ひとりごと
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今日こそ薔薇の剪定を!と、はりきって庭に出た。 でも、う〜〜ん、それより前にやることがいっぱい。 いつから手を入れてなかったのか、庭は荒れ放題だ。
まず、この前の雪でとうとう枯れたシシトウやパプリカを抜いた。 夏から晩秋まで食卓を賑わせてくれてありがとう! ルッコラはまだ現役で収穫できそうね。
茶色くなった朝顔やルコウソウやフウセンカズラの蔓を 薔薇のオベリスクからほどいていった。 寂しいオベリスクを飾ってくれてありがとう!
伸び放題の枝が絡まったエゴノキを剪定した。 なんと梢にカマキリの卵を2つも発見! …でもすでにシジュウカラにつつかれていた。 がっかり。
植え忘れた球根をたくさん発見して、あわてて植え込む。 そろそろ根も芽も伸ばしたいだろうに、おとなしく箱の中で待っていた。 本当にごめんね。 きれいに花咲きますように。
葉が落ちた紫陽花の陰から、なくなったと思っていた移植ごてが出てきた。 ポリポットや鉢のかけらや名札もあちこちから出てきて、掃除も大忙し。 こんな庭を、見てみない振りしていたなんて、不精な私。
小さい庭の隅っこから少しずつ片付けながら、そこに植えてある薔薇から剪定していった。 もう赤い芽がふくらみ始めていた。 思い切りよく切り詰めたら、その剪定枝はゴミにすることなく、小さく刻んで地面に散らした。 生命力いっぱいのこのマルチングは、やがて有機堆肥となってまた薔薇の栄養になる。 ここで生まれたものは、ここで土に還したい。
ローラー作戦で、隅っこから少しずつ庭を整理していって、葡萄の木にたどりついた。 この木の剪定は大仕事になりそうなので、後日に回す。 黄もっこうばらの剪定も、また今度にしよう。 今日は庭仕事の手始め、軽いところから慣らしていこう。
魔法瓶に詰めておいた熱いお茶を時々飲んで冷えた手と体を温めた。 1時間やっては20分休憩では、なかなか進まない。 でもあわてない、あわてない。 まだ冬は長い。 陽射しはまだあるけれど、3時に近くなって空気は冷たくなってきた。 次を最後にしよう、と今度は玄関アプローチのシェードガーデンに回った。
12月の始めから咲いている水仙がいよいよ美しく咲ききらめいていた。 その清楚なうなじに見とれてしまった。
しゃがんで地面の枯葉をどけると、クリスマスローズの花芽がいくつも頭をもたげていた。 今年も約束を忘れずに咲いてくれるらしい。
そして、スノードロップの花を見つけた! もう咲いてくれたのか。 つるんとした雪白が目にまぶしい。
卒業式の香りの沈丁花も、もう赤いつぼみを束ねていた。 まだ冬は長い、なんて思っていたけれど、今年の春は早く来るらしい。 虫たちの姿もそろそろ見られるのだろうか。
嬉しい発見をいっぱい心とカメラに収めて、今日の庭仕事はここまで。 続きはまた、晴れた日に。
カンカンに熱せられたオーブンの中の小石にさっと水をかけた。 じゅー!と言う音とともに、もうもうと立つ白い湯気。 それを逃さないように、すばやく熱い天板を引き出してパンの生地を乗せ すぐに押し込んで、パタンと扉を閉める。 庫内の温度が200℃まで下がったら、タイマースタート。 あとは35分後の焼き上がりを待つだけ。
今年最初のパン教室は、このステップでの最後の授業だった。 メニューはフランスパンを2種。 生地の作り方も、成型の方法も、焼き方も、 そのシンプルな外観から思うよりもずっとむずかしい。 フランスパン、おいしくできますように。
オーブンに入れたら、見る見るうちに、クープが開き、 ほんのりと焼き色がついてきた。 パリパリ…と、ふくらむ音が聞こえそう。 わくわくする。 生地の一次発酵、成型後の仕上げ発酵、そしてオーブンに入れたときのふくらみ。 パン作りはこうして形や大きさが変わっていくのが楽しい。 小麦の粉が酵母と言う命の元を与えられて、おいしく育っていくのが嬉しい。 まさに生きものの成長を見ているようだ。
でもまだ未熟な腕。 なかなか思ったとおりには育ってくれない。 「なにか」の加減でふくらまなかったり、おいしくできなかったりする。 その「なにか」がまだよくわからないことがある。 思い通りに焼き上げられる日が来るのはいつのことか。
こんな私なのに、もう来月からは師範科に進むことになった。 月に1度のゆっくりペースの教室を2年半続けていた。 もう何十回もパンを焼いているはずなのだけれど、 本当にちゃんと身についているのかしら? 私などが師範科に進んでもいいのかしら? 不安なような、申し訳ないような、楽しみなような。
次からは、さまざまなフルーツや穀物から酵母を起こしてパンを作る。 試食させてもらった発芽玄米の酵母から作ったパンは、 舌に触れた瞬間から自然な甘みがうっとりと広がるようだった。 ふわふわとした口当たりの中に、しっかりとした穀物の香りがあった。 こくがあるのに、爽やかな後味だった。 こんなパンが作れるようになるなんて! …作れるようになるかな? やっぱりとても楽しみ。
そろそろフランスパンの焼きあがる時間。 オーブンの中を覗き込んだ。 こんがりといい色に焼けてきていた。 クープの広がりはちょっと足りないような気がする。 成型のときに、うまく芯を作れなかったらしい。 これはやっぱり、練習、練習。
タイマーが鳴り、オーブンからパンを取り出した。 広がる香りは最高! 色もなかなか。 ふくらみ不足はこれからの修行の余地があるということで。 あわてて天板に乗せたせいで、端っこが引っかかって、尻尾ができたのはご愛嬌。 これはなかなかのできではないかな?と自画自賛する。 熱々をすぐに割って、バターをのせて食べたくなる。 でもそれは今度、家で作ったときのお楽しみにね。 ここではあら熱をとったパンを、そのまま袋に入れて持ち帰った。 手提げ袋からただよってくるふくよかな香りと、ほのあたたかさが嬉しかった。
教室では、先生のつきっきりの指導があったので、なんとかできたけれど、 家でひとりで、火力も大きさも違うオーブンで、うまくできるだろうか? きっといくつも失敗作ができるのだろう。 それでもいつか、思い通りにおいしいパンを焼けるようになるときを夢見て! さあ、どんどんパンを焼きましょう。 修行はまだこれからだ。
ボタニカルアートの 今日のモデルはガーデンシクラメン。
細い長い首をしなやかに折り曲げて うっとりと水面を見つめる白鳥のよう。
なんとかうまく着付けができて、髪も1度で決まって 今日は早く家を出ることができた。 暖かい柔らかい陽射し。 お初釜日和。 雨男の先生の力に、晴れ女の私が勝ったようだ。
電車を降りてぱたぱたと草履を鳴らして歩きながら、 もうひとりのお茶の先生のことをふと思い出していた。 20年前、私に最初にお茶の手ほどきをしてくださった先生。 おっとりと優しくて、でもきっちりと厳しくて、お話が楽しくて、大好きな先生だった。 結婚のために退社するときに、今の先生を紹介してくださって、 そのときに先生の家まで送っていただいて以来、もう十年以上お会いしていなかった。 大きなお茶会などでちらりと姿を見かけることがあっても話すことはなかった。 それでも毎年、近況を書いた年賀状を交換していたのに、 今年は先生からの美しい絵の描かれた葉書は届かなかった。 それがとても心配で気にかかっていた。 たしか先生もこの街にお住まいのはず、お元気でいらっしゃるのだろうか。
考えながらぼんやりと歩いていたら、目の前に小瓶が突き出されていた。 反射的に瓶を受け取って見あげてみると、そこはドラッグストアの前。 私は新発売のドリンク剤の試飲をもらっていたのだ。 きゃー、一張羅を着て、街中でドリンク剤を一気飲みするの? どうしよう、と思ったけれど、お店の人はにこにこと説明してくれる。 「おいしいピーチ味、女性に嬉しいコラーゲンもたっぷりですよ。」と。 これからのお初釜は4時間以上の長丁場になる。 まだ時間もあるし、ここで栄養補給をしておくのもいいかな、と思い切ってぐいっと仰いで飲んだ。
「おいしい!」思わず言ってしまった。 「そうでしょう。ありがとうございます。今なら10本入りで1600円。一箱買ったらもう一箱おまけ!」 と、お店の人は勧めてくれた。 でもさすがに、ドリンク剤の箱を2つ抱えてお茶に行くわけにはいかない。 「もしかしたら、帰りにでも寄りますから。」と、遠まわしにお断りしながら 店の前の備え付けのゴミ箱に瓶を捨てに行った。
さあ、行かなくちゃ、と道に出ようとしたとき、同じように上手に瓶を渡されて ピーチ味のドリンク剤を飲んでいる初老の女性がいた。 「いやだわ〜。私、ドリンク剤って飲んだことがなかったのよ。」 ころころ笑う声に聞き覚えがあった。 え?と思って顔を見ると、髪はあのシニヨンではなくショートカットだったし、 服装もお着物ではなくコートとスラックスだったけれど、間違いもなくあの先生だった。
「先生!」と思わず大きな声が出た。 瓶を持ったまま、振り向いた顔が一瞬驚いて、そして笑顔になった。 「まあまあ、こんなところで!あらあらあら。」 私は先生に駆け寄って、手袋の手を握った。 「先生!ずっとお会いしたかったんです。今だって思っていたんです。会いたかったんです。」 先生は懐かしい笑顔でうなずいた。 「まあ、ほんとにねぇ。…ここは寒いわ。あちらに行きましょう。」 と、先生はおっしゃって、私たちは手を取り合ったまま、ドラッグストアの前の陽だまりに出た。
「お着物、素敵ねぇ。今日は何?」 「お初釜です。先生、まさかお会いできるなんて。夢見てるみたい。」 「そうねぇ、ご無沙汰しちゃってごめんなさいね。お初釜なら早く行かなくちゃ。」 「いえ、先生、まだ早いのです。お元気そうで嬉しいです。」 「ごめんなさいね。もうみなさんとご無沙汰しちゃっているのよ。いろいろあってね。」 と、先生はゆっくりとおっしゃった。 「主人がね、亡くなりましたのよ。それで私、引っ越して一人暮らし。小さいところに住んでいるの。 足が悪くて座れなくなったから、お茶もやめてしまったのよ。」 私は声を出せず、その手を握ったまま先生を見つめた。
「だからね、今までお付き合いしていた方とはもう会わなくなっちゃって。 主人が亡くなって、そのとき、私も死んでしまったの。」 と、不思議と明るい声で、先生はおっしゃった。 胸が詰まった。 「いやだ。先生、死んだなんて言わないでください。いやです。元気でいてください。」 ぼろぼろと涙が出てきた。 「先生、死なないで。まだまだ元気でいて…。」 私は道端で泣きじゃくっていた。
「あらあら、駄目よ。おめでたいお初釜の前なのに。ね。大丈夫よ。 死んだって言っても、ほら、こうして生きているでしょう?大丈夫だからね。」 先生は笑いながら背中をさすってくださった。 私は涙を拭いて、我に返って恥ずかしくなった。 「ごめんなさい。私ったら子どもみたいに。もういくつだと思います?」と照れ隠しに笑った。 「変わらないわねぇ。いいわよ。あなたはそのままで。嬉しいわぁ。」と先生は歌うように言った。 「遅れたらいけないから歩きながらお話しましょう?こちらでいいのよね?」 先生は先に立って歩き出し、私も横に並んで歩いた。 早咲きの梅の香りがする明るい道を、ゆっくりと歩きながらいろいろなお話をした。
「それにしても、お茶、続けているのね。嬉しいわ。」と、 先生は私の姿を改めて見ながらおっしゃった。 「はい、おかげさまで続いています。もう始めてから20年になるのですよ。」 「お茶はいいわよ。私は足がこんなになってしまってもうできないけれど、あなた一生できますよ。」 先生は張りのある声でおっしゃった。 「はい、そうですね。ここまで来たらやめられません。ずっと続けますね。」 私もうなずいた。 その一生続けられる世界に導いてくださったのは、目の前のこの先生なのだ。
「本当におどろかせてしまってごめんなさいね。大丈夫よ。 今までの私はいなくなってしまったけれど、こうしてこれからも生きていきますからね。」 先生は軽く自分の胸をたたいた。 「今日だってね、『ハウルの動く城』を観に行こうかしらって思っていたのよ。」と、先生。 「『ハウル』!いいですよ〜。是非是非ご覧になってくださいね!ご一緒したいくらいです。」 ほとんど本気で私は熱を込めて言った。 「そうね、また何かのときにご一緒しましょうね。」 「そうですよ。先生、またお会いしましょうね。お元気でいらしてくださいね。」と言うと、 「そうね、なんとかやっていきましょう。あなたも元気でがんばってね。」と先生は言った。
曲がり角に来て立ち止まった。 「それではね。私はこちらへ行くから。あなたはまっすぐよね。またね。お会いできてよかったわ。」 先生は手袋をはずして、手をこちらに差し出した。 「はい。またお会いしましょうね。今日は嬉しかったです。」 私は先生の小さな柔らかい温かい手を握った。 先生も強く握り返してくださった。 「それではね。」と、先生は一言おっしゃると、角を曲がって歩いていってしまった。 振り返りもせず、行ってしまった。 先生らしかった。 もう一度角を曲がって、その姿が見えなくなるまで私は手を振っていた。
その道をまっすぐ歩いて、お初釜のある先生の家にすぐに着いた。 ちょうどいい時刻になっていた。 ぼちぼちと、ほかのお仲間も集まってくるところだった。 まるで夢を見ていたようだ。 ちょっと悲しい清々しさと、温かくなるような嬉しさが胸にいっぱいだった。
先生は『ハウル』をご覧になっただろうか? 今度思い切って電話してみよう。 2月にあるボタニカルアートの展覧会の招待状も出してみよう。 先生に見ていただくのだったら、がんばって描かなくては! これをきっかけに、先生ともっとお会いできるようにしたい。 前の世界からはいなくなってしまった先生と、 これからは違う世界でお付き合いできるような気がする。
明日はお初釜。 何を着て行くかでいつも同じように悩んでしまう。 お正月なのだから、ちょっと華やかに装ってみたい。
新しいお着物や帯は、そうそう買えないけれど、 今年は少しだけ奮発して新しい帯締めを買った。 足袋はもちろん新品の真っ白だ。 ほら、これだけで新鮮な気持ち。 あらたまった気分。 そうだ、若草色の伊達衿もつけましょう。
きれいにそろえて、長襦袢に白い半衿も縫いつけて、清々しい気持ちになった。 明日もこのお天気が続きますように!
陽射しがうららかなので 庭に出て薔薇の植え替えや剪定をしようと思った。 テラスのカーテンを開けたとたん あわてたように飛び立つ鳥たちの影。
ごめん、ごめん。 シジュウカラたち、ヒマワリの実を食べていたのね。 私があげたのだった。 ゆっくり食べていってね。
フェンスにとまっているヒヨドリたちは、 つる薔薇の赤い実がお気に入りなのね。 おいしいよね。 またどこかでこの薔薇の芽が出るかもしれないのね。
冬の庭は小鳥たちの庭。 ここを気に入ってもらえてとても嬉しい。 だからね、今日もお庭仕事ができなかったのです。
1kg!
夕方からスポーツクラブに行った。 メディカルチェックをしてもらって、これからのメニューを決めるのだ。
まずはインボディの検査。 ステンレスの機械の上に裸足で立ってグリップを握る。 そして静止すること1、2分。 やがて、私の体の成分を打ち出した紙がプリントされてきた。 体重、水分量、筋肉量、脂肪量、骨量、上下左右のバランス、基礎代謝量が書いてある。 先生と一緒にそれをチェックする。
う〜ん、大変! 前回測った5月に比べて、意外にも体重はそんなに増えていなかったけれど、 筋肉量が1kg減って、その分きっちり脂肪が1kg増えていた。 1kgの脂肪!! お肉の脂身で考えるとちょっと恐いね。 これは大変。 「怪我をして運動を休んでいた分、筋肉が減るのは仕方ないことですよ」と先生はおっしゃった。 「まだ無理はできないけれど、少しずつ取り返していきましょう!」と。
左右のバランスも、大きく左に傾いていた。 右膝の故障をかばって、左に力が加わっていたらしい。 骨盤もゆがんでしまっているらしい。 気がつかないうちに、そんなことになっていたなんて。 このままだと、背骨も曲がって大変なことになってしまう。 それを正すための、ダンベルの体操や軽いストレッチを教わった。
1kgの脂肪を、ふたたび筋肉に変えるための、これからのトレーニングメニューも決めていただいた。 それでもまだ、私の身長だともう3kgほど筋肉がほしいらしい。 あと3kgの筋肉!! お肉の赤身で考えるとすごい量。 そんなにも私には筋肉が足りなかったのね。 力がないわけだ。
「まだ膝も完全ではないし、しばらくお休みしていたので少しずつやっていきましょう。 マシンジムは週に2回くらいで十分です。あとは家でストレッチをしてくださいね。」 と言われた。 スイミングも、しばらくは泳ぎはなしで、水中ウォーキングや、膝痛運動をやるように、とのこと。 ずいぶん後戻りしてしまったみたいだけれど、あせってまた体を壊してはいけない。 ちょっとずつ、ちょっとずつ、この脂肪を筋肉に変えつつ、体力もつけていこう。
「大丈夫。またバレエもできるようになりますよ。」と嬉しい言葉もいただいた。 そうね。まだ先は長いのだから、いつもの私のペースでのんびり元気になって行きましょう。
今日もスポーツクラブへ行った。 プログラムを見ていたら、いつも木曜の夜にやっていた プールでのレッスンメニューが今日の昼間にもあるらしいのだ。 今週は金曜日にお初釜があるので、木曜の夜のレッスンはきつい。 今のうちにやっておこう、と思った。
12月から風邪をひいていたので、プールに入るのも1ヶ月ぶりだった。 ロッカーで水着に着替えるとき、なんだか頼りないような不安な気がした。 でも裸足で階段を上がり、プールへのドアを開けると、まぶしい光! 一面の大きなガラス窓から昼間の陽射しがいっぱいに入り込み、 水色の水面に反射して、きらきらと輝いているのだった。 いつもの夜のプールとは全然違う雰囲気。 まるで南国のリゾートに来たみたい。 うきうきと嬉しくなった。
タオルを棚に置いてシャワーを浴び、1ヶ月ぶりの水にそろそろと入って ゆっくりと25メートルのレーンを片道歩いた。 端まで行ったら、今度は壁を蹴って、ついーっと浮き伸びした。 あぁ、気持ちいい。 ガラス越しの陽射しが暖かく背中を照らすのを感じる。 昼間のプールもいいものだ。
やがてすぐに、「ダイエットファン」のレッスンが始まった。 音楽に合わせて、水の中でエクササイズをする楽しいプログラムだ。 腕や足に感じる水の抵抗も、張り合いを感じる。 プールサイドで踊る先生を見ながら、一生懸命に同じように体を動かした。 すぐに体が温まった。
ちょっと胸が痛いな、と思ったのは、ステップを踏みながらレーンを歩き出したとき。 1周、2周目までは我慢したけれど、とうとう息まで苦しくなって、 そっと列を離れてプールからあがった。 水に足を垂らしたまま座り込んでいると、「大丈夫ですか?」と、女性の救護の先生が駆けてきた。 はい、と口の形だけで答えて笑ってみたけれど、あまり大丈夫じゃないみたい。 頭がしびれたようになって、胸が痛い。 「はい、ゆっくりと吸って…吐いて…。」と、先生が背中をさすってくださった。 それに合わせて呼吸をしようとするけれど、息ができない。 喘息とは違った息苦しさだった。 「息が…吸えない。」出てきた声はかすれていた。 先生は立ち上がって走っていった。 そしてすぐにスタッフルームからビニール袋を持ってくると、それを私に渡した。 「これを口に当てて、浅くでいいから、少しずつ吸って吐いてください。」 言われたとおり、袋を口に当てて、その中で呼吸をした。
「過呼吸のようですね。」と、先生がおっしゃった。 「酸素を吸いすぎて、肺が飽和状態になっているんです。 二酸化炭素不足になって、頭がハイな状態になったり、息ができなくなったりするんです。」 私は袋を口に当てたまま、先生の声を聞いた。 「大丈夫ですよ。こうして吐いた息を吸っているうちに楽になってきますからね。」 と先生は、ゆっくりと背中をさすってくださった。 窮屈なキャップを脱ぎ、スタッフが持ってきてくれたバスタオルを肩から掛けられ、 ゆっくりと呼吸するうちに私の息も落ち着いてきた。 「大丈夫です。」やっと声が出た。
プールサイドにあるベンチに移ってそのまま休んだ。 「ずっと風邪をひいていて、プールは1ヶ月ぶりだったんです。」と先生に言った。 「そうですね。久しぶりに運動して、息を多く吸おうとしてしまったのですね。 そうでなくても、若い(!)女性にはよく起こることなんですよ。でも大丈夫ですからね。」 先生はペットボトルの水を買ってきて、ふたを開けて渡してくださった。 「少しずつ水分補給してくださいね。 脈もまだ100以上ありますから、しばらくここで休んでいてください。」
「ほんとに自分が情けなくなります。」と、私は笑った。 「そんなことないですよ!体の調子が悪かったり、久しぶりだったりするとあることですよ。 ただ、しばらくは激しい運動はしないほうがいいですね。 スイミングも、呼吸が大変なので今はやめたほうがいいです。 水中ウォーキングや、スタジオレッスンだったらストレッチやバランスボールがいいですね。」 「はい。」 確かに、激しい運動はできそうもない。 膝がまだ痛いから、当然バレエもできないし、楽しみにしていたプールの 「初めてスイム」や「ダイエットファン」も、もうしばらくお休みしたほうがいいのか。 せっかく張り切っていたのに残念。
「だんだんと体力もついてくるし、呼吸も楽にできるようになりますよ。 ゆっくりとやっていきましょうね。」と、先生はにっこりと笑った。 私より一回りは若いであろう、妹みたいな先生が頼もしく見えてすがりたくなってしまった。 「もう大丈夫です。もうしばらくここで休んでいますから。」と言うと、 先生はうなずいて、すらりと立ち上がってプールサイドに戻っていった。 私はまだぼんやりする頭と、少し痛む胸を押さえて、ベンチに座ったままきらきらのプールと その中でぴちぴちと泳ぐ人、水の中で踊る人を眺めていた。 髪や水着もだんだんと乾いてきていた。
ダイエットファンのレッスンが終わり、インストラクターの先生が心配そうな顔で近づいてきた。 「大丈夫ですか?」 「はい、過呼吸らしいです。」 「いつもこのクラス、出ていらっしゃいましたよね。」 「でも1ヶ月ぶりだったんです。風邪をひいていたので。」 「無理しないほうがいいですね〜。お大事にしてくださいね。」 「ありがとうございます。」と笑顔で答えた。
結局、1時間もベンチで休んでいた。 立ち上がると、まだ少し頭がふらついたけれど、息は苦しくない。 お風呂でさっと体を温めて、服に着替え、フロントでチェックアウトした。 救護の先生から連絡が行っていたらしく、フロントでも 「お加減はいかがですか?」と、心配そうに訊ねられた。 「お帰りは?お車ですか?」と訊かれたので、「自転車です。」と答えると 「自転車!大丈夫ですか〜?」と言われてしまった。 「大丈夫です。気をつけて帰ります。ありがとうございました。」とうなずいた。 歩いたって10分もかからない距離だけれど、寒いから自転車でぱ〜っと帰ったほうが楽だしね。 それにしても、昨日と言い、今日と言い、このスポーツクラブのスタッフはみな親切で感じがいい。 心がほっとする。
ラベちゃんをこいで、いつものように5分足らずで家に着いた。 明るい暖かいうちに帰れてよかった。 熱いお茶を飲んで、しばらくはぼーっとした。 たまに張り切って運動しようとするとこれだもの、本当に情けないこと。 私はつくづく運動にむいていないらしい。
とりあえずは、これ以上病気になったり怪我をしたりして、周りの人に心配や迷惑を掛けないように 日ごろの生活から気をつけていこう。 まずは早寝早起き。 この日記の中でも何度も「脱・フクロウ宣言」をしておきながら、 なかなか実行できていなかったけれど今度こそ「脱・フクロウ」! 「ニワトリ」とまでは言わないまでも、「インコ」並みには早寝早起きしよう。 そして体の調子を整えて、いずれバレエにもダイエットファンにも復帰するつもり♪
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