| 2008年10月07日(火) |
忘れないでいる。忘れないでいてくれる。 |
くもりのち雨になる。そぼ降る音がしなやかな調べのように聴こえる。
なにもはりつめていなくて。なにも急くこともなくて。夜をむかえた。
とてもたいらに見える地面にもわずかなくぼみがあり。水があつまる。
晴れたらその水たまりを両足でぴょんと。ウサギみたいに飛び越えよう。
今朝のこと。こんなに早くから誰だろうとおどろくような時間に。 一通のメールが届く。多感な少女時代をともにおくった親友からだった。
我が町のすぐ近くまで来るのだそうだ。少しでも会えないかと言ってくれて。 どんなにか嬉しかったことだろう。もちろんなんとしてもとすぐに応じる。
携帯電話を握り締めたまま。つい一昨日のことを一気に頭に浮かべたのだった。 あの手紙の束。懐かしくてならず。ああ会いたいなあってすごくすごく思った。
これも偶然なのだろうか。こんな思いがけないことがあっていいのだろうか。 彼に報告する声が震える「おとうさん・・まただよ。また叶ったよ・・」
7年ぶりの再会だった。彼女はすこしも変わっていなくてとてもほっとする。 少女時代からあったニキビの痕も。日焼けしたままの健康的で明るい笑顔も。 つかの間であったけれど。お互いを下の名前で呼び捨てにする心地よさ。
殻に閉じこもってばかりだったあの頃の私を。いつもそっと見守ってくれ。 どれほど支えてくれたことだろう。一緒に泣いて一緒に笑いあえた時代だった。
今思えば人生のほんの一部分かもしれない。けれども永遠の宝になり得る時。
忘れないでいる。忘れないでいてくれる。そうして会いに来てくれたのだった。
降り始めたばかりの雨に濡れながら。手を振って見送る。ありがとうって。 またきっと会おうねと心から叫びながら。再会の時が遠ざかっていくのを。
みていた。今生の別れだなんて誰が思うものか。そんなことがあるはずがない。
あのときも手を振った。つい先日も手を振った。そして今日も私の手のひらは。
いつまでもふりつづけてやまない。さようならではないむこうがわへとつづく。
| 2008年10月06日(月) |
わたしのしょうたいを。ゆるしてはくれまいか。 |
朝は肌寒かったけれど。日中は気温が高くなり汗ばむほどだった。 今日もツクツクボウシの声を聴く。不確かさを信じるように耳を澄ます。
こんなことをいってもだれにもわからないだろうけれど。
きょうやっと。じぶんのしょうたいがわかったきがする。
見つけたくてならなかったから。心地よくそれに打たれた。
もうけっして目をはなしはしない。しっかりと世話をする。
気がつけば彼岸花は枯れ。赤黒い布切れのように風に揺れている。 そのかたわらに生い茂った雑草が。ピンク色の花を咲かせていた。 コンペイトウのようなかたちをしたそれは小さく可愛い花だった。
ひとつぶくちにふくんでみたくなる。それは甘いのかもしれない。 こころを咎めつつもそれを無心になって千切ってみたくもあった。 そんな姿を誰にも見られないように。草むらにひそむ虫のように。
そうして叱ってあげたい。それがわたしの過ちのすべてであるように。
すすきの穂。ねこじゃらし。夕陽の落ちる川辺で揺れるものたち。
あなたたちのふところにもぐりこませてくれまいか。
そうしてわたしが素直でいられるよう祈ってくれまいか。
わたしのしょうたいを。撫でながら赦してはくれまいか。
| 2008年10月05日(日) |
そうしてきりりっとおもう。 |
いちにち雨が絶え間なく降り続き夜になった。
窓の外で誰かがずっとシャワーを浴びている。 そんな雨音を聴いていると。ほんの少しだけ。 取り乱してしまいそうになり。鎮めるために。
これを書いている。ゆっくりとまえへいこう。
息をすってはいて。心静かに時と戯れようか。
今日も変わらず。やはりうごきたくてならず。 そんな自分のことが解らなくなってしまった。 けれど。とにかく何かを整理したくてならない。
そうして先日見つけた手紙の入った箱を取出し。 今度は送ってくれた人別に仕分け作業を始めた。 20通もの束になるものもあれば。一枚の葉書も。 そのどれもが懐かしく愛おしい。心のこもった。 あたたかいひとたち。かけがえのないひとたち。
若き20代からこの歳に至るまで。自分ひとりで。 歩んできたのではないのだとつくづくと思った。 こんなふうに支えてくれたひとがいてくれたこと。 私の人生は。たくさんの縁に恵まれていたのだと。
感謝の気持ちでいっぱいになった。ありがたくて。 たとえ今は会うことが叶わずとも。ずっと繋がる。
縁には決して距離などない。胸をはって私は云える。
感極まり涙するかとおもえば。不思議と涙もろくもならず。
とても大切な儀式のように。またその箱をそっとしまった。
そうしてきりりっとおもう。だいじょうぶわたしは生きる。
| 2008年10月04日(土) |
思い出の部屋づくり。 |
くもり日。午後少しだけ青空がみえ始めると。せみが。 生きているよここにいるよと裏の柿の木で鳴いてくれる。
ひとつふたつと早熟な柿の実が。もう色づき始めたころ。 いきつもどりつしながら。わたしの心も少しだけ歩んだ。
ひとところにしがみつこうするからくるしい。
だからといってせなかをおされるとしんどい。
そのための意思であり意志なのではあるまいか。
開店したばかりのお店で食料品の買出しを済ませ。 さあ今日もやろうかなとまた整理整頓に精を出す。 部屋全体が物置化しているかつてのサチコの部屋。
もう弾くこともなくなった電子ピアノや古いCD。 リカちゃん人形もあれば。リカちゃんのタンスも。 鉛筆削りもあれば。色鉛筆もある。三角定規だって。
ここを思い出の部屋にしようと母は決めたのだった。 サチコの歴史部屋みたいにしようと思い心がときめく。
午後それがついに完成して。思わず涙が出そうになる。 部屋の真ん中にぽつんと座って。しばしうっとりとする。
さすがに少し疲れたのか。一気にチカラが抜けてだるくなった。 よろよろと茶の間に行き。彼と一緒にテレビを見ているうちに。 夕方まで眠ってしまう。もう明日は休めよって言ってくれたけど。
たぶんまたうごく。だって整理整頓に目覚めているのだから。 いましかないと思ったりしている。とめないでとめたら駄目。
晩御飯食べて。お風呂入って。ビール飲んで。焼酎飲みながら。 サチコの帰りを待っている。手を引っ張ってでも見せてあげたい。
ほうらここが思い出の部屋だよって。母は自慢したくてならない。
| 2008年10月03日(金) |
神さまは海なのかもしれない |
きょう縁結びの神さまにあった。
神さまはなぜか地下足袋をはいていて。
深い海のような濃紺の作無衣を着ていた。
そうして口ひげが似合う顔は少年だった。
本来なら出雲の国に行かねばならぬころ。
とくべつな任務を果たすかのようにして。
北の国から流氷の妖精を連れて来てくれる。
ちょっと泣き虫だけど笑うとほんのりと光る。
それはそれは目に入れても痛くない程可愛い。
さんにんで輪になってお昼を食べる。神さまは。
鰹のタタキ御膳。妖精はザルうどん。わたしは。
大好きな鶏の唐揚げとおむすびセット。紅葉が。
それぞれの器に添えられてある。今は秋だった。
縁というものは不思議でならず。神さまだって。
結ぼうと努力してそれを探したりはしないのかも。
けれどもそれは川の水がやがて海に繋がるように。
水と水が出逢ってしまうものなのかもしれなかった。
奇跡のような偶然。けれどもそれは必然でもあり得る。
魂をみくびってはいけない。果てしなくそれは旅する。
ひとりの存在がひとりを導く。待っているひとの元へ。
そうして懐かしさが込み上げてくる。それが縁だと思う。
わたしは川 妖精は魚のような貝 神さまは海なのかもしれない。
| 2008年10月02日(木) |
きもちよくわたしはいく。 |
朝の窓辺から見上げた空は雲ひとつなくて。
くうきが空の息のように流れているのだった。
このままどうしようもなくとけてしまいたいとおもう。
そうくうきのように。それを風だと感じられるように。
山里へと向かう道。その脇道を左に折れる道沿いに。 今年も紅い鶏頭の花がたくさん咲いた。炎のように。 空気がいちだんと澄んでいるせいだろう。勢いよく。
それはほんとうに燃えているように見える。はっと息をのむ。 そうしてとくとくと流れる我が身の血を。痛いほどに感じた。
ふあんがるな。おそれるな。呪文のようにそんな声が聴こえる。 今はただ空に向かい精一杯に咲けばよいと。それが訓えてくれる。
日々花にあう。そうして山道を行けば萩の花びらが散り敷かれて。 若き黄色は背高泡立ち草。嫌う人も多いけれど私は嫌いではない。 昨日は気づかなかったそんな花の姿に。むしろ心を弾ませている。
そうして桜紅葉は花と似て散り急ぎ。もう冬支度のようでもあった。 裸木はさびしいけれど。その骨のような姿に朝陽が降り注いでいる。
きもちよく。きもちよくわたしはいく。
わたしの灰汁などほんの些細なことなのにちがいない。
| 2008年10月01日(水) |
まるで夏の忘れ物のようだった。 |
朝のうちの雨はすぐにやみ。ゆっくりと青空がひろがる。 お日様がとてもまぶしくて。それはまるで夏の忘れ物のようだった。
ツクツクボウシが鳴き始める。その声に呼応するようにトンビが鳴く。 仕事の手を動かしながら耳を澄ましていると。空が音を奏でているよう。 つくつくぴぃ。ひょろろんつくぴぃ。それはとても楽しい歌に聴こえた。
もう最期なのかもしれない声だとしても。太陽に見守られているいのち。 同じ空を飛ぶ一羽の鳥にだって。そのつかの間をともに歌う喜びがある。
そうして神無月。暦をめくると一気に秋なのかと思わずにいられない。 なんだかとても急いでいる。もっとゆっくり歩きたくてならないけれど。 いつだって背中を押されているような気がする。その歩を確かめられず。 気がつけばそこにいる。そんなふうに季節が幾度も巡ってくるのだった。
いっぽ。一歩とひとにはよく言うけれど。
じぶんの一歩はとても不確かな歩みだった。
どこまで行けばいいのかまるでわからなくて。
そこがいったいどこなのかさえも知らなかった。
たどり着けばわかるだろうと希望のようにも思う。
暮れていく空をぼんやりと眺めていると。その紅く落ちるものが愛しい。 そうしてそれが輝きながら昇りくる朝が嬉しかった。息をする心いっぱい。
ひとに生まれてよかったとこころからおもう。
ツクヅクホシイとなく日もあるが。ひとだからゆるしてあげたいとおもう。
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