| 2006年08月04日(金) |
きみとあたしの距離だから |
今夜は夜風がそよそよっときもちいい。お月様はドラ焼きみたいで美味しそう。 窓からじいっと見つめていると。光がね十字架みたいに交差しているんだよ。
ねえ。窓を開けてみて。ほんとかどうか確かめてみて。ねえ・・聞こえてるの?
ふう。ちょっとためいきをついてみる。はあ。なんかこれはわるくない呼吸だ。 けっこうじゅうじつしてるかもしれないなっていま思った。あれこれとかあって。 でもなんかもうすんだことみたいで。みんなみんなそうして過去らしくなるんだ。
こくこくと進んでいる。だってこうしているまに眠くなるんだもんな。 眠っちゃえば朝がくる。朝がくるとまた今日っていう日になるもんな。
ちょっとさきのうよけいなこと考えたりしたんだ。言ってもいいかな? あのね。なんかさ。きみのいちにちとあたしのいちにちってとうぜん。 ちがうんだよね。スピードがさ。なんていうかきみってわかいんだよ。 だからさ。そういうのをきみとあたしの距離だからって思ったんだよ。
きみは「いつか」って言うけど。あたしには「いつか」ってそれが未来って。 思いたいけど。思えなくて。いつかなんてありえないんじゃないかってふと。 たまらなくかなしくなってしまったんだ。ほろりほろりとせつなくなったよ。
でもね。それってきのうのことだから。うん。たしかにそれはきのうだったよ。
おやすみい。じゃあね。またあしたね。
| 2006年08月02日(水) |
おまえだけは連れていくぞ |
少し大気が不安定なのか。ときどき雲がたち込めてにわかに小粒の雨が降る。 ざわざわと山が動いているようだ。なんだかひたひたと何かが忍び寄って来る。 気配がして。問いただすように空を仰いでみたりするのだった。風が鳴いている。
そのほかにはなにもない。そうしてまるで気のせいだったかのように陽が光リだす。
山里は遍路道。夏休みのせいかずいぶんと若者の夏遍路さんに出会う。 まだ十代ではないかと思うほど。少年のようなあどけない顔のお遍路さん。 タオルで頭をきゅっとしばって。もくもくとただひたすら前へと進んで行く。
昨日は。ダム湖の橋のうえで。フォークギターを抱えたお遍路さんに会った。 すごく声をかけたかったんだ。追い越してしまって。待ち伏せしてみようか。 そう思ったのに。ああでもって。勇気をなくしてしまって遠ざかってしまった。
ちょっと悔みながら。でもなんだかすごく嬉しい気持ちでいっぱいになった。 ギター好きなんだな。だから一緒に歩いてる。重いだなんて感じたりはしない。 家を出る時。おまえだけは連れて行くぞって。きっと決めたんだなあって思った。
あたしは。そんな遍路道のことが。すごくすごく好きなんだ。
| 2006年07月31日(月) |
そしてふかくためいきをついた |
今日も炎天な日。ときどきおっきな雲が流れて来て。あたりがにわかに。 薄く暗くなる。すると。どこからかあの声が聞こえて来るのだ。るるる。 るるるるると。河鹿が鳴く声が山里に響く。なんてせつなくもの悲しく。
誰かを呼んでいる。誰かをさがしている。誰かにあいたくてたまらなく。鳴く。
いまもこうして夏。ずいぶんと遠いところまできてしまっても夏だったなと思う。
あの日。しゅう先輩はどんな気持ちでバイクを飛ばしてきたのだろう。 どれくらいそばにいて。いったいどんな話しをしたのだろう。思い出せない。 もしかしたらすごく困った顔をしていたのかもしれない。どうしようって。 どうすればいいかずっと考えていたのかもしれない。どうしようもなくて。 なんどもなんどもきすをしたんだ。ときどきふるえてそしてすごくやわらかく。
秋が来て冬が来て。春には遠いところに行ってしまった。 ぷっつりと。それはほんとうに約束を果たすかのような別れだった。 モウアワナイ。モウオワロウ。それがふたりの約束だったのだから。
そうしてまた夏。思いがけないことがおこる。しゅう先輩は約束を破った。 あの日。あの喫茶店のどこの席に座っていたか。どんな顔で待っていたか。 あたしは今でもよく憶えている。白いTシャツを着てた。やあって手をあげた。 もう駄目かな?とか。もう遅いかな?とかあたしの好きだった笑顔で首を傾げて。 座ろうとしないあたしを見上げるように言ったんだ。指先で前髪を掻きあげては。
そしてふかくためいきをついた。あたしは逃げるように帰った。ごめん・・って。 言ったかな。もしかしたら言わなかったかもしれない。胸が張り裂けそうに痛かった。
それが。あたしが憶えている。最後の。しゅう先輩だ・・・。
あたしはそれから。どんどん。まるで濁流にのみこまれたように。
流れていったんだ。
| 2006年07月30日(日) |
さっきまで白かった月が |
いまは陽が沈む頃。うっすらと紅い空に白い三日月が見えている。 そして蝉時雨。止みそうで止まなくて。また思い出したように鳴く。
犬が吠えている。お向かいのチャチャのようだ。 猫みたいにちっちゃかったのがずいぶんおっきくなって。 同じ柴犬のせいか。うちのあんずとよく似た声で吠える。
あんずは。この前9歳になった。人間だと63歳位かなと思う。 朝晩のお散歩は大好きだけど。帰るとすぐに寝てしまうのだった。 晩ご飯を持って行くと。寝ぼけたような顔をしてぐったりとしている。
ドックフードに鰹節をまぶしたのが好きで。ずっとそうしていたけれど。 最近はどうも食欲がなくて。餌を見ても「ふん・・」ってそっぽを向く。 その顔はちょっと憎たらしくて。なんだかすごく我儘な子供のように見える。
食べたくないのなら勝手にしなさい!と私もついつい厳しい母のようになる。 怒っても無視する。ああ勝手にするわんとその顔がまたまた憎らしくなるのだ。
それが。鯖の南蛮漬けだ。それはかれこれ4日前の我が家のおかずだったのだが。 あまり脂がのっていない鯖だったので。不評につき随分と残ってしまったのだった。
捨てるのも惜しく。身をほぐしてあんずに食べさせてみたところ。それが好評。 匂いでご馳走だと思ったのか。寝ていたのが跳び起きてガツガツとよく食べる。
甘酸っぱい匂い。犬も夏は酸味が欲しいのかな。お酢と犬ってちょっと意外だった。 もしかしたら冷やし中華も食べるかもしれない。なんだかちょっと楽しみな感じ。
そうして猛暑ないちにちが。ゆっくりと夜になっていく。
さっきまで白かった月が。ひとかけらの檸檬みたいに光っている。
雨ばかりだと太陽が恋しいと言って。日照りが続くと雨が恋しいと思う。 ひとってそんなもんのようだ。現状に満足するのが苦手なのかもしれない。
連日35℃を越す猛暑が続いている。いささかくたばり気味のこの頃であった。
そんな真夏。山里ではすっかり稲が実り。早くも稲刈りを始めた農家もある。 青くゆらゆらと若き緑が目に鮮やかだった頃。それはついこの前のように思う。 なんだか時が急ピッチで流れているようだ。自分も確かにそんなふうなのかな。 よくわからない。どんなふうに流れてきたのか。気がつけばいつもそこにいる。
そしていつかいなくなる。いつかわからない。そのことがすこし不安だった。
だから。いまが夏って。ほんとうにありがたいことなんだなって思っている。
チエさんの実家から鰹が届いた。気仙沼から届いた鰹らしかった。 ここいらの魚屋さんでは見られないようなとてもおっきな鰹だった。
でね。またまた台所で悪戦苦闘。丸ごと一匹という鰹を捌くのは大変なんだ。 まずは三枚にしようと頑張ったが。骨についている身がもったいないほどで。 あらまあという結果になってしまう。でもその身を庖丁でこそぎ落としてみると。 ネギトロのマグロみたいになった。ちょっと味見。そこで冷えたビールをごくり。
あたしはほろ酔った時にこそ気合いが入るんだ。おっし、お刺身を頑張ろう! 青紫蘇を添えたお皿に。ちょっとぐにゃぐにゃになった切身を並べて出来上がり。 サチコはせっせとニンニクをスライスしている。夫君はお箸でお皿を叩いている。
あいよ。ほらよ。そんな感じで。今夜の食卓は鰹で酒盛りとなりにけり。 なんかすごく週末だあって雰囲気で。テンション高く。そのご機嫌が嬉しく思う。
街では。市民祭で。今夜は提灯台のパレードが練り歩いているのだけれど。 飲酒な一家は出掛けられず。もうすでに祭りのあとの静けさであった。
かくして。夏の夜がそれらしく更けてゆくのである。 ちゃんちゃんとな。
| 2006年07月27日(木) |
ああ。なんだっけなあ・・。 |
どうやら梅雨が明けたらしかった。その日からずっと晴天が続いている。 灼熱という言葉がよく似合う。くらくらするくらい暑い。そして入道雲。 そして蝉の声。陽が沈むとほっとする。夜風と約束を交わしたかのように。
夜が愛しい。
とくになにをということもなく。とりとめもなくまた書こうとしている。 なんのためだろう。なんになるのだろうと思えばむなしくなってしまうのだが。
まあよいではないか。こだわるほどのことでもなかろう。
でも。
のほほんとか。あっけらかんとか。ごく自然にっていうのは結構むつかしいな。
むしろこうしているうちにそれに近づくって成り行きが好きだなって思うんだ。
今日嬉しかったこと。今日ちょっと嫌だったこと。ああなんだっけなあって。
思っているまに。あくび出ちゃうのがいいなあって思うよ。
| 2006年07月24日(月) |
このままじゃいけないこと |
今朝は少し青空が見えて。ほっと嬉しい気持ちになれた。 なんだかふっと日曜日の気がしたんだ。だから仕事とか。 ちょっと嫌で。でも行くんだってふっきって出掛けて行った。
「おはよう」って笑顔が好きなんだ。好きな自分になりたいなって思う。
そうして。今日もとんとんとん。はふうの気持ちで家路を急ぐ。 大橋を渡って方向指示器を左に。堤防の道をいつも通るんだけど。 今日は行政管理の草刈作業があったようだった。休憩所のある場所。 そこを重点的にやってくれたらしく。草ぼうぼうだったのがすっきり。
でもそこには。ほんとうに悲しくなるくらいのゴミの山が残されていた。 実はずっとそのことが気掛かりでならなかった。5月の連休の頃からだ。 すぐ近くにコンビニが出来たせいなのか。ベンチでお弁当を食べてポイ。 空き缶もポイ。ペットボトルもポイって。それがどんどん溜まっていたのだ。
地元の人たちにとっては散歩道。気にならないひとがいないわけがなかった。 でも。みんな見て見ぬふりをし続けて来たのかもしれない。誰かが片付ける。 私は。なら私がやろうと思ったのだ。でも夫君に止められた。よけいなこと。 するなって言う。おまえが出しゃばることはないと。結局イタチごっこなんだ。 ゴミを拾ってもまた捨てられる。いつまでたってもその繰り返しなんだぞって。
それが事実だとすると。ほんとうに悲しくて情けないことだなあって思った。 だけど。そういうもんだなあって思い込んでしまうことも情けない気がする。
夕食後。あたりが薄暗くなってきて。今日こそはって思った。 早目に帰宅していたサチコも。一緒に行こうと言ってくれる。 夫君は。きみらの好きにしなさいって。言ってくれたのだった。
おっしサチコ行くぜ!ゴミ袋と火箸をさげて目的地へと向かう勇ましい母と娘。 休憩所には。きっとここでひと休みしたのであろう。お遍路さんの書置きがあった。 板切れにマジックで「ゴミを捨てないで四万十川が泣いています」某遍路より。
どんなにその日の川の流れが雄大で。どんなに川面がきらきらとまぶしくても。 歩き疲れたこころを痛められたことだろう。ほんとうに申し訳なく思うばかり。
あっという間にひと袋出来た時だった。バイクで通りがかった人が駆け寄って来た。 地区の役員をしている人で。気持ちはよく解るけれど止めて帰るように言われる。 管理している行政に電話してあるから。もうだいじょうぶだからと言ってくれた。
確かにイタチごっこになるのだろう。でも一度きちんと綺麗にしてみようって。 それでも駄目なら。また綺麗にすればいいんだって。そうするしかないよって。
みんな。みんながこのままじゃいけないって思っている。 見て見ぬふりをしているようで。みんなが心を痛めているんだ。 なんかそれを聞いて。すごくほっとしたのだった。
とぼとぼ帰りながらサチコが言う。
ひとってね。いけないって言われたらよけいにしたくなるんだ。 だから捨てないでって言ったら。きっとまた捨ててしまうんだよ。
「いつも綺麗にしてくれてありがとう。四万十川が喜んでいます」って。
サチコがポスターを作ってくれることになった。
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