンと同じくらい、その極意についてみんな違うことをいう。
口をたがえぬのは乳化の重要性。
この乳化がうまくいけば、たしかにペペロンチーノは化ける。
あとは乳化のさせようだけれど、おすすめは麺をかなり早めに引き上げて、ニンニクオイルのフライパンへと、ゆで汁とともにぶち込んでしまうこと。
その状態で2〜4分、ちょいちょいゆで汁を加えながら強火で混ぜ合わせる。
これで世界が救える。
キャベツ、エビまで加えられたなら救世主街道まっしぐら。


22.グリーンカレー
東南アジアの味付けを不得手としていた身ながら、友人の弟がグリーンカレー専門店を開く縁からその味見をさせてもらったところ、これが現実離れした美味しさで、すっかり平伏してしまった。
以来、店でもレトルトでも食べるようになった。
レトルト品には大きめのタケノコをかるく茹でて足す。
店ではメニュー写真に赤色を含んでいないグリーンカレーを信用する。
しかしどうしたって、友人の弟のそれには及ばない。はやく開店しないかな。


21.バターチキンカレー
インドカレーは正直なところどこ入っても美味い。
正確にはほとんどがネパール人だとか聞くけれどインドカレー名乗ってるしインドカレー呼ばわりでいいと思う。
ナンも…ナンもどこで食べても、あーここのナン美味しい、ってなる。
マンゴーラッシーも…。
バターチキンカレーは自作しても美味しかった。
ただバターと生クリームの量に引いてしまった。菓子でもないのにこんなにって。



20.赤貝の握り
寿司で一番好きなのは赤貝で、赤貝の食べかたで一番好きなのは寿司。
ワサビ多めのリスキーさもいい演出となっている。
身体をこわばらせ、おれはこれから赤貝を口に入れるのだという真剣味を立ち上げさせてくる。
赤貝は鮮度による乱高下が激しい。
本当に美味しい赤貝はもうずっと食べてない気がする。
あの、歯と歯の間で踊りだす、滑らかな、この世で最も柔らかい骨のような甘い噛み応え。


19.アボカドチーズバーガー
邪教の宝物。
アメリカンバーガー専門で食べるアボカドチーズバーガーは一口頬張るたびに学力が落ちる。
それでも、悔しいけど美味い。エロ漫画か。
舌先の繊細さをフッ飛ばして、脳をダイレクトに刺激するあの感じ。
抗いたいのに抗えない。身も心も墜ちていく。エロ漫画か。
 

18.たぬきうどん
育ての親。たぬきうどんに育てられてきた。
産みの親は家を空けがちだった。
近所のうどん屋には裏口から出入りさせてもらっていた。
次第にその裏口は戸口ですらなく、単に設備と設備の隙間に過ぎないのだと合点してきた。
だんだんと正面口から入店するようになり、店の方々へも敬語で話すようになっていった。
育ての親。たぬきうどんに育てられてきた。


17.ズワイガニ
お酢に砂糖を溶いて、肉をさっと触れさせる。
これより美味しい食べ方はないんじゃないかと思う。
そしてあとは無言でしゃぶりつく。
蟹を食べるとき人は野生に還る。
人としての品格全部失って進化の舗装路から脱け出せる。
理性という理性をかなぐり捨てられる。
うっとうしい文明社会とお別れできる。
さようなら。
 

16.オニオングラタンスープ
がっついたら必ず火傷するのにがっつかずはいられない。
小さいころは、料理界の最高級品だと見なしていた。
実態が、玉ねぎスープにパンとチーズをのせて焼き上げたものと知ったときの衝撃たるや、もう学校辞めようかなと思った。
とはいえ作ってみるとうまくはいかない。
オニオンスープは玉ねぎを1時間かけてじっくり焦茶まで炒めれば美味しくなる。
コンソメを手間暇かけて調理すればいいのかもしれない。
しかしそんなにまでこだわる必要があるのかも疑わしい。
高級ホテルと、ビストロと、ファミレスとで、そんなに差を感じられないのがオニオングラタンスープの魔性。
というかきっとファミレスのオニオングラタンスープが親しみ深くて好きなのだ。


15.フォアグラのソテー
美食を追及していくにあたっての高級食材フォアグラでなく、庶民が凡俗の舌で味わえる高級食材フォアグラとして、愛好させてもらっている。
血の味はほどよく残っていてほしい。いけないことしてる気分にさせてほしい。
ソースにはこだわりすぎないでほしい。洒落っ気は控えてほしい。
フォアグラはその製法から、動物愛護の立場からの反対が年々高まっているそうだが、たしかにもうこの文化はついえても止む無しと思う。
だけれど流通している間は味わわせていただく。
背徳感と、背徳感ならではの快感にまみれて。


14.豚汁
ごま油をひき豚バラ肉を炒める方式ならわっかりやすく美味くなる。
だけれど野菜の味を堪能するなら肉の主張は抑えないといけない。
ここのバランスが難しい。
味噌の味も堪能したいし、しかし豚肉から出る脂っ気も欲しいは欲しい。
野菜の分量バランスだって難しい。
これらがすべて上手くいった豚汁は、単品で一食をまかなえる献立となる。
 

13.アサリの味噌汁
ネギは少なめに散らし、ご飯は熱々で、部屋は風通しをよく。
あぁ箸が使えてよかったと何者かに感謝したくなってくる。


12.ネギま
ネギまについては本当にバカで、店に迷惑もかかるだろうに、どかどか注文してしまう。
二十本くらいならぺろりといける。ただしタレは濃すぎていけない。塩でいきたい。
焼き鳥ならばぼんじりあたりも大好きだ。砂肝だって、シシトウだって好きだ。
ネギまがそれらの百倍好きなだけだ。


11.スコーン
スコーンはクロテッドクリームによって本性をあらわにする。
僕の知る限りもっとも美味しいクリーム。
紅茶専門店「G-cref」で出していたそれが絶品だったが、閉店して以来味わえていない。
自作しても類似品を買っても到底及ばない。
ただこういうのは思い出の中にとじこめておくのもいい気がする。


10.ガルグイユ[ル・ジャルダン・デ・サヴール]
フランスの有名店、ミシェル・ブラスのスペシャリテだとかいう温野菜のガルグイユを、日本では銀座のル・ジャルダン・デ・サヴーで味わえる。
お野菜を信仰していない人すべてに食してもらいたい。信仰しているひとにはさらなり。
自分で試してみたときには、野菜を別個に蒸していき、最後にバターと絡めた。
野菜の品種と鮮度にこだわればこだわっただけ、きっとバターに頼らずともよくなってくる。


9.もんじゃ
月に一度だけ会う父親は、毎回決まって、寿司の高級店か焼肉の高級店か、浅草のもんじゃ屋に連れて行ってくれた。
もんじゃ屋がいちばん好きだった。
今では小ぎれいな内装の、お好み焼き鉄板焼きのついでにもんじゃを出す店が増えた。そりゃあ、妥当だし必然だ。
でも僕は、もんじゃはちょっと小汚いくらいの店で食べたい。
換気がおっつかず煙は漂いがちで、いかにも昭和なビールのポスターが貼ってあり、視界をどこへやってもビール瓶のある、カウンターにしか椅子がない店…。
カウンターには小さいテレビが置いてあり、それをたまに見やるおっさんがタバコ片手にくたびれている。
店内の空気が悪い分、外へ出ると夜気が神妙にすがすがしい。
そういう店で食べるもんじゃが最高に美味しい。
 

8.ローストビーフサンド
これまでの価値観がひっくっりかえるようなローストビーフサンドをだすビストロがかつて中板橋にあった。
コンソメ、マスタード、スパイスが効いていたような気がする。
甘めの玉ねぎが挟まれていて、トーストはこんがり焼かれていた。
今はもう食べられない。
あれが食べられるなら1万円でも出したい。
自作のローストビーフは、「昨日何食べた?」で紹介されていたお手軽調理法を何度か試みたのみ。
あれで十分満足できるから他を試していない。
 

7.肉じゃが
おふくろの味とかほっとする味とかそういう以前にただそのものの味が好き。
ごま油で野菜と豚肉を炒め、めんつゆとみりんたっぷりで煮込む甘めの味が我が家流。
白たきに味が染み込んでほしいから、できれば数時間あるいは一晩置かせたい。
じゃがいもは煮崩れさせる。あいつは小粒にしておいて、勢力を抑えつけるくらいがちょうどいい。


6.担々麺[減来酒家]
この店の担々麺には山椒が利いていない。四川風が苦手なので助かる。
難点として、仕上がりにばらつきがある。
もう200回以上食べてきているから遠慮はしない。
5回に1回は、塩気がうすかったり麺がただれていたりする。するが、黙って食べる。
中華に安定感なんて求めてない。一定しない方が面白い。
自分で調理するときには、中華の美味い調味料片っぱしから入ってるなと毎回びっくりする。
スープは薄目に、ひき肉を濃い目の味付けにするのが好き。


8.オムライス
オムライスはあんなに工程が単純なのに調理人によって仕上がりが千差万別なのが面白い。
店で食べてもまるで違う。
西小山の杉山亭のオムライスが至高。
マッシュルームは多めで、鶏肉は大きめ、デミグラスソースは濃いめ。
自分でもまねてきているが全くままならない。
金と手間暇かければもっと美味しくなりもしようが、決め手は単純に調理技術なのだろう。
繰り返し作り続けて、何年後かに今より美味しくなってればいい。 


5.ピザ[ドミノデラックス]
味の隕石。
一口食べるたび思い出がひとつ失われるような暴力性。
窯であげたものよりも、ハチミツをたらした当世風のものよりも、どうしてもドミノピザのドミノデラックスが好き。
ただしコンディションに大いに左右される。
事前数時間のあいだに油っけのあるものをつまんでいたならピザ力は半減する。
外的環境、内的条件の一切が揃った状況で食べるピザのパワーはすさまじい。
だからピザの注文にあたっては、さながら降霊の儀式でも執り行うかの如く、正しくお迎えできるよう身辺を整えていく。


4.唐揚げ
両国にある定食屋、「きじま」の唐揚げは至妙の逸品。ほかに類似の唐揚げを知らない。
厚めの衣に、肉の繊維がしっかり歯に応える食感、下味のよく沁み込んだ…と思い出せもするものの、最後に食べてからもう20年ほどになる。
ふだん尋常の唐揚げを食べている分には、あぁ美味しいなで終わる。
上等の唐揚げを食べたとき、「きじま」の唐揚げを思い出す。あぁあの唐揚げは本当に美味かったなと。
唐揚げ好きには大抵、こうした最上の唐揚げの幻影があるんじゃなかろうか。
 

3.ショートケーキ
いろいろケーキつくれるようになったけど、つくれるようになる前と変わらずずっとショートケーキが好きすぎる。
自分で作る際には、スポンジ生地にはハチミツを加える。砂糖は上白糖。
そしてかくはんを念入りにというか執拗にしてみたら、焼き上がりが安定した。
生クリームがスポンジに馴染んだ「2日目のショートケーキ」は天上のおいしさ。
最近はさらにピスタチオクリームを塗ってみるなど試行してみてもいる。これもたまらない。


2.チンジャオロースー
八百屋で買える安いピーマン、国産でもない包装済のタケノコ、グラム100円の牛肉小間切れ、これで頭とろけてしまうのだから僕は安い男だ。
牛肉は醤油、塩胡椒砂糖、酒、ニンニク、ショウガで下味をつけておく。
肉の味を濃い目にしておけばそのぶんピーマンとタケノコの分量を増やせる。
チンジャオロースーのピーマンとタケノコは延々食べ続けていたい。
謝っても許してやらない。無言で食べ続ける。
無論、肉のやつだって逃がしたりはしない。そこにいたのか。観念しろ。
邪神になったつもりで皿をかきわけていく。
 

1.まぐろラーメン
環七沿い、板橋本町駅付近にある「元祖まぐろラーメン 本店」のまぐろラーメン。
ここより美味しいラーメンを知らないし、このラーメンに類似する味も知らない。
まぐろと言われてもよくわからない、魚介出汁とも動物系出汁とも違う、あっさりしているのにこく深い不可思議なスープ。
一口飲めば浮世の憂さも晴れるというもの。
映画館の企画で絶叫映画ってあるけど、もしこのラーメン屋で絶叫が許されるのなら、僕は獣の咆哮を東の月へ西の日へ北の空へ南の地へ放つだろう。


/


欧風カレーを入れそびれていた。10位以内には入る。
神保町の「ボンディ」、荻窪の「トマト」のが好きで、自作なら果物にこだわる。
ほか、好きな飲食物を以下に羅列。
バターナッツのグラタン、クリームニョッキ、さつま揚げ、ふろふき大根、豚しゃぶ、カレイのムニエル、鰤大根、鰤しゃぶ、マッサマンカレー、アーモンドトースト、エビチリ、キンメダイの煮つけ、じどっこ、生クリームチョコバナナクレープ、ビーフジャーキー(天狗の)、タピオカミルクティー、ロイヤルミルクティー、カフェオレ、梨、桃、みかん、冷やし中華、油淋鶏、ラタトゥイユ、焼き立てフィナンシェ、抹茶パフェ、シュークリーム、ベリーとカスタードのタルト、フォレノワール、和風ハンバーグ、たくあん、小松菜の煮びたし、茄子の揚げびたし、蕪、菜の花、ほうれん草、ズッキーニ、葱全般、アスパラガス、柚子、マッシュルーム、舞茸、書ききれるわけがないな


2020年05月03日(日) 好物ベスト50[50-26]

めっきり外食しないし人さまに誇れるような食嗜好でもないけれど、
食嗜好なんざ人に誇るもんでもあるまいと開き直り。
一度しか食べたことのないごちそうなどは省いてます。


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50.ポテトチップス[湖池屋のり塩味]
ポテトチップスといえば湖池屋のり塩味に限る。
塩が違う。こんなに美味しいしょっぱみがあっていいものか。
スナック菓子をほぼ食べなくなった今でも、このポテトチップスだけは別格。


49.チヂミ
具はニラのみに限る。そのぶん生地は薄めで、しっとりさせつつ片面だけパリッと焼き上げたい。
タレは醤油をベースに、長ネギのみじん切り、鷹の爪みじん切り、にんにくチューブ少々、砂糖少々、ごま油一たらしして、1時間以上寝かせたもので決まり。


48.ホットドッグ
秋葉原のなんとかいうカフェのホットドッグが異様に美味い。
パンもソーセージもやら美味い。
秋葉原へ行く用事のあるときに、面倒だなあと二の足を踏んでも、そうだあのホットドッグが食べれる、と思えば動き出せた。


47.卵マヨトースト
食パンの四辺にマヨネーズの結界を張り、中央へ生卵をひたらせてやる。
マヨネーズに焦げ目がつくくらい入念に焼き上げたら、ブラックペッパーをふりかける。
たったこれだけなのに、トーストものでは随一に好き。
これ以外ではほぼマヨネーズを調理に使わないにも関わらず、これを好むあまり、そこそこマヨネーズは消費してしまう。
 

46.カロリーメイト フルーツ味
小学校3年生のときに初めて食べて、この世にこんな美味しいものがあるのかと感動した。
以後、少ない小遣いでちまちま買った。この習慣は今もうっすら続いている。
カロリーメイトはフルーツ味しか食べない。この味を認めない人を僕はメイトとは見なさない。
とはいえどこがフルーツ味なんだよとは長らく不思議だった。
その謎が解けたのは去年のこと。
ドライフルーツたっぷりの焼き菓子を作ってみたら、かなりカロリーメイトの味に近かった。
おどろき。カロリーメイトは焼き菓子だったのだ。


45.さくらんぼ
果物単品では一番好き。
多くの人がそうであるように無限に食べられる。
高級品でなくとも値段を前に渋ってしまい、なかなか買えないのが惜しい。
そのためいっそう値打ちが高まりもする。
もらって嬉しい果物第一位でもある。もらったことないけど。


44.秋刀魚の塩焼き
大根おろしにポン酢を浸し、炊きたての白米、ワカメの味噌汁とともにいただきたい。
秋刀魚を食べたい気分と、良い米良い味噌汁が揃ったなら、順位はぐんと上がる。 


43.マルコポーロ[マリアージュフレール]
一人暮らしを始めたころ紅茶にはまった。
かっこつけではない、とする立派な理論武装とその証左を当時は備えていたはずだけれど、今思い返すと、かっこつけだったとしか思えない。
「美味しい紅茶協会」認定の紅茶専門店を次々まわったりした。
マリアージュフレールには月に一度は寄って、茶葉や菓子を買っていた。
マルコポーロはほとんど唯一好きといえるフレーバーティー。
なんの香りなんだか、何度飲んでもわからない。
今では成城石井などにも置いてるし、すっかり買い求めやすい。
冬になると飲みたくなる。


42.たこ焼き
真冬の英雄。
そもそも蛸が好き。
しかし蛸を好む人間が果たしてこんな食べ物を開発できるものなのか。
改めて鑑みれば、ちょっと馬鹿にしてるみたいな食べ方だ。
あんなちっちゃく刻んで、どろどろの小麦粉液にとじこめてしまって。
あとたこ焼きは美味しさのみならず、幸福指数が高い。
たこ焼きを食べようと思い立ったときはいつも幸福な心境だったし、たこ焼きを食べている時間はいつも幸福な状況のさなかにあった。
思い返してみてほしい。ほら、そうでしょう?
 
 

41.中華粥[減来酒家]
神保町の「減来酒家」で中華粥を食べて、滋味ってこういうことなのね、と得心できた。
薬効臭い漢方っ気はなく、油っ気もなく、おおらかな味わい。
とりわけ鶏と葱による中華粥がたまらない。
鶏のいいところと葱のいいところがよく表れ、互いに仲良くしている。
平和を感じる。


40.カツ丼
はじめにカツ丼に三つ葉を乗せたひと天才ですよね。
カツ丼はこう…どんぶりを抱き寄せて、箸をいつもより数�冀擦�持って、ガッガッガッとかきこむのが一番うまいのは定説。
いうなれば品を失えば失うほど美味く食べられる。
そこへきて三つ葉だ。
あの繊細な置物ひとつで、カツ丼に社会性というか、恥じらいのようなものが付与されることとなる。
だからこそ食べ手の蛮力が引き立つ。
三つ葉を乗せた人はまごうことなき天才。味も良くなるしね。


39.生春巻き
エビの代わりに蒸した鶏むね肉を挟んでも美味しいし、いっそう健康食となる。
スイートチリソースは健康に悪い味がする。
健康に悪い味は美味しいからしかたない。
 

38.カレーうどん
カレーうどんだ。
寒い日にはカレーうどん。
暑い日にもカレーうどんだ。
よいことした日にはカレーうどん。
悪いことした日にもカレーうどんだ。
ネギはどっさり。
刻み生姜もたっぷり。
ごたくはいい。
カレーうどんだ。

 
37.アジの梅肉ちらし
アジをおろしてタタキにして、刻みネギ、梅肉とともに酢飯と和える。塩で味をととのえる。刻みのりを散らす。
めちゃんこ美味しい。
ただし塩加減は難しい。
梅肉が多ければ要らない気もする。僕は梅肉を控えめにしたいから塩を足す。その匙加減がなかなか決まらない。
必然、味見を繰り返すこととなる。この味見が至福。幸福の着服。したがって調理自体も楽しい。
 

36.レキュルイユ
ナッツのムース。
札幌のケーキ屋さんで食べて感動した。
家に帰ってからオリジナルでできないものかと試行錯誤。
ナッツだけでは売り物の味に遠く及ばないため、味を加えていくことにした。
僕のオリジナルとしては、ヘーゼルナッツとアーモンドのムースに、紅茶とガナッシュのムースを重ねる。
飾りを兼ねたアクセントとして、オレンジのピールをのっける。
ただし、ムースのまろやかさが決め手のケーキではあるから、アクセントは要らないかもしれない。


35.ブータンノワール
豚の血と脂による腸詰。
あるフレンチのコースでアペタイザーに出てきたのが出会い。
美味しさに感動してギャルソンの方に詳細をたずね、追加の注文がかなうか確認してみたところ、できるという。
一皿50円で。
桁を間違ているとしか思えなかったが本当に50円だった。
今考えてもおかしい値段設定。
ただその後ブータンノワールは、衛生上の問題だとかで輸入が厳しくなり、店で見かけなくなってしまった。
が、2020年現在また制限が緩和されたようで、今度は手ずから缶詰を購入してみようと思う。
 

34.ウールガイ
中東料理。スパイスを効かせた大根のピクルス。
大根を半透明になるまで揚げ焼きして、クミン、ターメリック、パプリカパウダー、すりおろしにんにく、練り生姜、マスタード、塩、レモン汁と和える。
これだけでも強力な白米のお供となる。そこへきてイクラと刻みのりを乗せて丼ぶりにしてしまえば、喘がずには食せない。


33.馬刺し
馬肉はさしたる工夫もなく生姜醤油でいただきたい。
あのとろけっぷりは融点の低さによるものらしい。
それを知って以来、口内で馬肉に何が起きているかを想像しながら食べるようになった。
専門店などではいろいろの部位を食べさせてくれるけれど、なんだかんだで、そこらの居酒屋メニューの「馬刺し」が気負わずいっちゃん美味しく食べられる気がする。
ところで口内の温度に個人差があったとして、それが高い人ならばより多くの肉の脂をとろけて感じられるものなのだろうか。
 

32.真鯛の刺身
薄切りにした玉ねぎを塩揉みして、真鯛の刺身ともみじおろしをのっけて、万能ねぎを散らし、ポン酢をかける。
これがいっとう好き。
もちろん醤油で食べるのも好きだし、オリーブオイルでカルパッチョにしてもいい。
マグロの赤身も大好きだけれど、真鯛はとにかく優秀。
 

31.キッコーマンの醤油せんべい
幼いころ、吝嗇家の長兄が小遣いを懸命に貯めて、年に一度ほどのペースでこの醤油せんべいを買っていた。
段ボール詰めで届くとはいえ5000円したのだから、よく中学生だか高校生の身分で購入していたものだと今思い返しても感心する。
さすがに独り占めしたかったらしく、兄は毎度このせんべいを、狭い家のいずこかに巧妙に隠していた。
僕はよく兄の留守を見計らい、探し出してはくすねていた。
たっぷり染み込まれた醤油はところどころ焦げ気味で、せんべいは顎が外れるほど硬かった。
今はもう売っていないようだ。
キッコーマンの工場まで行ってしまえばあるのかもしれない。


30.筑前煮
筑前煮は椎茸が主役。
大ぶりの高級どんこを惜しみなくつかって、出汁を頂戴する。
そしてにんじん、ごぼう、タケノコ、鶏肉からでた出汁を椎茸が吸収する好循環。
椎茸の正体はスープなのだなあとほれぼれする。
 

29.ハヤシライス
ハヤシライスは高級であってほしくない。
いちど高名な洋食屋で食べたところ赤ワインの風味が強すぎて、これならビーフシチューでいいじゃないかと鼻白んでしまった。
これまでを振り返ると阿佐ヶ谷の喫茶店、対山館でいただくハヤシライスが一番美味しかった。
珈琲の香りが立ち込める店内という環境がいっそうハヤシライスを美味しくしていたのだと思う。


28.味噌ラーメン
味噌ラーメンにコーンとバターを泳がせる流儀には長年反感があったものの、札幌の味噌ラーメン専門店で食して合点がいった。
以来、自宅でやる味噌ラーメンにもコーンとバターが欠かせなくなってしまった。
でなければ辛くする。
寒い時期にラーメン屋に入れば、そのつもりがなくても辛味噌ラーメンを頼んでしまうのが人情というものだ。


27.ぶっかけ
夏の正解。
めんつゆに醤油一たらし、練り生姜を溶いて、麺をすわらせ、天かすと刻んだ万能葱を散らす。
大根おろし、酢だち、小松菜まで添えられたなら、夏よ、おお夏よ、これがお前への答えだ。


26.プラムのタルト
見た目地味だし味だって複雑じゃない。
素朴といえば素朴。だが基礎能力値の高さに恐れ入る。
酸味の価値がよくわかる。
自作時、タルト生地にもダマンド生地にもアーモンドプードルはたっぷりと。
プラムは皮を下にして敷くと生地に果汁が染み込みすぎず、また焼成時には果肉の水分が適度に蒸発して旨味が増す。


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次の記事へ続きます。


2020年05月02日(土) その他好きなもの-2

武士道[新渡戸稲造][一般書籍]

「武士道は、語られず、書かれてもいない掟でありながら、それだけにいっそう武士たちの内面に刻み込まれ、強い行動規範として彼らを拘束した。それは、有能な者の頭脳が作り出したものでもなければ、有名な人物の生涯にもとづくものでもない。数十年、数百年におよぶ武士たちの生き方から自然に発達してきたものである。」

新渡戸稲造の名著。
意外と本の厚みはなく、また現代語訳版は読みやすい。
この一本気なタイトルからは、旧来のがちがち日本思想が想起されるかもしれない。というか僕はそうだった。
が実際には、この本は新渡戸稲造がアメリカにいながら英語で執筆したもので、向こうの人間を正面きって相手取っただけあって、欧米人に馴染み深いはずの文学者や哲学者がバンバン引き合いに出されている。数多の引用も文章中の補語として登場させるなどスマートであるし、極めて理知的で現代的。欧米諸国でベストセラーになったことも実感として頷ける。旧来の日本思想を称えてはいても、それが論拠の希薄な牽強付会に陥らず、多角的な観点をもってして比較検討の上で主張しているのだと呑み込める。
なんどでも読みたい枕頭の書。

武士道における美徳の神髄、生き様の心得を、これほど簡潔に、力強く、誇らしげに語ってもらえると、なんと武士とは素晴らしいものなのかと心服したくもなってくる。まったく目次を眺めるで読みたい項目ばかりで、本文はさらに面白く、読み終えてなお精神に居つく影があり、読んでよかったと心から思える。外国から見た武士道なんて本来なら得体のしれない価値観をものの見事に整序しきっている手並みも心地いい。(読み終えた当時の感想より)




テクノヘゲモニー[薬師寺泰蔵][一般書籍]

「当時、青銅器の大型大砲製造技術は、伝統的にイタリア人が握っていた。そして、同じハプスブルグ家統治下のドイツやローカントリーもその技術を学び、質の高い大砲を生産していた。なぜイタリア人が青銅鋳造技術を独占していたのかといえば、それは、長らく協会の鐘を作り慣れていたからである。」

技術力がいかに国家における覇権を揺り動かしてきたかという見地から世界史を紐解こうとする新書。
ここでは、国家や権力者が必ずしも歴史の主語にはならない。
職人だったり、市井の人が、歴史の流れをかたどっている。だから歴史に息遣いを感じることができる。
よく、世界史の教科書は無味乾燥だといわれる。完全に同意見だ。
興味をもちたいならば別口のアプローチをすべきなはずで、僕にはこの本がぴったりだった。




男と女の家[宮脇檀][一般書籍]

「パリの市民はそれぐらい街の中に住んでいる。つまり囲まれている人間だという意識が強かったんですね。これはパリだけでなく、城壁を持ったヨーロッパの都市に共通することです。そのように部屋のインテリアも家も街も容器である。ですから、家は女性定冠詞がついたラ・メゾン、ラ・カサ、家は女だということになるわけです。」

建築家として第一線で活躍されてきた宮脇檀さんが晩年、"男"と"女"と"男と女"を基点に建築の話をとりまとめてくれたエッセイ仕立ての本。
二十年以上前の本ながら、男女論が激している現在でも十二分に読み応えがある。
男にも女にも厳しく、男にも女にも優しい。

写本したくなるほどの面白さ。上っ面の教養ではなく、知見と知識がしっかり噛み合った見識、見識と意識がしっかり噛み合った意見、それらと一体化している肉厚な教養を感じた。建築にまつわる挿話を男女論に絡めて述しているわけだけれど、建築にも男女論にも一切興味なくたって面白がれる、そういう開かれた内容になっている。読めば教養が身につくってわけじゃない。ただ、読むと教養の価値を実体験できる。(読み終えた当時の感想より)




陰翳礼讃[随筆][谷崎潤一郎][随筆]

「私は、吸い物椀を前にして、椀が微かに耳の奥へ沁むようにジイと鳴っている、あの遠い虫の音のようなおとを聴きつつこれから食べる物の味わいに思いをひそめる時、いつも自分が三昧境に惹き入れられるのを覚える。」

谷崎潤一郎が建築や小道具や何気ない生活様式に潜んだ陰影にまつわる美を語る。
誰しもに見落とされてしまいそうな薄弱な美をすくいとる手並たるやあざやか。
なにより文章が美しい。ぞんぶん、うっとりできる。

ふつう自分が感じていることの掌握すらままならないのに、この人ときたらそれをしっかと掴まえて過不足なく文章化するのみならず、あろうことか他人に伝達させる…どころか感得させてしまうのだから圧巻だ。自我と世界とが言語によってもののみごとに交通している。話の一つ一つも面白すぎる。この本は面白すぎる。いくらなんでも面白すぎる。どうにかなってしまいそう。(読み終えた当時の感想より武士道[新渡戸稲造][一般書籍]




枕草子[古典随筆]

「人はなほ、暁の有様こそ、をかしうもあるべけれ。」

才女のくせしておめでたい気取り屋のおちゃっぴいおきゃんで有名な清少納言。
彼女が才色兼備のお后様、中宮定子に仕えたのは七年間あまり、そのうち栄華を誇っていたのは一年半程度。
あとはあまりに不遇な時期が続く。
しかし枕草子には、ちいとも暗い重い悲しい話は出てこない。驚くほど明るくきゃぴきゃぴした日常観に終始している。
ひたすらに枕草子へ明るい話題しか持ち込まなかった清少納言の腹づもり、その決意、気高さを想うと、僕はいつでも涙がでる。
こんなに強い人はいない 高校の時分、そんな清少納言にずいぶん惚れ込んで、以来私淑のつもりで彼女の高潔さにあやからせてもらった。
僕は今でも彼女が大好きだ。




フェルマーの最終定理[サイモン・シン][ノンフィクション]

「フェルマーの最終定理をめぐる物語は、数学の歴史と分かち難くからみ合い、数論の主要なテーマはすべてこれにかかわっている。この物語は、数学を前進させるものは何かという問題、そして、数学者を奮い立たせるものは何かという、おそらくはいっそう重要な問題に対して比類のない洞察を与えてくれる。数学界の偉大な英雄たちを一人残らず巻き込んで展開する、勇気、不正、ずるさ、そして悲しみに彩られた魅力あふれる冒険物語--その中心にあるのが、フェルマーの最終定理なのである。」

堅苦しい数学の教本ではなく、これはドキュメンタリー。
古くはピタゴラスの時代から数学者の足取りを追っていった末に、いかにしてあの"フェルマーの最終定理"が解かれるかを、スリリングに書き記している。
それまでは数学に馴染みがなかったという著者だからこそ、数学および数学者が、知ればどれだけ魅力的であるかを説く文章には得心できるものがある。




宇宙 日本 世田谷[FISHMANS][CDアルバム]


これさえあればもう何もいらないというような酩酊感、夢見心地へいざなってくれるドラッグ的なアルバム。
夜中に暗い部屋で聴き入るのがいちばん。
何もせず、できれば何にも考えず、ただその音楽に身も心も預けてしまえば、浮世の憂いから解き放たれることうけあい。世捨人のできあがり。




Drop your vivid colors[Louminas Orange][CDアルバム]

試聴

シューゲイザーに溺れるきっかけとなった思い入れ深いアルバム。
アルバム名がかっこよすぎる…。
5月の晴れた昼下がりに、窓を開け放った部屋のソファに腰かけて大音量でこれを流すと脳内麻薬がじゃぶじゃぶ出る。
ルミナスオレンジといえば昔、中心人物の竹内さんソロのライブを、原宿のマンションの一室みたいなところで堪能させてもらった。これは夢のような時間だった。このときは轟音でなく静かめなアコースティック。複雑怪奇な音の洪水ばかりでなく、しっとり聴かせてくれる美しい曲が多いのもルミナスオレンジの強み。




NUM-HEAVIMETALLIC[NUMBER GIRL][CDアルバム]

わが青春。
聴くと若返る気がする。
いつか耳が肥えたり精神が成熟したりしてこのアルバムに魅力も感じなくなるんだろう、などと不安をもった時期もあったものの、いっこうにその気配はなく、聴いて興奮するたんび、安心もする。
これで興奮できないくらいなら大人にならないでいい。くたばる。




MAD TAPE[その他]

youtube

ニコニコ動画などで知られるようになった「MAD動画」は映像と音だけど、こちらは音だけのMAD。
というかこの手のMADの系譜の原点とされるようだ。
80年代に出回った、アニメや特撮の音声部分をたくみに編集して笑えるネタに仕立てたカセットテープ。
僕は幼少期、所持していた兄に聞かせてまた聞かせとせがんでは、笑いすぎて呼吸困難になっていた。
いま聞いても笑える。力づくでもあるし、なにやら得体のしれない知性も感じる…。




邯鄲の歩み[中国故事]




むかしむかし、ある田舎の若人が、邯鄲という都に憧れをもっていた。
邯鄲の人たちは歩き方まで洒落ているとの噂だ。
その歩き方をまねて自分も都人となるのだと、若人は故郷を捨て旅へ出た。
果たして若人は邯鄲に辿り着き、そして故郷に帰ってきた。
結局都人のその歩き方など会得できなかった。
それどころか、故郷にいたころの歩き方まで忘れてしまった。
帰り道は地を這って帰ってきたのだった…。
たしかこんな話だった。「荘子」に収められた話のようだ。
よくできている。教訓を抜きにしても話として面白く、そしておそろしい。
まだ幼いころに知った話だが、当時の時点で、なんだか身に覚えがある話だと急所を突かれた気がした。




電人ザボーガー[特撮]




ザボーガーはろくに苦戦しない。
だいたい、圧倒的なパワーで敵に楽勝する。
あまつさえ楽勝したあとに追い打ちまでかける始末。
その容赦ない残虐なヒーロー像に、自分の中の俗な部分の欲求がたいへん満たされる。
あと敵役にあたる悪之宮博士の可愛さったらない。
全然あくどいこと企んでるように見えない。サークル活動してるみたい。




[フェリックス・ヴァロットン][西洋画]




ひと目見て、目線が縛られた。見ているとひたすら不安に駆られる。
空間の表現、立体法に仕掛けがあるらしい。理論は呑み込める気がする。
もちろん仕組みなど謎めいたままでいい。
こちらはよくわからない不安に駆られたくて眺めるんだから。




赤いカーペットの少女[西洋画]




これも、見れば見るほどひたすら不安になる。
そして見れば見るほどこの世界に惹き込まれ、引きずり込まれるような心地にも浸れる。




桜花返咲図扇面[鈴木其一][日本画]




うつくしい…。
ただ単に美しい。
芸術への向き合い方の一つとして、見惚れるだけでもいいのだなと体感できた作品。
これを鑑賞した当時は精神が摩耗しきっていた頃合いで、この一枚にどれだけ救われたかしれない。
うつくしさには精神を浄化させる力があるのだと思い知った。


隅田川[作者不詳]
府中美術館の企画展で偶然見かけた一枚。
作者もわからず、またありふれた題だから検索もかなわない。
本当にこの題だったかも疑わしい。
静岡のどこぞの美術館所蔵と記載されていた気がする。



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このページは今後も更新していこうと思う。
…のだけども、記事作成エディタの仕様がおぼつかずまともなレイアウトにならないので、あきらめてしまうやも。


2020年05月01日(金) その他好きなもの-1

1ジャンルにつき3作品くらいまで。順位付けなし。


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笑ゥせえるすまん[藤子・F・不二夫原作][TVアニメ]




こいつは本当に怖い。
僕が最も印象深いのはエンディングで、牧歌的な曲が流れるなか、喪黒福造があの特徴的な歩き方でのんびり平野を歩いていく映像にじっとり恐怖した。
”本編であんなに恐ろしい話が繰り広げられていたのに、こいつにとってあれは取るに足らない茶飯事なのか”と思わせるほど日常さに。
子供のころにたくさんのトラウマを植え付けられた作品。
でも子供にトラウマを残す作品には一定の価値がある…。




輪るピングドラム[幾原邦彦原案][TVアニメ]




傑作揃いの幾原監督作品からは「少女革命ウテナ」とどちらにするか悩んだ。
どちらも、脳内麻薬をジャブジャブ出させてくれる映像の面白さが魅力だ。
「輪るピングドラム」は2クールでキチッとまとまってるのと、最終話が感動的過ぎた。
最終話までに散りばめられた、到底回収しきれるとは思えなかった布石の数々を、その一瞬で全て決着させる”物語の答え”としての決定的一言があり、これに深く感動した。




機動戦士Zガンダム[TVアニメ]




ガンダムは、それを知らない人へは”ニュータイプ”の説明を軸にするべきと信じている。
…そう遠くないであろう未来、人口の増えすぎた人類は宇宙にスペースコロニーと呼ばれる住環境を造営し、おおよそ全人口の半数がここへ移住することとなった。すると地球から離れた環境で過ごし始めた人類の一部に、これまで閉ざされていた新たなる感覚が覚醒した、という説が現れた。ときのスペースコロニー運営者は、これを”ニュータイプ”と呼称し、人類の進化系であると自説を唱え、地球に居残るものたちは旧い人類、”オールドタイプ”であると差別し、地球の文化圏から独立するため”ジオン公国”を宣言する。こうして起こった戦争下で、スペースノイドの一人であるアムロ・レイが、成り行き上戦火に身を投じていくなかで、ニュータイプとして覚醒していく…。
ニュータイプには多義的な解釈があり、ファンはおとか原作者である富野由悠季すらこれという答えを出していないが、大雑把に言えば「極端に高められた情報処理能力による、高精度の直感力、洞察力」と僕は捉えている。話の上では、やってることは戦争なので、これが戦闘能力に直結する(攻撃があちらからくるぞ、なんだか嫌な予感がするぞ、こっちにライフルを撃てば当たる気がするぞ)。ところが、ひとたび戦闘を離れると、ニュータイプの能力の真価は”相互理解”にこそ表れることがわかる。高度なニュータイプ同士であれば、精神が溶け合ったかのような感覚も共有することとなる。
…以上はかなり乱暴なまとめ方ではあるものの、最低限の説明にはなっているはずだ。
これが「機動戦士ガンダム」の世界観の前提。
そして、「Zガンダム」はその応用編にあたる。ニュータイプが否定的に描かれだすのが「Zガンダム」。
無印よりも人間関係が複雑で楽しい。




けいおん劇場版[京都アニメーション][アニメ映画]




けいおんはTVシリーズより先にこの劇場版から入った。
ろくに知らない彼女たちがきゃっきゃと楽しそうに動く仕草に話す笑顔に歌う声に演奏する姿に涙してしまった。
彼女たちが楽しそうなだけ、可愛いだけなら、ここまで名作扱いはされていないだろうが、しかしまた彼女たちが楽しそうだ、可愛い、と思わせるための仕掛けが、質も量もハンパじゃない。
多くの人が褒めそやすのに同じく、僕もまた、この映画の何気ない表現の数々に強く惹かれる。
飛行機のシーンだけでどれだけの創意が詰め込まれていることか。




ガールズ&パンツァー劇場版[アニメ映画]




戦車バーンバーンバーン!
なんて楽しいんだろう。
戦車バーン!を一切邪魔立てしない、無駄のないプロット。
無駄はないけど隙間はある。その隙間にはキャラクターを愛せる遊び心が盛りだくさん。
萌えるとかうっとりするとかでなく、みんないい子でエールを送りたくなる感じ。
僕にガルパンを薦めてくれた友達は「何度見ても手に汗握るんだよ。どっちが勝つんだろう、今度こそ負けちゃうんじゃないか…ってハラハラする」と言っていて、狂ってんじゃねーのかと当時は笑ったけども、見てみるとたしかにその感覚を味わえた。
そしてエンディングで泣く。
ねばちっこさのないさわやかな感動で、心が洗われる。




魔女の宅急便[スタジオジブリ][アニメ映画]




なんど見てもクライマックスで泣く。泣いてばっかりだな。
この物語に冒険はなく(となりのトトロにすらあるのに!)、人との交わりによる小さな物語の積み重ねであのラストへ辿り着くわけで、その営みの連続に泣けてしまう。
今更わざわざ言うまでもないがアニメーションもキレまくってる。
僕が好きなのはやはりクライマックスの、キキが風に耐えながら箒飛行する際の揺れ動き。
「箒で空を飛ぶ」感覚なんかこちらは知らないはずなのに、ありあり肌感覚で伝わってくる。
なんであんな表現が可能なのやら、全然わからない。




AIR[エロゲ]




実はエロゲだけでベスト50もまとめてある。
たださすがに厳選されきった50作とまではならず、すべてを誉めそやしっぱなしではいられないから、ぼつにした。
とはいえ上位十作ともなれば激戦。神がかったシナリオ作品ばかりが並んだ。
AIRはそのランキングで一位に置かせてもらった。一位の格に相応しいのはAIRしかなかった。
要素を分割して評価するわけにもいかない、全てが一体化した名作中の名作。
この作品が産み出されたこと自体が一つの奇跡。
お涙ちょうだいのドラマ部分もアリだけれど、核心はテーマをえぐりだすための物語構造、たくみな仕掛けにある。
批評家東浩紀がいうところの「父の不在」。
父になれないプレイヤーという、断絶の哲学。
この作品は当時、エヴァでアレルギーになったのか一部のファンから、作中で答えを出さ投げっぱなしのシナリオは云々とたくさん批判されていた。
答えをシナリオの中にばかり求めるからそうなる。
シナリオの外にも批評眼を仕向けてみるメタフィクションの味わい方が広まるにつれ世間にも再評価され、今では名ばかりでなく確かな名作扱いされていることを嬉しく思う。




素晴らしき日々〜不連続存在〜[エロゲ]




エロゲ史に君臨する快作。
西洋哲学、純文学、純愛、ラブコメ、自殺、いじめ、ドラッグ、復讐劇、電波、格闘、心理学、宗教、怪奇、ミステリー、ホラー、グロ、…などなどあらゆる要素をぶち込みながら、「"私"とは何か?」というテーマにシナリオが収束していく。
ヴィトゲンシュタインの思想が下敷きにあり、プレイ前にはやれ難解だとかやれワケワカランといった評判を多く耳にしていた。
がプレイしてみれば、単純にシナリオ展開がたいへんに面白い。
学校内の一つの事件をめぐって多数の視点から真相を紐解いていくその手並みの鮮やかさに血湧き肉躍る。
確実に他のメディアでは実現できない、エロゲだからこそなしえた完成度、比べ得るもののない名作ぶり。
ただ絵があまりにも往年の美少女絵という感じで、それに慣れた身にすらちょっと難がある。
だからといって敬遠するのはあまりにもったいない。
話もプレイし始めてから5時間ほどはかなり冗長で苦痛。
だからといって諦めるのはあまりにもったいない。
中盤からの物語の大回転を多くの人に体感してほしい。




装甲悪鬼村正[エロゲ]




最強のエロゲ。
善と悪とをテーマとして、それを延々、徹底的に突き詰めるシナリオ…というと堅苦しいが、題材としては架空戦記もので、極上のエンタメ作品に仕上がっている。
メーカーはニトロプラス。今となっては「まどマギ」や「Fate/ZERO」で有名になった虚淵玄をキーパーソンとしている、熱い男気と鬱展開が得意な会社だが、その10周年記念として企画された本作は、熱さも重苦しさも他に例を観ない。
立役者であるシナリオライターの奈良原一徹はもともと剣術道場の師範だとかで、それだけに作中剣を扱うシーンでは長々と本格の講釈が入るなども楽しい。
エロ要素はほぼ皆無で、いわゆるエロゲっぽくないエロゲでありつつ、エロゲだからこそ仕上がったと言える作品。
18禁であるがゆえに描写や展開にブレーキをかけず突っ走れるわけだ。
アニメ、漫画、映画、いずれもこの作品の媒体には適さない。
そもそもプレイ時間が60時間に達する大ボリューム。
小説を除く他のいかなる媒体でも、このボリュームを完成された書下ろし作品としては世に出せないだろう。
これはエロゲの大きな魅力の一つ。
漫画ではどんな大長編も連載中に軌道修正されていってしまい、なかなか一筋にまとまったストーリー展開が結末へ着地とはいかないところを、エロゲはやってのけてくれるわけだ。
またシナリオだけでなくCG、音楽、演出など、全てにおいて製作した人たちの本気を実感できる大作でもある。
プロすげーなと痛感させられる。




古賀[松本人志][コント]




松本人志の笑いの核心のいくつかが凝縮されたコント。
大きな笑いのあるコントでなく、特異な空気感にずっとニヤニヤさせられる。
男友達同士に特有の”なんか嫌ぁな空気”が見せ場。
古賀という男に仮託された男性像は、ひょっとすると自分にもあるのかもしれない。
この人間像を抽出できるって、つくづく松本人志はすごい。




とかげのおっさん[松本人志][コント]




これもまた、松本人志の笑いの核心のいくつかが凝縮されたロングコント。
松本人志扮する半獣人の"とかげのおっさん"と浜田雅功扮する子供との二人芝居。
設定だけ決め合ってからはほぼアドリブという、ダウンタウンらしい一回性が持ち味の演劇。
途中途中、松本人志が"とかげのおっさん"というキャラクターに見事に入り込んでるのがよくわかる。
当人もたしか、「これ以上入り込むと帰ってこれなくなる」みたいな感覚に何度かおちいったと述懐していた。
だから熱演という感じではない。本当に"とかげのおっさん"という存在があるような目で見てしまえる。
哀愁が漂うどころではない。哀愁に圧しつぶされる。




働くおっさん人形[テレビ番組]




これも松本人志。
芸能人でない一般人の、どこにでもいそうな冴えないおっさんに、ただひたすら松本人志がインタビュー形式で質問を重ねていく。
おっさんは応答のなかで、自分をよく見せるためかしょうもない嘘をついたりする。
それを松本人志がつつく。嘘というほどでなくとも、発言に隙があったらば見逃さない。意地悪く、追い詰めていく。
その突き放した距離感が最高だった。
次シリーズにあたる「働くおっさん劇場」では、出演陣のおっさんたちをキャラクター化して松本人志がちょっと仲良くなってしまっていたから、かなりがっかりだった。
ただ仕方ないかもしれない。
「働くおっさん人形」は、あまりにもコミュニケーションの怖ろしさを映ししまっていたから。




ブレイキングバッド[海外TVドラマ]




癌を宣告された化学教師が、教え子の悪ガキとともに麻薬製造に手を染める…
一級品のエンターテインメント。
ハリウッドに代表される娯楽性から一歩二歩進んだ、現代アメリカ作品の旨味が凝縮されたような。
脚本が秀抜。登場人物にも視聴者にも容赦しない。
最悪だなあ、という状況から更に最悪さを突き詰めていく胃痛展開。
話がセオリーな進展をしない。
見覚えあるシルエットのパズルが、見慣れない手順で、異形のピースによって組み立てられていく。




ファイナルファンタジータクティクス[スクウェア][シミュレーションRPG]




シミュレーションRPGの最高峰。
ゲーム性、シナリオ、グラフィック、BGM、ちょっとしたギミックに至るまで褒めどころが多すぎて困る。
だから一回の戦闘に何時間かけても楽しい。
割り当てられるジョブの増加にしても多彩なアビリティの習得にしてもキャラクターを成長させていく楽しみが快感的ですらある。
さらにもう一つ、名作ゲームってどうしてこうも効果音がいいのだろう。
何も剣戟だとかのアクションに伴う音に限らず、コントローラー操作に割り当てられた効果音一つ一つが心地いい。
難易度はぬるめ。
それでも尋常のRPGとは比較にならない数多の変数要素を組み合わせてしっかりゲームバランスを成立させているのだから感動的。




風来のシレン[チュンソフト][RPG/SFC]




1000回遊べるRPGが当時のキャッチコピーだったはずだが、偽りない。
何度プレイしても楽しい。何度プレイしても楽しいようにできている。
難易調整と自由度、プレイヤーに委ねられた工夫の余地が抜群。
人がプレイするのを見ているだけでも楽しい。
和の世界観もシャレすぎない程度に仕上がってる。グラフィックやBGMも好き。


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次の記事へ続きます。


2020年04月25日(土) 漫画ベスト50 [10-1]

順位付けなんかして何様だと自戒したくもなりますが、ここに並べてある作品はいずれも「神!」くらいに思っています。


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10.PINK(全1巻)[岡崎京子]



昼はOL、夜はホテトル。部屋にはワニを飼っている。
設定と人物造型と話運びと演出がかんぺきにガッチリはまって、始まりから終わりまで隙がなく、作品としての完結度が高すぎ、感想しようにも手に負えない。
すごい…。
よくもこんな、移ろいゆく時代の一側面とその底にたゆたう普遍性とを、まるでスキップするような調子で、軽妙に、ドラマとしても楽しませながら…と言葉を連ねるほど安っぽくなってしまう。まともに感想できない。
単行本一冊単位の物語を描かせたら往年の岡崎京子を越える漫画家はいないんじゃないか。
というより物語作家として随一なんじゃないか。
唯一の難点は読むとあんまり圧倒されちゃうから、うかつに読めないこと。




9.ジョジョの奇妙な冒険(シリーズ100巻超)[荒木飛呂彦]



ジョジョは第何部が好きかを男の子に問うのは、宗教を尋ねるようなものですね。
千年の友情も壊れるし、万年の友情だって始まる。
僕は第四部がたまらなく好きだ。
町を舞台にしている分もはや”冒険”ではないのだが、それだけに”奇妙”さが際立っていて、おそろしさも興奮度も突き抜けてる。
少年をワクワクさせる要素てんこもり。
素晴らしいのは、大人が読んでもその少年性が呼び起こさせられる刺激性。
それは奇抜なアイデアを神がかったような技術で漫画に落とし込めている荒木先生の芸当あってだけれど、のみならず、作者も編集者も読者もみんながみんなイキイキとジョジョを楽しんでいたその魂が、まるごと漫画に閉じ込められているみたいな、神秘的な魔力まで感じてしまう。




8.今日から俺は!(全38巻)[西森博之]



西森先生の最高傑作は「天使な小生意気」だと思うし、一番笑えるのは「道士郎でござる」で、一番人に薦めやすいのが「お茶にごす」と、それぞれの太鼓判があるのだけども、代表作はいつまでも「今日から俺は!」であってほしい。
漫画的トラブルの配置とその解決への筋道が見事すぎる。
それも、シナリオのレールを沿うだけの無機質な調子でなく、キャラクターあっての大運動会の顛末なのだから素晴らしい。
また、この人の漫画には、漫画である必然性がいつもある。
他の媒体では不可能な表現にいつも感動してしまう。
コマ割りが上手い作家という話題で名が挙げられている記憶はないけれど、めちゃくちゃ上手い。
上手さを意識させない点でも神がかっている。
しかも誰も真似できない、このひとだけの呼吸がある。



7.ガラスの仮面(1〜49〜続刊)[美内すずえ]



ネタ漫画のつもりで読んでみたらとんでもない名作で、ひれ伏しきった。
ハイハイ演劇ものの少女漫画なんでしょうなどと、くれぐれも知ったつもりになってはいけない。
まさにオールジャンルという冠がふさわしい。青春、恋愛、友情、家族、スポ根、芸術、社会性、ミステリー、笑いあり涙ありな上、バトル漫画としての構造まである。
そのシナリオ進行の面白味もさることながら、作中劇にしてみてもこれだけで一本の傑作が成立するほど仕上がっているのだからつくづく贅沢だ。
キャラクターもばりばりたっている。
主人公のライバル役となる亜弓さんの、至上ともいえる気高さったらない。
また単に人物としても、主人公との関係性にしても、多くのひねりがあり、古さがないどころか、いっそ新しさまで感じられる。
そしてこれは作品に一貫している。ありきたりだなあと白ける要素がまるでない。
漫画読みほど新鮮に感じられるかもしれない。
ためらいなく人に薦めたい一本。




6.ピンポン(全5巻)[松本大洋]



漫画として完成しきってる。
それが言いすぎであろうとも、せめて青春スポーツ漫画の完成形とは言わせてほしい。
キャラクターの人格も行動様式も関係図も成長も、卓球を題材としたその生かし方も、また勝敗の展開も、描画も、ちょっとした遊び心も、しゃれっ気も、茶目っ気も、ぜんぶひっくるめて、楽しい!
この、楽しい! こそ、漫画の本分じゃないかと思う。その仕事を見事にやりきってる。
もうここから1コマも引けないし、ここに1コマも足せない。
セリフの1文字はおろか、描線1本にしたって変えられない。
傑作揃いの松本大洋、「しあわせなら手を叩こう」も「鉄コン筋クリート」あたりも大好きだから悩んだ。
作中、ドラゴンと呼ばれる強キャラがインタビューへの返答で、月本君のようなレベルの選手がわが校にいないことが水準の低下を云々と演説しているけども、この論法はまさしく松本大洋自身に向けてしまえる。
つまり、たとえば小説界において、"松本大洋のようなレベルの作家が"と言ってしまえる。
こんな才能が漫画界に流れたことは、他の分野からすれば計り知れない損失。
そしてもちろん漫画界からすれば、代えのきかない宝物。




5.シグルイ(全15巻)[山口貴由]



残酷時代劇。箸が転んでも腸が飛び出す。なにかと腸が出る。
とは申せ、グロテスクなどは問題じゃない。
どっぷり濃厚なシナリオと切れ味するどいエピソード、常にスリルある話運び、また特徴的なナレーションによる独特のテンポがたまらない。
技もかっこいい。
なのに剣技に頼りきらないのが虎眼流。抜刀惜しさに、そのあたりの石で敵の顔をつぶしたりする。実際の剣術家もそうだったのかもしれないと思わせられる妙な説得力がある。
そうした生々しさが全体に行き届いている。江戸時代の風俗や武家の嗜みについての細かい蘊蓄はいちいち興味深い。
セリフ回しも素晴らしい。名言がたくさんある。
というよりほとんどのセリフを名言としてしまいたいほど。この点ネット文化と好相性で、よくレス画像に使われているのを見かける。
だからといってネタ的にだけ味わうのはもったいない。
シリアスに読んでもがっつり答えてくれる、たぐいまれな足腰の強さが魅力の作品でもある。




4.わたしは真悟(文庫版全6巻)[楳図かずお]



ボーイミーツガールミーツロボット。
楳図かずおの本気。
ホラーやギャグばかりの面白おじさんじゃないんだとよ思い知らされる。なんのてらいもなく心服できる。
いや心服なんて生ぬるい。崇め奉りたくなるような…神々しさまで感じるようになる。
この漫画はまさしく神を描いた作品でもあり、終盤にはそこいらのセカイ系がかるく吹っ飛ぶ壮大な宇宙観が表れるが、序盤から中盤にかけての、少年少女の世にも美しい逃避行は、それにも増してかけがえない。
少年少女の全てがつめこめられたような凄味。
少年少女の神性を信じきってる楳図先生のきよらかな思念がダイレクトに伝わってくる。




3.リングにかけろ(全25巻)[車田正美]



男のバイブル。
最初期のひたすらに貧しい、ちまちましたボクシング漫画やってたころも好きだし、必殺技が飛び出すようにあってきた頃も盛り上がるし、そして終盤の剣崎順には惚れざるをえない。
ハッタリもよく利いている。発電所でトレーニングして必殺パンチを編み出しましたとか、わけのわからない理屈ならぬ理屈が楽しい。
しかし車田漫画はネタにできる突っ込みどころが多すぎてもったいない読まれ方をされがち。読み終わった後にはどれだけ笑いにしてもいい。でも読んでいる最中は同じ地平に立ちのめりこんでしまわないと、どんなツッコミも野暮で空虚で無粋だ。あの熱量を受け入れさえすればどれだけ感動できることか。
今でも通じるいわゆるジャンプ漫画というと、その原点に「ドラゴンボール」や「北斗の拳」が挙げられがちで、まれに「聖闘士星矢」も触れられるけど、僕はリンかけこそがパラダイムシフトであったと思う。リンかけの最序盤はまだジャンプ漫画の文法になっておらずまんま昭和の漫画。それが中盤からグッとリアリティが薄れて、高火力演出のバトル漫画となる。バトル漫画の美味しいところは大体リンかけがやってる。ここで大事な力学は"カッコいい"こと。ポーズが、セリフが、必殺技が、行動理念が、哲学が、リンかけはとにかく"カッコいい"。




2.火の鳥(文庫版全10巻)[手塚治虫]



まだ幼いころ、手塚が嫌いだった。絵が嫌だった。
がどうしてもやることのない暇な夜に、親の持っていたこの漫画を読んだ。
いつの間にやら読みふけり、夜も更けていたが、いつも口うるさい親がこの夜ばかりは放っておいてくれた。
三冊分ほど読み終えて、ますます手塚が嫌いになった。
話が怖すぎるのだ。
人間が次から次へ憂き目に遭う。
悪人だけならまだしも、善人だって途方のない受難にみまわれる。
それにまた多くの子供と同様に、僕もよく宇宙や永遠や漠然とした死というものを考えては身震いする少年だったから、急所を突かれたような狂おしさがあった。
結局この夜は眠れなかった。
大きくなってから読みなおしてみたら、子供の頃よりなお恐ろしかった。
手塚は自身がヒューマニスト扱いされるのを嫌っていたという。この大作にしてみても、ヒューマニズムが主軸にあるとするのは(それを人道主義と解釈する限り)あまりに表層的な見方だ。
ただし人間そのものを…その核心を抜きだそうと、その輪郭を描き残そうと、そのありったけをこの漫画に収めようとしていたのではないかとは、読みかえすたび信じ込んでしまいたくなる。
だから恐ろしくもなる。人間そのものが収められた作品が、恐ろしくないわけがない。




1.寄生獣(全10巻)[岩明均]



かんっ…
…
…ぺきに完全で隙がない…。
テーマ、シナリオ、キャラ、エピソード、テンポ、バトル、キャラクター、セリフ、ミギー、作画、興奮度、衝撃度、没入度、どれをとってみても素晴らしく、そしてそれらが一切無駄なく一本のストーリー上に紡がれる美しき調和。
まだ「寄生獣」を読んでない人が恨めしくて仕方ない。
全10巻というところにもふしぎな完全性を見出せる。
1巻1巻、1話1話が割り当てられた役割をあまりにも全うしすぎていて、どの巻を手にしてみてもどっしり重みを感じる。
それが10巻できれいに終わる。完全な調和。
ところが僕の実家には30冊の「寄生獣」があった。
長兄と次兄と僕とでそれぞれ揃えていたのだ。
僕ら三人兄弟はものの好みがまるで違う。しかし「寄生獣」は全員が好きだった。
たとえ読みかた好みかたが違うにしても、あの面白さ…漫画で可能な面白味をあらん限り凝縮しきったようなあの面白さ…の前にあっては、惑星を前にした岩と砂の違いでしかないのか。
いけ好かないあの子も「寄生獣」を好き好んでいるかもしれない。
親の仇にだって「寄生獣」を読ませてやりたい。
この面白さを地上の全人類で共有したい。


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ほか思いつく限りのお気に入りを以下に羅列。

ハーツ&マインズ、あげくの果てのカノン、ハイスクール奇面組、五年生、のだめカンタービレ、七夕の国、ヒストリエ、ピコピコ少年、第七女子会彷徨、封神演義、町でうわさの天狗の子、のたり松太郎、漂流教室、奇子、ブッダ、アドルフに告ぐ、GS美神極楽大作戦、無限の住人、ハーメルンのバイオリン弾き、黄金のラフ、ラストイニング、ドーリィ♪カノン、ゾンビ屋れいこ、半神、残酷な神が支配する、谷仮面、夏坂、忍空、とめはね!、帯をギュッとね!、Piece、深夜のダメ恋図鑑、MMR、コールドゲーム、女王の花、5時から9時まで、ぴんとこな、エクセル・サーガ、幕張、ニューハワイ、ネウロ、スラムダンク、とりあえず地球が滅びる前に、度胸星、大正野郎、へうげもの、ピューと吹くジャガー、すごいよマサルさん、7SEEDS、ミステリと言う勿れ、昨日何食べた?、西洋骨董洋菓子店、ぱら☆いぞ、銀と金、カイジ、アカギ、天、無頼伝涯、度胸星、大正野郎、へうげもの、お尻触ってくる人なんなの、成程、スペシャル、月曜日の友達、ヴォイニッチホテル、制服盗まれた、赤色エレジー、アオイホノオ、吼えろペン、ベルサイユのばら、ゼブラーマン、最終兵器彼女、シガテラ、はじめの一歩、ギャグマンガ日和、ギャラリーフェイク、とりかえばや、うずまき


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ベスト50のどこかに入るはずなのに漏れていた2タイトルを追記。


ニッケルオデオン(全3巻)[道満晴明]
おしゃれで可愛くてちゃんと面白い、といえる漫画が2010年代にかなり増えた。
道満先生はその筆頭、牽引役といえたんじゃないか。
めちゃおしゃれでめちゃ可愛くてめちゃ面白い。
「ニッケルオデオン」は道満先生のその手練手管がいかんなく発揮された短編集。
豊富なアイデアの数々は、映画小説漫画などの過去作品を引き合いにうまいことセオリーの逆手をとったりしていて、いずれにも一ひねり二ひねりきいている。
短編にしておくにはもったいないような話もちらほらある。そんなアイデアも世界観もざくざく使い捨てるのだから実にぜいたくな読み物だ。


ドラゴンボール(全38巻)[鳥山明]
言わずと知れたバトル漫画としての魅力はもちろん、作者がキャラクターに寄り添っていないからこそ引き立つ人物像の奥行きが見どころでもある。
主人公孫悟空の結婚の成り行きがわかりやすい。ほか細かいところでもいろいろと、到底"通常の漫画の約束事ではありえない"描写がてんこもり。
日本一メジャーな少年漫画でありながら、メジャーじゃない手法ばっかりなのだ。それがまた時代も世代も越えて多くの人を惹きつけているのだと信ずる。


2020年04月24日(金) 漫画ベスト50 [30-11]

短編は入れだすときりがないから、かなり省いています。
それでも入れてあるのは、よっぽど好きというもの。


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30.六の宮姫子の悲劇(短編読み切り)[つりたくにこ)]



ガロらしさの色濃い、どこまでも奥行き尽きない、視力を狂わされるような漫画。
悲劇ってなんだろう。
と傍から考えたとき、悲劇は大体悲劇的になる。
六の宮姫子にとっての悲劇は、傍から当て推量するものでない。どこまでも当事者のもので、本来悲劇とはそういうもの。
だから、この漫画は、六の宮姫子の悲劇。
どれだけ抱きしめたくても読者の手は彼女に届かない。




29.うしおととら(全33巻)[藤田和日郎]



少年漫画の到達点。
荒々しい豪快な絵が印象的な妖怪バトル漫画で、作者の入魂をこれでもかと味わえる。
伏線ばりばりの面白すぎる物語、泣かせるエピソード、キャラクターたちの境遇の過酷さ、それを乗り越えていく熱さ。
藤田和日郎の絵の一番の強みは、描線が生きていることに違いない。
象徴的なのはキャラの表情。漫画界でも最上なんじゃないだろうか。
同じ作者でも、シナリオの緻密さや演出のダイナミックさでいえば、「からくりサーカス」の方が優れているかもしれない。
だが「うしおととら」は物語終盤、ラストにかけての突っ走りが群を抜いている。
泣きながら震えながら燃え上がりながらどかどか炸裂するカタルシス。すんごい。
あと主人公の武器がめずらしい。槍。"獣の槍"。この"獣の槍"のデザインがめっぽう格好いい。設定もすんごい。




28.南瓜とマヨネーズ(全1巻)[魚喃キリコ]



あの時代にあの時代をよくぞこの作品に残しておいてくれたと、僕が権威ある人間なら最高峰の賞を授けるものを。
女たらしの代名詞となった"ドン・ファン"や、カミュの異邦人における青年"ムルソー"のように、ある人物像の象徴として名を残し続ける存在があるが、この漫画の"ハギオ"もまた、時代の一側面をとその身に担ったキャラクターだ。軽率で軽薄で、誰のことも好きでなく、何を考えているのかよくわからない。
男側から見た女像として、何を考えているかよくわからない女はあらゆる作品にさんざん描かれてきた。比べると女から見た男像として、何を考えているかよくわからない男というのは、なかなか描かれてこない。描かれたとしても、最終的にはその片鱗に理解が及ぶようまとめられがちだ。ハギオは、最後までよくわからない。だが"このよくわからない男、なんか知ってる""男ってこういうところある"と、読み手に思わせるところがある。そしてそれは、男たちに共通する神秘ではない。女たちが共有している秘密なのだと思う。



27.孤独のグルメ(全2巻)(久住昌之/谷口ジロー)



輸入雑貨商、独り身中年の井之頭五郎は今日も飯を求めて街を練り歩く。
すっかり有名作となりましたね。
初めて読んだ際の感想は、”この面白さが他の人にわかるのだろうか”だった。
人気が出ていくにつれ、“これの面白さがわかる時代になってきてるのか”という感動があった一方で、”みんな本当にわかってるのか”という不安もあった。
ファンの多くに共通した心理じゃないかと思う。
なにぶんこの漫画の魅力は言語化しにくいところにある。
そして、だからこそ漫画として表現されたということ自体に尊厳がある。




26.妖怪ハンター(シリーズ10巻分ほど)[諸星大二郎]



考古学者稗田礼二郎があちらこちらの妖怪と対峙し退治していく話…では決してない。
稗田礼二郎はたしかに妖怪をはじめとした怪現象のもとに呼ばれ、その謎について迫られ、学識ぶった解説はするが、問題解決はしないことがほとんど、また本当に単なる学者なので対決なんてもってのほか。事件の観測者、語り部に過ぎない。
だから対決構造に慣れきった身ほどギョッとする。僕にはこの感覚がとても気持ちよかった。
そしてまた快現象のアイデアが豊富で奥深く、そこには漫画的ハッタリもよく効能していて、空想欲がどっぷり満たされる。
どの話が好きというより、諸星大二郎先生の描く世界が好き。
だから「妖怪ハンター」でなくても、先生の作品の何を読んでも求めていたものは満たされてる。




25.ノーマーク爆牌党(全10巻)[片山まさゆき]



特殊能力(ほぼ)なしの麻雀漫画。実際に凄腕らしい作者の、実戦理論らしき話もちらほら。
ただこの漫画の最たる魅力はキャラクター。
どのキャラにも可愛らしさと格好良さがあり惹きつけられる。
展開にも意外性とカタルシスがあり、麻雀のルールがわからなくたって面白く読めるはず。
一見では絵が下手に見えるかもしれないが、漫画としては成立している。申し分なく上手いと思う。




24.最強伝説黒沢(全11巻)[福本伸行]



福本先生の息抜きに描かれ始めたコメディ…と見せかけて、骨太の福本力学が放たれていく。
工事現場作業員の独身四十路男黒沢が何をしても空回りする日常の様は、目を背けたくなるほどの哀愁に満ちながらなお笑いを誘う。
その布石もあいまって、終盤に立ち上がり燃え上がる黒沢の咆哮は、読者の胸を貫いた挙句貫通しきらず、ずっと胸中にとどまり続ける…
言い過ぎではない。すくなくとも僕の胸にはずっと黒沢が棲んでいる。




23.駅前花嫁(全1巻)[駕籠真太郎]



なにかと奇才やら鬼才やらと呼ばれがちだけれど、ストレートに天才でしょう。駕籠真太郎。
ただ才能の方向性が、グロとかエロとかスカトロとか、社会逸脱者の志向に伸びてしまっているだけで。
僕も彼の嗜好は得意でないけれど、何分あの天才を味わうためには仕方ない。
苦手を押し切ってでも天才の御業には触れたいもの。
20冊くらい読んだ中では、この短編集が最も、ネタも絵も充実しているよう思えた。
とはいえ、どの本がとか、どの話がとかではなく、とにかく言いたいのは、駕籠真太郎が天才だという一点。




22.それでも町は廻っている(全16巻)[石黒正数]



商店街を舞台とした日常もの。
初めて読んだ当時はまだまだ僕が未熟で、ギャグ漫画の枠にはめて読んでしまい、上手だけど別に笑えはしないな、くらいの下等な感想をいだいていた。
だんだん読み方がわかってくると、もう、こうべをたれずにはいられなかった。
1巻のあとがきにある"コミュニケーションの教科書になるような漫画(を描きたい)"という表現も今ならよくわかる。
人と人との触れ合いかくあるべしと、押しつけなしに学ばせてくれる。
また話作りには細やかなギミックがあちこちに仕掛けられ、そのおかげか"彼らの日常を追体験する"というよりかは"彼らの日常に迷い込む"感覚に読めば読むほど陥り、ドンドンのめり込むこととなる。
ほかにも語り切れないほど魅力が多いのに、それらがとっ散らからず一体化しているバランス感覚も至妙。
いうまでもなく「外天楼」も名作だけど、「それ町」の成し遂げた偉業がすさまじすぎる。




21.相討ち(短編)[平方イコルスン]



イコルスン先生の才能について考え出すと悔しくて悔しくて眠れなくなるほどなのに、認めないわけにはいかない面白さ。
女の子同士のずば抜けた会話の妙が現在の氏の漫画の主だった魅力とされるわけだけども、「相討ち」にはちょっと特殊な色合いがあり、わずか4ページの短編ながら、起承転結それぞれに感じ入るところがある。
男女ものでありながら恋愛関係度外視なのもいい。恋愛どころじゃないのだ、あの二人は。




20.よつばと!(既刊13巻)[あづまきよひこ]



日常系の境地。
この世界に入り浸っていたいと思わせる、心地よさにまみれた朝昼夜。
安直に"優しい世界"と表現したくはない。
でも、"正しい世界"と表現したくなるような憧れがある。
現実世界が間違いだらけで認めたくないだなんて安いイチャモンだが、現実がなんであれ、「よつばと!」の世界は正しい世界なのだと、「よつばと!」の世界こそがきっと正しい世界なのだと、思い込みたくなる。




19.シュメール星人(全3巻)[ツナミノユウ]



シュメール星人は宇宙人でありながら地球人とほぼ変わらない日常を過ごす。
ストレンジャーの心情を仮託されているのかもしれない。
とにもかくにも時代を先取りしすぎていた漫画。
単なる感性だけの問題でなく、共感性羞恥という概念の蔓延や、細やかなモラルの観点が多くの人に行き届いた今か今よりちょっと前なら、もっときっと読み取られやすいはずとも思える。
作家先生については尊敬の念が強すぎるあまりおそれ多くて言及できない。




18.サナギさん[全6巻+続編既刊2巻][施川ユウキ]



ちょっぴり毒気のある4コマ漫画。
日本語表現に暁通している施川先生だからこその視点や手並がぞんぶん堪能できるし、キャラクターたちはみな可愛らしく、読んでいて顔を緩ませない時間がない。
僕は施川先生を知るまで4コマ漫画は悉くつまらないものと決めつけていた。今でもそのきらいはある。
この漫画では、3コマ目ですでに答えとしての笑いを成就していることが多い。
そこに加えて4コマ目でもう一転し異次元殺法とするのだから並大抵の4コマ漫画じゃない。
氏の作品だと「オンノジ」が最高傑作なんじゃないかと思うし「森のテグー」は最も可愛らしく「もずくウォーキング」は最も人に薦めたく「ヨルとネル」は最も心に残った。
だけど一番好きなのは「サナギさん」。
サナギさんがフユちゃんとゲラゲラ笑ってるだけで幸せな気分になる。



17.HUNTER×HUNTER(1〜34〜続刊)[冨樫義博]



どうしても外せない…。
氏の最高傑作は「レベルE」であると長らく位置付けていたが、蟻編、選挙編、王位継承選編と進むにつれ、いよいよ少年漫画未踏の領域を突っ走ってきてるとうかがい知れ、ひれ伏さざるを得なくなった。暗黒大陸を踏破しようとしているのはおまえの方だと言いたくなる。
コマ割りの神妙は、才能によるだけのものとも思われない。映画でもアニメでもゲームでも、あるいはライブ映像や、はたまた現実世界の視界ひとつだってあまさず肥やしにして、漫画に還元している。
だから画面を見ているだけでも実は面白い。
その上に、あの文字量で繰り出される高濃度なシナリオ構成に触れられるんだから幸せだ。




16.夢幻紳士〜怪奇編〜(シリーズ数十巻分のうちの1冊)[高橋洋介]



主人公である夢幻魔実也さんは、…ウソだろう勘弁してくれと心を閉ざしてしまいたくなるような名前をしてはいるが…漫画界随一の色気をただよわすキャラクター。
その流し目、人を嘲るような薄笑み、静止画からでも伝わる気品にあふれた身のこなし、めろめろです。
妖怪や化物、怪異を相手取ってるはずなのに、魔実也さんの魅了っぷりがいちばんの怪異。
キャラクターを抜きにしても、画面の取りかたが素晴らしい。
その世界の必要部分がキチッとコマに収められている気持ちよさ。
お話も、えっここで終わるのってところで切る潔さが独特の余韻を残しクセになる。




15.ちーちゃんはちょっと足りない(全1巻)[阿部共実]



「空が灰色だから」で、目を背けたくなるような”うまくいかなさ”を見事に描出してみせた阿部共実先生の名作。
多かれ少なかれ、漫画はキャラクターに、主題に沿った善し悪しの立場を担わせるものだ。
何を善しとし、何を悪しとするか?
これを軸にシナリオで弁証法させたら、もう誰も阿部共実先生を越えられないんじゃないか、そしてこんな作品を描いてしまっては、もう先生自身も以後越えられないんじゃないか…とおののかされるような極まりが見受けられた。
ごたくを置いとくと、めっちゃくちゃ感動した。



14.エアマスター(全28巻)[柴田ヨクサル]



元体操選手である女子高生がその類稀な身体能力を活かして街の喧嘩ストリートファイトに身を投じていく。
ストリートファイトのロケ地が豊富で楽しい。
いつでもどこでもが醍醐味ですものね。歩道橋を飛ぶスカイマスターと金次郎のバトルは何度読んでも興奮する。
キャラクターたちの設定も幅広くよく練られている。
ゴーストライターやプロモデラー、アイドルオタク、ゲーマーなど、「どこでも」だけでなく「誰でも」を押し出すことで、ストリートファイトが立体化している。
また、今ではよく話題にもされる、いわゆる”主人公が絡まないバトル”、”敵同士のバトル”なるものは、僕の知る限りこの漫画が一番うまく面白い。
そして名言がわんさか。
キャラクターならではの名言もあるし、名言ありきで構成されたようなキャラクターもいる。
読んでる最中ずっと興奮しっぱなし。
合法ドラッグ。




13.李さん一家(短編)[つげ義春]



つげ義春による体験記仕立ての短編。
あまりに有名な最終ページの衝撃は、たしかに脳天をつらぬく。
その演出もさることながら、冒頭の、辺鄙な場所のボロ屋に住まうことにしたという描写もたまらない。
水木しげるを彷彿させる白と黒の草木の世界に、匂い立つような木造家屋の臨場感。
架空の五感が刺激され、あぁこのボロっちぃ景色愛しいなと信じられてくる。。
作者の美意識が脳髄に浸透する。その支配される感覚が心地良い。
つげ義春の醍醐味はここにあると思う。
もちろん「ねじ式」も大好きだ。何度読んでも、読むたびに感動してしまう。「やなぎ屋主人」も大好きだ。これはこれで、心境の領地が侵されていく感じ。




12.舞姫テレプシコーラ(全10巻+続編5巻)[山岸凉子]



小学生の姉妹を主人公に据えたバレエ漫画。
山岸凉子もまた、お話が書ける作家。
作者と物語に一定の距離が置かれているようなところがあり、キャラクターの幸にせよ不幸にせよ、”じゃあ、そういうことですので”くらいの突き放しを感じる。
そのバランスが絶妙で、怖いくらいに公正。話にわざとらしさがなさすぎてゾッとする。
これほどまでに話運びが自然な漫画を他に知らない。
この漫画には重苦しい展開もあるけれど、作品全体からいえば常に希望の方を向いていて、明るいとは言い難くとも、いたって健全だと思う。




11.デカスロン(全23巻)[山田芳裕]



マイナー陸上競技である十種競技を題材にしたスポーツ漫画。
大ゴマのド迫力、大胆でもあり繊細でもある登場人物たちの心理描写、先の気になってしかたない展開、褒めどころがありすぎる。
そして何度読んでも泣く。
十種にもわたる混合競技を描くにあたり、”やりたいことを一つに絞りきれなかった優柔不断さ”転じて”煩悩まみれ”という性を主人公に託したテーマの展開も見事。
あとこの漫画に登場する多々良というキャラクターが、全漫画通じてトップクラスに好き。


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