ゆらゆら日記
風に吹かれてゆらゆらと気の向くままに生きていきたいもんです。

2008年11月05日(水) 陽のあるうちは陽をあびて。

今朝の寒さに身を縮ませながら。窓辺に居てそっとその窓を開けると。
雀色が連なる土手にちょうど朝陽が射し始めた頃だった。ひんやりと。
その空気を吸い込みながら。その色が蜜柑色に染まるのをしばし見入る。

清々しくて。きりりっとしながら。そうして息をするたびに心が和らぐ。
ゆっくりと何かが軽くなり。その重さのことを思い出せないくらいに軽く。
ひとつひとつのことに。どんなにか拘っていたことだろうと今になり思う。

臆病なこころだった。怖いから穴を掘るのだろうか。そうしていとも簡単に。
その穴に閉じこもってしまうのだろうか。出口まで塞いでしまうのだろうか。


そういうの。もうよそう。そんな息苦しさを選ぶことだけはしたくない。

それよりも。陽のあるうちは陽をあびて。風がある日は風に吹かれよう。



今日も彼女と歩きたくて。大急ぎで家に帰り着いた。少し仕事が忙しく。
思うように終われなくて。そのぶん買物をさっさと済まして家路を急いだ。

よかった。今日もちゃんと待っていてくれた。その顔を見ると笑みがこぼれる。

彼女あんずは私よりも嬉しそうで。犬小屋の外で小躍りをしてはしゃいでいた。
さあ行こうと我先に歩き出すのを。「待って、待って」と追い駆けつつ歩く。

すると路地を突き当たったところで。姪っ子が飼っている小さな犬と出会った。
いつも家の中で飼っているので。私もめったに会ったことがないのだけれど。
その猫のように小さな犬が「キャンキャン」と甲高い声で吠え止まなくて。

その声がよほど苦手だったのだろうか。あんずはその場に尻込みをしてしまう。
顔はすっかり引き攣ってしまい。タレ目の瞳はキツネのそれになってしまった。
そうしてどうしても家に帰ると言ってきかない。もう完全に怖気付いている。

どうしようもなくて私もそれに従い。ふたり逃げるように家に帰って来た。
犬にも相性があるのかな。甲高い声が苦手なんて、私とよく似ているなあ。


晩御飯の時。もうあたりはすっかり夜になっていたけれど。再び誘ってみた。
そうしたら行っても良いよって顔をしたのだけれど。茶の間で彼が怒鳴っている。

「甘やかすな!もう放っておけ!」って。お父さんってやっぱ厳しいよね。


明日はちゃんと行けるように。母さんもう少し早目に帰って来るようにするね。

ほんとうは母さんが歩きたくてたまらないのかもしれないってふと思った。

だからあんずに甘えているの。一緒に歩いてくれてとても助けられている気がする。




2008年11月04日(火) 明日も待っていてね。

曇りのち晴れ。午後からは柔らかな陽射しに恵まれふっと。
からだが軽くなったような気がした。そうして少し眠くなる。

ぼんやりとしていたらしく。職場の湯のみ茶碗を割ってしまい。
一気に我に返りながら。あ〜あやっちまったとくすりっと笑う。

むしょうに駄目化してみたいような衝動。そう思っただけで。
なんだかぐるぐるしなくなった。脱水機がことんと止まって。
あとは空の下に干されるのを待っている。一枚のタオルのように。



仕事が一段落して少し庭に出てみる。そうして風に吹かれながら。
『小紫』という名の木の実を手のひらに。そっと受け止めてみると。
そのちいさな粒がほろほろと零れ落ちそうになった。触れたくても。
そうしてはいけないことがあって。もう葉をなくしたその実を想う。

気がつけば満開だった秋桜は種になり。紅い鶏頭は燃え尽きている。
それは少しせつなくて。それは少し哀しいようで。けれどもそこに。
もう忍び寄ってきている季節を。そっと抱き寄せてみたくなるのだった。

ぽつねんとわたしもいて。ふわりっとその気配のなかにとけてしまいたい。

そうして我が身を見失わないように。ただ漂いながら流されてしまいたい。



帰宅すると。もう陽が落ちかかっていたけれど。庭先でちゃんと待っている。
「行こうかね」って声をかけると。彼女はそこで屈伸運動をするのが愉快。

そうしてもはや日課の道のりを。お大師堂を目指してふたりで歩いて行く。
夕陽を受けてススキの穂が染まり。猫じゃらしは犬じゃらしになり戯れる。


歩けるって素敵なことだね。そうして暮れていく一日ってありがたいことだね。

あんず。明日も待っていて。お母さんかっとびでお家に帰って来るからね。






2008年11月01日(土) いまここにいる。いまふたりでいる。

晴れ時々くもり。小春日和というにはまだ早いのかもしれないけれど。
赤とんぼではなくて。黄色い蝶々がそれはたくさん飛んでいるのを見た。

川向の田園地帯沿いの道を行き。人里離れた山裾にその美容院があって。
今日は髪を切ってもらった。そうしてまた顔だけ老けた中学生みたいになる。

さっぱりと心地よい。床に散乱する自分の髪を見ながら「おさらばだね」
そんなすっきりさ。潔くそうすることでいつだって生まれ変われた気になる。


午後。とにかく動き出したくて。夏に会った友人の写真展を見に町へ行く。
公民館に着くと。玄関前で思いがけず『菊花展』をやっていてしばし鑑賞。
80才くらいに見える女性がそこにいて「もうながいこと育てているよ」と。
丹精込めて咲かせた菊を我が子のように見せてくれた。とても可愛い菊だった。

そうして写真展。よかった彼女がそこにいてくれる。夏に会った時の約束。
「今度は秋ね」をしっかり果たすことが出来た。真っ青な空と子供達の姿。
彼女の写真は微笑ましくて。そしてあたたかくて。とても好きでならない。

紅茶をごちそうになりしばし語らう。人恋しかったのだろうかとても胸が熱かった。

今度は春。その約束をせずに別れてしまったけれど。たぶん夏のような気がする。
きっと元気にまた笑顔で会おう。そうして心ゆくまで語り合いたいと思った。


  




日暮れ間近。もはや日課になってしまったふうで。あんずと散歩に出掛ける。
お大師堂がよほど気に入っているらしく。今日も先へ先へと元気な足取りだった。

帰り際。思いがけず潮が引いていて。川岸の岩の上を危なっかしくふたりで歩く。
するとすぐ近くに観光船が見えて。たくさんのひとがあたりを眺めているのがわかる。

「あんず、ほらみんなが見ているよ」ってとても照れくさくてならなかったけれど。

おもいきって手を振ってみた。そうしたらなんと驚くほど一斉にそれが返ってきた。

見ず知らずの人たち。通りすがりの人たちがみなその手を振ってくれている。

気がつけば子供のように手を振り続けている自分がそこにいて。気恥ずかしさを。
通り越してただただ胸が熱くなる。ああひとっていいな。ひとってこんなに温かい。

そんな一瞬。そんな一期一会。手を振れないあんずはその船のたてる波音に。

いまここにいるって。いまふたりでいるって。感じてくれたらいいなって。
あたまを撫でて。ぎゅっと抱きしめたい気持ちでいっぱいになった瞬間だった。



2008年10月30日(木) こころひとやすみ。こころあわてずに。

鈴虫ではなくコオロギでもなさそうな秋の虫が。とてもか細く。
窓の外で鳴いている。そっとその窓をあけると。ただ闇があり。
ひんやりとした夜気が忍び込んでくるばかり。ちちち。ちちちと。

小鳥のようになく虫は。どこにいてどんな姿をしているのだろうか。

わからないということ。知らないということが。時には愛しくもある。



今日も平穏。昼間のあれこれなどもう忘れてしまうくらい寛いでいると。
ぜんぶひっくるめてそう思えてくる。零れ落ちたものはもうひろわない。
そんな夜の訪れがありがたくて。手のひらに温かなものをそっとひろげる。

思うように尽くせなくてもいい。きちんとするべきことを置き去りにしては。
いまは時を待っているのかもしれなかった。その時がくれば心も動くだろう。

こころひとやすみ。こころあわてずに。こころうずくまっていてもいいから。



仕事。いつもより30分早目に終えられたおかげで。牧場の牛達に会えた。
その道を通り過ぎてからまた引き返して。一気に子供みたいな気持ちになる。

柵のすぐ近くまで行き笑顔で眺めていると。一頭の牛がそばに寄って来てくれた。

優しい目。牛に限らず動物の目というものはほんとうに澄みわたる空のようだ。

肉牛であることの運命など。彼や彼女や子牛達には少しも苦ではないのだろうか。

草を食み。仲間とよりそう。子牛は母の姿を頼りに乳を吸い日々育っていくばかり。

そこには何者も侵せやしない輪があり。満ち足りた空気が漂っているのだった。










牛になりたい。肉牛になりたい。この身を捧げられるように私も生きたい。



2008年10月29日(水) ただひとつきりの太陽に

窓辺に居てふっと暮れなずむ空を眺めていると。その紅のすぐ間近に。
きらきらと輝く一番星を見つけた。大人心に子供心がそうして重なり。

いちにちのことなどそっと折りたたむように。夜空に託してみたくなる。


あらゆることが時間差で押しかけてきては。それは波のようだけれど。
ひとつの波に捉われず。次の波を待ちわびるくらいの心の余裕が欲しい。
だいじょうぶ海は凪いでいる。ただ裸足では冷たすぎるくらいの秋だった。


仕事を終えて買物を済ませ。川沿いの道を河口へと向かい大橋を渡ると。
どっと肩の力が抜けたように放心するのが常だった。西風のせいだろうか。
それとも遊覧船のたてる波紋だろうか。それともやはりそれは流れだろうか。

河川敷に流れ着きそこでしっかりと育った大きな木を影のように映しながら。
太陽が微笑んでいる。まるで水鏡にその姿を曝け出すことが喜びであるかのように。

わたしはあえる。たとえ決して会うことが叶わぬひとがいるのだとしても。
ただひとつきりの太陽がいてくれる。それだけでじゅうぶんだと思うのだった。

ススキの生い茂る小道を抜け路地を曲がると。『あんず』の姿が見えてくる。
目を眩しそうに細めながらお座りをして。ちょこんとそこで待っている。

ゆびきりげんまんしたのだもの。きょうもふたりでお散歩に行こうね。
それはそれは嬉しそうに尻尾を振って。私の膝に跳びついてきてくれる。

行き先はもう決めているらしく。今日もお大師堂に向けてぐんぐん歩いた。
実は昨日も行ったのだけれど。ちょうど宿泊のお遍路さんが二人来ていて。
「おいでよ」って優しく呼んでくれたと言うのに。そこで尻込みをしてしまった。

人見知りなのか臆病なのか。彼女は犬いちばい警戒心が強そうに見える。
その点わたしはけっこう人懐っこい性質なのか。少しおしゃべりをした。
備え付けのカセットコンロで晩御飯の準備をしていて。晩酌の時間ですね。
と言うと。そろそろやりましょうかねと笑顔で応えてくれたのだった。

今日はどうかなってそこに辿り着くと。し〜んと静寂の気配が漂っているばかり。
ただ水の音だけがする。川岸にひたひたとちいさな波が打ち寄せてはかえす。

あんずをお堂の石段の近くに待たせて。お大師堂にあがり正座して目を閉じた。
そうして手を合わせてお祈りをしていると。心身ともにとても清らかになれる。

どれほど祈っても私は無力であることを。すでにじゅうぶん知っているけれど。
だからこそ祈らずにいられない。そうして自分を育て続けているように思えてならない。


おなじひとつの空のした。ただひとつきりの太陽に。きょうも感謝の気持ちをこめて。






2008年10月27日(月) ゆびきりげんまんしようかな。

この秋いちばんの朝の寒さだった。季節はもう晩秋なのだろうか。
なんだかとても急ぎ足で流れていくものを感じずにいられない頃。

今朝の山道で山茶花の白い花を見つける。民家の柿の実も鈴なり。
目を瞠るほどに鮮やかなピラカンサスの紅い実が。青空に映える。



月曜日だというのに。不思議と憂鬱ではなかった。
やはりあれは旅だったのか。道に迷っていたのか。
悪戯な魔法使いに出会って。試されたのかもしれない。
そんなことを本気で思って。今日の穏やかさをぎゅっと。

抱いて抱いて。壊さないくらいの抱擁をせずにいられなかった。

ひとりふたりさんにん。今日も7人のお遍路さんに出会えて嬉しい。
ラッキーだなって思っていたら。なんと久しぶりにお駄賃を貰った。
だから帰りのお買い物もウキウキしてしまってビールをたくさん買い。
お刺身を奮発して。ついでに彼のポロシャツも買って笑顔で家路につく。

けれども母の心遣いを思うと。やはり申し訳ない気持ちも押し寄せてくる。
貰ってもいいのかな。ああ手が出るほど欲しいな。うん貰っちゃおうかな。
そんな複雑な思いが確かにあったのだけれど。やはり嬉しさには勝てなかった。


帰宅していちばんにポストを確かめたところ。見慣れない字の手紙があった。
誰だろう?って首をかしげながらその名を見てびっくり。目が星になった。
台所の窓際で正座してそれを読む。ほんとうにありがたい縁だと胸は熱く。

わたしはながいながい手紙をあなたに書きます。どうか待っていてください。



そうして日暮れ間近の夕陽のことを想いながら。飼い犬と散歩に出掛ける。
実はどうしたわけか。このところずっと彼とは行きたがらないのだった。
朝は行くけれど夕方は尻込みをするらしく。老いたせいにしていたけれど。
私やサチコとなら。とても喜び勇んだふうに歩き出してくれるのだった。

毎日とはいかないけれど。昨夜はほんの少しだけ小雨の中を歩くことが出来た。
今日も行ってみようかねと声をかけるより先に。もう待ちかねているふうで。

よっし行こうと。夕陽のほうへとふたりで歩いた。すごい元気な足取りで。

もしかしたら毎日待っていてくれるかもしれない。そんな気がしてならない。

明日も行こうかな。あさっても行こうかな。ゆびきりげんまんしようかな。










2008年10月26日(日) 明日は晴れるって

曇りのちいつのまにか雨が降っていた。ひそやかに匂いたつ雨が。
あまりに静か過ぎて。まるで時が止まってしまったような午後になる。


午前中は。また整理病にとりつかれてしまい台所で奮闘を続けた。
よほど物持ちが良いのか。ざくざくと古い物がたくさん見つかる。
片方だけのお箸。錆付いた包丁。木製のしゃもじ。味塩の空き瓶。

捨てながらも包丁は捨てられず。砥いでみたら見違えるようになった。
新婚時代の物だけに懐かしくなり。油をひいて紙で包みまたしまい込む。

身体というか手をこんなふうに動かしているのが心地よくてならなかった。
くつろいで座っていなさいと言われても。それほど苦痛なことはないと思う。

そうしてやるだけやってしまうと。やっと寛ぐのが恋しくなってくる。


午後。読み掛けていた本を最後まで読み終える。胸が熱くてならなかった。
このところ新しく本を買う必要はなく。ずっと再読を繰り返してばかりいる。
他の作家の本をどうしても読む気になれない。一年かけて読み尽くしたものを。
また一年かけて読もうともう決めている。今日は『国境の南、太陽の西』
主人公は『僕』だけれど。たまらなく自分と重なる。痛いほどに似ている。

そうして複雑な後遺症が尾をひくのだけれど。また『僕』に会いたくなる。
不確かな自分を手探りで触れているような。そんな彼が私は愛しくてならない。



雨はひそやかなままに日が暮れる。飼い犬に晩御飯を持っていったところ。
なんとなくそわそわしていて。おしっこ?って訊くと「くいん」と応えた。

傘なんかいらないよねと。ふたり小走りで川辺の道まで駆けて行った。
彼女はすぐに用をたすと。お大師堂の方を目指しぐんぐん歩き出した。
薄暗いその先には小さな灯りが見えるけれど。少し心細くなるのが常で。
おまけに。優しいはずの雨が思いがけずに冷たく。身体が震えてしまう。

ねえ帰ろうよ。風邪ひいちゃいそうだよ。「うん」と応えたかどうだか。
諦めたらしく彼女もくるりと踵を返す。さあ早く晩御飯を食べようねと。
今度は家の灯りを目指してふたりで駆けた。灯りはいつだってあたたかい。


明日は晴れるって言ってた。すかっと気持ちよい秋晴れになるんだって。


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