2006年07月31日(月)...空色

 由の無い疲労に雁字搦めで、思考が傾倒してゆく。力を込める度にぴり、と引き攣る左腕に、もし、際限なく目覚める疑念を眠らす術を生まれ持っていたなら、もっと別の解決策を選び取っていただろう、そう思って少しだけ遣る瀬無くなった。

2006年07月30日(日)...慰み

 アルコールと、ラッキーストライクの苦い臭いが充満する部屋に、流れる聞き馴染みの無い流行りの音楽は酷く耳障りで、肩に回された腕の重みが後悔を掻き立てていた。セブンスターと同じくらい許せないその香りはじわじわと全身に浸透して、苛立ちを深めてゆく。
 午前2時を過ぎて騒がしさが減衰する頃には、人数が偶数等差的に減っていることは暗黙の了解で、マイクに通す声も切れ切れになって掠れている。何時の間にか切られたエアコンに便乗する様にして、床に零れたジュースを踏み付けてしゃがみ込むジーンズから覗く下着に、少しだけ嫌悪を覚えていた。

2006年07月27日(木)...嫌気

 全部、消えて仕舞えばいい、そう呪う様に願う。

2006年07月26日(水)...幻想

 あの頃の進路に道を戻せば、総てを贖い清算出来ると信じていた。擦り抜けていった幸福はもう取り戻せる筈もない場所へ流れ着いているのに。

2006年07月23日(日)...あの夏

 ナタデココジュースを飲んだ所為か、唐突に、昔通っていた学習塾の前に在った自動販売機を思い出した。気紛れなスーツ姿が、ご褒美、と投げて遣したジュースの、甘ったるい気だるい味がした。

2006年07月20日(木)...帰宅

 雨音で掻き消した溜息を踏み付けて、扉を開いた。

2006年07月16日(日)...言い訳

 此の侭雨が降り続いて、全てを覆い隠したまま世界を鎖してくれればいいのに、と思った。外された下着から滴り落ちる水滴が、安物のベッドカバーに点々と濃い染みを残す。新しく与えられた名前が何処かしっくりと心の中核に座して、呼ばれる度に破り捨てた現実は、此の天気の所為。

2006年07月14日(金)...嫌悪

 其のテーブルは何時の間にか海に溺れて、眼の前にはぱくぱくと水を食む魚が泳いでいた。貪欲にバクテリアを飲み込むその姿に、少し嫌気が差す。

2006年07月12日(水)...刹那主義

 とろん、とした納得の中で寛ぐ。瞬間を繋げ様とさえしなければ、不確かな何かは逃げてゆかない気がした。

2006年07月11日(火)...自己完結

 カーディガンが擦れてぴりぴりと引き攣る左腕が思考を前向きにしていた。事後の達成感と安堵が世界を満たして、幸福は他者に依存しなくとも存在するのかもしれない、と思う。

2006年07月10日(月)...情欲

 偽りの高揚に身を浸すことで、あの頃の躍動や活力を思い出せはしないかと試みて居たけれど、如何にも為らないところまで諦めた期待や思慕は手元に戻ることなく、さらさらと冷えた感傷が蓄積してゆくばかりだった。
 日に日にコントロールを失う感情は眠りを奪って、鋭利になった神経とぎしぎしと軋む身体をただ持て余している。

2006年07月09日(日)...惑い

 没頭する姿を幾度も盗み見てはひと段落を待ち受けるその、習慣はあの頃のまま何時からか此処に再現されている。もう少し待ってて、と苦笑混じりに告げられる度に鳩尾の辺りがぎゅ、と詰まった。狭いアパートの居間で、埃だらけのフローリングに転がる炬燵を囲んでいた日々が最近になって頻繁に頭を過ぎる。矢鱈とふわふわとした忙しなさで満たされた部屋は同じ空気で迫って、危うさを少しずつ抉じ開けてゆく。

2006年07月07日(金)...安らかに

 書き換えられた願いを笹に託して、そっと明日を思う。

2006年07月06日(木)...天を仰ぐ

 紫陽花色の空に向かって手を伸ばすビルは電飾を点して、今日の衰退を告げる。薄暗さは世間を覆って存在を隠すから堂々と顔を上げて歩いてゆける気がした。

2006年07月02日(日)...滅裂

 手を伸ばせば届くだろう距離にまで踏み込まれたことで、酷く神経を疲弊していた。其の遣り口に煽られた感情は収拾の付かないまま、疑念を喉奥へと捻じ込んでゆく。

2006年07月01日(土)...泥眠

 ただ、倖せになりたい、と思った。今は少し安息が欲しい。

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