陶 房 日 報  とうぼうにっぽう 
陶房かまなりや

2008年10月23日(木)      そうこう

 暦は霜降となりましたが、日中はまだ半袖
 で過ごせるほどに暖かく、温暖化の影響は
 いかばかりかと感心することしきりです。
 青い蜜柑をいただきました。酸っぱくて
 実に美味い蜜柑です。本当の味がします。
 秋から冬へ、いーい季節です。





2008年10月21日(火)      戯 作

本日も女房に教室を任せ、素焼きの窯を焚きながら、書の作品を
一つ仕上げました。昨日は漢字一辺倒でしたが、今日は一気に
バレて江戸の草双紙、いわゆる黄表紙から恋川春町の安永五年
の戯作 『うどんそば化物大江山』 の序文を拝借しました。

 筋は武士の蕎麦が物の怪のうどんを退治
 するという他愛ない勧善懲悪。その中に
 多々戯作特有のパロディーが埋め込まれ、
 江戸好みの洒落を楽しめます。絵本の形
 をとっていますので、今で言う漫画といって
 差し支えないでしょう。序文はその本筋を
匂わせるように蕎麦の効用と薬味の大切さを説きます。漢字かな
混じりで、所々のの字だけを強調して書いてあるのは視覚的な
効果を狙ってのことでしょう。その部分だけは原典に忠実に、
他は自分の字でリズム良く書きました。紹介されているサイトが
無いのでここに序文全文をご披露します。
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本草にいわく蕎麦は気を降し腸をゆるくし白濁帯下泄痢腹痛上気
熱腫の痛を冶寿脾異虚寒の人に忌むとあり誠にそれ蕎麦の徳揚げ
てか楚うべ可らずしかりと雖も莢菔おろし陳皮蕃椒乾松魚などの
役味なければ其蕎麦の賞玩も薄しこれまったく君臣合体乃如しと
昔時の大江山になぞらへ天春雨のねむけを覚寿のみ

ほんそうにいわくそばはきをくだしはらわたをゆるくしびゃくだく
こしけせつりふくつうじょうきねっしゅのいたみをじすひいきょかん
のひとにいむとありまことにそれそばのとくあげてかぞうべからず
なりしかりといえどもだいこんおろしみかんのかわとうがらしかつ
おぶしなどのやくみなければそのそばのしょうがんもうすしこれまっ
たくくんしんがったいのごとしとむかしむかしのおおえやまになぞ
らえてはるさめのねむけをさますのみ
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要は、蕎麦に薬味がなきゃぁ始まるめぇってことを大仰にくどくど
書いているのですが、この芝居がかった前文を読むことでこの後
の本文がいかにも面白みを増してきます。最後のところで、春雨
の眠気を覚ますくらいのことしかできませんけどね。と、さりげ
なーく圧を抜くあたりも小洒落ていて気が利いています。

昨日は漢字だったので肩に力が入った作業でしたが今日は楽しく
筆を踊らせて愉快な気分で書きました。もともとがバレた人間です
から、こういったものの方が自分には合っているように思います。
明日はもう少しやわらかいものを書いてみようと思っています。





2008年10月20日(月)      かんしょ

 明け方の雨がウソのように良く晴れていい
 お天気になりました。今年は少ないなあと
 思っていたアキアカネも舞い降りて、あち
 こち突先にとまっていました。須知さんの
 作品の鳥の嘴の先に止まった奴はこんなに
 近づいて撮っても逃げませんでした。

 良い気分の午前中に今日は漢字を書きま
 した。漢詩の古典、詩経から 『関雎』 の
 一節です。漢詩には至って暗いのですが、
 大好きな藤沢周平さんの小説 『蝉しぐれ』
 の中でこの一節が引用されています。
 作中、少年時代の主人公が藩校で年初に
受ける講義でこの関雎が解説されます。小説の中では内容を聞いた
生徒たちが失笑するところを嗜める塾頭の生真面目な側面を強調し、
恋の歌であるが侮るなといった孔子の儒教精神にも触れて武士たる
ものの心のありようを諭しています。多感な少年たちは自分の将来
と恋の歌をすり合わせながら詩を復唱します。

この詩には曲がついているらしく、明楽の研究者の方々は明治時代
の月琴楽譜をもとに演奏を楽しんでいるようです。この詩を漢字ば
かりで書くと物々しい感じのお経のように見えますので仮名も隣に
書きました。くだけて解釈すれば自分にふさわしい聡明な彼女が
ほしいなあという歌です。特に最後の一行がとてもきれいです。

     窈窕淑女鐘鼓楽之
 
ようちょうたるしゅくじょはしょうこもてこれをたのしましむ

美しい人と鐘や太鼓で楽しみたいものだ。(こんな訳でしょう)

3000年前の人も現代人も恋をする心は変わらないのですねえ。





2008年10月18日(土)      桝

今日は一日、書道でした。
月末の作品展に向けてまずは陶器作品の箱書きをして、その
勢いで月初めに合羽橋で取り寄せた 『桝』 にもしたためました。

 画像はどちらも一合桝です。
 左は『合』の一字を書いた 『うかりマス』
 右は『銭』の一字を書いた 『もうかりマス』
 ま、いわゆる語呂合わせですが勢いよく
 書けたので満足です。これが5ヶずつ有り、
 一升と五合のものが一つずつあります。
大きな桝には違った字が書いてありますが、こちらもちょっと
洒落を効かせてみました。

木は紙と違い滲むものもあればはじくものもあるので、そのつど
筆速を変えて、楽しみながら書きました。明日からは紙と布に書いて
いこうと思います。どんな字を書くかは全く決めていませんが、紙に
向きあって閃くその感じを大事にしようと思います。





2008年10月17日(金)      水 道

今日は上水道の日だそうです。日本で初めての近代水道はここ
横浜に作られたそうで、ウチの近所には水道道がありますし、西谷
にはその当時からある浄水場があり、水道記念館があります。

 明治20年、イギリスの技師パーマーなる人物
 が一手にこの仕事を請負い、津久井から野毛の
 44kmにも及ぶ管の敷設を成し遂げたというから
 偉いもんです。その為の資材から機械からほと
 んどを本国から取り寄せたといいますから、その
 偉業たるや天晴れの上にも天晴れ!横浜の水
 は日本、いや世界一美味しいと言われるほどの
 高品質であるそうですが、その先鞭をつけたヘンリー
スペンサーパーマーの名は横浜人であれば覚えていないわけには
参りますまい。

ミネラルウォーターを買ってまで飲む時代になり、イオンだ電子だな
どをチャージしたなどという眉唾な水まで出回り、それこそ水商売は
花盛りのように見受けますが、どっこい横浜にはパーマーさんが引いた
美味しい水が蛇口をひねりゃぁとうとうと出てきます。
『水は天から貰い水』 増してやそれを配ってくれる管が津久井から
続いていることを肝に銘じて、あだやおろそかにせず、大事に使わねば
と、今日のこの日にあらためて思うものです。

横浜水道記念館
http://www.city.yokohama.jp/me/suidou/kyoku/torikumi/suidou-pr/kinenkan/kinenkan.html






2008年10月15日(水)      望

予報どおり天気も回復し、宵の東の空には満月がぽつかり浮きました。
旧暦ならいざ知らず新暦の15日が満月とは偶然たぁいえ洒落ています。

 毎年今頃は木の上でアオマツムシがやかま
 しいほどに鳴いて、風情も何もあったもんじゃ
 ないのですが、今年はどういったわけかそれ
 ほどにうるさくなく、何かの理由で個体数が
 少ないのでしょう 。おかげで何やら風流な
 秋の夕暮れです。でも、やおら繁殖力の強い
奴らが今年に限って少ないのは、いささか訝しくも思いますが、自然界
は人間が考えるほど単純ではないので、こういうこともあるんでしょう。

明日は高気圧に覆われて晴天になる模様、これからは空気も澄んで、
都市部からでも富士山の姿がきれいに見えることでしょう。増して
近くにお住まいの方々には手にとるように拝めるのでしょうねぇ。
うらやましいかぎりです。





2008年10月14日(火)      秋 口

 すっかり空気が澄んで、秋となりました。
 木々の葉も色づきはじめ、モズがあちこち
 でキョキョキョキョと高鳴きをし、空は青く
 高く見えます。今日は生憎の雨になりまし
 たが明日は回復する模様、いい〜季節に
 なりました。

こんないい陽気だと、2泊3日くらいで京都へでも行きたいですなあ。




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