ひとりごと
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ほろ酔い気分で 2004年01月25日(日)

今日は自然写真の会の新年会だった。
虫や花が好きで、写真が好きな仲間が集まった。
この仲間の中に入ると心地いい。
私よりずっとずっと年上の方ばかりなのだけれど
仲間として自然に接してくださる。
隣に座った方もおっしゃっていたように
「ここには自分の居場所がある」。

まだお昼なのに、ビールを飲んで熱燗もいただいて
少し酔ってしまった。
お日さまに申し訳ない?
でもこれは新年会、まだお正月なのだもの。
許してもらおう。

いつもは物静かなおじさま方も陽気になって
いろんなお話をしてくださった。
虫の話、山の話、写真の話、ほしい一眼レフデジカメの話。
私も調子に乗ってしゃべりすぎたかもしれない。

おひらきになって賑やかにお店の外に出た。
まだまだ日は高かった。
陽射しのせいか、酔っているせいか、体も顔も暖かい。
風が気持ちよく感じるくらいだった。
酔い覚ましと運動不足解消に、2駅を歩いて帰ることにした。

桜並木にはさまれた川沿いに、水の流れを追いかけてのんびりと歩いた。
花のシーズンにはお花見客でいっぱいになるこの道も、
冬のこの時期には人影がない。
私は誰とすれ違うこともなく、ゆったり泳ぐカモを眺めながら歩いて行った。

渡り鳥たちが訪れて、川の中は冬の方が賑やかだ。
種類が違うカモたちも、仲よく静かに泳いでいた。
川面に映った青い空と桜の枝を、鳥の波紋が美しく乱した。
フェンスにもたれてうっとりと見とれてしまった。

鳥の羽ばたきと水をはじく音と川の流れしか聞こえない静けさ。
ほんわりほろ酔い気分で幸せにひたっていた。
こんな瞬間、こんな風景を切り取ってアルバムにしまいたい。


誘惑のクリスマスローズ 2004年01月24日(土)

来週は、夫の両親の誕生日が相次いで待っている。
母には美しい小物を見つけて注文したものがもうすぐ届く。
そして園芸好きの父には花を贈ろうと思った。
どうせプレゼントするなら少し変わっているものの方がいい。
私は完全防寒スタイルに着膨れて自転車をこぎだした。

いつも自転車で行く一番近いホームセンターは
実は山野草やクリスマスローズの品揃えの豊かさで有名なお店らしい。
ネットの花好き仲間がオフ会でも訪れるそうだ。
今のシーズンならクリスマスローズ。
美しい品種がいっぱい入っているという噂を聞いて
父にぴったりの花を探しに行った。

本当に今日は寒い、寒い。
でも一生懸命自転車をこいでいたら、ぽっぽと暑くなった。
湯気が出そうな頭のまま、クリスマスローズのコーナーに行った。

きれい〜!
いろんな色や形のものが本当にたくさん。
クリスマスローズの花々が愛らしい顔を揺らしていた。
どこからどう見ていいのか迷ってしまう。
ふわふわ浮かれて、まだ暑いまま花の置いてある台の間を歩き回った。
すると奥のほうの台の前で、同じように悩んでいる人を発見。
もしや、と思ったら、やっぱりネットの花友だちだった。

思わぬ場所での久しぶりの再会に喜んで、
そしてお互いの着膨れた格好を見て笑いあった。
仲間に出会えて嬉しい。
プレゼント選びも、花に詳しいこの先輩がついていたら心強い。

その方は、1時間も前からここにいるのだと言う。
足元のかごには、もう3鉢のクリスマスローズが入っていた。
それぞれに違う色や形や特徴の、みんなかわいい花だった。

クリスマスローズ、本当になんてバラエティに富んだ花なのだろう。
花びらの形、色、模様、蕊の色や形、1株ずつみんな違うのではないかと思えるほど。
そして個性的なそれぞれがみな魅力的だ。
私はコレクタータイプではないし、植える場所もないので、
新しい品種を次々とほしくなることはないのだけれど、
それでもこんなかわいい花たちを見ると連れ帰ってしまいたくなる。
でも今日は、父へのプレゼント探し。
一番好きそうな、素敵な花を選ばなくては!

さんざん悩んで、ひと鉢選んでかごに入れては違うものと取り替えたり
選びきれなくて両手にひとつずつ持って歩き回ってみたり。
きっとどれを選んでも父は喜んでくれるとは思うのだけれど。
よく考え、友だちに相談して、やっとそのひと鉢を決めた。
花びらはフリルのようにひらひらとして、色は淡いワインに濃いワインの覆輪。
たっぷりとしたクリーム色の蕊を濃い色のネクタリーが取り巻いている。
葉とのバランスもよく、姿が美しくて、一番気に入った株だった。
素敵な花が選べて大満足でかごを持ってレジに立った。
そのかごの中には、プレゼントのほかにも3鉢のクリスマスローズが…。
私としたことが、かわいい花の誘惑に負けてしまったのだった。

長いこと寒い園芸売り場に立っていて、すっかり体が冷えてしまった。
同じように誘惑に負けて5鉢お持ち帰りの友だちとベーカリーカフェで一休み。
甘いケーキとミルクティーで体を温めながら、
クリスマスローズの話や薔薇の話で盛り上がった。
ふたりとも、ちょっとハイテンションだったのは、
かわいいクリスマスローズを、ちょっと思い切って買ってしまったからかな。

この冬は、もうクリスマスローズは増やさない!
と宣言したけれど、あのお店に行ってしまったら危ない。
かわいい冬の貴婦人たちが顔をそろえて誘惑しているのだもの。


庭仕事と小鳥たち 2004年01月22日(木)

今日もいいお天気だ。
午後、庭に出た。
まだ苗床に入ったままだった秋蒔きの苗たちを
ポットに植え替えした。

伏せた植木鉢に腰をかけ、太陽に背を向けて作業をした。
ほかほかと陽射しが背中を暖める。
ちょっと寒いけれど、風もない、おだやかな日和で気持ちがいい。
小さい苗を割り箸でそっと掘り上げ、素手でポットに植えつけていった。

シジュウカラがやってきたらしい。
ピ、ピ、と鳴き交わす声。
軽やかな羽ばたき。
こつこつ、とピーナッツの殻をつつく音。

動いたらおどかしてしまう。
見たいけれど、我慢、我慢。
気配を感じられたらそれで嬉しい。
小鳥たちには落ち着いて遊びに来てもらいたい。

さくさくさく、とかすかな音がした。
あまり大きく動かないように、そっと横目で見てみると
メジロがやってきてりんごをつついているのだった。
かわいい!
目が合ってしまった。
でもメジロは飛び立たず、首をかしげただけで、またりんごを食べだした。
様子を見ていたらしい夫婦の片割れも舞い降りてきて、
2羽で仲良くりんごをつついていた。
ほんわりした気持ちになって、そのまま作業を進めた。

たくさんの種類の花たちは、まだ小さい苗のうちから個性的だ。
ギリア、スカビオサ、ビスカリア、サルビア・ホルミナム…。
みんなそれぞれの形を持っている。
それぞれの花を咲かせる力を持っている。
それにしても、ヘリオフィラを見るといつも思う。
名は体を表す。
本当にヘロヘロフィラフィラした細くて頼りない苗なのだ。
苗床で絡まっているのを手でほどいて、1本ずつポットに植えた。

少し日が翳ってきた。
急に寒くなり、手袋をしていない指先はかじかんできた。
今日は全国的に寒波がやってきているらしい。
それでも東京は暖かいほうだったのだろうけれど、もうこれが限界。
苗はまだ残っているけれど、今日はここまでにしておこう。
立ち上がると、小鳥たちがあわてて飛び立つ音がした。

おどかしてごめんね。
もう部屋に入るから、ゆっくりとしていってね。

木の枝に止まって様子を窺っていた小鳥たちは
私が部屋に入るのを見届けて、またやってきて食事を始めた。
ガラス越しに眺めると、小鳥の小さなふっくらした体に日が当たって
暖かそうに見えるのだった。
本当は空気はこんなに寒いのに。
小鳥たちは強い。
せめて、私の庭でくつろいで楽しんで食事をしてくれたらいい。
スズメ、シジュウカラ、ヤマガラ、メジロ、それからヒヨドリ。
私も彼らの姿を見て楽しんでいる。


歯医者さん終わり 2004年01月21日(水)

紙のエプロンをつけて、おだやかなBGMの流れる暖かい診療室で
寝心地のいいリクライニングの診察椅子に座り
うとうとしながら治療の順番を待っていた。
今日に限って、待ち時間が長かった。
目の前の時計を見ると、この椅子に座ってからもう30分近くたっていた。

忘れられたのかな。
あまりよく眠っているからそっとしておこう、なんて
気を利かせてくれたのかしら。
たしかに、3本立ての夢など見ていたけれど。
目が覚めるたびに、ここがどこだか一瞬わからないんだ。
その感覚はちょっとおもしろい。
でも、もう眠らない。
ちゃんと目を開けていよう。

でも椅子に座ったままではそんなに見るものもなく
また眠くなってしまいそうだった。
首を横に向けて、明るい光が差し込む窓の方を見た。
「○○歯科医院」と裏返しの字が窓ガラスに書いてあった。
そして「電話XXX-XXXX http://〜…」と書いてあるのが読めた。
この歯医者さん、HPを持っているんだ。
家に帰ったら、すぐに見てみよう。
楽しみを見つけた。
そしてそれからすぐに先生がやってきて治療が始まった。

今日の治療は麻酔も打たず、簡単だった。
終わったあと手鏡を渡されて、治療したところを示された。
「それではこれで終わりです。また痛むようだったら早めに来てください。」
これで終わり?
終わった〜!

最後に簡単に歯磨きの説明を受けて診療室を出た。
「どうもありがとうございました。」
よかった。
やれやれ…。
2ヶ月の間、週に1、2度通った歯医者さんともしばらくお別れだ。

家に帰って、いつものようにすぐにパソコンのスイッチを入れて
忘れないうちに、歯医者さんのHPを探した。
同じ名前の歯科医院はいっぱいあったけれど、すぐに見つかった。
今、出てきたばかりの見慣れた受付がとてもきれいに写っていた。
スタッフの数人の女性もみんなにこやかで感じがよかった。
この人たちに、大口を開けているところを見られていたんだな。
ちょっと恥ずかしい…。

医院の場所の地図、診察時間、Q&A。
そして「院長の挨拶」。
男の人の顔のアップが出てきた。
間違いなく、いつものあの先生なのだろう。
けれど初めて見る顔。
そう、いつものあの大きなマスクがないから。
先生の目しか見たことがなかったのだもの。

へぇ〜。
こんな顔をしていたのね。

落ち着いた声から想像していたよりも若い、ほのぼのと優しい顔だった。
今まで10年以上も治療をしていただいているのに
初めて会うなんて、不思議な感じだった。

はじめまして。
いつもお世話になっています。
でもなるべくお世話にならないように気をつけます。

写真に向かって心の中でつぶやいた。

どうもありがとうございました。
これからは街の中や駅で会っても挨拶できますね。
それでは、さようなら。


嬉しい庭仕事 2004年01月20日(火)

今日は暖かくなると言っていた。
歯医者さんの予約を朝一番にしておいてよかった!
午後からは庭に出られる。
治療のあと買い物をして、まだ麻酔も覚めきらないうちに家に帰った。
明るい光の中で揺れるピーナッツリースでは小鳥たちがランチ。
私はそれを眺めながらのランチをすませ、お茶を飲んで一服。
そしてテンポのいいCDをかけ、音が聞こえるように少し窓を開け、
身支度して庭に飛び出した。

ずっと手をつけていなかった庭は荒れ放題。
まずは庭の掃除から始めた。
落ち葉を拾い、枯れた草を刈り、枝を切り、
転がっているポリポットや鉢底ネットを拾い、片づけた。
黒い土が見えてきて、やっと庭がすっきりとした。
落ち葉の下からは、かわいいクロッカスの芽や
クリスマスローズのつぼみが現れた。
柔らかく瑞々しくてとてもかわいくて笑ってしまった。

ここで一段落。
部屋に入ってCDを取り替えついでに、やかんに沸かしておいたウーロン茶でひと休みした。
すると、私が部屋に入るのを待っていたかのように、小鳥たちが庭にやって来た。
シジュウカラにヤマガラ、そしてそれを追い散らすヒヨドリ。
鳴き交わしながらピーナッツやヒマワリやりんごを楽しんでいる。
外に出られなくなってしまった。
体はレースのカーテンに隠してテラスに座り、
鳥たちのそばで日向ぼっこしながら、小鳥たちの食事が終わるのを待った。
ぽかぽかの陽射しと小鳥の声に、うっとりと眠ってしまいそうだった。

一団が賑やかに去って、私は再び庭に出た。
次の仕事はとっても気にかかっていた箱の中の球根を植えること。
おそるおそる開けたけれど、球根たちが無事で嬉しかった。
今日からは、ふかふかに耕した土の中でのびのびと根を伸ばせる。
いつものことながら「遅くなってごめんね」と球根に謝った。
そんなことを気にもしないで春にはちゃんと花を咲かせてくれる
かわいい球根たちに、私はいつも甘えてしまう。

気がかりだった球根植えが終わり、さてやっと薔薇の番!
薄いガーデニング手袋を、厚い皮の手袋に取り替えて剪定ばさみを持った。
鉢の薔薇は、ついでに植え替えをしたいので、もっと早い時間からできるときにして
まずは地植えの薔薇たちの手入れから始めた。
不精にもまだ残したままだった花殻を切り、実を摘む。
残っている葉を取り、枯れ枝を切り取る。
そしてここからが真剣、ぷっくりふくらんだ赤い芽を見つけて、その上で枝を切った。
春からはどの枝がどんなふうに伸びたらいいのか、
その姿を想像して枝を思い切りよく切っていく。
乱雑に細い枝や葉が入りくんでいたのが、みるみるさっぱりとしていく。

鋏を動かしながら「やられたなぁ」と、私はつぶやいていた。
言ってから、何が「やられた」なんだろう?と自分で考えて、すぐに答えがわかった。
薔薇をすっきりとさせる剪定作業が楽しくて、すっかりはまっていたのだ。
やっぱりこんな作業が好きらしい。
答えがわかって、自分でおかしくなった。

庭仕事をするのは楽しい。
とても充実した時間を過ごせたような気になる。
成果が目に見えるから?
外で体を動かすのが気持ちいいから?
草花や木と触れ合っているのが幸せだからだろうか?

薔薇のことだけを考えながら、時間はあっという間に過ぎていった。
一番手ごわいグラハム・トーマスの太い枝を落としてひとつにまとめたとき、
指先が冷えているのに気がついた。
窓から聞こえていたCDもとっくに終わって、インコたちもおとなしくなっていた。
庭にももう日が射さない。
まだ明るさは残っているけれど、無理はせず今日の仕事はここまでにすることにした。

部屋に入ってストーブと灯りをつけた。
ウーロン茶を温めなおしてゆっくりと飲んだ。
あぁ、おいしい。
気持ちがいい。
お茶を飲みながら、窓の外を眺め、一日の成果を確かめるときがとても嬉しい。
暖かかった今日の日に感謝。
明日からも、こんな園芸日和が続きますように。
まだたくさんの薔薇たちが待っている。
刈ってほしそうな庭木たちも待っている。


帰宅 2004年01月19日(月)

パン教室の帰り道は夕方になった。
駅前のロータリーは家路を急ぐ人たちでいっぱい。
そして鳥たちも、ねぐらに帰るところだった。

ロータリーの真ん中に立つ大きな木に
鳥たちが住んでいることを知ったのは去年の今頃。
霙が降る夜のことだった。
寒さに足踏みしながらバスを待っていたとき
円錐型の木の枝のシルエットに鳥の白い姿が浮かび上がって見えたのだ。
最初は花かと思った。
よくよく見たら、冷たい氷雨の中で静かに眠っているセキレイたちだった。

それから、夜に駅前を通るとこの大きな木を見上げてしまう。
春から秋の間は、葉っぱに隠れて鳥たちは見えないけれど
ここで何百羽もの鳥たちが眠っているのだと思う。
冬になると、白い花のように枝で眠る鳥たちの姿が見える。
この木が雪をまぶしたクリスマスツリーのようにも見える。

今日はちょうどよく、鳥たちの帰宅時間に通りかかった。
足を止めて見ているその間に、どんどん鳥の姿が増えていった。
金星が光る黄昏の空に、花吹雪を散らしたように鳥が舞う。
それぞれ、今日の出来事を報告しあっているのか賑やかに鳴きかわしている。
バスが並ぶロータリーの上をひゅんひゅんと勢いよく飛びまわる。
そしてすいっと木の枝に止まり、そっと翼をたたんで眠る準備をする。
すぐに空も、木も静かになった。
何事もなかったかのように。
短い映画を見終えたような気持ちになった。

今、この時間もあの高い木の枝々で鳥たちが夢見ている。
木だけが鳥の重みを知っている。


アイビー 2004年01月18日(日)

午後から庭に出て、薔薇の植え替えをした。
小さい鉢で我慢したままの一番の新入りさん、
スタンダードのギスリーヌ・ド・フェリゴンドが気になっていた。
初めて使う12号鉢はとても重くて
土と薔薇を入れたら持ち上げるのに苦労しそうなので
置くつもりの場所で作業をした。

この薔薇は、玄関ポーチの脇に置いて、下の駐車場に枝垂れさせるつもりだ。
家の東北の角だけれど、朝と夕方、そして真夏の昼間にも日が当たって、わりと明るい。
きっとよく花を咲かせてくれると思う。
背の高い薔薇が傾かないように気をつけて左手で支え、
段ボール箱の中で配合した土を鉢の中に入れて、ごつごつした根を埋めた。
大きな鉢の中に土はいくらでも入っていった。
何度も土を作り足して、やっと薔薇はしっかりと立ち上がった。

ひと仕事終えて満足。
これであとは成長を見守るだけだ。
少し離れて鉢と薔薇の全体写真を撮ろうと思って
家の北側、お隣の家との間の通路に入った。
ここはちょっと手入れ不足。
咲き終わった菊がそのままドライフラワーになっていたり
雑草や苔の間から、クロッカスの瑞々しい芽が出ていたりする。
あとでなんとかしなくちゃ、と思いながらふと壁面を見てびっくりした。
北側の壁にはアイビーがびっしりと這い登っているのだった。

あまり日当たりもよくなく、たぶん手入れも行き届かないだろうこの通路に
何本かのアイビー(ヘデラ)を挿し木したのは引っ越してきた5年前だ。
思惑通り殺風景な通路をいろんな色や形の葉っぱが彩り、
土を隠し、爽やかにしてくれていた。
それには満足していたのだけれど、ここまで成長していたとは…。
クリーム色の壁に緑のアイビーが絡まっているのは
それはそれで素敵な眺めなのだけれど、このまま放っておいたらどうなるのだろう。
家を覆いつくしてしまうかもしれない。
とりあえず、私は家を甲子園球場のようにするつもりはない。
これは取らなくては!

ところがこれが手ごわかった。
葉っぱはこんなにかわいいのに、茎はとても硬くて、
さらにその茎からびっしりと出ている根っこはとても丈夫で力強かった。
茎を持って引き剥がそうとしても、なかなか取れない。
思いっきり引っ張ると茎が切れるし、根っこも壁に残ったままになる。
指先も入らないくらい、隙間なく根が出ている。
剪定ばさみを間に入れてこじ開けようとして、でも力が足りなくて
その勢いで指先を切ってしまった。

どうしよう。
今日のところはここで終わりにしようか。
それとも諦めてツタが絡まる素敵な家を目指そうか。
でも、剥がすのなら今のうち。
もう私の手が届くいっぱいいっぱいの高さまで伸びているのだから。
がんばって全部剥がすことにした。

そのうち、だんだんコツがわかって取りやすくなってきた。
上のほうの若い茎より、下の古い茎は壁から離れやすかった。
先から50センチくらいをなんとか剥がせたら、
あとは芋づるをひくようにばりばりと取れる。
しっかりと壁にしがみついて、きれいな葉っぱを開いているアイビーには申し訳なかったけれど
土の中の根っこはそのままなのだから、先のほうだけは散髪させてもらった。

2時間近く格闘して、やっと壁からアイビーを剥がせた。
もう空は茜色、空気も指先も体も冷たく、おなかはぺこぺこになっていた。
ひと山もあるアイビーの蔓をビニール袋に押し込んで、壁を見た。
壁に残った根っこのあとが傷あとのようで、ちょっと胸が痛んだ。
でもここを気に入っている丈夫なアイビーなら、またすぐに元気に伸びるだろう。
春にはまた壁を這い登ってくるのだろう。
私がツタ屋敷を作る決心をするまで、ずっとこの攻防戦は続くのだろう。

このアイビーと上手につきあっているおうちがあれば、
これを這わせて素敵になるのであれば、私も考えるのだけれど。
どうでしょう?


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