宵闇に寒蝉つくつく鳴きにけり。
朝晩。急に涼しくなった。 あのひとはどうしているのだろうと思う頃なのか。 やがて秋風が身に沁みる頃になるのであろう。
ああ。いま鳴きやんだ。つくづくつくづく想っては。 夜の。星の。きらりのひとつになって。眠りなさい。
久しぶりに写真を撮った。夏水仙というらしい。
うす曇どこかがそっと秋の色。
先週の日曜日から飼い始めたクラゲが。少し弱る。 海に帰してあげたらと。夫君が言ったのだけど。
ふたりで近くの海に行く。 波打ち際では海水が汲み難いからと言って。 ちいさな港があるところへ連れて行ってもらった。
ペットボトルを提げて港の。船を下ろす坂のところで。 何度がやってみたけれど。うまく海水が汲めなかった。
そしたら。彼がクルマから降りて来て。 どれ、かしてみろって言って。ズボンを捲って海に入る。 ちいさな波が。ぽちゃんぽちゃんと来て濡れながらも。 ほらよって。すごく得意そうな顔をして微笑んでいた。
なんだかとても懐かしい顔。こんな光景は初めてだったけれど。 胸がきゅんとして。すごくすごく嬉しいなあって思った。
新鮮な海水のなか。クラゲはちょっと元気になる。 息してるぞ。息してるぞって。彼はとても喜んでいた。
やわらかな午後。わたしは。
なにひとつ足りないことなどないのだろうと思う。 生かされてみたいのだ。だからずっとここにいたいと。
思った。
ちりんちりんちりん。ないているのはだれでしょう。
なんだかね。ぼんやりしているのがたまらなくいや。
かんがえたくないことや。どうしようもないことが。
せなかからだきついてきておんぶしてくるんだもん。
にげちゃえにげちゃえ。ずるくてふまじめでもいい。
サアニゲロ。
あづま路の道の果てよりも、なほ奥つ方。 わたしの旧姓は。なぜかその土地の呼び名であった。
祖先は平家の落人であったらしいと聞くが。定かではない。 ただ本籍地であるところが。すごく辺鄙な山里であるため。 もしかしたらそうなのかもしれないと。信じてもいるのだが。
その旧姓がとても好きだったなあと。突拍子もなく思ったりする。 最近やたらと昔を懐かしむのは。年をとった証拠かもしれないが。
10年も20年も30年前も。不思議と昨日のように思う。 とても鮮やかなのだ。いつだってその時の自分がはっきりと。 見える。そうしてそれが私の人生かと。感慨に浸ることもある。 なかなかのもんだなと。まるでドラマを観ているかのように。
だとすると。今もずっと連続ドラマの主人公をしているわけで。 この先どんなシナリオなんだろうと。ちょっとわくわくもしてくる。
しかし。台本はないし。監督は誰なんだろう。姿も見えないし。 臨機応変にアドリブもおっけいだし。撮り直しとかもないのだから。
まっ。気楽にやっとけばなんとかなるんだろうなあと思う。
あづま路の道の果てよりも、なほ奥つ方に。嵐が近くなりし夜。 どうしてわたしはここにいて。どうしてここで生きているのか。
昔よりも。もっとはるか昔を思い出してみたいものだ。
青空はまた夏の気配。だけど陽が落ちるのが早くて秋の気配。 そういえば今日は。蝉の声を聞かなかった。蜩とか鳴いていそうなのに。 気づかなかった。あらあらという間に夕暮れて。ただただ秋の虫の声かな。
家事を終えて入浴を終えたら。とにかくひたすら漢字ナンクロばかり。 これは難しいぞって問題ばかりが残っていて。なんだか夏休みの宿題。 すごくすごく集中していて。脇目も振らずとはきっとこんなふうかな。
だから。とても他の事を考えている余裕がない。 ともすれば陥りそうな。感情の落とし穴とかにも。全く興味がない。
ひとつひとつ埋めている。空白があるのがたまらなく気になって。 だからそれがどうなんだとか思うけど。やはりその達成感が心地良い。
やれば出来るんだと思う。知らない言葉も知ればちょっとおりこうさん。 でも。実は。片っぱし忘れてしまっているところがちょっとおばかさん。
あとどれくらい夏だろう。わたしの宿題はまだまだ終らない。
いま、会いにいきます の最後に。キズナが流れると。 なにゆえか。どばっと涙があふれる日曜の夜であります。
久しぶりの雨。あめのにちようだった。 ずっと猛暑続きだったが。一気に涼しくなる。 たくさんの潤いと。たくさんの恵みを。ありがたく思う。
日曜市へ行った。タコくらげの赤ちゃんを買う。 青く透き通ったちっこいの。掬うときドキドキした。 新鮮な海水だけで生きられるのだそうだ。餌は不要。 ほんとうに大丈夫なのかと心配だけど。大丈夫なんだって。
密閉容器の中で漂っている。ゆっくりとまわりながら。 泳いでいるのを見ていると。なんだかなにもかもが。 こんなふうに漂っているのが。現実なのかもしれないと。 思えるのだ。ひろいひろい海でなくてごめんね。
ゆらゆらと思考が。わたしだってこんなふうに。 ちっぽけな場所で。生かされてみるのもいいかもしれない。
あれこれ。ほんとうはちゃんとしなくちゃて思うことも。 ひとつふたつあるけれど。とてもそんな気分になれなくて。
だから。わたしをそうするひとだと決めつけないでほしい。
おねがいです。
朝のいつもと同じ時間に夜が明けなくなって。なんだかまだ眠い。 夜が来るのも急に早くなったようだ。夕陽を見ないまま夜になる。
稲の切り株の匂いを感じながら出勤したのだが。あのなんともいえない。 藁の匂い。焦げ臭いような。それでいて懐かしいような匂いが少し好き。
今日は。サチコの24歳の誕生日だった。 20代の「よんちゃいだよ」って赤ちゃん言葉で甘えて言ったのを。 母は聞き間違えてしまったらしい。ケーキ屋さんに注文する時も。 「よんちゃん」って名前を入れて下さいって頼んでしまったのだ。
でもね。それがけっこううけてしまって。「よんちゃんって誰?」とか。 お馬鹿な母をみんなで笑ってくれて。おかげで楽しい夕食となった。 さんちゃんも。とうとうよんちゃんになったのか。ほんとうに早いものだ。
母にとっては。いつまでも子供。たとえさんじゅうちゃんになっても。 あどけなくてよちよちしていた頃の。抱っこしたぬくもりを忘れられない。
ひとつ。少し淋しいこともあった夜。 小雀のちゅんが。今夜からよその家で飼われることになったこと。 息子君の職場の同僚が。あの日ジャンケンで勝ったはずなのに。 どうしても飼いたいと言い出したのだそうだ。 私は淋しさのあまり。少し文句を言ってしまったのだけど・・ だって。ほんの数日だったけど。情がうつって可愛くてたまらなかったのに。 それをすんなり手渡してしまった息子が。なんだか憎らしくてたまらなかった。
雀ならほら。たくさんいるだろうがって。兄みたいな夫君が言って。 ほらほら。うちの軒下にも巣があるぞ。毎朝にぎやかに鳴いているだろうが。
うん・・そうね。毎朝ちゅんちゅんいっぱいいるよね。 そう思えば。いま泣いた雀も笑うというもの。 なんか私って。やっぱりこだわり過ぎるんだなあって思った。
すずめは雀。ひとは人。わたしは私で。いつも執着し過ぎてしまうのだ。 なんだかぽろりと自分の一部が転げ落ちてしまうのを感じた。
結果は。よき日。
こんなふうに終れる一日は。とてもありがたいなあって思う。
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