舌の色はピンク
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むかしむかしあるところに、 とても美しい娘がいました。 娘には意地悪な義理の母と姉がいました。 来る日も来る日も継母たちにいじめられる毎日。 灰がかぶる姿を嘲って、家族は娘をシンデレラと呼んでいました。
しかしシンデレラはドMでした。 「ああッ!お義母様いっぱい私をなぶって! お義姉様もっと私をなじって! そして踏んで!」 シンデレラは理想の家族に囲まれ、 充実した毎日を幸せに過ごしていました。
ある朝、シンデレラがいつものように継母の命令に従い さるぐつわをはめながら庭掃除をしていると、 姉が血相を変えて走って来、 シンデレラに強烈なジャンピングニーをかましました。 「ほうひまひは、おひょうはま」 「舞踏会があるのよ。なんでも王子様が参加なさるんですって!」 それが何故自分にジャンピングニーを かます理由になるのかはわからないけども、 痛みが快感にうつりゆくにつれ 恍惚の笑みを浮かべるシンデレラでした。 「はひ」 「噂によると王子様はドMらしいのよ。ちょうどアンタみたいにね。 この変態。 だからね、アンタみたいな醜い雌豚に首輪をして登場すれば、 王子様に対して女王様の器をアピールできるでしょう? ウフフどうかしら。完璧な計画でなくて?」 「おひょうはま、へんはい!」 「誰が変態よ! 役立たずの淫乱奴隷ふぜいが!」 本当はお嬢様天才と褒め称えたのですが、 さるぐつわのおかげで 一つ罵倒をいただけたので 相変わらずシンデレラはご満悦です。
さて、舞踏会当日がやってきました。 姉たちはシンデレラを放置して 先にお城へ向かってしまいました。 この放置を乗り越えなければ 女王の奴隷に認めてもらえない、 一種の試練とシンデレラは捉えましたが ぜんたいどうすればいいのかわかりません。 くたびれて町を歩いていると 黒い衣装をまとったおばあさんがいました。 「アラどうしたい、今夜は舞踏会だっていうのに小汚い格好をして」 シンデレラは、小汚いというフレーズにうっとりしながらも おばあさんに事情を話しました。 「よおくわかったよ。 お前がかぼちゃとトカゲとネズミさえ用意すれば、 あとはあたしが何とかしてやろう」 ネズミは私でいいですかとシンデレラは言いかけましたが シャレにならないので素直に集めました。
おばあさんがブツブツ呪文を唱えると、 かぼちゃは変形して木馬に、 ネズミは皮を剥がれ縄に、 トカゲは口から火を吐く即席ロウソクになりました。 おまけにきらびやかなドレスまで貰っています。 「まぁ素敵。これでどんなプレイもばっちりだわ」 「ただし12時までだからね。 これだけに気をつけて、楽しんでおいで」 「待って、おばあさま。 せっかくですからもう一つ魔法をいただけないかしら」 「聞こうじゃないか」 「私、今夜はすごくドキドキしていて…。 このままでは粗相して、 お姉様たちに迷惑をかけてしまいそうですの。 舞踏会の前にこの被虐願望を……どうにか満たしていただけないかしら」 「満たすというと…」 「私に辛い仕打ちをしてくだされば本望ですわ」 「本当にいいのかい」 「どうぞ」 「でも、大変なことになるよ」 「ぜひ、大変なことにしていただきたいのです」 ブツブツ……
「まあ!あの綺麗なお嬢様はどなた?」 「美しい……」 「なんと華麗な」 舞踏会に遅れること1時間、シンデレラがお城に到着すると、 これまで静かに踊っていた貴族たちがざわつきました。 「シンデレラ!?アナタ遅いじゃないの、それにどうしたの似合わないドレスなんて着て」 怪訝そうに戸惑う姉を、シンデレラははねのけました。 「邪魔ですことよ、お義姉様。いいえ、貴女なんて岩ね。 その汚い肌も、重い体も、邪魔なだけの存在も、岩と呼ぶにふさわしいわ」 「なっ……!シンデレラ、あなた!」 「Sデレラとお呼び!」
なんとシンデレラは、 自ら望んだ魔法によって 被虐の嗜好を取り除かれてしまったのでした。 元々のM心を満たすには、たしかに酷な仕打ちです。 それどころかいまやシンデレラは 強力過ぎた魔法によりドSにまで成り上がっているのでした。 「王子はどこなのよ」 「あ、ぼ、ぼくです…」 「アナタが王子? ふん、くっさいわね!」 「あぁっ!」
持参してきた器具も効を発揮し、 王子はすっかりシンデレラの虜になりました。 しかし、気づけば時刻は12時を迎えようとしています。 「次に会うときまで私の足、指、靴の味を覚えておきなさいよ」 シンデレラは急いで城を去りました。 片方の靴がなくなっていることに気づいたのは家に帰ってからでした。
魔法の解けたシンデレラは姉にこっぴどく叱られました。 いつもならありがたく頂戴する罵りも、 どうしてかあの夜から心地良くありません。 痛みに喘ぐ王子の顔が忘れられないのでした。
数日して、王子は舞踏会で出逢った女王様を ガラスの靴だけをたよりに探す催しを企てました。 関係ない女性ばかりが集い、 たまに靴のサイズが合ってしまえば狂喜の沙汰ですが、 さすがに王子もそれだけでは認めません。 「あぁ、ぼくの女王様はどこにいるのだ。早く出てきておくれ」 シンデレラは久しぶりに王子の顔を見て、体のうずきを感じました。 彼女はとうとう我慢しきれず野次馬から飛び出し ガラスの靴を履きました。
「アッ、貴女は…」 「ふん、相変わらずくっさいわね」 「女王様ァー!」
「私の靴をお舐め!」
シンデレラ(Cinderella)とは フランス語で灰かぶり(Cendrillon)という意味です。 長らくSとMとを潜在させる灰色――グレー状態にあった彼女は、 いま誰にも頼らずようやく本来の自分を見つけたのでした。 もはや誰にもシンデレラとは呼ばせません。 彼女はりっぱな女王様です。
地位、権威、そしてアイデンティティーを確立させた二人。 王子と女王さまは いつまでもいつまでも幸せに暮らしました。
Sデレラ おしまい
いい天気だったので 昼休みにサンドイッチと紅茶を持って ひとり オフィスの屋上に忍び込んだ。
扉に立ち入り禁止の札はない。 しかし錠はかかっている。
立ち入り禁止は読んで字のごとく 「ここ入っちゃだめですよ!」というメッセージが伝わるけど 錠前に関しては 「乗り越えられるものならかかってこい」みたいな 挑発的なポーズと解釈できる。 もしくは試練的な。「勇者よ。」とかいって。いってないけど。 そんなこんなで僕はためいらいなく 挑戦錠、の扉を乗り越えたんでありました。
屋上から風にあおられて 見下げる都会はどうにも気持ちいい。 調子に乗って、最上にある 高架水槽が設置されているスペースまで行こうと 梯子を昇っているといよいよ怖くなってきた。 高いし。 その高さを堪能したくて振り返ってしまう。 危険だし。 病みつきになる。どうにも気持ちいい。怖い。 また晴れた日に来ようと思った。
クリーニング店に衣服を取りに行ったら タバコを渡された。 「この前忘れていってましたよ」 律儀だなぁありがとうございます。 「あと、これもかな。忘れ物」 と言って店の主人が緩慢な動きで提示したそれは マックの割引券だった。 恥っず……。 (このガキときたらファーストフードの割引券持ち歩いてるのか まさにザ・貧乏人 小生意気にクリーニングなんか調子コイてんじゃねぇよ 俺様の手をわずらわせるなよ コインランドリー行けよ 割引で浮いた金でアイロン買えよ しかも俺様の店に忘れていきやがって ぶっとばすぞ それともお前アレか マックに勤めてる男か 営業か 浅ましい 実に浅ましい そして嘆かわしい 俺様はマックなんかいかねぇよ 下層に生きる庶民野郎と一緒にすんじゃねぇよ 100円あったらマックへ行ってろよ 俺は100円あったら募金するぜ それがノブレス・オブリージュ 貴族の義務ってやつだ わかったらさっさと帰ってママのおっぱいでも吸ってな サノバビッチ ノーフューチャー) という声がたしかに聞こえ 僕は逃げるように店を去った。 割引券はコンビニのゴミ箱へかなぐり捨てた。 空が青かった。
毎日やりたいことが多すぎる。休みが待ち遠しい。 なんて言ってる間にゴールデンウィークが近いですね。 みなさんどうお過ごしでしょう。 こんにちは。
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ていうか何、ゴールデンウィークとかいって。 そんなこと言ったら日本には 毎週一回はゴールデン曜日があるじゃない。 一週間が全て金曜になるような事態を連想させる言葉だ。
冗談はさておき 僕は木曜日が好きだ。 好きというか、別に何があるわけでもないけれど いや、むしろ何もないというその特性……に強く惹かれる。
地味なくせして 黙って腹案練りつつ機を伺っているようなイメージ。 週という戦場に潜む伏兵的存在感に愛着がある。 ポジションもいい。 週末でもなければジャンプの発売日でもない。 そして何より、木曜のやつは水曜と金曜に挟まれている。 あぁ、水と金! 水、神が捧げし生命を育む潤いよ! 金、万物の高上たる気位の象徴よ! 比べて……木、木、木ときたら。弱い弱すぎる。 「自分、緑です」と自己主張したところで 土曜日における土が 母なる地球を連想させてしまう以上、 いかんせん太刀打ちし得るレベルではない。 せめて林曜日とか森曜日とか言ってくれたら まだ荘厳の装いを飾れるのに、木曜日、ときた。よわい。 ここまで悲惨な木が 水と金に挟まれている現状を僕は看過できない。 彼の心情をおもんぱかると 同情、憐憫、哀切の念がとめどなく押し寄せるばかりなのであります。 好きですね。
なんていうんですか、 エロカワダサカッコいいから エロとカワとカッコい、を引いたようなステータスが 木曜には備わっていると思う。 あんまりかわいそうなので 僕は今度からこいつをロックンロール曜日と呼びたい。 「木曜みたいなこんなやつのどこがロックなんだ。真反対じゃないか」 と思われる方もいるかもしれない、が、 かのウィリアム・ジェームズらが 哲学性を形而下に置いたプラグマティズムを 外界へ発信しようと組織するにあたって 敢えて形而上学クラブと名称付けたと同じ皮肉を込めて、 ロックンロール曜日を呼びたい。
あと1時間弱で今週もまたロックンロール曜日が訪れます。 天気予報によると東京では今週のロックンロール曜日は 久しぶりに晴れるもよう。喜ばしい。
「大丈夫ですか、たいへんそうですね」 「あぁ悪いねぇ。いやー困るねここの駐輪場は自転車ばっかでよォ」 「本当ですね。まぁ駐輪場ですしね」 ガチャガチャ、ガチャーン ガシャンガシャン。 「ふん! まったくこんな場所に止めるなってんだよなァ」 「ちょっとでも整うよう、管理人さんが移動させているみたいですよ」 「だからって止めすぎだよなァ。あー、邪魔だな! どけろってんだよなァー どいつの自転車なんだか」 ガシャーン! 「僕のですね」
(20070423/れどれ×駐輪場整備員/西小山駅前)
| 2007年04月19日(木) |
おっちゃん、少年時代 |
今までアパートの隣が空室だったから ガンガン音楽かけていられたけれど とうとう新たな隣人がやってきた。 今後は控えないとなぁ。 でも気のいいおっちゃんで、 引越しの挨拶とともに大きな紙袋をくれた。 「これからよろしくお願いしゃす、へへっ、これどうぞ」 ワーオ実に大きい! 夢の詰まったサイズにワクドキ。 エーなんだろう ソバかな 果物かな ガサゴソ お菓子でもいーぞー ガサゴソ って どぅ〜わ〜 ティッシュボックスの詰め合わせだぁ〜
びっくりした。
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小学校のころ タチの悪い上級生から河原に呼び出され 金を出せとせびられるも 必死で抵抗していたらボコボコにリンチされて 泣きそうになっているところを 近所の優しいお姉ちゃんが堂々参上し 「アンタたち何やってるの!」 と助けてくれる、 そんな妄想を抱いていましたが 僕はいじめられもしなかったし 近所にお姉ちゃんもいませんでした。 普通の少年時代でした。
| 2007年04月18日(水) |
傘がなくたってしぬわけじゃねえさ |
ネットつながったぜワーイ。 モデムに モデモデ愛してるよって言ったら修復した。 安いやつだと思った。
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僕の部屋には意図的にTVを置いていないし 新聞も取ってないし 昨夜の時点ではネットも繋げてなかったため 情報鎖国と化していたから 今日の天気が不可知であった。 iモードとかいうインフォメイションテクノロジイなんて 難しくて理解不能。 と思って夜中ワタャイアンくんに天気教えてもらった。 「明日は雨だよ」 ありがとうなんて良いやつなんだ愛してるぜと 存分感謝したきりすっかり満足して 本題の彼の言葉を全力で忘却した僕は 今朝 傘を持たずして家を出て 案の定帰り濡れまくった。 ワタャイアンは役立たずだと思った。
あぁそういや掃除してて懐かしいものを見つけたのだった。
小5のときに転校をして、 1ヶ月ほど後に前いた学校のクラスメイト全員からの お手紙が送られきたんですね。 もう思いきし「先生に書かされました」的な。
「そっちでもサッカー頑張ってる?」とか(当時サッカー少年だった) 「こっちでは展覧会があって楽しかったよ〜 ――くんにも見て欲しかったなぁ」とか まぁ無難なメッセージがほとんどだったんですけど
で 当時仲良かった友達にキクチくんていうのがいて この男が、何といいますか ムーミンのキャラクターにスナフキンているじゃないですか ちょうど容貌も雰囲気もそのスナフキンに似てる彼なんですが 僕への手紙もキワだってたのでした。 「――くんへ キミの展覧会の作品は壊されたよ」 キ、キクチ…くん… 報告しなくて……いいし……! そんな……悲しい、できごと……!
だいいち文章が小5のそれじゃない。キミて。 尋常ならざる書き出しで手紙を始めたと思ったら その後は普通に普通の近況述べだしてるところにも スナフキンならではの普通でないセンスが伺える。
キクチくんは虫眼鏡で蟻を焼いたりする ちょっとあぶないやつでした。
外は寒い… ネットはつながらない… 手袋はなくす… 傘は盗まれる… タクシーにはプップーされる… 4時44分を見てしまう… 上司は名前を覚えない… マジックハンドは全然マジックでもハンドでもない… 青信号は緑色… ティッシュはティシュー… 小堺一樹のごきげんようの正式名称はライオンのごきげんよう… 思い出はいつの日も雨… …外は寒い…実は家の中も寒い…
これだから人生はさいこうだ
部屋の掃除をした。 窓と玄関を全開にして 吹き抜ける春の風を一身に浴びながら 好きな音楽なぞ聴いちゃって、 部屋よりも心がキレイになる。
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とか書いてたらネットの接続が完全に絶たれた。 え、なんでなんで。 やいヤフー。なんで? 月のなかばたる14日の、 23時代に接続切れるって、 支払い滞り的なモンでは決してないし… モデム、パソコン設定にも異常なし。 なんだこれは、ヤフーに嫌われたか。 一晩様子を見てもこのままなら いよいよ本社に殴り込むしかない。 鉄パイプ持って腹にジャンプ仕込んで。 あーでも本社着く前に捕まるか。 地元で捕まる。それこそ目黒で捕まる。 ネット以前に、僕と社会との接続が切断される。 シャバの世とオフライン状態になる。
ていうか全然心キレイになってない。 なんのための休日だったんだ。
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