ALALA 笙子
- 2007年03月20日(火) そのための覚悟だから。
君を寝かせたまま私は家を出る。数時間の拘束時間を経て、「何時に帰るの?」とメールがくる頃には、家まで数百メートルの距離にいた。遅くに起きた君は、勝手に私の部屋着のカーデガンをはおって、勝手に私のパソコンを開いて、灰を落とすのを忘れた煙草を持ったまま、少し笑っておかえりと言った。半分だけ開いたカーテンから午後の光が漏れて、君の好きそうな音楽が気持ちよく流れていた。「臨時収入が入ったから、今日は焼肉でも食べに行こう」と決めて、子供のようにウキウキしながら手をつないで歩く。美味しい食事を前にしていると自然と笑顔になる。言葉に対する依存心の強さとか、それでいて感じる違和感とか、自分達に対する相対的評価とか、見飽きてしまった横顔まで含めても、常に疑問は感じていて当然だと思うけれど、たまにはこんなご褒美の夜もいいのかもしれない。
それが君が君を守る方法なのだとしても、どうか自分と向き合うことを恐れないで欲しいと思う。だけど君を繋ぎ止めておく方法なのだとわかっていても、私はもう引き返すことなどできない。責任を負うのは誰よりもまず自分であるべきなのだ。
- 2007年03月21日(水) 勝てない、もしくは、負けたい。
煙草を買おうと友人の家を抜け出した午前三時に、私たちは秘密を共有することで満たされる。寒い寒いと言いながらつなごうとした手を君が撥ねて、つまんないとか思ってポケットに突っ込もうとしたとき、ブロック塀に押し付けられていきなり強引にキスされる。背中ではコンクリートがひんやりとしているけど、愚かな私はまたも君の演出にまんまと転がされてしまう。私が満たせるのが君の性的欲求だけだとしても、何も求められないよりずっとマシだろう、と刹那的に思う。手が変な所にあったりして、君の目もウルウルしてたりして、「ここでしていい?」とか耳元でささやかれたりして、もう理性とかどうにかしそうだったけど、いつもみたいに笑ってごまかして、何もなかったみたいにして戻って、始発に乗って家へ向かう。君は手をつないだまま眠ってしまった。眠ってしまった横顔が可愛くて、抱きしめたくなる、だって切ないから。君になら負け続けたいよ。
とか投票ボタンやったり。
- 2007年03月27日(火) 帰ってこない。
好きだよ、とか愛してる、とか言いながら。やっぱり彼女と電話とかしてるのかな。でもなんでだろうね、この自信に理由がつけられない。君は絶対に私のものなんだから。
- 2007年04月03日(火) 嘘みたいに簡単に
君を手に入れてしまった。失うことを恐れてまで欲しいかどうかなんてどうせわからなかったのだけど。夜中に、ひとつのベッドで眠りに落ちるときに、何故か私は「付き合いたい」と言った。数日後に、ふたりでお酒を飲んだときに、何故だか私は「別れて」と言った。そして、その通りになった。
そこにあるだけで十分だった。踏み出すことを恐れてたから踏み込まなかったわけじゃないよ。必要なかっただけだから。したいようにするだけだし、したいようにするために努めるだけ。だけど時々わからなくなったりもするんだ。不必要なものが多すぎる。君にも、何より私にも、そして私たちのまわりにも。そんなものはなくなってしまえばいいと思う。