三月中旬なみの暖かさだということ。 ぽかぽかとからだじゅうをつつみこむような陽射しだった。
久しぶりに母の声を聞く。 忙しいのだろう少し苛立っているように聞こえた。 私も川仕事を終えたばかりで疲れていたのだと思う。 優しい言葉のひとつも言えずとてもそっけなかった。
あれこれと思い悩んでいる事も話せず。 気の重さにまたひとつ重さを加えたような気分になる。
いっぱいいっぱいの今だった。 精一杯なのだ。これ以上のことはとても出来ない。
来月のことはそうなった時に考えようと思う。 来るものは拒まないというような気持ちで臨みたい。
あっけらかんと。それがいちばん楽なことなのだと知る。
いつもの散歩。今日は作業場に用事があったので。 あんずにそう語りかけると。なんとちゃんと通じたらしい。 いつもの道とは逆方向だというのにさっさと先を急ぐのだった。 すごいなあんず。私の言うことをちゃんと理解しているみたい。 ありがとうね。母さんはほんとに助かっているんだよ。
作業場にたくさん干してある海苔を取り入れる。 暖かな陽射しのおかげで順調に乾燥していてありがたい。
収穫も今日でひと月が経った。 ただただふたりでがむしゃらに頑張ってきた。
明日も頑張ろう。精一杯頑張ろう。
昨日よりも今日とずいぶんと暖かくなってきた。 そんな陽気にさそわれたのか菜の花が咲き始める。
やさしくふんわりとした黄色にこころが和む。 やがていちめんの菜の花畑になることだろう。
そんな道をのんびりと歩いてみたいものだ。 何もかも忘れてひたすら菜の花の気持ちで。
考え事はしばし小休止。 考えるのに疲れてしまって。 少しだけ開き直ってきたように思う。 なんとかなるのならどうにでもなれ。 そう思うと気が楽になってきた。
今日も川仕事に精を出す。 そうして程よく疲れるのが心地よかった。
一時間ほど炬燵で横になり身体をやすめる。 そうしてからいつもの散歩に出掛ける。
風が春風のよう。なんともやわらかな風だった。
しんこきゅうをいっぱいする。
暖かくすっかり春を思わす陽気となる。
ホトケノザという名の草には紅紫の花が咲き始めた。 農家の人達にとっては害草だと言われているけれど。 その花はなんとも愛らしくその色に心をうばわれる。
彼の発作も昨夜のうちに治まり。 今朝はすっかり元気になっていてほっとした。 さあ頑張るぞと言い張り切って川仕事に出掛ける。
ずいぶんと疲れがたまっているのだと思う。 もっと休ませてあげたくても本人が承知しない。
作業をしながらぐるぐると考えごとをしていた。 来月早々には母の手術と入院を控えている。 山里の職場にはどうしても手助けが必要になる。 けれども家業も今が最盛期。彼一人では無理ではないか。
なんとかなるさと彼は言ってくれるけれど。 私の気持ちは家業を優先させたくなっている。 そのことを母には言えなくてとても困っている。
5年前の私ならどちらも手助け出来たことだろう。 かけもちするくらい平気だった頃が私にもあったのだ。
なんとも情けない事だけれど。体力も気力も激減している。
考えれば考えるほど気分がマイナスに向かってしまう。 いったいどうすればいいのかと日に日に悩み始めてしまった。
母もきっとなんとかなるよと言うにちがいない。
今すぐにでも電話してみようかと思いつつ臆病になる。
これ以上のマイナスはいやだ。
なにかプラスしたい。なにを足せば楽になるのだろうか。
やわらかにかすむ満月。 こんな夜をおぼろ月夜というのだろうか。
そんな夜空に心を和ませながら春を感じた。
今日は山里の職場に行く予定だったけれど。 彼の持病の発作がおこりそれを中止する。 母のことも気掛かりでならないけれど。 それ以上に彼のことが心配でならなかった。
みんなが健康に。そればかりを祈っているのだけれど。
心配事は絶えない。みんながちゃんと生きている。 それだけでありがたいことだと思うことにしよう。
私もちゃんと生きている。
いちにちが暮れるとそればかりを思う。
ありがとうございましたと手を合わす。
どうかみんなに明日がありますように。
お月様はかすんでいるけれどちゃんと見てくれている。
朝から雨が降り止まぬ。 けれどもその雨のなんと優しいことだろう。 いかにも春を告げる雨のように静かに降り続く。
畑の作物や植物たちには恵みの雨になったことだろう。 雨音とともにそんな緑たちの息吹く音が聴こえてきそうだ。
今日は伯母の三回忌だった。 亡くなったのがつい先日のように思われる。 それなのにあの時の悲しさが嘘のように薄れている。
法要のため親族がみな集いにぎやかに過ごした。 遺影の伯母が微笑んでいる。きっと嬉しいのに違いない。 みんな来てくれたんだねえ。そんな声が聞こえて来そうだった。
残された従姉妹たちも元気そうでほっとする。 ただ法要の準備で数日前から忙しかった様子。 肩が凝ってどうしようもないと言うので。 私でよければと少しだけ肩をもんであげた。 ただそれだけの事なのにすごく喜んでくれた。
伯母の家の庭には梅の花がもう満開。 亡くなった日にも咲いていただろうに。 どうしても思い出せないのだった。
その白い花びらを撫でるように雨が降る。
優しい雨でよかった。伯母もきっと見ていることだろう。
お天気は下り坂のもよう。 今にも雨が降り出しそうな夜になった。
寒気は少しゆるんでいるけれど。 お気に入りのちゃんちゃんこを羽織っている。 これを着ていると不思議と気分がまったりとするのだ。
お風呂上りのビールが美味しい。 今はなにも考えることもなくてぼんやり。 考えてしまうとざわざわと騒ぎだすこころ。 たまにはからっぽにしてあげるのも良いものだ。
義妹の誕生日。モンブランを買って持って行く。 ケーキ屋さんに行くと自分も食べたくなって。 チーズケーキを買った。久しぶりのケーキが美味しい。 義妹もすごく喜んでくれたので良かったなって思う。
また来年も忘れずにいよう。笑顔に会える日だもの。
これを書いているうちにビールを飲み干してしまったので。 階段をどすんどすんと下りて行って焼酎のお湯割を作ってきた。
一口飲んではぁと言ったりふぅと言ったりするのもよい。
ちゃんちゃんこの背中がぽぽっとあたたかくなった。
あたりいちめん霜の朝。 きりりっとした寒さに身が引き締まる。
空は青空だった。降り注ぐであろう陽射しのことをかんがえる。 まるで空に恋をしてしまったかのように心が浮き立っていた。
あいかわらずの川仕事。 今日頑張ったら明日は休もうなと彼が言うので。 えっさほいさといつもいじょうに馬力を出してみる。
収穫は嬉しい。なんともいえない達成感がある。
午後。いつもの時間にいつもの道を散歩する。 土手にはスミレらしき緑の葉が見え始めた。 タンポポも見え始めた。やがては花が咲くだろう。 誰よりも先にそんな花たちを見つけてあげたくなる。
お大師堂につくと一心にお経を唱える声が響いていた。 お遍路さんかな思ったら、なんと親戚のおばあちゃんだった。 90歳はとっくに過ぎているという高齢だけど元気なおばあちゃんだ。
声をかけるのもはばかられ。その後姿に手を合わす。 その時すごくこころがあたたかくなってほっこりとした。
私も長生きをすることが出来るものなら。 おばあちゃんみたいになりたいなと思った。
誰かの心をほっこりとさせて。
そうしてにっこりとさせてあげたい。
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