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■ 美輪明宏『黒蜥蜴』
念願の『黒蜥蜴』。とうとう行って来たよ♪ 美輪さんの舞台は10数年前に行った『卒塔婆小町』以来。そしてこの10数年、観たいと思いつつも舞台断ちだの何だので行けてなかった『黒蜥蜴』! 取れた座席は舞台向かって左側だったけど、観難い訳でもなく。
おかんと2人pm1:04の電車に乗り、一路梅田芸術劇場へ。会場は既にされていて、ロビーまでは入れていた所。丁度私達が着いたのは客席扉の開放時。 取り敢えずプログラム(¥1,500−)買って、座席の確認に座席表に近付いたらば、何ですと!? 開演pm2:30、間に15分休憩を2回挟む3幕形式で、終演はpm6:25!? 何かの見間違いかとおかんと何度か見直すも、見間違いでなく。 おかん突然おろおろし始める。 「どうしよう、途中で、それも一番いい所で席立たなあかんのちゃうん、私」 そう、今日のおかんは『黒蜥蜴』といってもそんなに長いつもりじゃなかった(まあ、せいぜい2時間半から長くても3時間くらいと瑞樹も思ってた)ので、その後着付けの講習(教える方)が入っていた訳だ。それもpm6:30から。 究極の手段で、取り敢えず「講習の時間をずらしてもらったら?」と瑞樹が提案。 「ええーと、pm6:30に終わって、京橋までやったらpm7:30には着くかなぁ?」 おかん、どんなルートで京橋まで戻るつもりやねん;; 梅田芸術劇場から大阪駅まで10分弱、大阪駅から京橋まで10分弱。駅前にある会場に行くんだから、 「遅くてもpm7:00過ぎには着くやろ」 「ホンマ? せやったら、生徒さんにメール入れて学院にはTEL入れるわ」 そしてわたわたと連絡を取ったおかんと一緒にトイレに行き、座席に着く。 瑞樹がプログラムのストーリー(といっても江戸川乱歩の原作読んでるから知ってるんだが)を読み終え、美輪さんの『ご挨拶』と紹介文を1つ読んだ辺りで開演。
緑川夫人こと黒蜥蜴(=美輪明宏)と岩瀬早苗(=中野真渡嘉)のお喋りから始まる舞台。
……! 芝居マイク通してないっっ!?
最初の驚き。いや、ほら、最近の舞台ってマイク通すのが当たり前な所あるから。 でも少々声が遠かったので黒蜥蜴の長台詞がちょっと聞き取りにくかったり。 早苗は、『お願い、もう喋らなくていいから……!』っていう程の一本調子で参った。元気な、とか明るいとかいうお嬢さんのつもりだろうけど、ちょっと無理;; 黒蜥蜴を筆頭に早苗のお父さん岩瀬庄兵衛(=瀬下和久)にしろ、黒蜥蜴の愛人雨宮(木村彰吾)にしろ、芝居が上手いので、浮く浮く;; そして我等が明智小五郎(=高嶋政宏)登場。当然、彼も芝居は上手いさ〜。 しかし明智、何だかとっても自信過剰でひょうきんだ(をい;;)。いや、原作で見ても明智は自信過剰といえるくらいだが、こんなにひょうきんなキャラだったか? オーバーアクションで……は、あるか;; んー、瑞樹の中の明智のイメージって、天地茂だからかなぁ? 天地茂のあの渋いどっしりとしたイメージに陣内孝則のコミカルでオーバーアクションの明智を足したみたいな明智。 いや、その使い分けははっきりくっきりしていて、それはそれで凄かったんだよ。高嶋政宏、何本か舞台は観てるけど、やっぱり出来る人だなぁ。 1幕目は早苗がトランクに入れて攫われるけど、明智の読みで助け出され、緑川夫人=黒蜥蜴が暴露されてまんまと男装し、逃走に成功する所まで。 男装した途端、いつものあの独特な雰囲気の喋りではなくがらりと低く変わる美輪さんの声のトーン。 しかし、ホント、美輪さんて、凄い人だよ。ドレス着て、話している姿は女性そのものだし、男装したら男性そのものだし。瞬時に雰囲気を変える技は、ホントに凄い。当然迫力満点だし。 その満点の迫力に負けてない高嶋さんも凄い。……いや、負けたら黒蜥蜴と明智小五郎の関係は成り立たないんだけどね……(苦笑)。
15分の休憩を終え、2幕目。 岩瀬邸の台所で召使や用心棒などが出たり入ったり、まるでどたばたの喜劇を見ているよう。まさしくここは笑い所なんだなぁ、という演出。ここにも黒蜥蜴の手下は入り込み、召使頭のひな夫人(=有田麻里)は台所に出入りする召使や用心棒達の隙をついて黒蜥蜴に連絡を入れる。 ……おお、電話が子機だ! 家具屋に化けた黒蜥蜴の手下達が運び込んだソファに浮浪者もどき(当然黒蜥蜴の手下)が隠れ、運び込まれた後早苗をソファに押し込み、家具屋(に化けた黒蜥蜴の手下)に運び出されていくのが邸内に張り巡らされていると思われるマイク回線で実況中継され、問題のソファは台所を通って運び出されて行き、後に続くようにひな夫人と2人の用心棒も去っていく。 いや、この演出も面白いよね。 っつか、子機ですか? マイク回線ですか? 実際設定されているこの時代にはないでしょうに(苦笑)。 そして場面は変わって舞台向かって右側には明智の事務所、左側には黒蜥蜴の隠れ家と舞台を2つに別けて芝居は進む。 早苗がまんまと黒蜥蜴に連れ去られ、125カラット(だっけか?)のダイヤモンド『エジプトの星』と引き換えに早苗を返す、という黒蜥蜴の連絡が。 「ええ、その手紙、FAXでこちらへ送って下さい」 ……FAX、なんですね……。 まあ、プログラムにも書いてあったけど、その時代に則した形に仕上げる、ということが前提のようなので、作品が書かれた当時と照らし合わせることに意味はないのだが。 2幕目になるとさすがに美輪さんの声も随分と通り易くなり、それに合わせるかのように他の役者さんの声にも張りが。 2幕目の後半の舞台を2つに別けた芝居の迫力のあること! そしてラスト辺りでは黒蜥蜴と明智の黒と白、犯罪者と探偵としての掛け合い。 別々(と設定されている)の空間から歌舞伎風に持って回した台詞回しと共に、近付いていく互い。それが2人を隔てていた時空を越えて、重なり合う。 「そして最後に勝つのはこっちさ!」 2人同時に背中合わせで見得を切る。 ……格好いいです……、滅茶苦茶。
3幕目は『エジプトの星』がやり取りされる東京タワーの展望台から。黒蜥蜴が待つそこへ岩瀬がやってくる。そしてやり取りの後黒蜥蜴は『エジプトの星』を手にし、岩瀬は展望台から去る。 今度は掃除婦に化けて展望台から逃走する黒蜥蜴。そして港。そして黒蜥蜴所有の船の船内へと舞台は変わっていく。 船内の幽霊騒動とそれまで抵抗していた早苗が急に大人しくなったのを変に思い、黒蜥蜴は明智が例のソファ(黒蜥蜴の個室に置いてある)に隠れていることを悟る。 そして確認するようにソファに向けて語りかけ、明智がそれに応答する。それを知りこっそりと手下達を呼び寄せ、ソファから出て来れないようにと縄で縛りつけ、自分の心情を吐露する。 「あなたが好きだから、私はあなたを殺すの」 その迸る激情の表現が又、凄い。 そして海へとソファごと明智を投下。原作ではソファに潜んでいると知った黒蜥蜴はその場で明智を撃ち殺すんだが、そういった違いなんて、もう何か気にならない。 明智を葬ったことで沸きあがる手下達を苦く見ていた黒蜥蜴が沈んでいると、その水葬の儀式に遅れてやって来、「すみません! 召集に気付きませんで」とおどおどしている手下の松吉に黒蜥蜴は「私の気持ちを判ってくれるのはお前だけだよ」と泣き崩れる。 突然客席の扉が開け放たれ、ランタンを持った朱儒(=小人の道化? 日野利彦・マメ山田)が現われ、舞台上から客席に向けてランタンをぐるぐる回して合図を送ると、同じ扉からぞろぞろと現われる黒蜥蜴一味+早苗。 そして隠れ家へと舞台は変わる。 これが又、豪華なセットで、凄い! 黄金の柱や壁、そして中央に檻。当然あるボタンを押したら壁の絵の後ろから現われる生人形達。 逃げようとする早苗を助けようとした(のか?)雨宮が捕らえられ、檻へと入れられる。翌朝には他の生き人形達のように剥製にされるのだ。そしてその檻の中で早苗と雨宮が語り合う。 「あなたは自分の命を捨てて私を助けてくれたわ。それは私のことが好きだから?」 ……何ちゅー短絡思考な女だ;; っつか、ホント、話さなくていいから。 「何でも与えられているような君みたいな女は嫌いだ」 そう雨宮に言われた早苗、逡巡するも、態度が一変する。 「私が岩瀬の娘でなければいいのね。……これはずっと黙っているように言われたけれど、言ってもいいわね。言うわ。……私は岩瀬早苗じゃないのよ!」 ……どうやら死のうとした所を早苗に似ているということもあって明智に拾われ、替え玉になっていた、ということらしい(苦笑)。 そう来るか!? それまでの甲高い棒読みチックな明るい娘ぶりっ子をかなぐり捨てた偽早苗(といっても役者は同じ)が低く、語り出す。 んー、態度一変、はちょっと驚いたし、いいんだけど、台詞が続くと声が低いだけで、イマイチ芝居に変化ないよ、お嬢さん;; 雨宮がいい芝居してるので、何かやっぱり、浮く;; 翌朝になり手下の中でも弄られ役の松吉がこっそりと舞台中央の肘掛椅子に新聞を置く。 あー、まあ、原作を知っていれば、松吉が明智の変装した姿だって判るんだけどさ(原作とは違うけど。原作は雨宮に変装する)。 新聞には『明智小五郎、岩瀬早苗嬢を守り切る』とか何とか書かれているらしい(っつか、イマイチちゃんと覚えてないよ;;)。 そして松吉が変な行動をしていると他の手下達に見つけられ、黒蜥蜴の前に引き出される。 「生人形が気になって…」 などという松吉の言葉に黒蜥蜴がボタンで絵画を開けると、そこにあった筈の生人形は、刑事達に摩り替わっている。そして大挙する警察。そんな中、背むしだった松吉がすらりと立ち上がり、変装を解く明智。 檻に入れられた偽早苗と雨宮を助け出し、先に行かせると逃げようとする黒蜥蜴一味に飛び掛る警察。手下達が捕まり連行され、その場に残った黒蜥蜴と明智。 「あんたに捕まるなんて!」と言わんばかりに明智に背を向け舞台中央に設えられた階段の半ばまで登った辺りで、静かに振り向いた黒蜥蜴が「生きていらっしゃったのね…」。そして毒を口に含む。 そして暫くのやり取りの後、黒蜥蜴は息を引き取り。そこへやってくる警察と岩瀬親子。宝石も娘も無事だと喜ぶ岩瀬に「それを持ってさっさと行けばいい!」と暴言を吐く明智。向けられた様々な暴言に岩瀬が激怒すると「本当の宝石は死んでしまった……!」。 この、何だろう、愛する者を失った、と言うのとはちょっと違う、でも、好敵手を失ったというだけでない悲しみと言うか……。 何だか、カーテンコールの間に、じわじわと押し寄せて来る感動と言うか。不思議な後味。
幕が下りた途端におかんは「私出るわ」と席を立ち、カーテンコールを見ず。その後カーテンコールが4〜5回? 美輪さん、優雅だよ〜。いや、全編通して優雅なんだよ。 それにやっぱり、この人は凄い役者だと思った。
☆ 今日読んだ本 ☆ 幻冬社 漫画文庫 斎藤岬『退魔針 魔針胎動篇 2・3』
2008年06月21日(土)
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