薄っすらと霜の朝。そんな寒い朝もあまり気にならなくなった。 日中の陽射しはどんなに風が冷たくても春を感じるようになる。
もう少しあと少し。希望をもって春への道を歩んで行きたいと思う。
北国からの悲しいニュースが流れ心を痛めている。 雪が人の命を奪う。そんな悲劇があって良いものか。 そんな現実を受け止めながら心苦しさが込み上げてくる。
春を身近に感じているこの頃、自分はどれほど恵まれているか思い知る。 どんなに感謝しても感謝しきれないほどの日々を頂いているのだと思う。
北国にもきっと春は来る。手を合わせ祈ることしか出来ない自分がいた。
川仕事を終え作業場で仕事をしている時に、弟一家が訪ねて来てくれた。 ほぼ10ヶ月ぶりの再会。作業の手を休めてしばし語り合う。
弟というものはいくらおじさんになっても可愛いもの。 幼い頃はいつも私にくっついて甘えん坊の弟だった。
その甘えん坊はいまも変わらない。 お隣の地場産市場で海苔の佃煮や苺などをお土産に買ってあげた。
「おねえサンキュー」みんなが笑顔で手を振って帰って行く。
忙しい時だったけれど、嬉しさが勝り私も「ありがとう」って叫んだ。
昨夜は両家の家族でささやかな小宴。 にこにこ笑顔の綾菜をかこんで楽しい夜となった。
どうかこれからもすくすくと元気に成長してくれますように。
三月三日。おひな祭り。今日で生後10ヶ月になりました。
弥生三月。そう聞いただけでなんだかわくわくとしてくる。 一日いちにちが春への歩み。すくっと前を向いて歩いて行きたいものだ。
曇りのち雨。降り出した雨は風をともないまるで嵐のようだった。 散歩にも行けず雨音を子守唄のように聴きながらうたた寝の午後。
山里の母から仕事の事で電話あり。 一気に心苦しさが込み上げてきて「ごめんね、ごめんね」を繰り返す。 母の口調から少しパニック状態になっていることを感じた。 少しでも助けてあげたいけれど今はどうすることも出来なかった。
自分が優先すべきこと。いつもいつもそれを考えている。 そのために疎かになってしまうことがあっても仕方ないのだと。 ひとつきりの身体でどれほどのことを成すことが出来ようか。
母の声を聞いてからなんだかざわざわと心が落ち着かなくなり。 気分転換を兼ねてお大師堂にお参りに行って来た。 そうだ、今日はお大師さんと一緒にお菓子をいただこう。 おせんべいをぽりぽり食べた。にこにこしながら食べた。
感謝の気持ちとたくさんの願いごと。
手を合わせば自然とこころがまるくなる。
そのまあるいこころをそっと抱くように家路についた。
昨夜のうちに雨があがり青空の朝になった。 日中の気温もずいぶんと高くなりすっかり春の陽気となる。 風の強い一日だったけれどそれも嬉しい春風に思える。
姑さんが寝たきりになってひと月が過ぎた。 大好きな畑仕事が出来なくなってどんなにか辛いことだろう。 せめて草引きでもと思いながら何もしてあげられずにいる。 心苦しさもあるけれど畑の野菜たちが可哀相にも思えてきた。
白菜は菜の花を咲かせ始め、大根はトウが立ち始めた。 唯一ほうれん草だけは見事に成長して今がまさに収穫期だった。 丹精込めて野菜を作り近くの地場産市場に出荷するのが姑の楽しみ。 特にほうれん草には力を入れていてその量はハンパではなかった。
なんとかしなければ。その思いが日に日に込み上げてくる。 義妹と相談の結果、少しでも市場へ出荷してみようと言うことになる。
収穫は私。袋詰めは義妹と姪っ子が手伝ってくれることになった。 川仕事を終えてからさっそく畑に行き青々としたほうれん草を収穫する。 少し湿った土の匂い。昨日の雨を恵みに生き生きと伸びているほうれん草。
愛しいものだなと思った。こんな愛しさを感じたのは初めてではないだろうか。
そうして10束のほうれん草が出来る。 一束百円だけれど、その価値は決して値段ではないのだなと思った。
姑さんの思いがたくさんこもっているほうれん草。
売れ残っても良いのだ。一人でも美味しいと言って食べてくれる人がいてくれたら。
姑さんもほうれん草もすごく嬉しいと思うのだ。
お昼前からぽつぽつと雨が降り始める。 春雨を期待していたけれどそれはとても冷たい雨になった。
タンポポをおもう。桜をおもう。つくしの坊やたちをおもう。
冷たい雨にうたれながらも微笑んでいる姿が目に浮かんできた。
もしも一年中が春だったらとふと考えてみた。 それが当たり前のことになってしまったらなんだか寂しいなって。 寒さ厳しい冬があってこそひとは春の喜びを感じることが出来る。
だからひとも辛いことをきっと乗り越えられるような気がする。 冬ばかりの人生だとしてもささやかな春がきっと訪れるはずだ。
今日は海苔の初入札の日だった。 決して高値ではなかったけれど、例年並みの値にほっと息をつく。 欲を出さずとにかくこつこつと毎日頑張ったかいがあった。 やったらやっただけのことはあるのだと夫とふたりで頷きあう。
ふたりで頑張ったご褒美に今夜はステーキを奮発した。 とても美味しくてなんだか身体のそこから元気が湧き出してきそう。
「また明日からも頑張ろうな」夫の笑顔が私の春になる。
一昨日早咲きの桜を見つけたばかりだけれど
今日の散歩道ではつくしの坊やたちを見つけた。
まだ赤ちゃんみたいな坊やたち。ちいさな頭が可愛い。
おひさまがお母さんみたいにみんなで空を見上げている。
ぼくたち生まれたんだよって口々に声をあげているよう。
みんなの頭を撫でてあげたい。えらかったねってほめてあげたい。
だってすごくすごく寒かったんだもん。そして頑張ったんだもん。
雀色の枯れ草をかきわけるようにやがて緑があふれますように。
優しいおひさまがいっぱい愛してくれますようにと手をあわす。
つくしの坊やたちはとてもしあわせそうに微笑んでいる。
ぼくたちを見つけてね。ほらこんなにいっしょうけんめい生きているよ。
散歩からの帰り道、ふと見上げると桜の花が咲いていた。
昨日も通った道なのにどうして気づかなかったのだろう。
「ごめんなさい」と「ありがとう」を重ねては手を合わす。
早咲きの桜は寒さをのりこえていち早く春を知らせてくれる。
ほっとこころをあたたかくしてくれて優しい気持ちにさせてくれる。
どんなに寒くても、もうだいじょうぶよってささやいているようだ。
るんるんらんらん。スキップするように軽やかに歩きながら帰った。
空に向かって大声でさけびたくなる。さくらがさいたようって。
みんなに聞こえるといいな。ねえ耳を澄ましてその声をきいてね。
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