曇り日。太陽のありがたさをしみじみとおもう。
あたりの景色が一気に冬枯れてしまったように感じる。 灰色の世界。山々の紅葉にはっと目をみはったりする。 そうしながら秋を確かめる。まだ冬ではないのだなと。
すこしほっとする。
雨が降らない限り毎日の散歩は欠かさない。 ほんの少しの道のりだけれど歩くと身体が温まる。 猫じゃらしの群生するなかに飛び込むようにして。 あんずがおしっこをする。その仕草も愉快だった。
お大師堂にはふたりのお遍路さんがいた。 ひとりはなんと焼酎を飲んでもう酔っている様子。 ひとりは白髪の物静かな人で下戸なのだと言う。
ふたりはたまたまここで出会ったらしく。 白髪のひとはちょっととまどっているようだった。 これも縁でしょうと言うとそうですねと微笑んでくれた。
酔ったひとがしばらくあんずと遊んでくれる。 そのひとは犬と会話が出来るのだそうで。 あーだらこーだら言ってしゃべっているのが愉快だった。
そうして酔った勢いなのか。私の背中をさすりたいと言い出す。 重いでしょ?痛いでしょ?とそれがほんとに当たっているから。 無下に断るわけにもいかずちょっとだけ背中をさすってもらった。
私はそういうチカラを信じないわけではない。
酔ったひとは背中をさすり終わると肩をえい!っと叩き。 呪文のようなお経のような言葉をつぶやいていた。
まだまだ足りないと言う。もう少しなのにとも言う。
さて効き目はいかに。それは気のせいかもしれないけれど。 不思議と背中が軽くなったような気がしないわけでもなかった。
これも縁でしょう。ありがとうございましたとお礼を言って。
微笑みながら家路についたことだった。
昨日とはうって変わってすっかり冬のようないちにち。 木枯らしなのだろうか。冷たい北風が吹き荒れていた。
気温の差にとまどっていたけれど、体調は思いのほか良好。 秋口の辛さに比べると嘘のように元気でいられるのだった。
母もとても元気。みんなが健康でいられるのが何よりだと思う。
寒くなるとコドモ達のことが気がかりになる。 特に独り暮らしの息子。風邪などひいていないだろうか。 幼い頃からよく熱を出す子だったので心配だった。
気にはなっても厚かましく電話なども出来ず。 どうか元気でと日々祈るような気持ちで過ごすばかり。
夕方。いつもの散歩。川は風にあおられ白波が立っている。 おだやかな流れも良いけれどこの白波の川が私は好きだった。 水が踊っているように見える。それは楽しい踊りではなくて。 風と闘っているような力強さを感じるのだった。 辛い苦しいけれど踊り続けてやろうというようなつよさ。
そんな川を見ていると気持ちがすくっとなり勇気がわいてくる。
どんなときもある。けれどもながれることをあきらめてはいけない。
昨日は立冬。肌寒さを覚悟していたけれど。 今日は思いがけないほどの小春日和になった。
ぽかぽかと暖かいと心までぬくぬくとしてくる。 苛立つ事もなくおだやかに時が流れていった。
朝の道には銀杏の木が一気に色づき始め。 朝陽にきらきらとその黄金が輝いていた。 今日よりも明日と深く深く染まる事だろう。
仕事は相変わらず。もう閑古鳥も鳴き飽きたかもしれない。 けれども常連のお客さんが必ず顔を見せてくれるのが嬉しい。
ひとりは新鮮なブロッコリーを持ってきてくれた。 もうひとりは大和芋をたくさん持ってきてくれた。 そうしてもうひとりはこれもたくさんの柚子を。
ありがたくてひとりひとりに手を合わすような気持ちだった。
帰宅して柚子を絞る。ほとばしる果汁。なんとも良い香り。 台所だけでなく家中に柚子の香りが漂っているのだった。
しあわせだなとおもう。
ひとがこうしてとどけてくれるもの。
おでんをたくさん作った。 お昼から煮込んでおいたのでとても美味しい。 熱々のをはふはふしながらふたりで頬張る。 ふたりきりになっても作る量は変わらない。 明日も明後日もおでんだなと彼が笑っていた。
11月6日。亡き父の誕生日。 生きていればもう81歳になるのか。 死んでしまっても誕生日は毎年来てくれる。 そのたびに父の歳を数えていることだろう。
生前の父に最後に会ったのもこの日だった。 娘として何もしてあげることも出来ず。 反対におこずかいを貰って喜んでいた私。 せめて冬着の一枚でも届けてあげればよかった。 それはずっとずっと悔やまれてならないことになる。
ちいさな仏壇に父の遺影。朝に晩に手を合わせている。
お誕生日おめでとう。今朝はそう語りかけて微笑んだ。
朝の肌寒さに今年初めてストーブを焚く。 ほんわかと暖かくなった台所でお味噌汁。 卵焼きのにおい。朝の家事も好きだなと思う。
サチコの彼。お婿さんと言うべきだろうか。 義理の息子と言うのがいちばん良いかもしれない。 今日は26歳の誕生日だった。
一日早く昨夜みんなでお祝いをした。 五人で焼肉。ビールもたくさん飲んだ。 家族がこうして揃うのは八月以来の事で。 嬉しくってたまらない父と母だった。
サチコ達ももうすぐ一年になる。 月日の流れるのはほんとうに早いものだ。 少しふっくらとしたサチコ。 家事と仕事の両立でやつれはしないかと。 心配性の母はずっと気掛かりでならなかったけれど。
ふたりチカラを合わせてがんばっているようす。 ふたりの笑顔がどんなにか嬉しかったことだろう。
息子君は早くも元旦の段取りをしたがって。 美味いもんを食おうぜとみんなの意見を聞いている。
今度みんなが揃う時はもう新しい年になっているのか。 またあらあらというまに日々が過ぎていくことだろう。
離ればなれに暮らしていてもみんな家族。
あったかくて優しくて尊い家族なのだった。
久しぶりにすっきりとよく晴れた。 風が強く肌寒かったけれど陽射しにほっとする。
朝の峠道ではツワ蕗の花が咲き始めた。 ちいさな向日葵のようなその花がとても好きだ。 山道には枯れ葉がいかにも初冬を思わすように。 からころといそがしく風に舞っているのだけれど。 山肌に咲くその花がほんのりとあたためてくれるのだった。
今日からもう11月。秋を押しやるように冬がやってくるのか。
なんども同じことを言うけれどとてもとても急いでいるように思う。
少しばかり焦っているのかもしれない。 そうして老いていくことがせつなくてならないのだった。
いちにちいちにちをたいせつに。
悔いのないように生きたいとおもう。
けれどもそのいちにちのなんとあっけないことだろうか。
不安でたまらなかった台風。 無事に土佐沖を通過してとてもほっとしている。 今夜は関東に最接近とのこと。 どうかどこにも被害がない事を祈るばかり。
幸いな事に雨も降らず平穏な一日だった。 朝のうちに畑の様子を見に行く。 大根はもう少しで間引くことが出来そうだ。 ほうれん草はまだ5センチ程でか細い。 雑草を引き肥料をまいて帰って来た。
気温は平年並みで肌寒くはなかったけれど。 冬支度をしておこうと茶の間に炬燵を出す。 ストーブも出してもう準備は万端となった。 今年の冬はとても寒くなるということだから。 なんだか身構えるような気持ちになってしまう。
10月も明日で終わる。あらあらというまに。 今年も終わってしまうのかもしれない。
日々がとても急ぎ足で過ぎていく。
どんなにゆったりと過ごしてみても。
背中をおされているように前へ進んでいく。
ちゃんといるのだろうかわたし。
たしかめながらたしかめながらすすむしかない。
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