 高校野球が終わり、オリンピツクが終わり、
サザンの真夏の大感謝祭も終わりました。
あぁ〜、夏が終わりますねぇ〜。
世の流れに逆行するように、かまなりや
では8月の芋乃市場がはじまりました。
四辻藍美さんの蚊帳のタペストリーで
仕切られた会場はステキな雰囲気です。夏が終われば秋の
始まりです。晩夏初秋の陶房かまなりやへどうぞお越し下さい。
柳田国男の 『遠野物語』 と井上ひさしの 『新釈遠野物語』 を
あらためて読み返しています。おもしろいです。どちらも10代の頃
読んだ本ですが、40代になってみると随分違った印象を受けます。
歳をくったせいか色々な角度から物を見ることができるようになった
こともあり、また時代が変わったことも手伝い、明治の聞き語りが
いっそ新鮮に感じます。
 柳田版は口語での記述ですので最初に
読んだときは途中で投げ出してしまった
ように覚えています。井上版新釈は小説
ですので読みやすく、面白い本だったと
いう印象でした。今は逆に口語の記述が
醸す古さが好ましく、妖怪変化のたぐい
がいっそうリアリティーを纏って跳梁しているようにも読めます。
山人、天狗、河童、座敷わらしと、物の怪のうようよいる遠野は
この物語を読むかぎり人外の魔境のように記述されています。
しかし、「だれそれが見た」 という口伝ばかりで具体的な立証は
一切無く、疑心暗鬼が産んだ 『正体見たり枯れススキ』的なもの
ばかりに思えます。が・・・どこか魅力的な化け物たちは南部遠野
の人たちの感性の産物、その地域性を好ましく思う人が多いこと
が民話の里として支持されている所以でしょう。
このような怪異の伝承は日本中にごろごろあるはずです。また日本
のみならず世界にあるでしょう。人のいるところには必ずこの手の
物語はあり、不思議な共通性をもっていることにも人間の潜在的な
不安や被害妄想が見え隠れするところが愉快です。例えばドラキュラ
などは日本の鬼や天狗とどこか共通点があるように思います。
どれだけ科学が進歩して真理を具象してみせても、人間の不安は
拭えず、時代に即した魑魅魍魎を生み出すことでしょう。そして
あらたな遠野物語が生まれるのでしょう。ゲゲゲの鬼太郎などは
昭和の怪異の代表選手でしょう。
人間の持つ弱さの側面が愛おしく思うこの本たちです。
 リメイクされた映画 『椿三十郎』 を観ました。
ガックリきました・・・全くの焼き直しはいっそ
潔いほどですが、主演男優は三船敏郎の真似
演技で自分らしさが出せず、ラストの殺陣だ
け変化をつけるのは腰砕けな印象でした。
どうせなら最後までコピーに徹してもらった
ほうがすっきりしたと思います。見方は様様
だと思いますが、私はカラーであのラストの
一騎打ちでの豪快な返り血の吹き出しが見てみたかったです。
製作サイドの意図は理解できますが、まさかに 『用心棒』 は
リメイクしないでしょうねぇ・・・
 暑さに音を上げつつも裏庭の柿の木を
見上げればもうこんなに実が大きくなって
います。熟してくるのはまだまだ先ですが
季節は間違いなく秋へ向かい、地球は秋分
点へと公転しています。いちにちいちにち
なんとかやり過ごして生きるとしましょう。
去年の夏ごろから、下駄が欲しいなあと思っていました。
今年こそは下駄をひとつ求めてカラカラと下駄履きで歩って
やろうなどと思っていましたが、先月の芋乃市場で出品された
曽田耕さんの革雪駄に打ち抜かれ、迷わず買いました。
 まず、サイズが私の280�个梁臑�に
ピッタリだったこと、さらに革の切り出し
感がことのほか魅力的で、さらにさらには
四角ばったデザインがまさに下駄のようで、
もう一目惚れでした。かれこれひと月履き
ましたが、革の鼻緒が足にしっとりなじん
でとても心地よくなりました。下駄もそうですが、最初は鼻緒が
きりりと硬くて馴染むのに時間がかかるものですが、革は下駄より
も早く馴染むような気がします。作者の曽田さんはゾーリと命名
されていましたが、これはやはり雪駄の仲間でしょう。裏もあり
ますし、露地の飛び石を踏んで歩くには持って来いです。
何よりデザインも質感も侘びています。
良い物に出会う機会というのはそうそうありません。でも、
たまさかそういった機会に恵まれるとそれはそれは幸せです。
漫然としていてはそういう機を逃すものですが、良い意味で欲を
もって渇望していると、きっといつか出会うものでしょう。求める
側も作る側もそういった相思相愛の機に恵まれることは幸福な
ことだと思います。
このゾーリも履きこんでさらに味わいを深めたいと思います。
| 2008年08月18日(月) |
Billy BanBan |
焼酎 『いいちこ』 のCMで流れているビリーバンバンのCDを
女房が買ってきました。どえりゃぁ懐かしい歌ばかりが新しい
録音でおさめられ、どの曲も抑制の効いた美しいアレンジに
なっています。
 タイトルは 『時は今、君の中』 です。
いいちこのCMはいくつものバージョンが
あって、それぞれに印象深い自然の美しい
映像とそれに乗せた楽曲が静謐で、ビリー
バンバンを知らない世代の方にも、あの曲
は誰の？と思わせる作りになっているよう
に思います。昭和中ほど生まれの私もビリーバンバンはリアル
タイムで聞いていた世代ではなく、もう少しあとの世代の歌手
（吉田拓郎・チューリップあたり）からの音楽への参入でしたから、
このアルバムは懐かしさとあいまって新鮮味を感じました。
今は素敵な初老の男性デュオといった風情のお二人ですが、
Youtubeで古い映像を見るとお若く、長髪でギターとウッドベース
を弾いて歌っていらっしゃいます。しかしながら歌声はいっそう
磨きがかかり、年相応の味わいが加味され、その落ち着きっぷり
に肝を抜かれる思いがします。なんにもせ、長く続けるという
ことはたいへんなことですが、続けていなければ出ない味という
ものがあるもので、このCDを聞いているとそんな発酵した滋味を
つくづく感じます。酒造会社がこの企画を立てたのもそういった
ものへの共鳴だったのではないでしょうか。
一言で言えば 『渋い！』 でしょう、ちょっと憧れます。
イラストレーターの斉藤俊行さんから新刊の絵本を頂きました。
福音館書店の、月刊たくさんのふしぎ8月号 『こおり』 です。
水と氷の分子構造をとてもわかりやすくまとめた文章は、少々
難しい内容ながら読みやすく、斉藤さんの水分子を擬人化した
絵がかわいらしくて視覚的にも理解を助けてくれます。
 文章は理学博士の前野紀一さん。
透明な氷を作ろうというテーマから水の
分子構造を紐解き、地球極点の氷が溶け
て海洋深層流を作る仕組みまでを解りや
すく、子供さんが読みやすいように平易
な文章で書かれています。科学の理屈は
理解していたいたつもりでも、あらためて
「へえ〜」と感心してしまいます。
絵本だけにイラストの効果は絶大で、斉藤さんの描く風船を
持った女の子（水の分子）が温度が下がることで手をつなぎ
秩序をもって並ぶ様子は可愛らしくて微笑ましいかぎりです。
世の中は便利になって、インターネットで何でも調べることが
できますし、画像も動画もたやすく見ることができますが、本、
特に絵本の良さは格別なものが有ります。デジタルはデジタル、
アナログはアナログ、両立しながら文化を育みたいものです。
福音館書店のサイト
http://www.fukuinkan.co.jp/magadetails.php?goods_id=20533
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