| 2002年12月05日(木) |
Stupid Girl / Garbage |
今日はアムステルダムに行ったわけなんだけど。
はい、やっちゃいました。まさか本当にこんなことするとは。国際線の飛行機に乗り遅れたよ。
45分前までに搭乗手続きしなきゃいけないのに、30分前に着いちゃった。でもいくら何でも乗れないとは思わなかった。そしたら英国航空めが、あっさり冷たくダメって言いやがって。"NO!!"って叫んだら、"Yes."と切り返され、何だか力が抜けたのでもう逆らわずに、2時間後の次の便に切り替えた。もともと観光目当ての旅じゃなし。向こうに朝9時着の予定が11時になったところで大した違いはない。
ところがだ。私の取っていた格安チケットが、別便に切替えたことで正規料金になってしまった。差額の85ポンドを払えと言う。はちじゅうごぉーーー?!!!? だって旅行社に払ってる金額が一切合切含めて170ポンドの旅行だよ? ここに至って初めて、さっきもう少し食い下がるべきだったと気づく。イギリス人は面倒臭がりなので、しつこく言えば通ったりするのだ。(でも機内に案内するのも面倒臭がったりして・・・)
今さら言ってもしょうがない。時間潰しに空港内のバーガーキングに入る。一番シンプルで安いバーガーを頼んだが、出てきた物は、どんな動物の餌だろうと思うような大きさだった。食べる。うまいーーー。もうダメだ私。
さて、ここから少しづつ精神状態がおかしくなり出した。
まさか飛行機に乗り遅れたことにそこまでショックを受けてるわけでもないだろうから、これは多分冷静に観察するに、忙しかった毎日の中で、いきなり2時間という時間が予期せぬところでぽかっと空いたのが原因ではないか。とにかく飛行機に乗る頃には少々泣きが入っている状態で、周囲とも眼を合わせないようにしていた。その時考えていたことというのは割とスジの通った話なのだが、ここに書くと2ページくらいになりそうなので割愛。
半ベソかいてアムスに到着。たった1時間20分の旅だ。その頃には気分は絶頂に達しており、アムスで死のうかなとまで盛り上がっていたのだが。この街を一目見るなりその気がうせた。
汚い。ブリュッセルに似ているが、ブリュッセル独自の建造物などに感じる魅力も特にない。名高い運河もただみすぼらしい。
都会──ディケンズの描くイーストエンド、ゾラのパリ、ドストエフスキーのモスクワ。くすんだ石と汚い水。人が集まってくるところ。貧しさと欲が浮き上がるところ。
実はゾラのパリになぞらえるほどの力すらアムスにはなかった。何しろこの都市は世界に類を見ないほど小さい。なので逆に不潔さも大したことはない。
まあでもとりあえずは運河だろうということで、目についたボート・ツアーへ。一番前に陣取るが、あまりの退屈さに寝そうになる。ぎっしり並んだボートハウス。土灰色の水。どんよりした冬の空。
1時間の行程を終えてセントラル駅に戻る。トラムに乗って美術館へ。名前?読めないけど、Rijksmuseum。
ここの最大の目玉はレンブラントのThe Night Watch──夜警である。最大というのはそのサイズにおいても然りで、一部屋をほぼ占領し、睥睨している。写真を撮ってもかまわないというので一枚撮った。テーマも何も全く知らないが、お得意の光と影は見事なもので、中心の人物はきれいにスポットライトの中に浮いて見える。谷崎潤一郎が 「陰翳礼賛」 の中で、日本の家屋や女性というのは、本来昼間でも薄暗い、照明の足らない室内においてこそその美を遺憾なく発揮するのだ、という意味のことを書いていたが、和の陰影ほど微妙ではないにしても、 「夜警」 の中にもそれに共通するものが見てとれる。ランプの光が届く範囲だけが浮き上がる、騎士道だのレディだのといったものを作り上げるのに必要だった 「足らなさ」 ──その不足こそをロマンと呼ぶのではないか。思えば幸せな時代である。フーバーが静寂をなぎ倒し、フィラメントが美を奪った現代。そこに私たちが代わりに得たものと言えば?
・・・騒音と'Heavy Glow'のロックだったりしてね。
おそらく次に有名なのがフェルメールのKitchen Maid。素直に綺麗な絵だが、これ日本ではある通信教育の広告に長年えんえんと使われ続けている作品で、私にもその印象が強い。そのイメージを完全に払拭してこの絵を見るのはちょっと難しい。
次はヴァン・ゴッホ美術館。ここの話はひとつだけ。私が訪れた二日後にここからゴッホが2枚盗まれたのだ。ロンドンに帰ってニュース見てびっくり。
ホテルは美術館からすぐのところだったので、歩いていく。部屋に一旦チェックインして、すぐまた夜のアムスに繰り出す。ここからが今日の本番。
今回の旅のお目当て、コーヒーショップ(合法ドラッグを出す店)へ。今日日中にアムスを見ていて思ったのだが、オランダがソフトドラッグを合法化したのは、ハードドラッグの中毒を食い止める為とか何とか理由がついていたが、結局実はこれって観光客目当てなんじゃ? アムスははっきり言って魅力に乏しすぎる。ドラッグがなけりゃ私もきっと来なかったろう。
まずは1件目。ライトハッシュいこう。
インドのCharrasを1gと、本物のコーヒーを一杯頼む。いきなり葉っぱだけ持ってこられたので、煙草で吸いたいんだけどと言うと、煙草を1本と専用の紙を何枚か持ってきてくれた。しかし上手く出来そうにない。
隣の席にいた、目のいっちゃってる金髪の男性に頼んで巻いてもらう。上手い。すごく手慣れていて、芸術的に巻いていく。私にはとてもじゃないが出来そうにないと言ったら、「とてもトリッキーなんだ」とぞくぞくするような色っぽい声で言う。
吸う。わわわ、これは私がカムデンで買ったのとはなんと言うか、品質管理が違う感じ。さすが合法。最初にちょっと笑いが来たが、あとはいつも通りゆるやかな効き目。はー、悔しい。何でこんななんだか私。ただひとつ言えることは、ヘンプ吸ってると他に何してなくてもまず退屈しない。ずしんと落ち着くのだ。
2件目。いきなりディープな雰囲気。「インターネットコーヒーショップ」なんて書いてあるから入ったんだけど、結局古い型のマックばかりで、使いものになりゃしない。まあそれが目当てではないからいいけどね。
黒人ばかりが集う店で、ここではモロッコのPollenを吸う。いい香りだ。店の黒人(Jackson)に巻いてもらう。ホットチョコレートももらう。喉の粘膜がやられてて、草の煙がもろに染みるのだ。そうでなくても甘いものは草とは相性がいいらしい。
しばらくしてJacksonが、ネット出来る他のコーヒーショップにつれて行ってあげようと言うので一緒に出る。(仕事しなくていいのか?)
私が朝から食事してないと言うと、おいしいチャイニーズを食べに行こうと言う。入ってみたらメニューはナシゴレン、サテ、ミーゴレン・・・あのーこれってインドネシアンて言うんじゃ。でも料理してるのは中国人だったりなんかする。ここでの食事がもう成田発って以来のベスト1であった。美味い!!
3件目のコーヒーショップ、結局PCはまた役立たず、メール1件送るのが精一杯。
さっきのPollenをどんどん巻いて吸う。別にどこでも持ち込み吸ってかまわないらしい。Jacksonが紅茶を2杯おごってくれる。飲み物はどんどん欲しい感じ。寒いし。
Jacksonに案内されて、レッドライト地区を見て歩く。アムス名物、有名な飾り窓がずらり。レッドと言うよりはピンクのライト。似たような個室が通りに向けてずらりと一列に並び、ドアはガラスで中が丸見え。室内はベッドと洗面台くらい。そして一人一人がガラスドアに半裸の身体を押し付けながら、客を呼ぶのだ。お客のついた部屋はドアにカーテンを下ろして中を見えなくする。
レッドライト地区の中でも更に極めつけのブラック・ゾーンと呼ばれる地域も歩いた。女性なんて一人も見かけない。私一人では絶対に来られなかっただろう。私はリュックしょってたのだが、ちょっと怪しい気配に振り向くともう手がリュックの中に伸びてたりする。
ピープ・ルーム(覗き部屋)へ。結構これもあちこちにある。真ん中の丸いステージをぐるりと囲むかたちの個室があって、そこに入るとコインの投入口がある。お金を入れた分だけ見られる。
あれって女の子からこちらは見えないことになってるけど、どうだろう、見えてんじゃないかな。かなり目が合ってる気がするし、しかも何だかこっちが女だってわかってる気もした。
男女の絡みを見たならともかく、女の子が一人で開脚してるのを見ていると、色々冷静に考えてしまう。身体柔らかいなあ、だの、下半身冷えないのかなあ、だの。
大変だ。頭がすっきりしてきた。草!酒!
4件目のコーヒー・ショップ。今度は何だかハード・ロックががんがんかかって、ロックビデオが流れている。コーヒー・ショップもほんと色々だ。ここではとうとうジンを飲む。またJacksonの奢り。ただし彼はちょっと前から態度が怪しくなり出しているので、適当なとこで逃げなきゃ。
インディカのOrange Budを吸う。これは一番甘くていい香り。何だか新しいのを試すたびに品質が上がっていく感じ。実際これはほんのちょい高いし。高いったって、何本か巻けて2,000円もしないんだけどね。
しかし酒。やはり酒。一気にいい気分になる。2時頃そこが閉店になったので、出て速攻でタクシー拾い、部屋まで送ると言うJacksonを蹴りだして、それじゃ!って感じで一人でホテルに帰る。
| 2002年12月04日(水) |
Angel / Aerosmith |
Went to a town called Angel. What a pleasant word to pronounce! Angel.
What if I'm from here. I am from Angel. Beautiful.
In an antique shop, fell in love with a box made in 1920 and bought it.
Pay 80 pounds for a tiny rusty box?! No way! But I did.
朝の7時からマリー吸う。
Angelという、アンティークで知られる街に初めて行く。何て耳に快い単語だろ。これは決してエンジェルとは発音しない。あえてカタカナにすればエインジョ。
こんな街に生まれてたらどうだろう。I am from Angel. うっとり。
アンティークのマーケットを見て、ピアスを買う。
雨の冷たさに耐えかねて、カフェでイングリッシュ・ブレックファストを食べる。本当に寒いと、熱いコーヒーやお茶だけではどうにもならない。食べないと。店内ではディラン、クラプトン、ロッド・スチュワートなどの60〜70年代の曲ばかり流している。
アンティーク・ショップで、店に入るなり奥に置いてあった銅製の箱が気に入る。1920年、ドイツ製、90ポンド。80ポンドにならないかと聞いたらなると言う。こんな薄汚れて傷のついた箱に16,000円? 馬鹿な、と思ったが。
気づいたら購入し、雨に濡れないようにしっかり胸に抱きしめて歩いていた。
ヨークというパブに入る。この綺麗な名前の街を去りがたくて、ゆっくり時間をかけてビターを飲み、煙草を吸う。
ガラス越しに、濡れそぼる街をただぼうっと眺める。私の好きな色が溶け合っている。ストーム・ブルー(嵐の蒼)、ミスト・グリーン(霧の緑)、マウス・ダン(鼠の茶)、それからアッシュ(灰)。
チューブでスローン・スクエアへ行き、キングス・ロードを歩く。ピストルズのマネージャーがやっていたSexという店がこの通りの向こうにあるはずなのだが、行けども行けども見当たらない。大体本当に今でもあるのかな。ガイドブックはあると言うのだが、その同じ本の中にビル・ワイマンをストーンズのギタリストと書いてあるし・・・ 店名が店名なんで、人にも聞けやしない。
チューブでコベント・ガーデンへ行き、ナイン・ウェストのチョコレート・ブラウンのリュックを買う。
一旦ホテルに戻ってから、ピカデリー・サーカスへ。
"Ain't Nothing But Blues"というライブハウスへ行く。単に名前が気に入ったから。
19時半に店に入ったが、聞くとライブは21時半からだという。"Time Out"の情報ではもう始まっているはず。またか。
とにかくカウンターに座ってビターを頼み、煙草吸いながらゆっくり飲む。一杯飲んだら帰ろうと思っていたら、カウンターの中の店員が話しかけてきた。ブルース好き?と聞くので適当にまあねと答える。そうか、俺も大好き。ところでイングウェイ・マルムスティーンて知ってる? はあ?と思ったが、知ってるよと答えると、俺イングウェイが一番好きなんだよね、と財布の中から写真を取り出して見せる。まあ写真なんか持って可愛らしいこと。って、どこがブルースだ。おい。
ジンのカクテルは何が出来るか聞くと、ジン・トニックしか知らないという。これだ。ロンドン中どこへ行ってもジンと言えばジン・トニック。ジン・フィズすら知らないと言う。やけくそになってギムレット作れと言うと、じゃあ作り方をおしえてくれと言う。はいはい。やれやれ。
目の前に出てきたものを飲む。甘い。しかしジンは豪勢に入っている。俺のおごりだと言うので、それならばとありがたく飲む。
東京に帰る前にもう一度会いたいと言うから、またはいはい言っとく。まるっきり好みではないが、素直そうで好感の持てるタイプの男の子。店の外まで名残惜しそうに送ってくれた。
ネットカフェ行くが、なんかもうへろへろ。
| 2002年12月03日(火) |
Attracts me like no other lover |
(この日記は、ロンドン滞在中はネットカフェから英語でアップして、帰国後に一気に日本語に直しました。この日の英文だけ思い入れがあったので、一部残しておきました)
Visiting Waterloo Station means nothing. Nothing but Terry meets Julie at this station every Friday night. Ray Davies sings so. That's all.
That means EVERYTHING to me. Stupid girl.
Funny, but the station reminded me of my husband, came here with me ten years ago.
Crossed Waterloo Bridge as Terry and Julie did, safe and sound.
Had a strong feeling that I don't want to go back to Tokyo. I love it here, London. I love you more than ever.
Two weeks is short time but long enough to make me cry when I leave here.
Don't wanna leave him now.
You know I believe and how.
昨夜は部屋に帰ると同時に気を失った。服も全部着たままで。最近毎晩のようにこうだ。
5時に目覚める。6時間以上も寝たらしい。
1階(日本で言う3階)にお引っ越し。再度ドライヤー(部屋の壁に取り付けてあって、取り外し不可)が故障した為。一度は自然に直ったのだが、多分今回はもうダメだろう。今回は一切怒らずに、 「また壊れたんだけど、どしたらいい?」 てな感じであどけない顔して聞いてみた。そしたらあっさり別の部屋に移してくれたのだ。前よりも広くて快適で、バスタブもついている。・・・ふーむ。次回からはこの手でいこう。
軽い朝食を取って出かける。
チューブでタワー・ヒルへ。ロンドン塔へ外側からだけちょいとご挨拶。観光名所に来るのは、今回の旅で初めて。駅前で焼き栗を買って、歩きながら食べる。ホットドッグスタンドがあって、通り過ぎようとしたのだが、誘惑に勝てずハンバーガーを作ってもらう。でかい・・・ 一体私、今何キロなんだろ・・・
タワー・ブリッジを渡る。汚いテムズを下に眺める。
ロンドン・ブリッジ駅に行く途中で、ロンドン・ダンジョンがあったので入る。ここはロンドンの残虐・怪奇趣味を集めたような場所で、こけおどしな感じで今まで見向きもしなかったのだ。入ってみたところ、確かにちゃちくて安っぽいのだが、俳優らしき係員たちの演技ぶりがなかなか堂に入っていて楽しめた。
チューブでウォータールーへ。
小さいマーケットを見つけて、カードを何枚か買う。
ウォータールー駅に来たって、別に何があるわけじゃない。ここはただの大きな駅で、リバプール・ストリートやなんかと何も変わらない。
何の意味もない。ただ、テリーがジュリーに毎週金曜の晩にこの駅で会う、それだけだ。レイ・デイヴィスがそう歌ってるだけ。
それが、私にとっては、あらゆる価値を凌駕する。────何て馬鹿なんだろ、私。
おかしなことに、この駅の前に立ってるとダンナを思い出した。ここに10年前に一緒に来たんだ。
黒い大きな犬を連れたホームレスの男性が'Big Issue'を売っていたので一冊買う。
この"Big Issue"という雑誌のことは5年前に来た時に知った。何故いつも道端で汚い格好をした人ばかりが売っているのか不思議になり、そのうちにもしやと思い当たり、一人に声をかけて、買うからこの雑誌についておしえてくれと言ったら、喜んで説明してくれた。やはり思った通りで、これは1991年から始まった、ホームレスが社会復帰する手助けをする為のシステムであった。この雑誌を売る為の資格はただひとつ──ホームレスであること。写真付の証明書を首から下げた売り子(ホームレス)は、50ペンス(100円)で購入したBig Issueを1ポンド20ペンス(240円)で売る。寄付金は禁止されている。
このシステムを知って以来私は、ロンドンにいる間は毎週Big Issueを買うようにしている。中身は浅い情報誌にホームレス関係の話題を加えた感じで、読むところなんて殆どないので、大抵はぱらぱらっとめくっただけで終わってしまうが。
それにしてもこの売り子たちの顔が、どの顔も本当に生き生きとしているのには驚く。物乞いをしているホームレスとは雲泥の差どころではない。
この時の犬を連れた男性も同様で、快活な人柄であった。犬の写真を撮ってよいか聞くと快く承諾してくれ、撮れたデジカメ映像を見せるとぜひとも焼き増しが欲しいという。東京に帰ってから送るから少し時間がかかるよというと、東京からではお金がかかるから悪いと言う。たいしたことはないよと言うと、それではせめてこれをと言って、先週号のBig Issueをくれた。
この気持ちの良い男性に感激して、例えば20ポンド札を与えてしまうことは簡単である。でも決してそれをやってはいけない。その金は確実に彼の顔から生彩さとプライドを奪うだろう。
彼の名前はアラン・スミス、犬の名前はJJ。住所が書かれたしみだらけの汚い紙きれは、私の旅の大事な記念品だ。
ウォータールー・ブリッジを渡る。テリーとジュリーのように、安全かつ健全に。
ストランドを歩いてコベント・ガーデンへ。
ジュビリー・マーケットでちゃちい服やポストカードを買う。結構馬鹿げた文句を書いたTシャツなんかも欲しいのだが("Every good girl goes to heaven, every bad girl goes to London."みたいなのね)、ことごとくサイズがでか過ぎる。Sと書いてあっても、明らかに私にとってはLだったり。
今日はパフォーマーも多い。ステージもある。
ケン・ハイのいつものネットカフェで少々メールなど。
チューブでハイベリー&イズリントンへ。ぎりぎりゾーン2の辺鄙な場所。ガレージというライブハウスへ。
だしものの知らずに来たが、すぐにSonic Boom Sixというバンドの演奏が始まると言う。2,000円払って入る。
ボーカルが真っ赤な髪の女の子。何とかロックのセックス・シンボルになろうと一生懸命頑張ってる感じ。時々絶叫。歌詞は"Sex, sex, sex, sex, sex!!" ・・・この子好きだなあ。メインのバンドでない為、客は遠巻きにしているが、ジン飲みつつ一番前に立って見とく。この子が頑張るたんびに、私は嬉しくてくすくす笑ってしまう。Tシャツを出来るだけ色っぽく胸のとこまでまくり上げたり、セクシーなポーズを作って意味ありげに男のメンバーとからんでみたり。そのたびに私はにやにやにや。曲もけして悪くはなかった。ベースが曲書いてると思うんだけど、レッチリのフリーみたいな音だったね。
メインはThe Toastersというバンドで、なるほど演奏のレベルは格段に上がったが、ボーカルとサックスが黒人だった。2、3曲聴いて外に出る。私は実は、ジャンルを問わず黒人音楽は一切受けつけないのだ。
日本に帰りたくないという、殆ど脅迫観念に似た気持ちが湧いてくる。このまま一生ロンドンにいたい。以前からそう思ってはいるわけだけど。
Don't wanna leave him now.
You know I believe and how.
Attracts me like no other lover (こんなに私を魅了する存在は他にはない) * Something / The Beatles (1969) の歌詞。
| 2002年12月02日(月) |
Hard To Handle / Black Crowes |
朝の6時からマリー煙草を2本巻いて吸う。今回は上手に巻けた。いったん部屋の外に出てから戻ってくると、もうあからさまに匂ってる。知ってる人にはまるわかりだ。
どういうわけだか私は昔からグラスが効かない。吸い方に問題ありか、もしくは効いてるという自覚がないのか。周りは後者だと言うけれど。Davidには 「君はナチュラル・ハイだからね」 と言われた。アメリカ人にそんなこと言われたくないわ。そういえばDavidも今はどうしているのやら。彼に出会ったのも新宿ロックバーRS。私の人生のダメな部分って、何もかもRS発。
とにかく私にとってマリーは、ジンに比べるととてもエレガント。少しずつ私をおかしくする。ジンはもっと直接的で効果的。
ネットカフェに行く。ええ中毒ですとも。
ケン・ハイからバスに乗る。マーブル・アーチに行くつもりが、ピカデリー方面へ直進してしまったので、ハイドパーク・コーナーで降りる。チューブとバス、両方の乗り放題パスを買っているので、適当に乗り降りしてもかまわないわけ。
ハードロック・カフェがあった。ちょうど11時半のオープンタイム。お昼はニールズヤードでと思っていたが、何となくタイミングに押されて入る。
1階のテーブルに案内される。10年前に来た時は、地下のジョン・ポール・ジョーンズのベースの下に座ったっけ。
ビデオが流れてる。ドアーズ、ヴァン・へイレン、アニマルズ、マッチボックス・トゥエンティ、そしてブラック・クロウズ。
ブラック・クロウズ---驚いた。割と最近の映像だと思うが、何で全員太ってんのよお!! クリス以外なんて、全員メンバーチェンジしたのかと思うほどで、面影すらありゃしない。どうして皆こうもあっさり太るんだか!!
まあ、クリスはそれでもデブとは言わないだろうけど、間違いなく体脂肪が跳ね上がってる。それに何だこのださい服装。変な柄のオレンジ色の綿100%のトレーナーって、ひど過ぎ・・・それにトレーナーなのに眼の周りラメって・・・趣味の悪いアリス・クーパーみたい。あああ、せっかくの美形が何でこんなことに・・・絶句・・・
注文したローストビーフ・サンドイッチは一家5人を養えるほどの量。余りに大きくて手づかみで食べるのは不可能。ナイフとフォークで切り分けて、パンは殆ど残してローストビーフのみ食べる。本当に成田を発って以来食べ続けだ。私自身も気をつけなくちゃ・・・
チューブでマーブル・アーチへ。オックスフォード・ストリートを歩いて、ノッティング・ヒル・ゲートへ。
5年前に一ヶ月滞在した時は、英語の学校がマーブル・アーチにあったので、毎日のようにこの通りを歩いたものだ。
安っぽい派手な服を何枚か買う。店内で上品そうな紳士に、このコートを着てみてくれないかと頼まれる。あげたい相手が私と同じくらいのサイズだから、と。何てスウィートな。快くOK。あなたのサイズは?と聞かれる。7だけど、イギリスに7はない。6か8でしょうねと答える。今日辺りは食べ過ぎてるせいで8かも。しくしく・・・
ストールでアメリカン・チェリーとライチを半パイントずつ買う。5年前にもこうしてチェリーを買っては、ハイド・パークに行ったものだ。
思いつきでアムステルダムへの一泊旅行を予約する。アムスのことなんか何も知らない。ヘンプが吸いたいだけ、ただそれだけ。キンクスを流してる本屋でアムスのガイドブックを買う。店主の女性がWaterloo Sunsetを口ずさんでいる。
ニールズ・ヤードまで歩き、オープンカフェでお茶を飲む。ゴージャスな19世紀風の衣装の黒人女性が席へ案内してくれる。
レスター・スクエアからチューブで帰る。
またネットカフェへ。ええ、ええ、勿論中毒です。わかってます!
| 2002年12月01日(日) |
Tea for one / Led Zeppelin |
11時半に、清掃に来たルームメイドに起こされる。靴も脱がずに寝てた!!
1時間後にホテルを出て、ネットカフェへ。3時まで日記更新。
ケン・ハイを歩いて、ホーランド・ストリートのカフェでアフターヌーン・ティーを取る。選んだのはキュウリとクリームチーズのサンドイッチ、スコーン、チョコレートケーキ、ダージリン。
またケン・ハイをぶらぶら歩き、ネットカフェで更に1時間。
ビル・ワイマンの店、"Sticky Fingers"で夕食。赤ワイン、アップルサイダーグレーズのリブ、そしてストーンズの曲──"Under My Thumb"など。
ここに来たのは10年ぶりなのに、何も変わっていないように見える。
ホテルに戻り、午前2時まで4時間寝る。
| 2002年11月30日(土) |
Brown Sugar / The Rolling Stones |
午前中はこの日記のアップに3時間もかける。ネットカフェのPCが異常に重かったのだ。とうとう諦めて途中で投げ出す。
ポートベローのマーケットへ。ポートベロー・ロードをえんえんと何キロも続くマーケットで、とにかく最後まで歩こうと思ったのだが、泣きが入ってきた辺りで標識を見たらまだ5/7だったので、諦めて引き返す。
途中チャイニーズ・フードを買って、歩きながら食べる。ロンドンのストールでチャイニーズ、ジャパニーズ、ベトナミーズと言って売っているのは全部同じもので、カレーや酢豚のような各種の煮込み物をタイ米(フライドもあり)か焼きそばにかけてくれる。これがもう、やたらと美味しい。結構な量なのだが、美味いので食べてしまう。大変やばい・・・
食後にカフェでコーヒーを買って飲む。ロンドンで「コーヒー」と頼むと、エスプレッソをお湯で薄めたものを出してくる。不味い。
引き返す途中で探していた物を見つけた。フラスクだ。ストールのお兄さんはお釣りの小銭が足りないから売れないと言う。本当にどこまで労働意欲がないんだか。たまたま別の客が細かいので払ったので、買うことが出来た。2個買って、大きいほうが哲にお土産、小さい方が自分用。ジンを入れて持ち歩くことに。
急いでホテルに戻り、シャワーを浴びて着替える。髪を乾かしていたら、備え付けのドライヤーが壊れた。フロントの男性に言ったところ、うるさそうにした挙句、しまいには"Just a hair-dryer blew up, so what?"と言いやがったので口論に。(実際口にこそ出さないが、"hair-dryer"という単語の前に明らかに"fuckin'"という単語が見えていた) しかしまあ最後には彼の頭も冷えたらしく、自発的に謝って、態度が悪かったことを認めた。
口論に勝って、ふと見ると17時。・・・17時! コンサート17時半からなのに! すっかり態度を改めたフロントがシェパード・ブッシュへの行き方などを教えてくれる。結局タクシーでシェパード・ブッシュ・エンパイアに乗りつける。
・・・結局会場が開いたのが18時、コンサートが始まったのが19時だった。ここがロンドンだってこと忘れてたよ。
ところでコンサートはユーライア・ヒープとエイジアであった。Time Outの紹介文には"Rock Dinosaurs"と書かれていた。言い得て妙。
客はさすがに40代〜50代が中心。子供連れも多い。小学生くらいの女の子がクリムゾンを歌っていた。まあ感動的だこと。
私は3階席のチケットを買ったのだが、ある家族連れが何故か私を列の前に入れてくれたので、おかげで一番前に座れた。前の手摺の幅が広く、皆そこに腕を乗せてもたれてくつろぐ。ピンク・フロイドが流れている。
後ろのバーでジンを買う。隣に座っていた男性が何を飲んでいるのか聞くのでジンだと答えたら、しばらくしてから戻ってきて、自分もジンを買ったのに君の半分しか入れてもらえなかったとこぼす。バーに一緒に来て抗議してくれと言うので、嫌だよと笑う。彼の奥さんらしき人が、あとで何故か私にジンをもう一杯買ってくれた。本当にさっきの半分しか入っていない。"You see?"と彼が言う。
ライブが始まる。ロックとブーズ、最高の組み合わせ。何て幸せ。
私にとってのハイライトは、エイジアのジェフリー・ドーンズのソロであった。元バグルスの彼は、"Do you remember this song?"と言って「ラジオスターの悲劇」を弾き始めたのだ。客が"Video Killed The Radio Star"と声を合わせて歌うやわらかい歌声が、会場の天井にきれいにこだましていた。
チューブでコベント・ガーデンへ行き、ロック・ガーデン(ガーデニング・クラブ)という店へ。ここは毎週土曜がクラシック・ロック・ナイトで、題して'Brown Sugar'と言うのだ。これは行かなくては。霧雨の中1時間も並んだ挙句、ここが単なる70年代ディスコをかけるクラブに過ぎないことを知る。
とにかく、それでも踊った。15分おきに違う男が視界に入ってきて(踊っている時の私の視界は大変狭い。ほぼ下向いてるし、目も閉じてたりする)邪魔する。ディスコって行かないけど、皆こうなのかな。邪魔邪魔!! 酒買ってくれるのだけは歓迎するけど。
3時頃にもう我慢出来なくなって、黒人のDJに可愛らしく話しかけてみる。ねえねえ、ストーンズかけないの? だってこれ、"Brown Sugar Night"なんでしょ?
10分後。かかった!!!! まさしく"Brown Sugar"が!!! 大喜びでフロアのど真ん中へ。どいてどいて! ああもう、邪魔しないで!! 今大変なのよ、見りゃわかるでしょうが。続いて"Harlem Shaffle"がかかる。やったわ。ロンドン制覇!!
4時閉店。外に出て駅前の電話ボックスに入り、酔った勢いで公衆電話にクレジット・カード突っ込んで、哲に1時間電話してしまう。・・・この電話代がいくらかかったのか、実はもうきっちり計算できているのだが、理解したくない。イギリスの公衆電話から日本の固定電話まで1分190円。更に私がかけたのは携帯なので、その3倍かかる。・・・計算したくない。したけど信じたくない。きっとどこかで何かが間違っているはず。間違っているのは私の生活態度かな。うーん。
日曜の朝は駅が遅くまで開かないことをすっかり忘れて、レスター・スクエアの駅まで歩いて行った。もうすぐ開くものだと思い紅茶とフィッシュ&チップスを買って、食べながらチューブの入り口が開くのを待ってた。寒い。
カリビアンぽい男性が話しかけてくる。それ、美味しい? どこから来たの? 話してもいい?
かなり邪険にしていたら、そのうち離れていった。
チューブの入口前、私の横でホームレスの老人が凍えてる。私はホームレスにはお金をあげない。あげた瞬間に自分も相手もダメになっていくような気がする。このフィッシュ&チップス半分あげたら喜ぶかな? 嫌がるかな?
さっき私に話しかけた男は私と同じ店で食べ物を買っていたが、ホームレスがすぐそばにいるのに気づき、食べ物を買えと言ってコインを差し出すが、老人は頑として受け取らない。とうとう老人は店の窓口にやってきて、自分のコインを1枚出してピザを一切れ買った。そして私の隣に戻って来て、大事そうに両手で囲むようにして食べ始めた。
私は躊躇してたフィッシュ&チップスをさっさと食べ終え、老人に話しかけた。"Sir, do you usually put some sugar in your tea?" 老人はイエスと答える。"How many?" "Two."
売店に戻り紅茶を買い、砂糖を2個入れてもらう。老人に渡して言う。"Sir, here is your tea." 驚いたことに、彼はにっこり笑って受け取り、"Thank you"と言った。私は寒いのが何より辛い。この氷みたいな空気の中で、老人が少しでも温まると思うと心が楽になる。彼が紅茶を受け取ってくれた瞬間、紛れもなくこちらが何かしてもらった気分になった。多分本当にそうなんだろう。食事する時には何か飲み物がなきゃね、と言ったら、"Of course."とこたえてまた笑った。
老人に話しかける少し前に、タクシードライバーが近づいてきて、何回かタクシーを勧めた。断ると、今日は日曜だから駅が7時まで開かないのを知ってるかと言う。7時!!
やはりチューブ入口前で寝ていたスペイン人観光客のカップルを叩き起こす。駅は7時まで開かないよ、と言い、うろたえる彼らをバス停まで案内する。
タクシードライバーがまたやって来る。どこへ帰るの? バスに乗るの? 何番のバスだかわかってるの? そのしつこさにかなり苛ついたので、相当きつい声で、ええわかってる、N37だよ!と言う。ああそれなら向こうの方にバス停がある。連れていってあげよう。あら、いい人じゃん。
それからトラファルガー・スクエア近くまでの道のり、彼はえんえんと戯言を言い続けた。曰く東京に帰る飛行機をキャンセルして、結婚してずっと一緒に暮らそう、お金なら僕が稼ぐから云々。OKして、どう出るのか見てやりゃ良かったな。
ピカデリー・サーカスまで歩く。途中出会った、マナー・ハウスまで帰りたいというフランス人の男の子二人を連れて。着いたら駅が開いていた。助かった。
寒さのあまりコーヒーを飲みに寄って、ホテルに帰ったのは8時。ジンと熱い紅茶を飲み、そのまま気を失う。
| 2002年11月29日(金) |
Dosed / Red Hot Chili Peppers |
夜中の0時まで1、2時間寝る。8時半にネットカフェへ。
チャリング・クロスへ。
トラファルガー・スクエアに寄る。周り中工事中。ロンドンはどこもかしこも工事中。私が思うに、仕事が遅いからではないか。
駅前のマーケットで、ロックTシャツを売っていたストールの店員(フレンズのジョーイそっくり)に今晩飲みに行こうと誘われる。ローリング・ストーンズも知らない奴と出かけるのなんかやだね。(名前しか知らないらしい) 電話番号をもらったので、いつも通り捨てる。
チャリング・クロス・ロードのマーダー・ワンへ。世界最大のミステリ専門店である。
隅から隅まで探すがフレドリック・ブラウンはない。どうやら私が5年前に買ったのが最後の1冊らしい。買ったのは"The Lenient Beast"。
チャイナ・タウンでランチ。どうってことない。ストールの方がおいしい。
ピカデリー・サーカスへ。何とロック・サーカスがなくなっていた。
いくつか本屋をまわり、4時に帰宅。
またケン・ハイのネットカフェへ。向かいの本屋で"White Boy Blues"というCDを買う。
アールズ・コート・ロードのハンサム・キャブというパブでビターを飲む。'80年代ポップスばかりかかる。懐かしいというそれだけできらきら光る、ギヤマンのような'80年代のガラクタたち。
マリーの煙草を何本か巻いて吸う。ラッキー・ストライクとのブレンドは懐かしい香りがする。煙草を吸う男の香り。少し笑い出す。
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