雲ひとつない空と降り注ぐ光と爽やかな風。
私はせっせと洗濯物を干しながら。空に声をかけた。 もしかしなくても。届くような気がしたのだ。声が。 大阪も。きっと青空。窓を開けて深呼吸をしていて。
さつまいものシチューが。昨夜も今朝も美味しくて。 お昼にも食べて。夕食にも食べた。かなり満足なり。
『義経』に泣いた。 血というもの。情というものを。絶つということは。 ただただ悲しいことだ。そして流れる血。あまりにも。 儚い命。惨さを思い知ることが。情ではあるまいか・・。
夜更けて来た。このながき夜をありがたく受け止め。
麦から米に替えてみた。焼酎のお湯割がただただ美味し。
雨あがり。どんよりとした空のしたを今日も行く。 山々がみな雫のなか。ぽとぽととせつない音がする。
収獲の終った田んぼには。まるで春のような青い草。 そこには。白鷺の群れが。絵のように美しくあって。 こころが。真っ白く澄むような。新鮮な風景だった。
峠道を行けば。山肌に可憐な黄色の花を見つける。 つわ蕗の花が。ちいさな向日葵みたいに咲き始めた。 秋だったのか。ふと去年を思い出してみては。去年が。 不思議と。そう遠くない昨日のように思えるのだった。
開店休業。仕事はそのようで。 午後からテレビを見てしまったのだが。
坂本九、没後20年のドラマ『上を向いて歩こう』 見始めたら。とうとう最後まで見てしまった。
お母さんが。九ちゃんに心から伝えた言葉。
「寂しい時は。自分よりもっと寂しい人のために尽くしなさい」 「悲しい時は。自分よりもっと悲しい人のために尽くしなさい」
とても感動した。そして。自分もそうでありたいと思った。
突然の死。いつその日が来ても悔いのないように。
生きたいと思う。
時々いたずらに雨が降る。 重く灰色の空。ふと哀しみを思い出しては。 また悪い癖ねと微笑んでみる。
降る時には降ればいい。私が受け止めてあげる。
まだ午後9時前だと言うのに。ひどく酔っている。 思考が。ぐるぐるまわり始めているのを。愉しんでみるのもいい。
そうかそうだったのか。それが本音なのかって。 自分をぎゅっとしてあげる。すべてを許してあげるのだ。
携帯に43件のボイスデーターがあるのを。 ひとつひとつ聞きながら。わたしは雨になりそうだった。
尼崎のJRの事故のときの。 「僕は大丈夫だよ。バイクで通ってるから大丈夫だよ」って。
それが42件目の声だった・・。
| 2005年10月12日(水) |
前略わたしの神様へ。 |
白い鳥の群れと。灰色の鳥の群れが。 背中あわせでいて。真っ二つなんだけど。 一枚の絵のように。干潟で佇んでいるのを見た。
夕暮れが迫る。さらさらと水が紅くなり始める。 わたしは。こころの瞳で。シャッターを押した。
今日もまた手紙。お昼休みにふたりへ書いた。 ふたりは一緒に。ぽとんとポストに落ちていった。 ひとりは明日に。ひとりは明後日に。きっと届く。 一瞬で届いてしまうメールよりも。旅をする言葉。 これからも大切にしたいなあって思うのだった。
それから2時間くらい経った頃。携帯が鳴って。 それはバド仲間のTさんからだった。 「お久しぶり」ほんとうに最近ちっともクラブで会えない。 そしたら。仕事ですぐ近くまで来ているって言うからびっくり。 職場の裏側の県道へと跳びはねるようにして行った。 どこどこ?って言っているまに。彼の会社のクルマが見えた。
風に吹かれながら。少しだけ会った。 バドの話しとか。仲間の事とか。そしてなぜか私のHPのことまで。 唯一のひと。理由は自分でもよくわからないけれど。 私は彼だけにはHPのことを教えたのだった。
波長が。なんとなくぴったり。彼はそんな感じのひと。 だからなのか。話しているとすごくほっとするひとだった。 友達なのかな。また言いたいけど。きっと縁のあるひとね。
声をかけてくれてありがとう。会いに来てくれてすごく嬉しかったよ。
嬉しいことが。ここ数日のうちに。なんだか不思議なくらいいっぱい。 みんなみんな思いがけない事ばかりで。心がすごく感動しているのだ。
あっ・・って思う。もしかしたら。わたしもうすぐ死んじゃうの? だってこんなにもたくさん。もう胸がすごくいっぱいになったよ。
帰り道。対向車が飛び込んで来そうですごく怖くなる。 わたしをころさないで。かみさまころさないでといのった。
生きていると。時々は。贈り物がたくさん届く時があるのかな。 ほんとにほんとにありがたいことだよ。
今夜は。かみさまに。手紙を書きたくなった。
雨になれない空と。鳥になれないあたしと。
ちょっとした気だるさも。苦にはならずに。
またどこかわからないところへと歩みだす。
夜はとても急いでやってくるけれど。 夜はとてものんびりやさんらしいのだ。 まくしたてるようなこともしないで。 あれこれ干渉するでもなく。そこらへんで。 寝そべっている。それが何よりありがたい。
帰宅して。ポストに見覚えのある字の封筒。 J君は。二年前の夏に。ひらひらっと舞いながら。 落ちてきた。そうして。私の手のひらにすとんと。 それは。どんな言葉でも言い表せないくらい。 とても。懐かしいひとに再会したように思った。 いったいどこから飛んで来てくれたのか。 空から私を見つけてくれたのかもしれなかった。
手紙は。彼女さんと交互に書いてくれていて。 ほのぼのと。ああふたりが並んでるって。嬉しかった。 プリクラの写真もちゃんと。きらきらと眩しいふたり。 逢えたんだ。また逢えたんだ。ほんとうに良かったね。
ネットって。きっかけはそれしかなかったけど。 それがあったから出会う事が出来たふたりだけど。
今の私には。そんなネット空間にこだわらない。 とてもしっかりとした何かが。ここにちゃんとある。
縁というものに距離はない。 つい先日そう確信したばかりだった。
これが縁でなくてなんだろうと思う。
私は再会している。間違いなく。このふたりのことを憶えていた。
曇り日にくもらないでいられること。
たとえにわかに雨が落ちても。
おちないでいられること。
へいわなこころは。とても愛しいものだ。
午後。少しうとうとしていたら携帯が鳴って。 知らない電話番号だったけど。「もしもし」って言った。
聞き覚えのある声。ぼんやりとした頭ですぐには分からなくて。 いっしゅん他の人と間違えてしまった。なんか話しが通じなくて。 あれあれって混乱していたら。ああM君ねって。やっとわかった。
3月までうちのバドクラブで一緒に練習していたのだった。 専門学校へ行くようになって。少し遠い所へ行ってしまった。
彼は。右手右足が不自由だったけど。向上心が強くて。 すごく負けず嫌いで。とにかく出来なくてもやるって頑張り屋さんだった。 でも。どうしてもみんなと一緒にはなれない。すごく悔しそうな顔をして。 くちびるを噛み締めていることがよくあった。でも泣き顔だけは見せない。
私はクラブを任されていることもあって。特に彼と関わることになったのだが。 ある日。限界が来た。ものすごく重荷を感じるようになってしまった。 にこにこと笑顔で。いつも真っ先に彼は来ていて。私の名を呼んでくれたけど。 私の心の中は。どうしよう。どうしてあげたらいいのだろうと。 このままではいけないという思いが。すごく込みあげてくるばかりだった。
私は。それから。急に彼に厳しく当たるようになった。 もう。ちやほやしないと決めたのだ。決して甘やかさないと。 駄目な事はダメと言った。そしたら彼は。「わかってる・・」って呟く。
こころが鬼になっている。そんな自分を痛いほど感じていた。 可哀相でならない。だけど。こうするしかないと。自分を宥めた。
彼はよく転んだ。左手にラケットを持っているから。 体をくねらせるようにして。彼は起き上がるのだった。 そして。きっとした顔で対戦相手を睨む。 私は。私のこころはいつも感動していた。えらいよ、がんばれって。 だけど。声は。「また転んだ、駄目やねえ」って言ったのだ。
最後の日を終えて。私の痛みは最高に達し。 彼が転居してしまう前に。彼に会いに行くことにした。 スポーツ店で。バド用のTシャツを買って持って行った。
にこにこ。彼はどうしてこんなに微笑んでいるのだろう。 ご両親まで。深々と頭を下げてくれて。ほんとうに申し訳なく思う。
「いじめてごめんね」って言った。どうしても言わなければいけなかった。
出来ることを精一杯がんばって。いちばん伝えたかったことを。 やっと告げることが出来た。涙が出そうなくらい。心が楽になった。
私があげたTシャツを左手でぎゅっと抱くようにして。 彼が見送ってくれた時は。もう私の涙はとまらなくなっていたのだ。
「なんか、久しぶりに声ききたいなあって思って」
携帯を新しくして番号が変ったのを。私に知らせたかったのだそうだ。
ありがとう。ほんとにほんとにありがとう。
にこにこ。きみはにこにこ。
わたしもね。にこにこしてるの。ちゃんと見えたかな。
夜風が。15センチの窓の隙間から。 わたしになにか告げたいことでもあるのか。 わたしのそばでただ揺れていたいだけなのか。 とどまることもせずにひたひたと流れてくる。
こんな秋の夜長には。N君がいい。 N君は。いまどこにいるのだろう。 待って。いまここに連れて来てあげる。
高校一年の秋だった。あの日は文化祭。 文芸部は色紙にそれぞれの詩を書いて展示していた。 私は『安沢裕美』という名前だった。 安沢は小学校の時のいちばん仲良しだった子の苗字。 裕美は。郷ひろみの本名からいただいてしまった名前。
N君は知らないひとだった。中学も違うクラスも違う。 でも。朝のバスのなかで見かけたことはあったと思う。
「この詩、もしかして君?」って突然訊かれてびっくりしたっけ。 照れくささと。見つけられた喜びで。私の胸はどきどきしていた。
それから何かを話した。何かいっぱい話したけど。思い出せない。 最後に約束をした。お互いの詩を交換しようとN君が言ったのだ。
その夜から私は。どこかに火がついたようになってひたすら書いた。 『あなた』と書き始めたら。それまですごく好きだったひとが。 忽然と『あなた』でなくなり。たった二日目でそれがN君になった。
チャイムが鳴っている。今はだめ。もう少ししてみんなが帰ったら。 4ホームへ行こう。4ホームは近いのに。なんて遠いんだろうと思う。
あっ・・っていう顔をいつもした。 一人じゃない時は。すごく困ったような顔をして。N君は。 私の詩を受け取り。私は彼の詩を。隠すようにして受け取る。
そこには『きみ』がいた。 わたしはとてもきになった。そのきみが誰なのか知りたくてたまらない。
それがある日『きみの詩って不思議』って詩をもらったのだ。 私はどんどん熱くなる。ついに私が『きみ』になれたのだと思い込んだ。
バス停で肩を並べてバスを待つ。 おっきなひとだなあって思う。まともに見上げることも出来ず。 心臓がばくばくしてたまらない。何も話せない。沈黙と動悸と。空と風。
N君は。私より五つ手前の停留所でバスを降りた。 窓から彼を見つめていたら。彼が目だけで何かを言ったのだ。 その時の。なんともいえないせつなさは。波の音と海の蒼さ。
それから。どれくらい経ったのだろう。 季節はいつで。何月何日だったのか。とても思い出すことは出来ない。
N君には。ずっと付き合っている彼女がいることを知った。 由紀子さんっていう3ホームのひとだった。
私は。もう4ホームへ行けなくなった。 もうN君に渡す詩が書けなくなったから。
わたしは。涙を少しだけ流し。
またすぐにあたらしい『あなた』を見つけた。
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