明けて五日。ゆっくりがいいと思うだけおもっては。 とんとんととんと日々が。自分より先を歩いている。
うしろから見ていると。やはりついていくしかなくて。 立ち止まってみると。置いてきぼりにされそうになる。
どこに行くのだろう。せめて口笛の似合うような道なら。 スキップしながら行きたいなって思う。らんらんらんと。
昼間。春みたいに暖かくなって。飼い犬が壁にもたれて。 とろりんとした目でうたた寝をしていた。アンちゃんって。 その名を呼ぶと。起きてるよ寝てないよって顔をしながら。
遊んでくれるのかなって期待しているのがわかる。ふふふ。 寝惚けたようなその顔が可愛い。でも遊んではあげなかった。
なあんだつまらないなの顔で。また陽だまりさんと仲良し。 そこだけ時間が止まっているみたいに。彼女はなあんにも。 思い煩うこともなさそうだ。鎖のことなんか気にもしない。
その白くなったまつげを見ながら。老いることを少し思う。
走れるだけ走らせてあげたい。鎖をはずして野を駆けさせて。 あげたい。全速力で海まで行けるかもしれないな。いまなら。
けれど。彼女は何も言えない。文句ひとつ言えない。願いが。 きっとあるのだろうにと思う。だけど頭を撫でてもやらなくて。
そこにいるねって確かめるように。陽だまりの彼女を見ていた。
| 2008年01月02日(水) |
すくっとすくっと前へ |
新年も明けてふつか。朝の窓を開ければ川向の山々は。 雪の景色にきらきらと輝いている。まぶしい朝の光に。
すくっとする。身もこころもここにある。ささやかに。 いっぽ二歩と。確かめる術をなくしていても。ここで。 ここからまた日々を重ねていくのだと思う。ぼちぼち。 ゆっくりでいいから。転んでもいいから前へいきたい。
雪模様の元旦は。例年のごとく親族みな我が家で集う。 甥っ子姪っ子すっかり大きくなり。なんだかしんみり。 どんちゃん騒ぎをするでもなく。静かな宴会となった。
夜やっとお開きになり。後片付けが終わるとぐったり。 これだけはちゃんとしなくちゃもやはり疲れるものだ。 でも。そのおかげで始められる一年だからと思いたい。
今日は風もなく穏やかに晴れる。ここ数年怠らないでいる。 初詣に行く。隣町の延光寺。四国霊場の39番札所である。
いつも気の進まない彼も。今日はしっかり手を合わせていた。 目洗い井戸のことを教えてあげたら。私より先に歩き始める。 その水で眼を洗わないとって言ったのに。冷たいからいいとか。 言うことを聞かない。でもいつになく真剣な顔を垣間見た瞬間。
ずっと病気がちで。昨年から眼の病気にまでなった。どうか。 健康を授けてください。どうか無事に毎日を過ごせますように。
そうして。彼をクルマで待たせ。私はちょこっと山登りに行く。 お寺の裏山が『ミニ八十八ヶ所』になっていて毎年巡っている。
雪の湿りが残る羊歯の道を。赤い寒椿の咲く山道をひたすら歩く。 急な上りもあれば足を滑らせそうな坂道もある。不思議なことに。 すこしも疲れない。息切れもしない。とても清々しく好きな道だ。
しかし。今年もまたしくじってしまった。どうしてなのだろうか。 八十八個持っていたお賽銭が。今年も十二個余ってしまったのだ。 最後の仏様の前で。そのことがショックでならずしばし呆然とする。 確かに順番通り手を合わしたのに。腑に落ちない。納得できない。 まあいいかでは済まされない。今年こそはって思っていたからよけい。
よっし!と決意し。すぐさま踵を返し一番を目指して引き返し歩く。 確かにあった。どの道も確かに通った道で。八十八ヶ所ちゃんとある。
不思議でならないけど。仕方ないなあってやっと諦めてクルマへ急ぐ。 待ち兼ねていた彼が言う。「お賽銭百個持って行ったんだろう」って。
はははって苦笑い。そうかもね。それはあり得ることだよって思った。 来年はお賽銭に番号書いて行く。そうすることでちゃんちゃんとなる。
帰宅した午後。姑さんが土間で転んで怪我をする。足が腫れて痛そう。 彼が病院へ連れて行くことになり大騒ぎ。幸い骨折ではなかったけど。 しばらくはじっと安静に寝ていなければいけないそうだ。畑仕事とか。 ちょっとお休みしなさいってことかなって。みなで宥めては寝かせる。
私がお参りをしくじったせいかもって。ちょっと不安にも思った。 去年は私が救急車で運ばれたり。一月二日はどうもいけないようだ。
気を取り直そう。どんな時もあるのだもん。災い転じて福となすって。
今年もそう信じていこう。転んでもいいのだ。すくっとすくっと前へ。
| 2007年12月29日(土) |
わたしの衣になった糸 |
いちねんを振り返りつつ。いちねんをたたむようしながら。 ずっと昔のいちねんのそのうえに。またひとつ重ねていく。
それは織物のようでもある。たてによこに日々があり時々。 思いがけず好きな色も浮かぶ。ああここ好きだなって思う。
いまだ未完成な布切れであっても。不器用な私にも出来る。 精一杯の織物なのかもしれない。まあこんなもんだろうと。
うなずきつつ。まだあるだろう日々が。かけがえのない糸だ。
それを纏っていけるのだと思うと。すこしわくわくとしてくる。 寸足らずかもしれないって思うと。ちょっと照れくさくもなる。
でもとっておきの衣になるだろう。えへんと胸張って私はいく。
ことしほど糸を頂いたことはなかった。ありがたい糸をいっぱい。
私にはもったいないほどの糸を。どんなにか嬉しかったことだろう。
じぶんひとりで糸は紡げないのだと思った。どんなに頑張ったって。
その糸は脆い。その糸は切れる。我儘で強情ですぐに絡む糸だから。
ずっと。ずっとそれでもいいと思ってた。自分ひとりで織るのだと。
いただいた糸はどれも。ひとのぬくもりのように柔らかでしなやか。
それでいてしっかりとつよい。そうして織った日々の優しさといえば。
頬ずりしたくなるほど愛しい。あの糸この糸が我が子のように思える。
織ったからには切れはしない。もう破れもしない。わたしの衣になった。
ありがとう糸。ありがとうみんな。この衣がわたしは大好きです。
| 2007年12月27日(木) |
手折れない花の咲く道 |
寒椿なのだろうか。それは山茶花にも似ていて。
朝の道の民家の庭から。冬の景色を彩っている。
ふわふわっとした白い花びら。ふっと懐かしい。
あれは幼い頃に作った柔らかな紙の花のようだ。
きちんきちんと折りたたんで。真ん中をしばり。
一枚ずつそれをめくるように起こしていったら。
花になる。中指につけておっきな指輪みたいに。
髪にかざせば。みんなお姫様みたいになって遊ぶ。
踊ることだってする。歌うことだってする嬉しさ。
とおく遠く来てしまったというのに。花になる日。
山里の雀色の道に。咲く花は愛しいひとのように。
懐かしい。ふっと声が聴こえる。朝の光のなかに。
逢えないのではなかった。逢わなかったのだと思う。
手折れない花が。いまもそこに咲いているのだった。

仕事がすこうし気楽になる。随分とじたばたしていたらしい。 もういいやって今日は思った。なるようになるさって思ったら。 逃げる必要もない。急いで焦ってどこに行こうが勝手にしよう。
そこに川があるからといって泳がなくてもいい。
寒いし。風邪をひくから。なんとなく見ていることに決めた。
| 2007年12月25日(火) |
ただただぐっすり眠るのだろう |
いつもの峠道をきょうも行く。行かなくちゃって思う。
そんな朝の気持ちは。晴れそこなった空みたいに憂鬱。
自分はとても急いている。はやくはやくといちにちを。
終わらせてしまって。解放されたいと思っているよう。
逃げたいのだなと気づく。それはあまり感心できない。
気をとりなおす。言うのは簡単。上手く出来ないのが。
現実。明日こそはと思う。夕暮れはもう雨の道だった。
さつまいものシチューが。ついに三日目となりにけり。 いくら好きでも作り過ぎだよってサチコにも言われた。 でも頑張ってやっつける。ご飯もおかずも食べないで。 げっぷげっぷするまで食べた。やっとお鍋がからっぽ。
おまけに別腹でクリスマスケーキも食べた。チョコの。 三等分したのを彼がお皿に入れようとして落っことした。 白菜のお漬物の中にぽたんと。それが可笑しくて大笑い。 私がしそうなことでも。彼だってすることが出来るのだ。
食器を洗って大きなお鍋も洗って。飼い犬の晩御飯どき。 彼女はいつだって私を待っていてくれる。はあはあって。 荒い息を吐きながら。興奮したように餌をおいしそうに。 食べてくれる。お尻のほうに雨がぽたぽた落ちている夜。
雨というだけで。なにも変わりはしないそんな平穏さを。
あたりまえのように平凡だと。言ってしまいそうになる。
茶の間からもれる灯りの下で。飼い犬はすぐに眠くなる。
明日こそはなんて夢にも思わず。ただただぐっすり眠るのだろう・・。
| 2007年12月23日(日) |
もういいかい。まぁだだよ。 |
まだ雨の滴が残る朝。雀たちがお祭りのようにはしゃいでいる。
ちゅちゅんとさ。そりゃそりゃって。もうすぐお神輿が出そう。
窓をいっぱいに開けて。そんな雀たちの姿を飽かずに眺めていた。
堤防の枯れ草が。水をいっぱいに吸ってすこし紅い。茜のように。
その道に。しゃりんしゃりんと鈴の音が聴こえる。お遍路さんが。
雨合羽の頭のところだけ背中にひょいっとして。通り過ぎていく。
その空にとんびが飛ぶ。ぐるりぐるりとそれは上手に空をまわる。
お陽さまのにおいがしてきて。雨雲が追いやられるように流れる。
もういいかい。もういいよ。そんなふうにして始まる日曜の朝だ。
いちにち。大掃除の真似事に精を出す。 今までもう何年も捨てられずにいた物など。 思いきる。手にとって懐かしいものもある。 でも。もう使うこともないだろうって思う。
そんなあれこれにありがとうって言ってさよなら。
だけど。どうしても捨てられないものもある。 兎さんと熊さんのカタチのおにぎり作り器というか。 ご飯を詰めてぎゅぎゅっと押したら。それが出来る。 子供たちが保育園時代。それをとても喜んでくれた。
彼に「アホか」と笑われる。そんなもんどうするんだと。 孫とか出来た時にまた使えるもんって言っとく。だって。
捨てたくない。どうしても捨てたくないものだってある。
そうしてきょうが暮れていく。
サチコの大好きな。さつまいものシチューを作った。
| 2007年12月22日(土) |
冬至の夜に。ぼんやりと。きみを待つ。 |
冬至。雨の朝となりだんだんそれが嵐みたいに荒れる。
冷たい雨だ。けれども「いい雨」だと山里の人が言う。
春採れのブロッコリーの苗を。先日植えたのだそうだ。
からからの畑を潤す。山だって川だって雨を待っていた。
冬至。かぼちゃとか柚子とかをすっかり忘れて夜になる。
かぼちゃは好きではないと彼が言う。お風呂は入浴剤を。
いつも通りが良いと言う。晩御飯は味噌ラーメンにする。
えらく質素だなとは言わない。ぬくもるなあってよろこぶ。
雨がやっとあがったようだ。飼い犬が庭でやたら騒がしい。
数日前から迷い犬のような一匹がいて。夜になると家の灯りが。
恋しいのだろうか。空腹かもしれない犬が路地を彷徨っている。
どうにかしてあげたいと思うだけで。なにも出来ずにいる。
窓をすこしあけて。雨が残した水の匂う夜気をすってはいて。
サチコの帰りを待っている。すぐに味噌ラーメンを作ってあげよう。
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