2008年07月30日(水)...海外

 化粧台に置かれたパスポートと挟まれたチケット。もう、疲れた。此の侭逃げて逃げてあの日常に戻れなくなって仕舞えばいい。

2008年07月29日(火)...消失

 全ての会話は卓上を滑り落ちてゆくだけで、何ひとつ届かない。不在の宛てに記された言葉を代替に渡しても、望む返答は得られる筈も無かった。互いが代わりを欲し代わりである現状に嫌気が差しても、期待や信用すら億劫で本物に成り代わりたいとは思えずに居る。

2008年07月28日(月)...無為

 3時間以上持続することの無い睡眠に蓄積してゆく苛立ちが脳味噌を煮立たせていた。科学が引き起こす筈の継続にさえ、久しく飢えている。噛み砕いた錠剤がミネラルウォータと共にひやりとした温度で胃袋へと落ちるのが解った。心地良い疲労感が平穏や安堵に繋がることは無くて、背中に張り付いた体温がゆるゆると目蓋を閉ざしても、溜息に似た欠伸を噛み締めて頭痛を堪えるだけ。世界との関わりに潜む緩やかな隔たりに気付かぬよう振舞っても、結局は由の無い焦燥感や仄暗い諦めに覆われた感情が安らぎを喰い破って眠りを妨げていた。

2008年07月27日(日)...虚虚実実

 炎天下、じりじりと焼き尽くされる正午、ブラインド越しに照らされたフローリングが熱を持つ。鎖した目蓋に浮かぶ緑色の迷路がオレンジ色に染まって、スパークする。エアコンの吐く風が湿された身体を這って、血液の循環を遮られた手先が冷たく痺れていた。背中が酷く痛む。
 部屋に充満するココナッツの甘い香りが脳味噌をぐにゃぐにゃと溶かして、塗れる朱色にさえ鈍感になる頃には、力が加わる度に覚えていた背中の違和感すら別の何かに変質して仕舞っていた。天井を彩る花火が糸を引いて湖に溶けては消え、揺らめく波紋は新たな煌きを生み出している。
 所有権を繰り返し振り翳す唇が紡ぐ、愛してる、が代替可能の執着だと解っていても、その言葉にでも繋ぎ止められていなければもう、生きていない。

2008年07月22日(火)...浄化

 全部無かったことになれば、もう少しは生き易い気がした。言葉を交わす度に鬱積した苛立ちと後悔が眉間に皺を刻んでゆく。この窮屈な日常から抜け出せたなら、美しい世界の片鱗に住まうことが出来るのだろうか。

2008年07月17日(木)...面倒

 恍惚に染まった溜息が落ちてくる様子を、ただぼんやりと眺めている。エアコンの風が身体を冷やして、形骸化した儀式の終わりを誘っていた。

2008年07月14日(月)...後悔

 面倒が先に立って、閉塞した未来の前にしゃがみ込んだまま、考えることすら億劫になる。如何にでも為れ、が全てを押し流して、逃げ道だけがきらきらと刃を光らせていた。

2008年07月06日(日)...鋳型

 誰に同じ台詞を云わせても、同じ型に嵌めてみても、其れは紛いものでしかない。結局は不足を実感するだけ。

2008年07月05日(土)...継続

 結局は我慢という名の均衡が最大の術なのだろうか。不機嫌を飼い馴らす猶予が此処に存在するとは到底思えないのに。

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