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■ ミニ小説(ショートショート)
部屋の真ん中と四つ角に何か塊の置いてある部屋。鉄くずのようなそうでないような……? やけに広いその部屋に私も含めて大人数が押し込められている。顔見知りの人も仲のいい人も、知らない人も。 ここが何処か、なんて知ってる。 押し込められた時点で、ここにいる人達は皆同じ運命を背負わされるのだから。
この場所でどれ程の人間が、処分されたんだろう……?
ここに押し込められた時点で、もう私達には空を、自然をそして自分を取り巻く全てのものを二度と見ることが出来なくなるのだ。 それが何に拠るものか、知らない。 遠くて近い過去にあったという大虐殺の時のようなガスに拠るものなのか、細菌に拠るものなのか、それとも最新の、何かか。 けれども、ここへ押し込められた人間には万に一つも逃れる術がない、瞬間。 私達が完全に押し込められ、この部屋が密閉されたのを確認して、高い窓からこちらを見下ろす誰かが、他の誰かに合図を送る。 そして訪れる、静寂。 皆少しでも長く、その瞬間から逃れようと、足掻く。部屋にあるその存在の意味すら判らない塊に登ろうとする、その陰に隠れようとする。 そんなことをしても無駄なのだ。 私のほんの数メートル先で倒れた男の人が、あっという間に形を崩し、その存在が掻き消される。
吸血鬼が灰になるって、こんなことをいうのかな……?
何かが目に沁みる。玉葱を切ってる時みたい? 煙に巻かれてる時みたい? 自然と溢れてくる涙。
あー、目、何か痛いと言うか、沁みるよなぁ……。
体に力が入らなくなって、床に這い蹲って。 でも、痛い訳じゃないから、まあ、幸せかな? 激痛に襲われて苦しんで、なんて、嫌だと思ってたし。 視界が暗くなって。
……ああ、私、死ぬんだ……。
でも、後悔もないって、それも幸せだよね。
次の瞬間訪れた、――開放感。 何かに戒められた所から抜け出した感じ。
……あ、死んだな……。
で、今私、魂だけになっちゃってるんだよ、これ。 開けない視界に少し不安になる。でも、私、何処かに向かってる。 そして突然開けた視界に写った……。
ここ何!? 何処よ!? 普通死んだら三途の川とか渡ったりするんじゃないの!?
……どう見ても、博物館とか美術館……?
学芸員のお兄さん(に見えるけど、この人何者!?)がニコニコ笑顔で歩み寄って来る。 「いらっしゃい」 「あの! ここ、何ですか!? 私、死んだと思ってたんだけど」 「ええ。そうですよ。ここは一般的に『死後の世界』って言われる場所です」
……どう見ても、ミュージアムだって!!
「ミュージアムですからね」 お兄さんはニコニコ笑顔のままで、……なんてコトをっっ! 「あなた方が、今まで見て来た世界や見たかった世界、行った場所や行きたかった場所が自由に見られるんですよ」
……こんなのが、『死後の世界』? ってことは、このお兄さんは、何なの!? 人間じゃないの? 実は天使とか悪魔とか、冥府の管理人(?)とか……っっ!
「私は、あくまでもこの世界の案内人です。そりゃあ、お国柄、宗教柄、色んな名前で呼ばれますけれどね。 あなたは時が来るまでここで、好きなことをしたり、見たりしていられるんです」 「え、だってミュージアムって、普通『見る』ことしか出来ないじゃない」 「何をおっしゃっているんですか。ここもここにいる人達ももう普通じゃないでしょう?」 「……もしかして、行けたりする訳?」 私の恐々な質問にお兄さんはニコニコ笑顔を更にニコニコ笑顔にして。 「試してご覧になられたら?」 何か、ビミョー。胡散臭い訳じゃないけど、……何か、ビミョー。
取り敢えず、近くにあったエジプトのピラミッドに近付いてみた、……ら!
嘘っっ! 私空中に浮かんでるよっっ!! いや、ちょっと待て。これはこれで楽しいぞ。所謂幽体離脱状態……って、違うって、私は既に幽体だって! 楽しくって私は時間を忘れてミュージアムの中の色々な空間へと移動していた。 時には旧い友人に逢い、時には懐かしい町へ。
そして不意に、何かに引き摺られた。 驚いて慌ててミュージアムと空間を繋ぐ辺りに視線を向けるとニコニコ笑顔のお兄さんが小さく手を振りながら遠ざかっていき、暗転。
……え、ちょっ、何っっ?
「……ン、ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」 私は声を限りに叫んでいた。 暖かい何かに包まれ、ゆらゆらと体を揺らされる。 自分が出している叫び声の合間から、何か雑音が聞こえる。 優しく私を包むぬくもり、優しい匂い。安らぎを覚えた私は眠りに付く。 耳に届くのは、聞いたことがあるような、ないような、懐かしいメロディー。
……これは、私、生まれ変わったとか、いう!? 私に与えられた新しい人生が、どうやら始まったみたい。
************************** あー、「いきなり何やねんっ!」と思われる方もいるでしょうが、ちょっとミニ小説(ショートショート)書いてみた。
何でいきなり『ミニ小説』 かって言うのは、まあ、気まぐれというか、何というか あー、でも『ミニ小説』っていうほどのもんでもないけど ネタ元は、今朝見た(というか覚えてた)私の夢。それを小説風に脚色してみた。 だから多分、私の書く妄想文章を知ってる人には意外な文体になってるかも。
☆ 今日読んだ本 ☆ 角川書店 ルビー文庫 岩本薫『独裁者の恋』
2008年07月15日(火)
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