母がお医者様に我が儘を言ったらしく
まだ今日も点滴をしていると言うのに
明日退院の許可がおりたとのこと。
母はとても喜んでいるけれど
私は納得がいかなくて喜べなかった。
「まだ早すぎるでしょ」声を荒げてしまってごめん。
「どうしても帰りたい」と母が言ったらしい。
自宅療養なんて絶対に無理なのにな。
困った母。けれどもどうすることも出来ないもどかしさ。
まあなるようになるだろうか。複雑な気持ちの夜である。
ほぼ猛暑日の暑い一日。けれどもそんな暑さが心地よい。
いつからだろう夏が好きになったのは。
懐かしい思い出がある。今となっては冥途の土産のようなこと。
忙しい月曜日だった。ばたばたと走り回る。
母からも電話があって仕事の事をあれこれ。
「わかっているのに」とちょっと声を荒げてしまった。
母に仕事の事を忘れさせるのはなかなか無理なようだ。
定時に仕事を終えて母の病院へ。
綾菜は今日から延長保育に切り替えてもらったので
少し時間の余裕が出来て母を見舞うことが出来る。
まだ退院のめどは立たないけれど毎日来てあげたいなと思う。
昨日買った肌着、今日の新聞、ブラックコーヒーを差し入れ。
帰宅したらじいちゃんが居なかった。洗濯物は取り入れてくれている。
昨日洗った海苔網を干していたのでよく乾いてトラックに積み込んでいたらしい。
汗だくになってふらふらしながら帰って来る。
手伝ってあげられなくてごめんなさいと口には出せなかったけれど。
午後六時、家族がみな揃いわいわいとにぎやかに夕食。
芽奈が「まんま、まんま」と言えるようになって微笑ましい。
食欲旺盛でもぐもぐとよく食べてくれて嬉しかった。
午後七時の夕焼け空。なんて穏やかな夕暮れなのだろう。
そんな夕焼け空にゆびきりげんまん。あしたもきっと「いい日」
曇り時々晴れ。蒸し暑かったけれど午後からにわか雨が降り少し涼しくなった。
早朝より海苔網を洗う作業。150枚ほどの網を洗う。
麦わら帽子を被って汗だくになりながら二人で頑張る。
なんと心地よい汗。久しぶりの肉体労働だった。
そうして来期の海苔養殖の準備が始まる。
漁場の撤収作業をしたのがついこの前のように思うのだけれど
9月になればもう漁場の準備が始まるのだった。
どうか順調にと願うばかり。前を向いてこつこつと頑張るしかない。
母には伝えてあったけれど今日は病院へ行けなかった。
明日は仕事があるけれど少しでも行ってあげたいと思っている。
また肌着を買った。きっと喜んでくれることだろう。
お大師堂にも行けなくて「おだいしさんおやすみ」
きっときっと見守ってくれていると信じて眠りたいと思う。
生きている限り「あした」はやって来る。
あしたがあるさと歌うように思えるありがたさ。
朝のうちはにわか雨が降ったけれど午後は夏空が広がる。
蝉の声も聞こえるようになった。庭のひまわりも咲く。
今夜は市民祭で提灯台が街を練り歩くのだけれど
娘たちが出掛けて行ってしんと静かな夜になった。
提灯台か、もう何年も見に行ったことがないなと思いつつ
ちびちびと焼酎グラスを傾けているところ。
朝のうちに母の病院へ。新しい肌着を買って行ってあげたらとても喜ぶ。
話し相手が欲しかったのだろう、ゆっくりして行ってと言われたけれど
綾菜を保育園にお迎えに行かねばならず早々と退散してしまった。
24時間の点滴、下痢もまだ続いておりまだまだ先は見えない。
午後は綾菜と過ごす。お昼寝もちゃんとしてくれて助かった。
保育園でプール遊びをしていたので疲れていたのだろうか、
いびきのような寝息をたててそれがとても微笑ましく聞こえる。
母のことはあるけれど今日も平穏無事に暮れて行った。
何事もなるようになるさと思ったり、こころにもひまわりの花が咲く。
やっとやっと夏空。待ちかねていたように梅雨明けの知らせ。
心地よいほどの暑さだった。これでこそ夏だと思った。
午前中に仕事を片付けて母の病院へ向かう。
その前に母のアパートに寄って身の回りの物など荷物する。
独り暮らしを始めてずいぶんと経ったけれど
こじんまりとした母のお城のような部屋だった。
祖父母の仏壇に手を合わす。どうか守ってあげてください。
おばあちゃんの遺影を見るとなんだか胸が熱くなった。
病院へ着くなりナースステーションで入院の手続きなどをする。
それからやっと病状の説明があっのだけれど
今回は持病の心臓ではなく腎盂炎に罹っているらしい。
下痢もひどくそれはまだ原因がわからないとのこと。
過労もかなりありそうでとにかくしばらくの安静が必要なようだ。
こんなかたちでしか母をゆっくり休ませてあげられないのかと思った。
けれどもやっと母を休ませてあげられる良い機会なのかもしれない。
そうして病室へ。母は点滴をしていたけれど一気に笑顔になった。
入院にはもう慣れている母だけれど昨夜は心細かったことだろう。
持って来た荷物を広げると「お金持ちになったみたいな」と
訳のわからないことを言って私を笑わせてくれる。
そうそう長居も出来ず「また明日ね」と約束をして帰って来た。
「ゆっくり休んでね」って言えなかったけれど
母には伝わっているかもしれない。ぐっすり眠ってねお母さん。
| 2015年07月23日(木) |
夏はどこに行ったのか |
今日も梅雨空。「大暑」とは思えないほどの涼しさだった。
山里の母、今日も点滴があって病院へ行ったのだけれど
夕方病院から電話があってそのまま入院したことを知らされる。
詳しいことは明日主治医の先生から説明があるとのこと。
とにかく明日の事と今夜は面会にも行かずにじっとしている。
そわそわと落ち着かないけれど、心配し過ぎてもいけないかなと思ったり。
家にいると孫たちの笑顔にほんとうに癒される。
どんな日もあってよしと思えて感謝の気持ちが込み上げて来るほど。
今日という日をいただきました。「ありがとうございます」
手を合わせて今夜もぐっすりと眠りたいと思う。
今日も梅雨空。明日はもう「大暑」だと言うのに夏はどこに行ったのか。
けれども職場の庭の芙蓉の花を見上げるたびにああ夏なのだなと思う。
どんなに雨が降っていても咲いてくれる一日花が愛しい。
山里の母、今日も体調が悪く昨夜は一睡も出来なかったとのこと。
もう見守るのも限界に思えて以前からお世話になっている病院へ電話する。
そうしたら午後から休診のところ特別に診てくれると言う。
母にそのことを伝えてやっと病院へ行く気になってくれた。
車の運転も心配なので私が連れて行くからと言ったのだけれど
「大丈夫」の一点張りで自分で運転して行くと言って聞かない。
はらはらしながら母を見送る。付き添ってあげたくてたまらなかった。
その後、母からは連絡なし。とにかく帰って寝るようにとメールする。
何も連絡がないのは無事な証拠と思って私も帰路に着いた。
もしかしたら明日はケロッとして出勤して来るかもしれない。
そう信じて明日を待ちたいと思う。きっときっとだいじょうぶ。
心配事はあっても家に帰ればいつもと変わらない穏やかな時間。
気がつけば母の事を忘れている。薄情な娘は「おばあちゃん」になる。
|