今日もぐずついた空模様。そして肌寒い。
寒は戻ってまた別れていくのだろうか。 お彼岸を過ぎればぐっと春らしくなるだろう。
明後日にお嫁入りをする海苔の出荷準備をした。 例年通りとはいかなかったけれどやれるだけのこと。 精一杯の気持ちで送り出してあげたいと思っている。
入札価格によってはどん底の暮らしに陥るかもしれない。 けれども欲を言えばきりがなく。お嫁にもらってくれる。 それが何よりもありがたいことなのではないだろうか。
自然からの恵みをさずかった。もうじゅうぶんだと思いたい。
ついつい悲観的になってしまいそうになる私とはちがって。 彼はとても楽天家だと思う。おかげで随分と救われている。
なんとかなる。なんとかなると呪文のように唱えている日々。
明日は久しぶりに山里の職場に行ってみよう。 そうしてまたやれるだけのことをして尽くしたい。
峠道をお遍路さんが歩いているといいな。
ただひたすらに前を向いて一歩一歩進む姿にあいたい。
寒の戻りだろうか少し冷たい雨。
ゆっくりとお休み出来る日曜日なんて。 ほんとに久しぶりでほっとくつろいだ。
海苔の収穫はしばらくお休みになるかもしれない。 弱りきっていた海苔の殆どが腐って流されてしまった。 でも種はしっかりと残っているのでまた育つだろうと。 彼の言葉を信じてあまり不安がるのはよそうとおもう。
種よ。がんばって。種よ。どうか生きてください。
ここはど〜んとかまえているのがいちばんかな。
げんじつをうけとめてなるようになるさって。
しぜんのことをうらまずにむしろかんしゃして。
野に咲くスミレが庭に咲く。 それはコンクリートのすきまから。 とてもちからづよく息をするように。
ある日は土手に咲いていたのだろう。 紫色の蝶々のようにひらひらと風に。 吹かれているうちにやがて種になった。
その種が育つ。ほんの2ミリほどのすきま。 ひび割れたコンクリートに土の香りを見つけて。
つよいねきみは。こんなにもつよかったんだね。
朝から雨。優しい雨でよかったけれど。
雨合羽を着て川仕事に行くのが少し憂鬱。 ついぐじぐじと文句ばっかり言ってしまう。
降るものは仕方ないだろうと彼に宥められ。 ようし!っとカタチばかりの気合を入れた。
先日の津波の影響だろうか海苔が弱っている。 まるで植物が枯れ始めたように茶色が目立つ。 このまま弱り続けると川の中で腐ってしまう。
不安がつのる。どうしようもなく心配でならない。
がんばって。生きようねと念じるように収穫をした。 ほんとうに自然まかせ。人のチカラなど敵いもせず。 おろおろとしながら見守る事しか出来ないのだった。
悪い事ばかり考えていてはいけないな。希望を持とう。
親戚のお葬式があり母とふたりで高知市へ出掛ける。 列車で2時間足らず。始発列車の窓から朝陽を見た。
母とふたり肩を寄せ合って列車の座席に座るなど。 もう何十年も昔の子供の頃からなかったように思う。
母はこんなにちいさかったのかしら。
背中をまるめてちょこんと座る姿は。
すっかり老婆のようでせつなくてならない。
列車をおりて改札口に向かっている時も。 すぐ横を歩いていると思っていたけれど。 気がつけばずっと後ろを歩いているのだった。
「荷物を持ってあげようか」と声をかけると。 「かまん、かまんよ」と荷物をぎゅっと握りしめる。
ずっと気丈な母だった。いつだって溌剌としていて。 それがいつのまにかこんなに老いてしまったなんて。
なんだか見てはいけないような気がしてならない。 胸の奥が疼く。痛々しくてかなしくてならなかった。
そんな私の気持ちをよそに母はとてもはしゃいでいる。 駅の喫茶店でモーニングサービスを美味しそうに食べる。 タクシーに乗り込んだ時もまるで観光客のようだった。
お葬式がおわる。母よりふたつ年下のひとが亡くなった。
やがて母もとわたしはおもう。こんなふうにとかんがえる。
とんぼがえりでまた駅に戻る。お腹空いたねと母が言う。 ふたりでオムライスを食べた。ケチャップたっぷりなのに。 母はその上にウスターソースをかけた。「あんたもかけなさい」 美味しいよと大きな声でしきりにすすめたりするのだった。
帰りの列車のなか。母はぽかんと口を開けたまま眠り込む。
その顔を見たら笑い転げそうになって私は海ばかり見ていた。
あわせた手のひらをそっとひらいたように 白木蓮の花がそれはみごとに咲いていた。
弥生三月。春はもうすぐちかくまできていて。 ここにいるよとささやいているのかもしれない。
昨日からの津波騒動。今朝もまだ潮に変動があり。 川仕事は中止になった。たいしたことはないだろうと。 甘く見ていたのかもしれない。従兄弟の川船は転覆し。 うちの船もロープが切れて危うく流されるところだった。 川の水が逆流しているのを目の当たりにして怖いと思う。 水はまるで大雨の後のように濁り渦を巻きながら流れた。
今回の津波を教訓におもい身を引き締めなければと思う。
のんびりとお休みのつもりでいたけれど母から電話がある。 一時間でも良いから手助けが欲しいという事で駆けつけた。 母ひとりではどうにもならないことがある。親孝行だとか。 それは別問題で。職場がある限り私にも責任があるのだった。
めまぐるしさをよそに。母はほっとしたように机に向かう。 私は例のごとくでコマネズミのようにすべき事をこなした。
山里ではもう田植えの準備が始まっていておどろく。 水を張られた田んぼ。それはとてものどかな風景だった。
知らず知らずのうちに季節が移ろい始めている。
うぐいすが。ほうほけきょ。けきょけきょと春の歌をうたった。
青空もつかのま午後から細かな雨が降り始める。 春雨というのにふさわしいやわらかな雨だった。
濡れて行こうといつもの散歩道を歩く。 例の早咲きの桜を愛でたくてならなくて。 先を急ごうとするあんずを制し立ち止まる。
しっとりと濡れた花びらはふとせつなくもあり。 なんだかなくしたものを恋しがるような想いで。 見上げた。うしなったものが私にもあるのだろうか。
この花も潔く散るだろう。はらはらと散ることだろう。
お大師堂にしばしこもり手を合わせた。 いちにちが無事に暮れようとしている。
それはなによりもありがたいことだとおもう。
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