上流の沈下橋のたもとにも菜の花がたくさん咲いたそうだ。
行ってみたいなと思いつつ。行けないことのもどかしさもあるけれど。 ローカルニュースの映像はありがたく。ほのぼのと心が和む夕暮れ時であった。
水辺の花はとても健気なもの。それは水が運んで来た種たちの命の誇りのよう。 濁流にのみ込まれてはもはや死かと思うのが人なら。植物ほど無心なものはない。
そうして辿り着いたその場所に在れば。きっと花咲く日が巡って来るのであろう。
そいえばいつかの夏。あの芙蓉の花は汽水域の岩の上に咲いていたのだった。 見つけた時には思わず涙が出るほど。その健気な姿に感動したことを思い出す。
逢えるかもしれない。今年もそんな命に逢いたさに水辺をぽつりと歩くことだろう。

午前中は家業。午後は山里の職場だった。 あいかわらずハードだけれど。なんだかとても順調に思える。 不思議と苛立つことがない。あっけらかんと。とんとん拍子でいられる。
帰宅すると玄関にまでカカオな香りが満ちていた。 サチコがチョコクッキーを焼いたらしくて。チョコマフィンまで作ったらしく。 「これお母さんの」ってたくさんのおすそ分けを残しておいてくれた。
すごい美味しかったよサチコ。ありがとうね。お母さんはとても幸せです。
うぐいすがほうほけきょと鳴きにけり。だから今日が初鳴日。
川端の木々のあいだからその声が聞こえた。 姿は見つけられなかったけれど。すぐ近く。
とてものどかな朝だった。そうしてそこから優雅に飛び立ったのは。 うぐいすではなく白い鷺。はたはたはたと羽ばたく音が空へ響いた。
朝陽が川面に映しだされて。いちにちがまたゆるやかな水の流れの如くある。
ありがたいことに。あのどうしようもなかった心の灰汁がいつのまにか。 泡のように消え去ってしまって。なんだか悪い夢を見ていたようにも思う。
さらりさらりと水に流れてしまったのかもしれない。 何かにひどく拘ってしまう愚かさを思い知ってみては。 その何かに対し。ふっと感謝の気持ちが芽生えてくると。
そのおかげでひとを思い遣ることが出来るようになった。ありがとう。 あの時ああしてくれたからこんなことがわかったのかな。ありがとう。
けっきょく憎むべきは自分。懲らしめなければいけないのは自分しかない。
自分の敵は。まさに自分であるということだろう。
だからと言って。自分を嫌いになってはいけない。
自分を愛せないひとは。ほかの誰も愛せないのだから。
わたしはわたしを愛するがゆえ叱咤する。激励もする。
がんばれよわたし。自分に負けるなよ。くじけるなよわたし。
うぐいすの鳴き声が静まったあとには。
からすが一羽あほうあほうと鳴くばかりだった。
| 2007年02月10日(土) |
ぷくぷくのきらきらの魚たち |
雨あがりの朝。太陽はとてもとても紅くて心がきゅんとするほど紅いのだった。
沈むのではない昇る。そうしてゆっくりとあたりを明るくしてはやがて光のなか。 いちにちの。もしかしたら肩を落としてうなだれるばかりのひとにもそれが届く。
どうかこの朝に。ふと顔をあげてふと空をみあげてほしいと願わずにはいられない。
私は大橋を渡って川向のいつもの道を。そうして峠を越え山里の職場へ行った。 せめて午前中の2時間でもと。今の自分ではほんとうにこれが精一杯の努力で。 気忙しさがどうしても先に立ってしまうのだけれど。まわりがそれを認めてくれる。 そうして救われていることを。もっともっと感謝しなければと今日は思った。
穏やかなひとたちがいる。土曜日の職場はよけいにゆったりと時が流れている。 そのなかにぽつんと異分子みたいな私が。ちょこまかとなんて騒々しいことだろう。
クルマを飛ばして今度は峠道を下る時。出会ったお遍路さんに会釈をしつつ思う。 慌てて走っているお遍路さんはいないんだな。みんな一歩一歩踏みしめてしっかり。
そしたらきっと目的地に着くのだもの。ああ私って馬鹿だな。すごい慌て者だな。
おかげで気分もすくっとしたところで。帰り着き昼食を食べてから川仕事に行く。 ここ数日は川船で漁に出ているのだけれど。舳先に乗っているとすごくいい気持ち。 水しぶきがひゅんひゅん跳ねて川を突っ切って行く。そして前途はすごい眩しさ。
小波がぷくぷくっと。光の粒がまるで生きているもののようにたくさん泳いでいる。 あっちにもこっちにも。ぷくぷくのきらきらの魚が波乗りをしているように見える。
眩しさに思わず目をしばたいてしまうけれど。そしたら心のなかまで水みたいになって。 光っているのが幾つも幾つも私のなかで弾けそうになっては。灯りみたいにぽっとする。
その灯りを見失わないように。明日も歩いていこうかなと思う。
ぽっとしてるのをふっとして。自分でその灯りを消したりはしない。
| 2007年02月08日(木) |
ああいま風が吹いている |
枯野の堤にすみれ咲く。すぐそばを流れる大河はゆったりゆったり海へいく。 空は薄曇だけども。お陽さまとはっけよいしているのか。午後はほんのり光る。
風は優しくふわふわとくすぐったいほど。そんなふうにありたいなとふと思う。
わたしは。なんだかここ数日いけなかった。あんまりうまく言い表せないけれど。 ひどくもやもやしていて。それが灰汁みたいに溜まっているのを感じるばかりで。 掬ってぽいぽいっとしたいのに。思うようにそれが出来なくて少し苛立ってしまう。
これはなんだろう。どうしてこんなのだろうと。それほど暇でもないというのに。 四六時中あたまからそれが消えない。嫌だ嫌だああ嫌だと何度も頭を振っていた。
それはすごく些細なことで。とても大人気ないことに違いない。 それがわかっているだけに。こんちくしょうめと自分に腹が立つのだった。
ひろくてゆったりとしたこころになりたい。
ああいま風が吹いている。いま鳥が横切っていった。
雨ならば濡れてもみようし。嵐ならば目を閉じてもいよう。
それはきっと。そんなに難しいことではないのかもしれないなと思う・・。
| 2007年02月05日(月) |
うす紫ほのかに香りて |
春は名のみぞ風の寒さや。と歌もあるけれど。その名のごとしの春らしさとなる。 薄く曇った空などはまるで春霞のようであり。仙人の吐息のようにも見えるのだった。
さあ今日もと勢いたって。まずあれつぎこれそれからあれしてつぎはこれと。 頭の中がパニくってしまいそうな朝のこと。ささやかに日常をとネットなど。 ある方の日記を読ませていただき。なんだか肩の荷がふっと軽くなったよう。
あれもこれもとずいぶん自分が。すべて完璧にしようなどと思っていたのかも。 一気にやらなくちゃって。一日の限られた時間でどうもがいても出来ないことを。 やらないといけないと自分に拍車をかけようとしていたのかもしれないなと思う。
その綴られた言葉になんと救われたことだろう。こころがほっと楽になれた。
そうして家業のため川仕事に出掛ける。今日はこれを頑張ろうと精を出しては。 帰りにはすぐ近くの海を眺めるゆとりも出来た。水鳥が飛び立つのも間近に見た。
枯草ばかりだと思っていた堤防の道には。もしやタンポポだろうか緑が萌えている。 なんだかわくわくとするのは。この一面が野の花でいっぱいになる景色が目に浮かぶ。
そしたら自転車に乗ってここへ来よう。写真も撮ろうかなっと嬉しく思った。
午後。もう3時近くなってやっと一仕事が終る。家に帰って熱いコーヒーを飲む。 お昼寝には少し遅いかなの時間で。まあのんびり買物でもしようかと街へ行った。
お気に入りの雑貨屋さんであれこれ手にとって眺めつつ。アロマのコーナーでは。 とにかく香りをいっぱいにあびてうっとりとする。やはりラベンダーがとても好き。 そしたら若い女店員さんがとても愛想よく話し掛けて来てくれて。これいいですよって。 すすめてくれたのが。こんぺい糖みたいなのでガラスの器とかに入れて香りを楽しむやつ。
もちろん買いますとも。笑顔で手に取ったのは言うまでもない。ワイングラスに入れたい。
そして今宵。いまはそのうす紫のほのかに香る部屋で。まったりまったり寛いでいる。
明日はあしたの風が吹く。いつもそう思える自分でありたいものだ。
| 2007年02月03日(土) |
心にもいっぱい菜の花を |
よっこいしょっと峠のように寒を越え。今日はまた暖かな陽射しが降り注ぐ。 また山あれば越えるのだろう。そうしてゆっくりと歩き出せばきっと真の春になる。
私はといえば。ひとつけじめをつける思いで。昨日から慌しさにとび込んでしまった。 家業の『あおさ海苔』の収獲が始まったのだ。もちろん嫌いではない家業のことで。 とにかく全力を尽くそうと勢いをつけているのだけれど。もう若くないせいだろうか。 生活習慣が著しく変わること。気持ちに体力が負けること。あれこれが少しだけ重い。
けれど。やはりここはきりりっと遣り遂げねばと。いま気だるさの夜に意を決している。 遣り甲斐のあることなどそうそうないのが現実。だとするとこれほどありがたい事はない。
弱音を吐くのは今夜限りにしようと。いまはっきりとそう決めたところである。
午後からいつもの山里の職場へ顔を出す。もともとパートだけれどしばらくは。 週に三日くらい時間刻みで仕事をさせてもらうことになる。毎年のことだから。 それがもう慣れっこなのがありがたいものだ。あちらをたてればこちらがたたず。 結局は家業が優先となる。そのはざまで焦りつつ思うようにいかないことも多い。
山里には一昨日からの雪がまだ少し残っていて。そのくせ真っ青な青空が見えて。 大好きな欅の木など天を仰ぐ様子が。それは誇らしく。凛々しくて頼もしいもの。
途中の畑には。つい先日までまだらだった菜の花が。もう一面に咲き誇っていた。 その黄色はほんとうに暖かな色で。心にもいっぱい菜の花を咲かせたいと思った。
焦っている私に。気ばかり急いている私に。ささやかな春はこの上なく優しい。
| 2007年02月01日(木) |
まるで恋のかけひきのように |
二月の声をきくなり。この冬いちばんの寒波が訪れたようで午後はみぞれ。 時々その雨が雪に変っては。はらはらと舞う。ふと身構えるなぜかは知らず。 なんだかゆるんでいたこころが。きゅっとして思わずふんばってしまうように。
菜の花や梅花やきらきらと眩しかった川面や。その上を試練のような冷たさが。 これでもかこれでもかと挑みながらも実は。ゆっくりと身をひく覚悟の冬だった。
まるで恋のかけひきのよう。わたしがこうでるとあのひとはどうでるだろう。 わたしがここですねてしまえば。あのひとはわたしをなだめてくれるだろうか。 もうこれがさいごのきりふだね。じゃあもういいからさようならなんていって。 ふりむきたくてたまらないくせに。呼びとめてくれるのを待っている。涙ながら。
とうとう。もうもどれないところまでいってしまう。 覚悟というものは決して生易しいものではない。身をひくのは裂けるほどに辛い。
ただそのばしょが春なら。春らしく生きていく。それが結果ではないだろうか。
明日は。大雪注意報が出るかもしれません。
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