夜明け前。まだぼんやりとしている頃。窓を少しだけ開けて鳥の声を聴く。 あれはツバメさん。あれは雀さん。そうして頂く活力がありがたいこの頃。
どことなく腑抜けている月曜日。またきそくただしく動き始める朝の気配。 お味噌汁や。お弁当や。新聞がコトンとポストに届く音や。朝陽の窓辺や。
いつもとおんなじ。なにもかわらない。そんなへいぼんがへいおんなのだ。
ただ刻々と流れているのは時。さっきと今は違うだろうし。昨日と今日も。 どこまで続くのやら。永遠なのかもしれないけど。少しだけ覚悟している。 だからこそ精一杯って思うけど。気がつけば。なんとなくそれなりの現実。 特に一生懸命とか。そういうことがほとんどなくて。ああ夜だなとおもう。
今日。はっとして見つけたのは。藤の花。土曜日にも通った道だったのに。 いつのまにかたくさん咲いていた。私のいちばん好きな色で。どきどきと。 せつないような。なんともいえない気持ちになった。たぶん嬉しいのかな。
よくわからない。あの色は不思議。あの色はなぜか懐かしくて。せつない。
帰宅すると。ツバメの卵が2個落ちていて。とても無惨な有り様だった。 雀が悪戯をするらしいけど。今まで一度もそんなことがなかったから。 「親が帰って来ないかもしれないな」って夫君が言うので。とても心配。
でも日が暮れてから帰って来た。いつものように母鳥は巣の中へ。 父鳥はすぐ近くのサッシ窓の上に。特に驚いた様子もなく変わりなく。 「仕方ないこと」自然界では何が起こっても。すべて受け止められるのか。 きっとそうなのだろう。人間だったら取り乱して嘆き悲しむようなことも。
今日は夕方。サチコが「バドミントンしようよ」って言って。 夕食後。ふたりで堤防に行って遊んだ。なんかこんなの初めてだった。 ふたりともちょっと酔っ払っていて。面白可笑しくはしゃぎまわる。 夕焼けが綺麗で。それから飛行機も飛んでて。機体がきらきら光ってた。
すごく特別な時間。ふれあってふれあって空を仰ぐ。保存しておきたい。 目がシャッターになって。すべて写真に撮ったような気分になった。
「またしようね!」ってサチコがぜぇぜぇしながらも言ってくれて嬉しい。 私はルンルン頷きながら帰る。肩を並べているサチコが愛しくてたまらない。
子供の頃・・こんなふうに一緒に遊んだ記憶がなかった。 サチコはいつのまにか大人になっていた。
去年たくさん咲いてくれたキャットテール。紅いちっちゃな猫のしっぽ。 みたいな花で。今年も花芽がいっぱい出てくれて嬉しい。蕾じゃなくて。 最初は5ミリくらいの緑色をしていて。それが日に日におっきくなって。 2センチくらいになったら紅くなる。それからまたおっきくなってやがて。 ふわふわと柔らかい花になる。ねこじゃらしみたいだけど。猫のしっぽ。
好きなんだ。この花が。咲くとついつい触ってみたくなる。手ざわりが。 なんともいえない。くすぐったいようで。ほのぼのとこころが和む花だ。
今日は。伯母さんの告別式だった。天寿を全うするということを。 考えずにはいられない一日。やはり悲しませてはいけないのだと思う。 だけど避けられない死もある。それがある日突然ならどんなにか。 悲しませてしまうことだろう。泣かせたいと思ったことがあったとしても。 そんなこと思ったりしてごめんねって。先に死んじゃってごめんねって。 自分も泣きながら旅立っていくことになるのだろう。とてもとても悔まれる。
精一杯生きて。精一杯愛して。最期は「ありがとう」っていっぱい感謝して。 微笑みながら逝くことにしよう。安らかな死顔で癒してあげたいなと思った。
少しだけ冷たく思う雨。だけど潤ってしっとりと恵みの雨。 山道の新緑がいきいきとしていて。ついつい目を奪われてしまう。 そして満開の山つつじの。なんともいえないピンクの可愛らしさ。
それからお遍路さんのレインコート。鮮やかな色の背中がてくてく。 雨にも負けず精一杯歩いている峠道。すごく晴れやかな勇気を頂く。
しょぼしょぼと思いつめること。今はそれさえもなくなってしまった。 わたしはたぶんとんねるをでたのかもしれない。ただ目の前に道がある。 そんな感じの日々が。なによりもありがたいと思う。明るくてまぶしい。
目的はない。ここが何処とか標識もない。矢印もなければ地図もない。 だけど。息をして。たまにはあはあしても。休めばまた歩き出せるから。
今日。近所に住んでいる夫君の伯母さんが亡くなった。 90歳で。大往生というのか。誰も悲しんでいないように思う死だった。 安らかで。微笑んでいる顔。何よりも90歳には思えないくらい綺麗で。 伯父さんが舟で迎えに来たのかな。だから笑顔で旅立ったのかなと思う。
私は。わたしは・・その時どうするのだろう。笑顔で舟に乗るのかな。 お父ちゃん?もしかしてお母ちゃん?夫君だったら乗らないよ嫌だよ。 私は。夫君を迎えに行くほうがいい。だって・・なんとなくそうしたい。
だけど・・よくわからない。夫君が「乗れ!」って言ったらどうしよう。
はぁ・・こういうの考えるの。なんか・・ばからしいのかもしれんね。
ある日。ぽっくりと逝きたいのだ。惜しまれて惜しまれて泣かせたい。
まだか細くて。それでいて風に揺れる水田の苗を。心強く思う。 明日あたり植えるのか。苗床のまま水田の隅っこに。きっちり。 並んでいる緑も。心地良く思う。赤や青の田植機も空に映えて。
葉桜のさびしさ。どこに吹かれていったのか。花びらの行方を。 昨日までは知っていたように思うが。今日はもう知らなかった。
集金に行ったお宅に。猫が5匹くらい。庭中にたむろしていて。 思わず笑みがこぼれる。「にぁあよ みぃよ」とか呼んでみる。 どの子も警戒するようにとび逃げた。つつじの木の陰から顔を。 そっと覗かせている。真紅のはっとするような紅の陰から猫が。 にゃごぅにゃごぅと鳴く。懐いてくれるまでずっと居たい場所。
帰り道。少し遠回りをしたおかげで。枝垂れ咲く桜を見つけた。 神社の境内に。それは見事に咲き誇って。思わずクルマを停め。 歩み寄る。木の真下に立って仰げば。なんだかこの世ではない。 と思うくらい。空から桜が舞い降りる。桃色の八重の可憐な姿。
さびしさやはかなさやわかれや。あるのが世の常。だけれども。 こうして思いがけずに出会える。だから生きていたいとおもう。
うす曇の空よりも。ずっと晴れた気持ちで。ゆっくりと帰った。
はらはらと桜吹雪と。思いがけない初夏の陽射し。 なんだか間違っているみたい。急がないで欲しい。 だけどほんと。だからこそ流されたくないけれど。
こんな春もあった。こんな自分も。こんな時もあった。
ありがとうさくら
またあおうね
さくら雨。のち花ぐもり。ゆうがた近くちょっぴりの青空。
たまに後悔する時があって。たとえば。ずっと音信不通だったひとから。 やっと電話があって。久しぶりに聞く声とかすごく懐かしかったりして。 じゃあね。またねとか言って。ぷつんと切れてしまってもすごく嬉しく。 しばらくはほかほかした気分でいたり。なんだか夢みたいとか思ったり。
していたのに。気がつけば。なんだか自分のことばかり話したような。 いっぱい訊きたいことがあったのに。聞いてあげたかったことが・・。 あったはずなのに。これっぽっちも思い遣れなかった。なんて愚かな。
そんな時。もう手遅れだけど。とてもとても後悔する・・。 だからまた。知らないことがいっぱいのまま。時が流れる。
花ぐもりの頃に
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