| 2008年11月12日(水) |
忘れないでいてくれるだろうか |
朝の窓辺から青空を仰ぐ。それはもう秋晴れとはすこしちがい。 存在感のある雲がぽこんぽこんと。そのかたちを確かめながら。
流れることもせず立ち尽くしているように見えた。そこで生まれて。 綿の花を咲かせた枝のない木のように。空にあることが誇りのように。
在りたいとわたしも思う。千切れることなど不安がらずに在りたいと。
家を出て大橋を渡り河口沿いの国道を南に向かう。川面の眩しさが。 たまらなく好きでならない。その光の粒子の一粒を胸に抱きしめて。 我が子のように育ててみたくなる。そうしてまた空に放ってあげたい。
忘れないでいてくれるだろうか。いつかふたたび水辺であえるだろうか。
山道に差し掛かると。ぐんぐんとそれが迫ってきては緑の木々のあいだに。 ぽつんと紅く色づいた木を見つける。山に抱かれた女のように美しい木だ。 やがて散る。はらはらと風に舞い落ちて朽ちるだろうその葉が愛しかった。
山里はゆっくりと冬枯れに近づいているけれど。空気はより澄みわたって。 息を深くするたびに心のなかで種が育ち始める。霜を待とう雪を待とうと。 その種は冬を越すのを楽しみに生きているようだ。陽射しの中で水をあげ。 まいにち声をかけてあげようと思う。めげないで負けないで春に咲こうね。
忘れないでいてくれるだろうか。ここにわたしがこうして存在していることを。
| 2008年11月11日(火) |
おやすみなさい。きょう。 |
ひんやりと曇り空。その灰色を透かすように時折りの陽。 足りないくらいがちょうど良いのかもしれない。だって。
たくさん降り注ぐと。ついついそれが当たり前に思えて。 ささやかな恵みに気づかず。ありがとうって空に言えない。
朝。いつもよりずいぶんと遅く家を出る。このところ少し。 時間の感覚が薄れてしまったようで。時計を見なくなって。 それはほんとうに無意識のつもりなのだけれど。ゆるゆる。 なにも急くことがなくなったような不思議な気持ちだった。
怠け癖がついてしまったのかな。いけないことなのかなと。 思えばきりがなくて。きりのないことは思わないことにする。
ずっといつまでもとはいかないのだろう。けれども今は許そう。 動きたくなったら動くのだ。走りたくなったら走ろうとおもう。
ゆるゆるが穏やかさに繋がればいうことはない。まあるくひろく。 あたえられた時の世界を。かたつむりみたいにのんびり進みたい。
夕方。もう陽が暮れかけていたけれどいつものお散歩に出掛けた。 あんずは例の『きゃんきゃん怖い症候群』からやっと立ちなおり。 昨日からまた一緒に歩いてくれるようになった。雨のおかげかも。 きゃんきゃんの匂いが路地から消えたのかもしれない。よかった。
やはりひとりよりふたりがいい。ふたりだけの秘密の話しをしよう。
夜はすぐに眠くなる。例のごとくで酒量が多過ぎるせいもあるけれど。 そのおかげなのか幸福な眠りを堪能し。ドラマティックな夢を観賞する。
一昨日の夢の男女には会えずじまいだけれど。昨夜も嬉しい夢を見られた。 それはもう救われたとしか言いようのない。とてもありがたい夢であった。
ぷつんと途切れてもいい。もうじゅうぶんだと思う。会えて本当によかった。
いまは何も望むことがない。ただ目覚めたら明日ならいいなあって思っている。
ありがとう。きょう。おやすみなさい。きょう。
| 2008年11月10日(月) |
夢に続きがありますように |
昨夜夢の中で出会った男女のことが忘れられず。 なんとかしてもう一度会うことが叶うまいかと。
夢の続きに想いを馳せている。とても楽しかった。 見ず知らずのふたりだったけれど。気さくな男性。 髪の毛は癖毛らしくもしゃもしゃとした長髪だった。 バンダナがよく似合っていて。目は細く少したれ目。 作務衣を着ていて足元は地下足袋を履いていたのだ。
女性は色白でふっくらとした顔だち。髪はふわりと。 少しお化粧が濃い目に見えたのは口紅の色のせいか。 とにかく良く笑うひとだったので。口元が印象的だった。
そんなふたりが木で船を造っていた。正確に言うと。 もう殆ど出来上がっている船に色を塗っていたのだ。 男性がそれを主にしていて。女性は船の舳先に座り。 もう祝杯なのか片手に生ビールのジョッキを提げて。
「色塗りは俺がするって決めてたんですよ」と彼が言う。 「そうよ。もう私の役目は終わったの」と彼女は笑って。
ぐいっぐいっと愉快そうに美味しそうにビールを飲んだ。
「も、もしかして○○さん達ではないですか?」私は訊ねる。
なんとなくそんな気がしたのだ。でも人違いかもしれない。
「この船で行くのよ。あなたも一緒に行かない?」彼女が問う。
行きたいなってすごく思った。どんな色の船になるのかも気になる。 けれども私がそう応えようとした瞬間に。ぷつんと夢が途絶えてしまう。
今夜会えたらそう懇願しよう。もしまだ船が完成してなかったら。 彼女と一緒に。面白可笑しくバカ話しをしながらビールを飲みたい。
「ねえ・・まだぁ?早くしてよ〜」とか彼にちょっかい出しながら。
昨日よりも静かにひっそりと雨が降り続く。 その霧のような雨を。窓辺で感じていると。 雀達の声が呼ぶように聴こえてきてそっと。
15センチほど窓を開けてその姿を見つける。 瓦屋根は艶やかに潤いまるで光る舞台のよう。 ちょちょんとなちゅちゅんがさ。歌えばほら。
こんなに朗らかになれるよ。心地よいリズム。 そうしてそれをからだにそのままつたえたら。 とても自然に踊ることが出来るのさ。ほうら。
肩のちから抜いて。足踏んばらなくていいよ。 すべって尻もちついてもいいからやっちゃえ。 雀らしくなくてもいい。そして人間でなくても。
そうそう。そんなかたちなんかどうだっていい。
いいからやっちゃえ。おもいきってやっちゃえ。
| 2008年11月08日(土) |
わたしは卵を産んだのだろうか |
絶え間なく雨が降り続きいちにちが暮れていった。 それはリズミカルであり。空の鼻歌のようであり。
同時にそれは子守唄のようでもあり。私は眠った。 うごくこともせずあるくこともせずにすやすやと。
そうしてもしかしたら産めるのかもしれない卵と。 その瞬間の息遣いのことなどを夢うつつに考えて。
ぼんやりとイメージしてみる。大丈夫痛くはないと。 やればできるだとかなんだかんたんじゃないかとか。
たくさん産んでゆで卵を作ろう。おでんが食べたい。 はんぺんみたいなふんわり枕もあれば嬉しいなとか。
とかなんとかが多すぎて。少しぐるぐる目がまわる。 けれども息をふっとすると。鍋にそれが浮かびだす。
空は歌いやまない。そろそろ疲れてしまっただろうに。
雨は枯野を想い。はるかかなたにつながる海を想って。 その歌を口ずさみながら。やすらぎの川へ身を投げる。
わたしは卵を産んだのだろうか。それはつるりと剥けて。
その殻の存在をもう忘れてしまった。おでん色の卵だった。
| 2008年11月06日(木) |
おふくろさんよ。おふくろさん。 |
お天気は午後から下り坂。ぽつぽつの雨がやがて本降りになってしまう。 帰り道の県道で。朝は出会えなかったお遍路さんに会うことが出来た。 雨が降れば雨の支度。そうしてひたすら歩く姿にはいつも胸が熱くなる。
今日こそはと思っていたけれど。雨のせいにしてお散歩は行かなかった。 あんずは雨が好きではないらしく。犬小屋にうずくまり顔も見せてくれず。 あのね母さん。私が行きたい時だけ行けば良いのだよ。わかった?って感じだ。
わがままなのか気儘なのか。そんなふうに生きるのも良いなあとふと思う。
家に入ると。お休みだったサチコが『おふくろさん』を歌いながら階段を。 しゃがれた声を無理やり出しながら下りて来て。久しぶりの漫才モードになる。
「空をみあげりゃ〜」のところから。母は即興で日本舞踊的ダンスを披露して。 ふたりで大笑いになる。一日の疲れがどっと薄れていくありがたき瞬間であった。
おまけに。平日だというのに息子君が晩御飯を食べに来るというメールもあり。 サチコとふたりでお炊事をする。もちろんいつも通りの質素なものだけれど。 秋刀魚だとか。カブの浅漬けだとか。昨夜の残りの大根の煮付けだとかを。 彼は。食べ溜めとかないとなって言いながら。喜んで平らげてくれるのだった。
そうしてまた風のように帰って行く。その寸前に少しだけ仕事の話しをしてくれて。 少しずつだけれど。今の仕事に慣れ始めているのを感じて胸を撫で下ろした母だった。
いまを乗り越えればきっと大丈夫と。いつだって願わずにはいられない。
巣立った子供が旅をしている。その道のりを光で照らしてはあげられないけれど。
そっと見守ることはできる。願いながら祈りながら待っていられる母でありたい。
| 2008年11月05日(水) |
陽のあるうちは陽をあびて。 |
今朝の寒さに身を縮ませながら。窓辺に居てそっとその窓を開けると。 雀色が連なる土手にちょうど朝陽が射し始めた頃だった。ひんやりと。 その空気を吸い込みながら。その色が蜜柑色に染まるのをしばし見入る。
清々しくて。きりりっとしながら。そうして息をするたびに心が和らぐ。 ゆっくりと何かが軽くなり。その重さのことを思い出せないくらいに軽く。 ひとつひとつのことに。どんなにか拘っていたことだろうと今になり思う。
臆病なこころだった。怖いから穴を掘るのだろうか。そうしていとも簡単に。 その穴に閉じこもってしまうのだろうか。出口まで塞いでしまうのだろうか。
そういうの。もうよそう。そんな息苦しさを選ぶことだけはしたくない。
それよりも。陽のあるうちは陽をあびて。風がある日は風に吹かれよう。
今日も彼女と歩きたくて。大急ぎで家に帰り着いた。少し仕事が忙しく。 思うように終われなくて。そのぶん買物をさっさと済まして家路を急いだ。
よかった。今日もちゃんと待っていてくれた。その顔を見ると笑みがこぼれる。
彼女あんずは私よりも嬉しそうで。犬小屋の外で小躍りをしてはしゃいでいた。 さあ行こうと我先に歩き出すのを。「待って、待って」と追い駆けつつ歩く。
すると路地を突き当たったところで。姪っ子が飼っている小さな犬と出会った。 いつも家の中で飼っているので。私もめったに会ったことがないのだけれど。 その猫のように小さな犬が「キャンキャン」と甲高い声で吠え止まなくて。
その声がよほど苦手だったのだろうか。あんずはその場に尻込みをしてしまう。 顔はすっかり引き攣ってしまい。タレ目の瞳はキツネのそれになってしまった。 そうしてどうしても家に帰ると言ってきかない。もう完全に怖気付いている。
どうしようもなくて私もそれに従い。ふたり逃げるように家に帰って来た。 犬にも相性があるのかな。甲高い声が苦手なんて、私とよく似ているなあ。
晩御飯の時。もうあたりはすっかり夜になっていたけれど。再び誘ってみた。 そうしたら行っても良いよって顔をしたのだけれど。茶の間で彼が怒鳴っている。
「甘やかすな!もう放っておけ!」って。お父さんってやっぱ厳しいよね。
明日はちゃんと行けるように。母さんもう少し早目に帰って来るようにするね。
ほんとうは母さんが歩きたくてたまらないのかもしれないってふと思った。
だからあんずに甘えているの。一緒に歩いてくれてとても助けられている気がする。
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