| 2008年02月04日(月) |
あのひとのことなどわすれてしまうくらい |
ひとつひとつを確かめるように山里へと向かう。
昼下がり。それは菜の花の畑だったり。水仙が。
少しうつむき加減に咲いている民家の庭先とか。
門番のように繋がれた犬の。眠たげな虚ろな瞳。
猫の親子が道を横切る。あちらの陽だまりへと。
時が静かに流れている。のどかにゆるうくそっと。

早朝からの川仕事を終え。慌しく職場へと向かった。 いったい何を急いでいるのだろうって。ふっと思う。 「どうどう」と馬の背中を撫でるような気持ちになる。
気掛かりな事がたくさんあって。駆け付けるような思い。 だけど。急いだって何も変わらない。なるようになるって。 いつもそう言っているのは自分なのに。それを忘れている。
立ち向かうべき時もあれば。そうとも限らない時だってあるのだ。
少しだけ残業をして。明日もし来れなくてもかまわないくらいに。 しておく。専務オババである母の体調もだいぶ良いみたいで安堵。 「あんたが居なくてもだいじょうぶ」とか言う。それが優しさかも。
夕暮れて川辺の道は。はっとするほど紅い空。なんだかきゅんっと。
ひとを想う。アノヒトノコトナドワスレテシマウクライの空腹だった。
| 2008年02月02日(土) |
ひゅいんひゅいんと。こんにゃくのきもち。 |
早朝。今にも雨になりそうな空を見上げつつ。ふぅっと。
ちいさなため息をひとつ。でもやるんだからって思って。
家業の川仕事に出掛ける。今年もなんとかここまできた。
海苔の生育がいまいちで。はらはらしながら不安だった。
けれど。こうして恵まれることが幸い。ありがたいこと。
桜の季節が終わる頃まで。ふんばってふんばって頑張ろう。

気力はこうして漲っているのだけど。やはりもう年なのかな。 なんだか身体が思うようにいかない。すぐに疲れが出てくる。
今日は土曜日なのを幸いに。午後は炬燵でずっと寝てばかりだった。 買い物に行く馬力もなくて。晩御飯はまたすごい質素に済ます。
平日だと。山里の職場と掛け持ちになる。親孝行だって思っていても。 こんなにしんどくて大丈夫だろうかと不安になる。自信が薄れていく。
弱音。そうこれはかなりな弱音。だって強がるとよけいにしんどいもん。
ふにゃふにゃしてる。こんにゃくみたいな気持ち。力まなくていいんだ。
そうだよ。切られたり千切られたりには弱い。でも振り回してみると。
こんにゃくは意外と強い。ひゅいんひゅいんと風を切る事だって出来る。
しなやかなる弱音に魅せられて。そっとふたをするように今日を閉じる。
| 2008年01月31日(木) |
ざわざわとかざらざらざらとかぐるぐるとか |
よく晴れた朝。いつもの峠道をのぼりつめたところで。
キツネに会う。最初は犬かと思った。でも尻尾が長い。
キツネがきょとんとしていた。そうして大急ぎで駆ける。
私だってきょとんとしていた。だって初めてだもんなあ。
そっかこの山にはキツネが棲んでいるんだなあ。タヌキ。
イノシシ。猿だって鹿だっていそうな気がする。うさぎ。
そう思っただけで嬉しくなる。なんだかわくわくとする。
こんな朝がいい。いっぱいの命が息をしている。感じる。

ずっと平穏でいたくて。波風をたてたくはなくて。今日も。 ざわざわとかざらざらざらとかぐるぐるとかをなくしたい。
そう思っていると。自然とそういう心構えのようなものができる。 うん。なんだってそう。いつだって自分次第なのかもしれないな。
でもちょっとだけ思うようにいかないこともある。たとえば今日。 寝耳に水みたいなことを知らされて。まさかそれはないだろうって。 かなり焦った。でもほんとみたいで。すごいすごいショックだった。
どうして?って思う。どうしてもこうしてもないことなのに。それが。 あたまから離れない。いかんいかんってもうひとりの自分が叱ってる。 晩御飯食べていても。お風呂に浸かっていても。今だってこんなだし。
でっ。とにかくスイッチをと。手探りしながらこれを書いているところ。
もう少し。なんとなくだけど。もうちょっとでそのスイッチに触れそう。
キリカワリマス。ソコカラガアシタデス。いまちょっとほっとしました。
| 2008年01月28日(月) |
まな板の上のお魚のきもち |
朝からずっと冷たい雨。しょんぼりしょぼりと雨粒が。
ちいさな春に降りかかる。ほっとしたり哀しかったり。
いくつもいくつも巡るものに。無防備ではいられなくて。
身構えてみたり逃げようとしたりしてひとは生きている。
のほほんとした雨になりたい。そうしてさらりと流れたい。
昼間。職場にまた嵐のようなひとが険しい顔でやって来る。 朝の連ドラ『ちりとてちん』風に言うと。まさに『天災』だ。 天災だからしょうがない。忘れていたから来たんだなと思う。
まあなるようになるだろうと。まな板の上のお魚のきもちになる。 けれどやはり少しは焦る。痛くないようにさばいて欲しいなと思う。
病み上がりの相棒がいつになくしょげていて。後ろ髪を引かれつつ。
帰る。「ありがとう」って言ってくれた。とても優しい声だった・・。
これまでずっと求めすぎていたのだろう。もうじゅうぶんだと思う。
そう思うと母ほどありがたいひとはいない。だけど私はいつだって。
「ありがとう」って言えない。照れくさくってどうしても言えない。
まな板の上のお魚二匹。ようく見ると良く似ているとひとは皆言う。
そう言われるのがとても嫌だったけれど。そのきもちが薄れていく。
救えるものなら救ってあげたい。海へ還してあげたいなあと思った。
| 2008年01月24日(木) |
こうやってなあ。こんなふうに。 |
ひゅるひゅると木枯らしのいちにち。久しぶりの青い空。
北風小僧のかんたろうが口笛を吹いている。うまいだろ。
ねえ俺ってさすがだろって。得意げに駆け抜けていく空。
冷たさをあたたかいのでくるっとして。手のひらにのせ。
かんたろうに届けてあげたい。彼はきっとお腹ぺこぺこ。
ひとくちでぱくっとして。もうひとっ走り行ってくるぜ。
山をひょいっと谷をするっと海にざぶんと。どこまでも。
今度会う日の約束はしない。会えた日がきっとその日だから。

昨夜の残りの豚汁に。またおうどんを追加して煮込みうどんにする。 仕事がお休みで。暇をもてあましていたらしいサチコが。これだけ? 何か作ろうよ。これだけじゃあんまりだよって。呆れ顔で言い出し。 冷凍室にギョーザを見つける。これ焼くよって手際よくやってくれた。
相変わらず質素な夕食だけど。三人揃って一緒に食べるの久しぶりで。 嬉しい。たまには付き合ってやるかと言って。サチコもビールを飲む。
『あんず』うちの飼い犬の話しになり。今日も昼間むだ吠えがひどくて。 犬小屋に閉じ込められていたらしい。夕方の散歩の時間までずっとで。 なんぼか窮屈だったことだろう。彼が入り口の戸を開けてやるとすぐ。 跳び出してきて。屈伸運動をしたという。こうやってなあこんなふうに。
食卓のイスから立ち上がり。彼がその真似をして見せてくれたのが愉快。 「もう怒る気にもならんよ」って笑う。屈伸運動をしっかりしてから。 「さあ散歩行くわん」って顔して澄ましていたという。さすが『あんず』
だけどお散歩はやはりほんの少し。以前のコースはもう駄目っぽい感じ。
我が家の末娘だった子が。いつのまにか長老になった。
老いることはすこしせつない。でも生きることは楽しいかな?あんず。
| 2008年01月23日(水) |
ああもうこうなったら私をぶって下さい。 |
降り続いた冷たい雨がやみ。ほんの少し空が明るくなる。
ほっとする。お陽さまに会いたかったなって嬉しくなる。
けれどつかの間。また灰色の雲がどんどん流れてきては。
空はいつだってそこにある。思うようにいかないことを。
どんなに望まれても。こうなんだよって教えてくれる空。

豚汁を作る。汁っていうより鍋だ。いろんなもの入れて作る。
ゴボウとか大根。シメジ。お豆腐。モヤシ白菜白葱春菊うどん。
そして食べる時にお好みでキムチ。私はもちろんキムチのキモチ。
からだがぽかぽかあたたまる。幸せだなあって思う。おいしいの。
晩酌はお休み。今夜はバドの練習日だから。ぐっと我慢しておく。
でも。バドに行く寸前にちょっと大変なことになり。しかたなく。 断念する。アレがアレだった。ほんとうにすごいことになってて。 自分でもびっくりして顔面蒼白になった。いったいどうしてかと。 不安にもなる。でもケセラセラ。こんな時こそケセラセラだなあ。
ほんとは身体を無性に動かしたい。へとへとになるくらいのムチが。
欲しい。ああもうこうなったら私をぶって下さい。今はそんなキモチ。
彼はキムチのせいだろうって笑う。男なんて何も知らないくせに。 おまけに。今夜は禁酒だともいう。男なんてほんとにもう嫌いだ。
灰色の雲なんか吹き飛ばしてあげよう。おおきくおおきく息を吹く。
思い通りにいかない空なら。太陽の気持ちにだってなれるのだから。
おいおい。その雲邪魔だよ。太陽には月の友がいて星の仲間がいる。
きみはそのことをもっと知るべきだ。でもきみだって雲になりたい。
そのことをいちばん知っているのが。太陽なのかもしれないよね・・。
| 2008年01月21日(月) |
ため息ひとつ聞えず。雨だれの音ばかり。 |
雪にはなれそうにない雨がいちにちじゅう降っていた。
いつもの山道。民家のすぐそばの田畑に案山子さんが。
今日は透明のレインコートを着ている。守りつづけて。
去年の夏からずっとそこで。じっと動かず守っている。
だからこそ守ってあげたい。ひとの想いを着た案山子。

職場で。とてもたいくつだと言う常連さんが来ていて。 仕事の手を休めては。あれこれ世間話のお相手をする。
そしたらちょうど来店のお客さんが。そのおじさんの。 同級生らしく。おお久しぶりやなあとふたり微笑んで。 一気ににぎやかになった。きみとか僕とかは言わない。 「わりゃぁ」とか「わし」とか。声もだんだん大きく。
世間話どころではないようなその話す内容といったら。 「わしは7時になったら眠とうていかん」 「なによ!われも年寄りになったにゃあ」 「わしらあ毎晩11時まで起きてテレビ見よるぞ」 「なによ!わりゃぁえらいのう!たまげた」
てなぐあいで。あげくのはてには。お互いをののしりだす。 「われは銭があるけん、なんぼでも電気使うたらえいわや」 「われやち貯めちょるくせに、使い方を知らんがよのう!」
おおそうよそうよ。わっはわっはと顔見合わせて大笑いする。
まるで漫才だなこれは。でもなんだか微笑ましい二人だった。 これが『朋輩』っていうのだなって。ぶつかってぶつかって。 何だって言い合って。でも何を言われても腹を立てたりしない。
「いかん、もう相撲が始まるぞ」ってやっとお開きになり帰る。
あとはし〜んと静か。ため息ひとつ聞えず。雨だれの音ばかり。
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