ひとりごと
DiaryINDEXpastwill


フィンブリアータ 2004年05月10日(月)

近所の薔薇園に、友だちと行った。
私が初めての薔薇を買った薔薇園。
行くたびに、新しい出会いのある薔薇園。

霧のような雨がふったりやんだりしていた。
緑は濃く、薔薇の色は鮮やかだった。
そこで私が一目ぼれしたのは、透き通るような花びらと蕊を持つ
フィンブリアータという薔薇だった。
雨の粒をまとった淡いピンクの花びらは、
薄紙細工で作った撫子のように繊細な切り込みが入っていた。
その花は、苗の棚の入り口で優雅なアーチを作って
しとやかに私たちを見下ろしていた。

友だちは貴婦人のような白い薔薇の新苗を、
私はフィンブリアータの小さな新苗を買って帰った。
小さい苗なのに、つぼみを4つもつけていた。
「花を見たいでしょうから一番大きいのは咲かせてもいいよ。
あとの3つはかわいそうだけれど、切ったほうがいいな。」
と、薔薇園の奥さまがアドバイスを下さった。
ひとつだけでも、私の庭で咲いてくれたら嬉しい!

フィンブリアータのことを、私は何も知らなかった。
何しろ、電撃的な一目ぼれだったのだから。
友だちと別れたあと、インターネットで検索してみた。
「Fimbriata」で、たくさんのページがヒットした。
でも、不思議不思議。
出てきたのは薔薇のページより、ほかの生きものの方が多かった。
キノコ、クモ、巻貝、ヤドカリ、苔、水草、カサゴ、カレイ、ラン…。
どれもみんな「フィンブリアータ」なのだ。

一体「フィンブリアータ」って何?
と、思っていたら、その回答のページに行きついた。
「fimbriata」とは、ラテン語で「フリンジ状の、へりがぎざぎざに裂けた」の意味を持つ
種名を表す言葉だったのだ。
なるほど、それぞれのページに戻って写真を見てみると、
キノコも貝も苔も、ひらひらぎざぎざしているのだった。
こんな優しげな小さな薔薇も、クモやキノコやヤドカリと同じ、フィンブリアータ仲間。
そう思うとおもしろい。
ラテン語の辞典をもっと見たくなってしまった。

私のかわいいぎざぎざちゃんが、花を見せてくれる日が待ち遠しい。


初夏の贈り物 2004年05月08日(土)

お昼過ぎ、ゆっくりと食事をすませたころ、
玄関のチャイムが鳴った。
小包だった。

友だちからの思いがけない贈り物!
お日さま色の透き通るように美しい夏蜜柑のマーマレード。
夢見るようにうっとりと光る青や白のシーグラス。
それからかわいいきれいな貝殻たち。

瀬戸内の潮風の香りがする。
波の音が聞こえる。
まぶしい陽射しがここにある。

どうもありがとう。
ひと足早く、ここには夏がやってきたよ。



また会う日まで…

仲よしのお隣さんが、今日、とうとうお引越ししてしまう。
朝早くから、若くて力持ちのお引越し屋さんが
テキパキとお仕事をしている様子がうちからも見えた。
私も朝食のあと、お手伝いに行った。

私ともうひとりの仲よしさんの仕事は「植え込み部隊」。
お庭の花々を鉢あげしたり、整理したりしていく。
持って行けないものは、私たちが引き取る。
空いている鉢に、今まで丹精を込めて育てた植物を植え込んだ。

パンジーやビオラなど、そろそろ花が終わりそうなものは
思い切って抜いて、少しでも多くの鉢に、親しんだ植物を植え込む。
ご家族やお引越し屋さんの邪魔にならないように、
私たちは庭にしゃがみこんで、せっせと寄せ植えを作っていった。
帽子をかぶっていても、強い陽射しを背中に感じる。
夏のような明るいお天気。
お引越し当日が、こんな晴れの日で本当によかった。

「その大きな樽が空いているよね。それはハーブの寄せ植えにしようか?」
「このラベンダー、みんなでおそろいで買ったのだったわね。」
「ミント、ずいぶん増えたのね。」
「あ、このセージ、たしかうちのを挿し芽をしたのだったよね。着いてよかった。」
そうだった。
それぞれの草花のエピソードを私たちは知っている。
レモングラスは、うちでやたらと増えたのを、ご近所さん数件にもらっていただいたのだった。
この子も、お供に連れて行ってもらおう。

「あ、シソ!これもハーブの鉢に植えちゃおう。」
「それから、このワイルドストロベリーも。もう実がなっているわよ。」
「いいわね。素敵な寄せ植えができたね。」
背の高いアリウムの白い花がアクセントになった。
ひと鉢できあがり〜。

ふたりで相談しながら、連れて行ってもらう植物を選んでは丁寧に植え込んだ。
昼までに10個ほどの、かわいい鉢植えができあがった。
その頃おうちの荷物の運び出しも終わり、それぞれの家でランチ休憩。
お隣さんが、部屋に入る前に、先日の送別会とお散歩の写真と、
私が作ったビーズのネックレスを小さな袋に入れて渡した。

家に帰り、涼しい部屋の中で、冷やし中華を作って食べた。
先ほどまでのあわただしさがウソのように静かだった。
緑いっぱいの自分の庭を眺めながらも、なぜか気持ちは落ち着かなかった。
もうすぐお別れのときがやってくる。

ちょっと疲れて、30分ほどソファでうとうととした。
薔薇の香りの風が気持ちよかった。
やがて、またお隣からざわざわと人の声が聞こえてきた。
お別れを惜しむ友だちが集まってきているらしい。
リズちゃんの犬友だちも来ているらしく、何匹かの犬の声もする。
いよいよだ。

お隣さんの門の前からは、大きなコンテナトラックはいなくなり、
かわりにたくさんの友だちが立っていた。
子どもたちは、はしゃいで鬼ごっこをしていた。
私も何度目かに鬼にタッチされて、いつの間にか子どもの仲間に入っていた。
大人たちは、静かににこにこと話していた。
お隣さんは、私があげたばかりのネックレスをつけてくれていた。
青白い天然石と白いクリスタル、銀のチェーンが、VネックのTシャツによく似合っていた。
とても嬉しかった。

なにかいつもと様子が違う、と落ち着かなげにみんなの顔を見上げていたリズちゃんとも
お別れの挨拶をした。
ふわふわの首を抱きしめると、顔をなめてくれた。
「リズ、作ってもらったあのクッキー大好きなんだよ。」と、お嬢ちゃんが言ってくれた。
「よかった。じゃあまた遊びに行くときに作っていくね。」と、私も言った。
「リズちゃん、そのときまで覚えていてくれたらいいなぁ。」
そしてリズちゃんは、そのクッキーにつられて、ケージの中に押し込められ、
一番先に車に乗り込んだ。
そのリズちゃんをはさむように、ふたりのお子さんが後ろの座席に座った。
にこにこと笑いながらピースサインの手を振ってくれた。

「それでは…。お世話になりました。どうもありがとう。
またね。遊びに来てね。」
「うん、うん。すぐに遊びに行くね。またね。元気でね!」
名残惜しいけれど、これでお別れなのだ。
関西の新しいおうちまで長距離ドライブのあと、荷物の運び入れや整理があるので
ここでゆっくりもしていられない。
「みなさん、お世話になりました。お見送りありがとうございました。」
と、ご主人さまが挨拶されて、運転席に座り、エンジンをかけた。
最後にお隣さんが助手席に乗って、大きく窓を開けてにっこりと笑った。
「じゃあね。さようなら〜!」

車はいつもの買い物のときと同じように、あっさりと行ってしまった。
みんな少しずつ涙をこぼした。
「もう会えないわけじゃないんだから。またいつか帰ってくるのだから。」
残された私たちはうつむいたまま小さい声で話した。
がらんとした静かな駐車場と、カーテンのない窓を見上げて、
「それではね。」と、お互いの顔も見ないまま別れた。

夕方が来て夜が来て、ことあるごとに、今頃どこを走っているのだろう、と思った。
お隣さんは、もう新しい家に着いただろうか。
あの鉢植えたちは、新しい家のベランダで夜風に吹かれているのだろうか。
慣れない土地で、あの草花たちが、少しでもお隣さんの心を和ませてくれますように。
新しい土地で、お隣さんが元気で明るく暮らしていかれますように。
関西に行く楽しみが、またひとつ増えた。


ゆりかごを作る 2004年05月07日(金)

今朝咲いたばかりの薔薇の香りに誘われて庭に出た。
薔薇の葉陰にしゃがみこんで、目をつぶった。
しあわせな時間。

いっぱいの薔薇の香りが私を包む。
それから、小さな生きもたちのささやかな音が聞こえる。
忙しく花をめぐるアブやハチの羽音。
かさこそと花びらをかき分けるコガネムシの足音。
風に揺れて触れ合う葉っぱたちの柔らかい音。
花びらが地面に落ちるさらりとした音。
じっと耳を澄ましていると、私まで植物になっていくよう。

目をあけると、そこではゆりかごが作られている最中だった。
オトシブミのお母さんが、薔薇の葉っぱを巻き上げていた。
葉脈を残して切れ目を入れた葉は柔らかく萎れてくる。
そこに卵を産み付けて、きちんと巻いて、幼虫のゆりかごにするのだ。

なんて丁寧で確実で美しい仕事!
目が離せない。
息を呑んで見守った。

折り曲げた葉の葉脈側を抱えこんで、じわりじわりと巻いていた。
少し巻いては、左右に歩いて点検して、等分に巻けているか確かめている。
5ミリもないほどの小さな小さな虫なのに、なんて力持ちなのだろう。
少しずつだけれど、確実に葉っぱは巻いていかれているのだ。
時々、葉っぱの端っこを折り込んで、きちんとした円筒形に整えている。
すごい、すごい!

じっと見ている私にはお構いなしで、オトシブミのお母さんはゆりかごを作り上げていった。
いつの間にか葉っぱの根元まで巻き上げられていた円筒型のゆりかごは
最後は丸い底面に丁寧にひだをよせて、ちゃんと留められた。
できあがったゆりかごのまわりを1周して、満足したお母さんは
子どもの誕生を天に祈り、成長を薔薇に託して飛び立った。
完璧に美しいゆりかごが、薔薇の葉先に残された。
夢から覚めたようだった。


ネックレス 2004年05月04日(火)

もうすぐお別れするお隣さんに
ビーズでネックレスを作った。

ミルキーな水色の石と、銀色のチェーンは
さっぱりと爽やかな彼女に似合いそう。
気に入ってくれるといいな。
つけてくれたらいいな。


スポーツクラブへ 2004年05月03日(月)

この4月、新装開店した近所のスポーツクラブに入会してしまった。
運動オンチ、軟弱体質のこの私が、
自ら運動をしようだなんて、なんて画期的!

なぜ思い切ったかと言うと、理由は3つ。
この新しいスポーツクラブのスタジオプログラムに、
友だちがやっていてずっと憧れていたバレエのクラスがあったこと。
自転車で3分、歩いても5分と言う近さにあるということ。
それから、ここが「メディカルフィットネス」と言って、
医師によるメディカルチェックとカウンセリングがあること。

運動はしてみたかったけれど、体力や健康に自信がなかった。
水泳やエアロビクスなどのクラスに入って、
ほかの人と同じようにやっていけそうにないような気がした。
でも、今度のここは、入会すると医師によるチェックがあり、
そのデータや個人の目的に基づいて、適当なプログラムを組んでくれると言う。
そして定期的にチェックして、フォローもしてくれるらしい。
それなら私にも、できるものがあるかもしれない。
入会のときにメディカルチェックをして、今日はその結果を見ながら
これからのプログラムの進め方や、生活の指導を受けた。

案の定と言うか、意外にもと言うか「身体状況」は「重度の要注意」(そんなにひどかった?)。
「健康意識度」は「準備期」。
でも「食事傾向」だけは「大変健全」で評価Aだった。
総合的に「生活習慣リスク」は雨マークで、血液検査と医科学検査、
それにドクターカウンセリングを必要とすると言う。

そんな私への「お勧めプログラム」は「アロマストレッチ」「かんたんストレッチ」「歩き方教室」
「はじめてスイム」「すっきり肩こり」「すっきり腰痛」…。
心配することもなく、エアロビクスやボクササイズは勧められることはなかった。

う〜ん、とても丁寧で的確な診断&お勧めプログラム。
ここだったら、疲れすぎる心配なく、少しずつ体を丈夫にしていけるかな。
やりたかったバレエもできるようになるかな?

そのあと体成分検査と、身体測定、筋力チェックもやった。
びっくりしたのは、また身長が伸びていたこと(もう十分なのに)。
去年の人間ドックで測ったときより、さらに1cm背が高くなっていた。
そして「やや劣る」筋力と柔軟性を改善するために、ジムのプログラムもたてられた。
そのままマシンジムのインストラクターに引き継がれて、
私が行うと効果的なマシンの使い方を詳しく教わった。
本当にいたれり、つくせり。
きちんとこのプログラムをこなしていたら、確実に体を鍛えられるのだろう。

今、ただでさえ習い事が多くて、庭仕事もあって、もちろん家事もやらなくてはいけないのに
スポーツクラブに通うなんて無茶かもしれない、とも思う。
でももう始まってしまった。
とりあえず、6月いっぱいまではやってみよう。
それで、あまりにもハードだったり、やっぱり通えないようだったら、そのときに考えたらいい。

近いことが何より。
1週間に1度でも2度でも、30分だけでも、ワンレッスンだけでも行くようにしてみよう。
憧れのバレエにもチャレンジしてみたい。
何十年ぶりかでプールにも入ってみたい。
泳げるようになったら嬉しいだろうな!
なにか新しいことを始めるって嬉しい。


一番乗り 2004年04月30日(金)

4月の最後の日、
この春最初の薔薇が一輪咲いた。

一番乗りはひらひらのペネロープ。
久しぶりの香りを胸いっぱいに吸い込んだ。
ぱっちり見開いた金色の目がまぶしい。


最後のお散歩 2004年04月29日(木)

お隣さんのお引越しの日が近づいている。
夕方、リズちゃんと最後のお散歩をした。
リズちゃんに会いたがっていた妹もやって来て、
お隣さんのお嬢ちゃんと妹、私の3人で緑の爽やかな道を歩いた。

妹にリードの端を持たれ、リズちゃんは先頭を切ってタッタカと歩く。
道順はすべてリズちゃんが知っている。
私たちはリズちゃんの後姿を見ながら、おしゃべりをした。

「こんどこうしてお散歩するときには、リズちゃんはすっかりおとなだね。
ユキちゃんも、もう中学生になっているのね。」
「うん、そうなるのかな?」
「私よりも背が高くなっているかもしれないね〜。」
「そうだね!」
ユキちゃんは私を見上げ、嬉しそうにジャンプした。
5年後、すっかりいいお嬢さんになっているのだろうな。
結んだ髪がぴょんぴょん跳ねるのを、まぶしいような思いで眺めた。

今度、お隣さんたちが住む街は、私が幼い頃を過ごした懐かしい街だ。
ちょうどユキちゃんと同じ年のころに、私はそこを離れた。
そんなことも話した。
明るいきれいないい街だ。
でも、お嬢ちゃんが生まれたころに大きな地震があって、その街も被害を受けた。
私の住んでいた家も幼稚園も、もうなくなってしまった。
新しい街で待っている彼女の友だちにも、そんな経験をしている人がいるのかもしれない。
もうすぐお隣さんが住む懐かしい街、いずれ訪ねてみたい。

今、私たちが住むこの街も、懐かしい街になるのだろう。
青葉が美しい並木道、薔薇が咲きこぼれる庭、優しい人たち。
ユキちゃんは、今日のことを時々は思い出すのだろうか。
リズちゃんは、この街の匂いを覚えているだろうか。

30分ほど歩いて、家の前まで帰りついた。
お嬢ちゃんは、道で遊ぶ友だちの輪にそのまま加わった。
私はインターホンを押して、お隣さんにリズちゃんをお返しした。
リズちゃんはもっと遊びたそうに、ぐるぐると私たちの周りを回っては顔を見上げた。
いつの間にか、近所の人たちが集まってきていた。
いい機会なので、みんなで相談して買ったお餞別の品を渡すことにした。
みんなが見守る中、お隣さんはすぐにそれを開けてくれた。

犬のレリーフがついているフォトフレーム&アルバムと、
リズちゃんと同じシェルティの絵が描かれた大皿と小皿のセット。
お隣さんも、お嬢ちゃんも喜んでくれた。
よかった!
そのまま、妹に頼んで、みんなが集まった記念写真を撮ってもらった。
それぞれのおうちの犬たちも子どもたちも、珍しく勢ぞろいしていた。

こうしてだんだんと別れの準備が進んでいく。
連休明けに小学校の遠足があって、その次の日に行ってしまう。
楽しい思い出をいっぱい持って行ってほしい。
そして、むこうでも楽しい思い出がたくさんできますように。

5年後、新緑のこの道をユキちゃんとリズちゃんとお散歩しよう。


Toto&Bebe |HomePage