舌の色はピンク
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2020年05月04日(月) 好物ベスト50[25-1]

25.オペラ
自作のオペラはクルミの風味たっぷりのケーキ。
スポンジ生地にもクルミペーストを溶き合わせ、焼き上がってからもクルミの糖衣がけを忍び込ませる。
チョコレートのグラサージュは難しくも楽しい作業。
つややかに仕上がれば美味しそうに見えるし、美味しそうに見えると美味しさが増す。


24.ビビンパ
一大アトラクション。
ほうれん草のナムル…さっと茹でて、すりおろしにんにく、ごま油、塩胡椒砂糖、醤油と混ぜ合わせる。
ぜんざいのナムル…さっと茹でて、塩胡椒、醤油と混ぜ合わせる。
人参のナムル…細切りにしておいて塩をなじませ、水分を絞り、すりおろしにんにく、醤油と混ぜ合わせる。
もやしのナムル…さっと茹でて、塩胡椒、ごま油、醤油ちょびっと混ぜ合わせる。
牛肉…焼いて、エバラ焼き肉のたれを絡める。または酒、塩胡椒砂糖、醤油。
キムチ…市販品を適量。
目玉焼き…ごま油で片面焼き。
この全てをドカッとのっけたビビンパを、我が家では茶目っ気込めてフルビビンパと呼ぶ習わし。
目ん玉飛び出るね。


23.ペペロンチーノ
ペペロンチーノは、こと自作にあたってはチャーハンと同じくらい、その極意についてみんな違うことをいう。
口をたがえぬのは乳化の重要性。
この乳化がうまくいけば、たしかにペペロンチーノは化ける。
あとは乳化のさせようだけれど、おすすめは麺をかなり早めに引き上げて、ニンニクオイルのフライパンへと、ゆで汁とともにぶち込んでしまうこと。
その状態で2〜4分、ちょいちょいゆで汁を加えながら強火で混ぜ合わせる。
これで世界が救える。
キャベツ、エビまで加えられたなら救世主街道まっしぐら。


22.グリーンカレー
東南アジアの味付けを不得手としていた身ながら、友人の弟がグリーンカレー専門店を開く縁からその味見をさせてもらったところ、これが現実離れした美味しさで、すっかり平伏してしまった。
以来、店でもレトルトでも食べるようになった。
レトルト品には大きめのタケノコをかるく茹でて足す。
店ではメニュー写真に赤色を含んでいないグリーンカレーを信用する。
しかしどうしたって、友人の弟のそれには及ばない。はやく開店しないかな。


21.バターチキンカレー
インドカレーは正直なところどこ入っても美味い。
正確にはほとんどがネパール人だとか聞くけれどインドカレー名乗ってるしインドカレー呼ばわりでいいと思う。
ナンも…ナンもどこで食べても、あーここのナン美味しい、ってなる。
マンゴーラッシーも…。
バターチキンカレーは自作しても美味しかった。
ただバターと生クリームの量に引いてしまった。菓子でもないのにこんなにって。



20.赤貝の握り
寿司で一番好きなのは赤貝で、赤貝の食べかたで一番好きなのは寿司。
ワサビ多めのリスキーさもいい演出となっている。
身体をこわばらせ、おれはこれから赤貝を口に入れるのだという真剣味を立ち上げさせてくる。
赤貝は鮮度による乱高下が激しい。
本当に美味しい赤貝はもうずっと食べてない気がする。
あの、歯と歯の間で踊りだす、滑らかな、この世で最も柔らかい骨のような甘い噛み応え。


19.アボカドチーズバーガー
邪教の宝物。
アメリカンバーガー専門で食べるアボカドチーズバーガーは一口頬張るたびに学力が落ちる。
それでも、悔しいけど美味い。エロ漫画か。
舌先の繊細さをフッ飛ばして、脳をダイレクトに刺激するあの感じ。
抗いたいのに抗えない。身も心も墜ちていく。エロ漫画か。
 

18.たぬきうどん
育ての親。たぬきうどんに育てられてきた。
産みの親は家を空けがちだった。
近所のうどん屋には裏口から出入りさせてもらっていた。
次第にその裏口は戸口ですらなく、単に設備と設備の隙間に過ぎないのだと合点してきた。
だんだんと正面口から入店するようになり、店の方々へも敬語で話すようになっていった。
育ての親。たぬきうどんに育てられてきた。


17.ズワイガニ
お酢に砂糖を溶いて、肉をさっと触れさせる。
これより美味しい食べ方はないんじゃないかと思う。
そしてあとは無言でしゃぶりつく。
蟹を食べるとき人は野生に還る。
人としての品格全部失って進化の舗装路から脱け出せる。
理性という理性をかなぐり捨てられる。
うっとうしい文明社会とお別れできる。
さようなら。
 

16.オニオングラタンスープ
がっついたら必ず火傷するのにがっつかずはいられない。
小さいころは、料理界の最高級品だと見なしていた。
実態が、玉ねぎスープにパンとチーズをのせて焼き上げたものと知ったときの衝撃たるや、もう学校辞めようかなと思った。
とはいえ作ってみるとうまくはいかない。
オニオンスープは玉ねぎを1時間かけてじっくり焦茶まで炒めれば美味しくなる。
コンソメを手間暇かけて調理すればいいのかもしれない。
しかしそんなにまでこだわる必要があるのかも疑わしい。
高級ホテルと、ビストロと、ファミレスとで、そんなに差を感じられないのがオニオングラタンスープの魔性。
というかきっとファミレスのオニオングラタンスープが親しみ深くて好きなのだ。


15.フォアグラのソテー
美食を追及していくにあたっての高級食材フォアグラでなく、庶民が凡俗の舌で味わえる高級食材フォアグラとして、愛好させてもらっている。
血の味はほどよく残っていてほしい。いけないことしてる気分にさせてほしい。
ソースにはこだわりすぎないでほしい。洒落っ気は控えてほしい。
フォアグラはその製法から、動物愛護の立場からの反対が年々高まっているそうだが、たしかにもうこの文化はついえても止む無しと思う。
だけれど流通している間は味わわせていただく。
背徳感と、背徳感ならではの快感にまみれて。


14.豚汁
ごま油をひき豚バラ肉を炒める方式ならわっかりやすく美味くなる。
だけれど野菜の味を堪能するなら肉の主張は抑えないといけない。
ここのバランスが難しい。
味噌の味も堪能したいし、しかし豚肉から出る脂っ気も欲しいは欲しい。
野菜の分量バランスだって難しい。
これらがすべて上手くいった豚汁は、単品で一食をまかなえる献立となる。
 

13.アサリの味噌汁
ネギは少なめに散らし、ご飯は熱々で、部屋は風通しをよく。
あぁ箸が使えてよかったと何者かに感謝したくなってくる。


12.ネギま
ネギまについては本当にバカで、店に迷惑もかかるだろうに、どかどか注文してしまう。
二十本くらいならぺろりといける。ただしタレは濃すぎていけない。塩でいきたい。
焼き鳥ならばぼんじりあたりも大好きだ。砂肝だって、シシトウだって好きだ。
ネギまがそれらの百倍好きなだけだ。


11.スコーン
スコーンはクロテッドクリームによって本性をあらわにする。
僕の知る限りもっとも美味しいクリーム。
紅茶専門店「G-cref」で出していたそれが絶品だったが、閉店して以来味わえていない。
自作しても類似品を買っても到底及ばない。
ただこういうのは思い出の中にとじこめておくのもいい気がする。


10.ガルグイユ[ル・ジャルダン・デ・サヴール]
フランスの有名店、ミシェル・ブラスのスペシャリテだとかいう温野菜のガルグイユを、日本では銀座のル・ジャルダン・デ・サヴーで味わえる。
お野菜を信仰していない人すべてに食してもらいたい。信仰しているひとにはさらなり。
自分で試してみたときには、野菜を別個に蒸していき、最後にバターと絡めた。
野菜の品種と鮮度にこだわればこだわっただけ、きっとバターに頼らずともよくなってくる。


9.もんじゃ
月に一度だけ会う父親は、毎回決まって、寿司の高級店か焼肉の高級店か、浅草のもんじゃ屋に連れて行ってくれた。
もんじゃ屋がいちばん好きだった。
今では小ぎれいな内装の、お好み焼き鉄板焼きのついでにもんじゃを出す店が増えた。そりゃあ、妥当だし必然だ。
でも僕は、もんじゃはちょっと小汚いくらいの店で食べたい。
換気がおっつかず煙は漂いがちで、いかにも昭和なビールのポスターが貼ってあり、視界をどこへやってもビール瓶のある、カウンターにしか椅子がない店…。
カウンターには小さいテレビが置いてあり、それをたまに見やるおっさんがタバコ片手にくたびれている。
店内の空気が悪い分、外へ出ると夜気が神妙にすがすがしい。
そういう店で食べるもんじゃが最高に美味しい。
 

8.ローストビーフサンド
これまでの価値観がひっくっりかえるようなローストビーフサンドをだすビストロがかつて中板橋にあった。
コンソメ、マスタード、スパイスが効いていたような気がする。
甘めの玉ねぎが挟まれていて、トーストはこんがり焼かれていた。
今はもう食べられない。
あれが食べられるなら1万円でも出したい。
自作のローストビーフは、「昨日何食べた?」で紹介されていたお手軽調理法を何度か試みたのみ。
あれで十分満足できるから他を試していない。
 

7.肉じゃが
おふくろの味とかほっとする味とかそういう以前にただそのものの味が好き。
ごま油で野菜と豚肉を炒め、めんつゆとみりんたっぷりで煮込む甘めの味が我が家流。
白たきに味が染み込んでほしいから、できれば数時間あるいは一晩置かせたい。
じゃがいもは煮崩れさせる。あいつは小粒にしておいて、勢力を抑えつけるくらいがちょうどいい。


6.担々麺[減来酒家]
この店の担々麺には山椒が利いていない。四川風が苦手なので助かる。
難点として、仕上がりにばらつきがある。
もう200回以上食べてきているから遠慮はしない。
5回に1回は、塩気がうすかったり麺がただれていたりする。するが、黙って食べる。
中華に安定感なんて求めてない。一定しない方が面白い。
自分で調理するときには、中華の美味い調味料片っぱしから入ってるなと毎回びっくりする。
スープは薄目に、ひき肉を濃い目の味付けにするのが好き。


8.オムライス
オムライスはあんなに工程が単純なのに調理人によって仕上がりが千差万別なのが面白い。
店で食べてもまるで違う。
西小山の杉山亭のオムライスが至高。
マッシュルームは多めで、鶏肉は大きめ、デミグラスソースは濃いめ。
自分でもまねてきているが全くままならない。
金と手間暇かければもっと美味しくなりもしようが、決め手は単純に調理技術なのだろう。
繰り返し作り続けて、何年後かに今より美味しくなってればいい。 


5.ピザ[ドミノデラックス]
味の隕石。
一口食べるたび思い出がひとつ失われるような暴力性。
窯であげたものよりも、ハチミツをたらした当世風のものよりも、どうしてもドミノピザのドミノデラックスが好き。
ただしコンディションに大いに左右される。
事前数時間のあいだに油っけのあるものをつまんでいたならピザ力は半減する。
外的環境、内的条件の一切が揃った状況で食べるピザのパワーはすさまじい。
だからピザの注文にあたっては、さながら降霊の儀式でも執り行うかの如く、正しくお迎えできるよう身辺を整えていく。


4.唐揚げ
両国にある定食屋、「きじま」の唐揚げは至妙の逸品。ほかに類似の唐揚げを知らない。
厚めの衣に、肉の繊維がしっかり歯に応える食感、下味のよく沁み込んだ…と思い出せもするものの、最後に食べてからもう20年ほどになる。
ふだん尋常の唐揚げを食べている分には、あぁ美味しいなで終わる。
上等の唐揚げを食べたとき、「きじま」の唐揚げを思い出す。あぁあの唐揚げは本当に美味かったなと。
唐揚げ好きには大抵、こうした最上の唐揚げの幻影があるんじゃなかろうか。
 

3.ショートケーキ
いろいろケーキつくれるようになったけど、つくれるようになる前と変わらずずっとショートケーキが好きすぎる。
自分で作る際には、スポンジ生地にはハチミツを加える。砂糖は上白糖。
そしてかくはんを念入りにというか執拗にしてみたら、焼き上がりが安定した。
生クリームがスポンジに馴染んだ「2日目のショートケーキ」は天上のおいしさ。
最近はさらにピスタチオクリームを塗ってみるなど試行してみてもいる。これもたまらない。


2.チンジャオロースー
八百屋で買える安いピーマン、国産でもない包装済のタケノコ、グラム100円の牛肉小間切れ、これで頭とろけてしまうのだから僕は安い男だ。
牛肉は醤油、塩胡椒砂糖、酒、ニンニク、ショウガで下味をつけておく。
肉の味を濃い目にしておけばそのぶんピーマンとタケノコの分量を増やせる。
チンジャオロースーのピーマンとタケノコは延々食べ続けていたい。
謝っても許してやらない。無言で食べ続ける。
無論、肉のやつだって逃がしたりはしない。そこにいたのか。観念しろ。
邪神になったつもりで皿をかきわけていく。
 

1.まぐろラーメン
環七沿い、板橋本町駅付近にある「元祖まぐろラーメン 本店」のまぐろラーメン。
ここより美味しいラーメンを知らないし、このラーメンに類似する味も知らない。
まぐろと言われてもよくわからない、魚介出汁とも動物系出汁とも違う、あっさりしているのにこく深い不可思議なスープ。
一口飲めば浮世の憂さも晴れるというもの。
映画館の企画で絶叫映画ってあるけど、もしこのラーメン屋で絶叫が許されるのなら、僕は獣の咆哮を東の月へ西の日へ北の空へ南の地へ放つだろう。


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欧風カレーを入れそびれていた。10位以内には入る。
神保町の「ボンディ」、荻窪の「トマト」のが好きで、自作なら果物にこだわる。
ほか、好きな飲食物を以下に羅列。
バターナッツのグラタン、クリームニョッキ、さつま揚げ、ふろふき大根、豚しゃぶ、カレイのムニエル、鰤大根、鰤しゃぶ、マッサマンカレー、アーモンドトースト、エビチリ、キンメダイの煮つけ、じどっこ、生クリームチョコバナナクレープ、ビーフジャーキー(天狗の)、タピオカミルクティー、ロイヤルミルクティー、カフェオレ、梨、桃、みかん、冷やし中華、油淋鶏、ラタトゥイユ、焼き立てフィナンシェ、抹茶パフェ、シュークリーム、ベリーとカスタードのタルト、フォレノワール、和風ハンバーグ、たくあん、小松菜の煮びたし、茄子の揚げびたし、蕪、菜の花、ほうれん草、ズッキーニ、葱全般、アスパラガス、柚子、マッシュルーム、舞茸、書ききれるわけがないな


2020年05月03日(日) 好物ベスト50[50-26]

めっきり外食しないし人さまに誇れるような食嗜好でもないけれど、
食嗜好なんざ人に誇るもんでもあるまいと開き直り。
一度しか食べたことのないごちそうなどは省いてます。


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50.ポテトチップス[湖池屋のり塩味]
ポテトチップスといえば湖池屋のり塩味に限る。
塩が違う。こんなに美味しいしょっぱみがあっていいものか。
スナック菓子をほぼ食べなくなった今でも、このポテトチップスだけは別格。


49.チヂミ
具はニラのみに限る。そのぶん生地は薄めで、しっとりさせつつ片面だけパリッと焼き上げたい。
タレは醤油をベースに、長ネギのみじん切り、鷹の爪みじん切り、にんにくチューブ少々、砂糖少々、ごま油一たらしして、1時間以上寝かせたもので決まり。


48.ホットドッグ
秋葉原のなんとかいうカフェのホットドッグが異様に美味い。
パンもソーセージもやら美味い。
秋葉原へ行く用事のあるときに、面倒だなあと二の足を踏んでも、そうだあのホットドッグが食べれる、と思えば動き出せた。


47.卵マヨトースト
食パンの四辺にマヨネーズの結界を張り、中央へ生卵をひたらせてやる。
マヨネーズに焦げ目がつくくらい入念に焼き上げたら、ブラックペッパーをふりかける。
たったこれだけなのに、トーストものでは随一に好き。
これ以外ではほぼマヨネーズを調理に使わないにも関わらず、これを好むあまり、そこそこマヨネーズは消費してしまう。
 

46.カロリーメイト フルーツ味
小学校3年生のときに初めて食べて、この世にこんな美味しいものがあるのかと感動した。
以後、少ない小遣いでちまちま買った。この習慣は今もうっすら続いている。
カロリーメイトはフルーツ味しか食べない。この味を認めない人を僕はメイトとは見なさない。
とはいえどこがフルーツ味なんだよとは長らく不思議だった。
その謎が解けたのは去年のこと。
ドライフルーツたっぷりの焼き菓子を作ってみたら、かなりカロリーメイトの味に近かった。
おどろき。カロリーメイトは焼き菓子だったのだ。


45.さくらんぼ
果物単品では一番好き。
多くの人がそうであるように無限に食べられる。
高級品でなくとも値段を前に渋ってしまい、なかなか買えないのが惜しい。
そのためいっそう値打ちが高まりもする。
もらって嬉しい果物第一位でもある。もらったことないけど。


44.秋刀魚の塩焼き
大根おろしにポン酢を浸し、炊きたての白米、ワカメの味噌汁とともにいただきたい。
秋刀魚を食べたい気分と、良い米良い味噌汁が揃ったなら、順位はぐんと上がる。 


43.マルコポーロ[マリアージュフレール]
一人暮らしを始めたころ紅茶にはまった。
かっこつけではない、とする立派な理論武装とその証左を当時は備えていたはずだけれど、今思い返すと、かっこつけだったとしか思えない。
「美味しい紅茶協会」認定の紅茶専門店を次々まわったりした。
マリアージュフレールには月に一度は寄って、茶葉や菓子を買っていた。
マルコポーロはほとんど唯一好きといえるフレーバーティー。
なんの香りなんだか、何度飲んでもわからない。
今では成城石井などにも置いてるし、すっかり買い求めやすい。
冬になると飲みたくなる。


42.たこ焼き
真冬の英雄。
そもそも蛸が好き。
しかし蛸を好む人間が果たしてこんな食べ物を開発できるものなのか。
改めて鑑みれば、ちょっと馬鹿にしてるみたいな食べ方だ。
あんなちっちゃく刻んで、どろどろの小麦粉液にとじこめてしまって。
あとたこ焼きは美味しさのみならず、幸福指数が高い。
たこ焼きを食べようと思い立ったときはいつも幸福な心境だったし、たこ焼きを食べている時間はいつも幸福な状況のさなかにあった。
思い返してみてほしい。ほら、そうでしょう?
 
 

41.中華粥[減来酒家]
神保町の「減来酒家」で中華粥を食べて、滋味ってこういうことなのね、と得心できた。
薬効臭い漢方っ気はなく、油っ気もなく、おおらかな味わい。
とりわけ鶏と葱による中華粥がたまらない。
鶏のいいところと葱のいいところがよく表れ、互いに仲良くしている。
平和を感じる。


40.カツ丼
はじめにカツ丼に三つ葉を乗せたひと天才ですよね。
カツ丼はこう…どんぶりを抱き寄せて、箸をいつもより数冀擦持って、ガッガッガッとかきこむのが一番うまいのは定説。
いうなれば品を失えば失うほど美味く食べられる。
そこへきて三つ葉だ。
あの繊細な置物ひとつで、カツ丼に社会性というか、恥じらいのようなものが付与されることとなる。
だからこそ食べ手の蛮力が引き立つ。
三つ葉を乗せた人はまごうことなき天才。味も良くなるしね。


39.生春巻き
エビの代わりに蒸した鶏むね肉を挟んでも美味しいし、いっそう健康食となる。
スイートチリソースは健康に悪い味がする。
健康に悪い味は美味しいからしかたない。
 

38.カレーうどん
カレーうどんだ。
寒い日にはカレーうどん。
暑い日にもカレーうどんだ。
よいことした日にはカレーうどん。
悪いことした日にもカレーうどんだ。
ネギはどっさり。
刻み生姜もたっぷり。
ごたくはいい。
カレーうどんだ。

 
37.アジの梅肉ちらし
アジをおろしてタタキにして、刻みネギ、梅肉とともに酢飯と和える。塩で味をととのえる。刻みのりを散らす。
めちゃんこ美味しい。
ただし塩加減は難しい。
梅肉が多ければ要らない気もする。僕は梅肉を控えめにしたいから塩を足す。その匙加減がなかなか決まらない。
必然、味見を繰り返すこととなる。この味見が至福。幸福の着服。したがって調理自体も楽しい。
 

36.レキュルイユ
ナッツのムース。
札幌のケーキ屋さんで食べて感動した。
家に帰ってからオリジナルでできないものかと試行錯誤。
ナッツだけでは売り物の味に遠く及ばないため、味を加えていくことにした。
僕のオリジナルとしては、ヘーゼルナッツとアーモンドのムースに、紅茶とガナッシュのムースを重ねる。
飾りを兼ねたアクセントとして、オレンジのピールをのっける。
ただし、ムースのまろやかさが決め手のケーキではあるから、アクセントは要らないかもしれない。


35.ブータンノワール
豚の血と脂による腸詰。
あるフレンチのコースでアペタイザーに出てきたのが出会い。
美味しさに感動してギャルソンの方に詳細をたずね、追加の注文がかなうか確認してみたところ、できるという。
一皿50円で。
桁を間違ているとしか思えなかったが本当に50円だった。
今考えてもおかしい値段設定。
ただその後ブータンノワールは、衛生上の問題だとかで輸入が厳しくなり、店で見かけなくなってしまった。
が、2020年現在また制限が緩和されたようで、今度は手ずから缶詰を購入してみようと思う。
 

34.ウールガイ
中東料理。スパイスを効かせた大根のピクルス。
大根を半透明になるまで揚げ焼きして、クミン、ターメリック、パプリカパウダー、すりおろしにんにく、練り生姜、マスタード、塩、レモン汁と和える。
これだけでも強力な白米のお供となる。そこへきてイクラと刻みのりを乗せて丼ぶりにしてしまえば、喘がずには食せない。


33.馬刺し
馬肉はさしたる工夫もなく生姜醤油でいただきたい。
あのとろけっぷりは融点の低さによるものらしい。
それを知って以来、口内で馬肉に何が起きているかを想像しながら食べるようになった。
専門店などではいろいろの部位を食べさせてくれるけれど、なんだかんだで、そこらの居酒屋メニューの「馬刺し」が気負わずいっちゃん美味しく食べられる気がする。
ところで口内の温度に個人差があったとして、それが高い人ならばより多くの肉の脂をとろけて感じられるものなのだろうか。
 

32.真鯛の刺身
薄切りにした玉ねぎを塩揉みして、真鯛の刺身ともみじおろしをのっけて、万能ねぎを散らし、ポン酢をかける。
これがいっとう好き。
もちろん醤油で食べるのも好きだし、オリーブオイルでカルパッチョにしてもいい。
マグロの赤身も大好きだけれど、真鯛はとにかく優秀。
 

31.キッコーマンの醤油せんべい
幼いころ、吝嗇家の長兄が小遣いを懸命に貯めて、年に一度ほどのペースでこの醤油せんべいを買っていた。
段ボール詰めで届くとはいえ5000円したのだから、よく中学生だか高校生の身分で購入していたものだと今思い返しても感心する。
さすがに独り占めしたかったらしく、兄は毎度このせんべいを、狭い家のいずこかに巧妙に隠していた。
僕はよく兄の留守を見計らい、探し出してはくすねていた。
たっぷり染み込まれた醤油はところどころ焦げ気味で、せんべいは顎が外れるほど硬かった。
今はもう売っていないようだ。
キッコーマンの工場まで行ってしまえばあるのかもしれない。


30.筑前煮
筑前煮は椎茸が主役。
大ぶりの高級どんこを惜しみなくつかって、出汁を頂戴する。
そしてにんじん、ごぼう、タケノコ、鶏肉からでた出汁を椎茸が吸収する好循環。
椎茸の正体はスープなのだなあとほれぼれする。
 

29.ハヤシライス
ハヤシライスは高級であってほしくない。
いちど高名な洋食屋で食べたところ赤ワインの風味が強すぎて、これならビーフシチューでいいじゃないかと鼻白んでしまった。
これまでを振り返ると阿佐ヶ谷の喫茶店、対山館でいただくハヤシライスが一番美味しかった。
珈琲の香りが立ち込める店内という環境がいっそうハヤシライスを美味しくしていたのだと思う。


28.味噌ラーメン
味噌ラーメンにコーンとバターを泳がせる流儀には長年反感があったものの、札幌の味噌ラーメン専門店で食して合点がいった。
以来、自宅でやる味噌ラーメンにもコーンとバターが欠かせなくなってしまった。
でなければ辛くする。
寒い時期にラーメン屋に入れば、そのつもりがなくても辛味噌ラーメンを頼んでしまうのが人情というものだ。


27.ぶっかけ
夏の正解。
めんつゆに醤油一たらし、練り生姜を溶いて、麺をすわらせ、天かすと刻んだ万能葱を散らす。
大根おろし、酢だち、小松菜まで添えられたなら、夏よ、おお夏よ、これがお前への答えだ。


26.プラムのタルト
見た目地味だし味だって複雑じゃない。
素朴といえば素朴。だが基礎能力値の高さに恐れ入る。
酸味の価値がよくわかる。
自作時、タルト生地にもダマンド生地にもアーモンドプードルはたっぷりと。
プラムは皮を下にして敷くと生地に果汁が染み込みすぎず、また焼成時には果肉の水分が適度に蒸発して旨味が増す。


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次の記事へ続きます。


2020年05月02日(土) その他好きなもの-2

武士道[新渡戸稲造][一般書籍]

「武士道は、語られず、書かれてもいない掟でありながら、それだけにいっそう武士たちの内面に刻み込まれ、強い行動規範として彼らを拘束した。それは、有能な者の頭脳が作り出したものでもなければ、有名な人物の生涯にもとづくものでもない。数十年、数百年におよぶ武士たちの生き方から自然に発達してきたものである。」

新渡戸稲造の名著。
意外と本の厚みはなく、また現代語訳版は読みやすい。
この一本気なタイトルからは、旧来のがちがち日本思想が想起されるかもしれない。というか僕はそうだった。
が実際には、この本は新渡戸稲造がアメリカにいながら英語で執筆したもので、向こうの人間を正面きって相手取っただけあって、欧米人に馴染み深いはずの文学者や哲学者がバンバン引き合いに出されている。数多の引用も文章中の補語として登場させるなどスマートであるし、極めて理知的で現代的。欧米諸国でベストセラーになったことも実感として頷ける。旧来の日本思想を称えてはいても、それが論拠の希薄な牽強付会に陥らず、多角的な観点をもってして比較検討の上で主張しているのだと呑み込める。
なんどでも読みたい枕頭の書。

武士道における美徳の神髄、生き様の心得を、これほど簡潔に、力強く、誇らしげに語ってもらえると、なんと武士とは素晴らしいものなのかと心服したくもなってくる。まったく目次を眺めるで読みたい項目ばかりで、本文はさらに面白く、読み終えてなお精神に居つく影があり、読んでよかったと心から思える。外国から見た武士道なんて本来なら得体のしれない価値観をものの見事に整序しきっている手並みも心地いい。(読み終えた当時の感想より)




テクノヘゲモニー[薬師寺泰蔵][一般書籍]

「当時、青銅器の大型大砲製造技術は、伝統的にイタリア人が握っていた。そして、同じハプスブルグ家統治下のドイツやローカントリーもその技術を学び、質の高い大砲を生産していた。なぜイタリア人が青銅鋳造技術を独占していたのかといえば、それは、長らく協会の鐘を作り慣れていたからである。」

技術力がいかに国家における覇権を揺り動かしてきたかという見地から世界史を紐解こうとする新書。
ここでは、国家や権力者が必ずしも歴史の主語にはならない。
職人だったり、市井の人が、歴史の流れをかたどっている。だから歴史に息遣いを感じることができる。
よく、世界史の教科書は無味乾燥だといわれる。完全に同意見だ。
興味をもちたいならば別口のアプローチをすべきなはずで、僕にはこの本がぴったりだった。




男と女の家[宮脇檀][一般書籍]

「パリの市民はそれぐらい街の中に住んでいる。つまり囲まれている人間だという意識が強かったんですね。これはパリだけでなく、城壁を持ったヨーロッパの都市に共通することです。そのように部屋のインテリアも家も街も容器である。ですから、家は女性定冠詞がついたラ・メゾン、ラ・カサ、家は女だということになるわけです。」

建築家として第一線で活躍されてきた宮脇檀さんが晩年、"男"と"女"と"男と女"を基点に建築の話をとりまとめてくれたエッセイ仕立ての本。
二十年以上前の本ながら、男女論が激している現在でも十二分に読み応えがある。
男にも女にも厳しく、男にも女にも優しい。

写本したくなるほどの面白さ。上っ面の教養ではなく、知見と知識がしっかり噛み合った見識、見識と意識がしっかり噛み合った意見、それらと一体化している肉厚な教養を感じた。建築にまつわる挿話を男女論に絡めて述しているわけだけれど、建築にも男女論にも一切興味なくたって面白がれる、そういう開かれた内容になっている。読めば教養が身につくってわけじゃない。ただ、読むと教養の価値を実体験できる。(読み終えた当時の感想より)




陰翳礼讃[随筆][谷崎潤一郎][随筆]

「私は、吸い物椀を前にして、椀が微かに耳の奥へ沁むようにジイと鳴っている、あの遠い虫の音のようなおとを聴きつつこれから食べる物の味わいに思いをひそめる時、いつも自分が三昧境に惹き入れられるのを覚える。」

谷崎潤一郎が建築や小道具や何気ない生活様式に潜んだ陰影にまつわる美を語る。
誰しもに見落とされてしまいそうな薄弱な美をすくいとる手並たるやあざやか。
なにより文章が美しい。ぞんぶん、うっとりできる。

ふつう自分が感じていることの掌握すらままならないのに、この人ときたらそれをしっかと掴まえて過不足なく文章化するのみならず、あろうことか他人に伝達させる…どころか感得させてしまうのだから圧巻だ。自我と世界とが言語によってもののみごとに交通している。話の一つ一つも面白すぎる。この本は面白すぎる。いくらなんでも面白すぎる。どうにかなってしまいそう。(読み終えた当時の感想より武士道[新渡戸稲造][一般書籍]




枕草子[古典随筆]

「人はなほ、暁の有様こそ、をかしうもあるべけれ。」

才女のくせしておめでたい気取り屋のおちゃっぴいおきゃんで有名な清少納言。
彼女が才色兼備のお后様、中宮定子に仕えたのは七年間あまり、そのうち栄華を誇っていたのは一年半程度。
あとはあまりに不遇な時期が続く。
しかし枕草子には、ちいとも暗い重い悲しい話は出てこない。驚くほど明るくきゃぴきゃぴした日常観に終始している。
ひたすらに枕草子へ明るい話題しか持ち込まなかった清少納言の腹づもり、その決意、気高さを想うと、僕はいつでも涙がでる。
こんなに強い人はいない 高校の時分、そんな清少納言にずいぶん惚れ込んで、以来私淑のつもりで彼女の高潔さにあやからせてもらった。
僕は今でも彼女が大好きだ。




フェルマーの最終定理[サイモン・シン][ノンフィクション]

「フェルマーの最終定理をめぐる物語は、数学の歴史と分かち難くからみ合い、数論の主要なテーマはすべてこれにかかわっている。この物語は、数学を前進させるものは何かという問題、そして、数学者を奮い立たせるものは何かという、おそらくはいっそう重要な問題に対して比類のない洞察を与えてくれる。数学界の偉大な英雄たちを一人残らず巻き込んで展開する、勇気、不正、ずるさ、そして悲しみに彩られた魅力あふれる冒険物語--その中心にあるのが、フェルマーの最終定理なのである。」

堅苦しい数学の教本ではなく、これはドキュメンタリー。
古くはピタゴラスの時代から数学者の足取りを追っていった末に、いかにしてあの"フェルマーの最終定理"が解かれるかを、スリリングに書き記している。
それまでは数学に馴染みがなかったという著者だからこそ、数学および数学者が、知ればどれだけ魅力的であるかを説く文章には得心できるものがある。




宇宙 日本 世田谷[FISHMANS][CDアルバム]


これさえあればもう何もいらないというような酩酊感、夢見心地へいざなってくれるドラッグ的なアルバム。
夜中に暗い部屋で聴き入るのがいちばん。
何もせず、できれば何にも考えず、ただその音楽に身も心も預けてしまえば、浮世の憂いから解き放たれることうけあい。世捨人のできあがり。




Drop your vivid colors[Louminas Orange][CDアルバム]

試聴

シューゲイザーに溺れるきっかけとなった思い入れ深いアルバム。
アルバム名がかっこよすぎる…。
5月の晴れた昼下がりに、窓を開け放った部屋のソファに腰かけて大音量でこれを流すと脳内麻薬がじゃぶじゃぶ出る。
ルミナスオレンジといえば昔、中心人物の竹内さんソロのライブを、原宿のマンションの一室みたいなところで堪能させてもらった。これは夢のような時間だった。このときは轟音でなく静かめなアコースティック。複雑怪奇な音の洪水ばかりでなく、しっとり聴かせてくれる美しい曲が多いのもルミナスオレンジの強み。




NUM-HEAVIMETALLIC[NUMBER GIRL][CDアルバム]

わが青春。
聴くと若返る気がする。
いつか耳が肥えたり精神が成熟したりしてこのアルバムに魅力も感じなくなるんだろう、などと不安をもった時期もあったものの、いっこうにその気配はなく、聴いて興奮するたんび、安心もする。
これで興奮できないくらいなら大人にならないでいい。くたばる。




MAD TAPE[その他]

youtube

ニコニコ動画などで知られるようになった「MAD動画」は映像と音だけど、こちらは音だけのMAD。
というかこの手のMADの系譜の原点とされるようだ。
80年代に出回った、アニメや特撮の音声部分をたくみに編集して笑えるネタに仕立てたカセットテープ。
僕は幼少期、所持していた兄に聞かせてまた聞かせとせがんでは、笑いすぎて呼吸困難になっていた。
いま聞いても笑える。力づくでもあるし、なにやら得体のしれない知性も感じる…。




邯鄲の歩み[中国故事]




むかしむかし、ある田舎の若人が、邯鄲という都に憧れをもっていた。
邯鄲の人たちは歩き方まで洒落ているとの噂だ。
その歩き方をまねて自分も都人となるのだと、若人は故郷を捨て旅へ出た。
果たして若人は邯鄲に辿り着き、そして故郷に帰ってきた。
結局都人のその歩き方など会得できなかった。
それどころか、故郷にいたころの歩き方まで忘れてしまった。
帰り道は地を這って帰ってきたのだった…。
たしかこんな話だった。「荘子」に収められた話のようだ。
よくできている。教訓を抜きにしても話として面白く、そしておそろしい。
まだ幼いころに知った話だが、当時の時点で、なんだか身に覚えがある話だと急所を突かれた気がした。




電人ザボーガー[特撮]




ザボーガーはろくに苦戦しない。
だいたい、圧倒的なパワーで敵に楽勝する。
あまつさえ楽勝したあとに追い打ちまでかける始末。
その容赦ない残虐なヒーロー像に、自分の中の俗な部分の欲求がたいへん満たされる。
あと敵役にあたる悪之宮博士の可愛さったらない。
全然あくどいこと企んでるように見えない。サークル活動してるみたい。




[フェリックス・ヴァロットン][西洋画]




ひと目見て、目線が縛られた。見ているとひたすら不安に駆られる。
空間の表現、立体法に仕掛けがあるらしい。理論は呑み込める気がする。
もちろん仕組みなど謎めいたままでいい。
こちらはよくわからない不安に駆られたくて眺めるんだから。




赤いカーペットの少女[西洋画]




これも、見れば見るほどひたすら不安になる。
そして見れば見るほどこの世界に惹き込まれ、引きずり込まれるような心地にも浸れる。




桜花返咲図扇面[鈴木其一][日本画]




うつくしい…。
ただ単に美しい。
芸術への向き合い方の一つとして、見惚れるだけでもいいのだなと体感できた作品。
これを鑑賞した当時は精神が摩耗しきっていた頃合いで、この一枚にどれだけ救われたかしれない。
うつくしさには精神を浄化させる力があるのだと思い知った。


隅田川[作者不詳]
府中美術館の企画展で偶然見かけた一枚。
作者もわからず、またありふれた題だから検索もかなわない。
本当にこの題だったかも疑わしい。
静岡のどこぞの美術館所蔵と記載されていた気がする。



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このページは今後も更新していこうと思う。
…のだけども、記事作成エディタの仕様がおぼつかずまともなレイアウトにならないので、あきらめてしまうやも。


2020年05月01日(金) その他好きなもの-1

1ジャンルにつき3作品くらいまで。順位付けなし。


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笑ゥせえるすまん[藤子・F・不二夫原作][TVアニメ]




こいつは本当に怖い。
僕が最も印象深いのはエンディングで、牧歌的な曲が流れるなか、喪黒福造があの特徴的な歩き方でのんびり平野を歩いていく映像にじっとり恐怖した。
”本編であんなに恐ろしい話が繰り広げられていたのに、こいつにとってあれは取るに足らない茶飯事なのか”と思わせるほど日常さに。
子供のころにたくさんのトラウマを植え付けられた作品。
でも子供にトラウマを残す作品には一定の価値がある…。




輪るピングドラム[幾原邦彦原案][TVアニメ]




傑作揃いの幾原監督作品からは「少女革命ウテナ」とどちらにするか悩んだ。
どちらも、脳内麻薬をジャブジャブ出させてくれる映像の面白さが魅力だ。
「輪るピングドラム」は2クールでキチッとまとまってるのと、最終話が感動的過ぎた。
最終話までに散りばめられた、到底回収しきれるとは思えなかった布石の数々を、その一瞬で全て決着させる”物語の答え”としての決定的一言があり、これに深く感動した。




機動戦士Zガンダム[TVアニメ]




ガンダムは、それを知らない人へは”ニュータイプ”の説明を軸にするべきと信じている。
…そう遠くないであろう未来、人口の増えすぎた人類は宇宙にスペースコロニーと呼ばれる住環境を造営し、おおよそ全人口の半数がここへ移住することとなった。すると地球から離れた環境で過ごし始めた人類の一部に、これまで閉ざされていた新たなる感覚が覚醒した、という説が現れた。ときのスペースコロニー運営者は、これを”ニュータイプ”と呼称し、人類の進化系であると自説を唱え、地球に居残るものたちは旧い人類、”オールドタイプ”であると差別し、地球の文化圏から独立するため”ジオン公国”を宣言する。こうして起こった戦争下で、スペースノイドの一人であるアムロ・レイが、成り行き上戦火に身を投じていくなかで、ニュータイプとして覚醒していく…。
ニュータイプには多義的な解釈があり、ファンはおとか原作者である富野由悠季すらこれという答えを出していないが、大雑把に言えば「極端に高められた情報処理能力による、高精度の直感力、洞察力」と僕は捉えている。話の上では、やってることは戦争なので、これが戦闘能力に直結する(攻撃があちらからくるぞ、なんだか嫌な予感がするぞ、こっちにライフルを撃てば当たる気がするぞ)。ところが、ひとたび戦闘を離れると、ニュータイプの能力の真価は”相互理解”にこそ表れることがわかる。高度なニュータイプ同士であれば、精神が溶け合ったかのような感覚も共有することとなる。
…以上はかなり乱暴なまとめ方ではあるものの、最低限の説明にはなっているはずだ。
これが「機動戦士ガンダム」の世界観の前提。
そして、「Zガンダム」はその応用編にあたる。ニュータイプが否定的に描かれだすのが「Zガンダム」。
無印よりも人間関係が複雑で楽しい。




けいおん劇場版[京都アニメーション][アニメ映画]




けいおんはTVシリーズより先にこの劇場版から入った。
ろくに知らない彼女たちがきゃっきゃと楽しそうに動く仕草に話す笑顔に歌う声に演奏する姿に涙してしまった。
彼女たちが楽しそうなだけ、可愛いだけなら、ここまで名作扱いはされていないだろうが、しかしまた彼女たちが楽しそうだ、可愛い、と思わせるための仕掛けが、質も量もハンパじゃない。
多くの人が褒めそやすのに同じく、僕もまた、この映画の何気ない表現の数々に強く惹かれる。
飛行機のシーンだけでどれだけの創意が詰め込まれていることか。




ガールズ&パンツァー劇場版[アニメ映画]




戦車バーンバーンバーン!
なんて楽しいんだろう。
戦車バーン!を一切邪魔立てしない、無駄のないプロット。
無駄はないけど隙間はある。その隙間にはキャラクターを愛せる遊び心が盛りだくさん。
萌えるとかうっとりするとかでなく、みんないい子でエールを送りたくなる感じ。
僕にガルパンを薦めてくれた友達は「何度見ても手に汗握るんだよ。どっちが勝つんだろう、今度こそ負けちゃうんじゃないか…ってハラハラする」と言っていて、狂ってんじゃねーのかと当時は笑ったけども、見てみるとたしかにその感覚を味わえた。
そしてエンディングで泣く。
ねばちっこさのないさわやかな感動で、心が洗われる。




魔女の宅急便[スタジオジブリ][アニメ映画]




なんど見てもクライマックスで泣く。泣いてばっかりだな。
この物語に冒険はなく(となりのトトロにすらあるのに!)、人との交わりによる小さな物語の積み重ねであのラストへ辿り着くわけで、その営みの連続に泣けてしまう。
今更わざわざ言うまでもないがアニメーションもキレまくってる。
僕が好きなのはやはりクライマックスの、キキが風に耐えながら箒飛行する際の揺れ動き。
「箒で空を飛ぶ」感覚なんかこちらは知らないはずなのに、ありあり肌感覚で伝わってくる。
なんであんな表現が可能なのやら、全然わからない。




AIR[エロゲ]




実はエロゲだけでベスト50もまとめてある。
たださすがに厳選されきった50作とまではならず、すべてを誉めそやしっぱなしではいられないから、ぼつにした。
とはいえ上位十作ともなれば激戦。神がかったシナリオ作品ばかりが並んだ。
AIRはそのランキングで一位に置かせてもらった。一位の格に相応しいのはAIRしかなかった。
要素を分割して評価するわけにもいかない、全てが一体化した名作中の名作。
この作品が産み出されたこと自体が一つの奇跡。
お涙ちょうだいのドラマ部分もアリだけれど、核心はテーマをえぐりだすための物語構造、たくみな仕掛けにある。
批評家東浩紀がいうところの「父の不在」。
父になれないプレイヤーという、断絶の哲学。
この作品は当時、エヴァでアレルギーになったのか一部のファンから、作中で答えを出さ投げっぱなしのシナリオは云々とたくさん批判されていた。
答えをシナリオの中にばかり求めるからそうなる。
シナリオの外にも批評眼を仕向けてみるメタフィクションの味わい方が広まるにつれ世間にも再評価され、今では名ばかりでなく確かな名作扱いされていることを嬉しく思う。




素晴らしき日々〜不連続存在〜[エロゲ]




エロゲ史に君臨する快作。
西洋哲学、純文学、純愛、ラブコメ、自殺、いじめ、ドラッグ、復讐劇、電波、格闘、心理学、宗教、怪奇、ミステリー、ホラー、グロ、…などなどあらゆる要素をぶち込みながら、「"私"とは何か?」というテーマにシナリオが収束していく。
ヴィトゲンシュタインの思想が下敷きにあり、プレイ前にはやれ難解だとかやれワケワカランといった評判を多く耳にしていた。
がプレイしてみれば、単純にシナリオ展開がたいへんに面白い。
学校内の一つの事件をめぐって多数の視点から真相を紐解いていくその手並みの鮮やかさに血湧き肉躍る。
確実に他のメディアでは実現できない、エロゲだからこそなしえた完成度、比べ得るもののない名作ぶり。
ただ絵があまりにも往年の美少女絵という感じで、それに慣れた身にすらちょっと難がある。
だからといって敬遠するのはあまりにもったいない。
話もプレイし始めてから5時間ほどはかなり冗長で苦痛。
だからといって諦めるのはあまりにもったいない。
中盤からの物語の大回転を多くの人に体感してほしい。




装甲悪鬼村正[エロゲ]




最強のエロゲ。
善と悪とをテーマとして、それを延々、徹底的に突き詰めるシナリオ…というと堅苦しいが、題材としては架空戦記もので、極上のエンタメ作品に仕上がっている。
メーカーはニトロプラス。今となっては「まどマギ」や「Fate/ZERO」で有名になった虚淵玄をキーパーソンとしている、熱い男気と鬱展開が得意な会社だが、その10周年記念として企画された本作は、熱さも重苦しさも他に例を観ない。
立役者であるシナリオライターの奈良原一徹はもともと剣術道場の師範だとかで、それだけに作中剣を扱うシーンでは長々と本格の講釈が入るなども楽しい。
エロ要素はほぼ皆無で、いわゆるエロゲっぽくないエロゲでありつつ、エロゲだからこそ仕上がったと言える作品。
18禁であるがゆえに描写や展開にブレーキをかけず突っ走れるわけだ。
アニメ、漫画、映画、いずれもこの作品の媒体には適さない。
そもそもプレイ時間が60時間に達する大ボリューム。
小説を除く他のいかなる媒体でも、このボリュームを完成された書下ろし作品としては世に出せないだろう。
これはエロゲの大きな魅力の一つ。
漫画ではどんな大長編も連載中に軌道修正されていってしまい、なかなか一筋にまとまったストーリー展開が結末へ着地とはいかないところを、エロゲはやってのけてくれるわけだ。
またシナリオだけでなくCG、音楽、演出など、全てにおいて製作した人たちの本気を実感できる大作でもある。
プロすげーなと痛感させられる。




古賀[松本人志][コント]




松本人志の笑いの核心のいくつかが凝縮されたコント。
大きな笑いのあるコントでなく、特異な空気感にずっとニヤニヤさせられる。
男友達同士に特有の”なんか嫌ぁな空気”が見せ場。
古賀という男に仮託された男性像は、ひょっとすると自分にもあるのかもしれない。
この人間像を抽出できるって、つくづく松本人志はすごい。




とかげのおっさん[松本人志][コント]




これもまた、松本人志の笑いの核心のいくつかが凝縮されたロングコント。
松本人志扮する半獣人の"とかげのおっさん"と浜田雅功扮する子供との二人芝居。
設定だけ決め合ってからはほぼアドリブという、ダウンタウンらしい一回性が持ち味の演劇。
途中途中、松本人志が"とかげのおっさん"というキャラクターに見事に入り込んでるのがよくわかる。
当人もたしか、「これ以上入り込むと帰ってこれなくなる」みたいな感覚に何度かおちいったと述懐していた。
だから熱演という感じではない。本当に"とかげのおっさん"という存在があるような目で見てしまえる。
哀愁が漂うどころではない。哀愁に圧しつぶされる。




働くおっさん人形[テレビ番組]




これも松本人志。
芸能人でない一般人の、どこにでもいそうな冴えないおっさんに、ただひたすら松本人志がインタビュー形式で質問を重ねていく。
おっさんは応答のなかで、自分をよく見せるためかしょうもない嘘をついたりする。
それを松本人志がつつく。嘘というほどでなくとも、発言に隙があったらば見逃さない。意地悪く、追い詰めていく。
その突き放した距離感が最高だった。
次シリーズにあたる「働くおっさん劇場」では、出演陣のおっさんたちをキャラクター化して松本人志がちょっと仲良くなってしまっていたから、かなりがっかりだった。
ただ仕方ないかもしれない。
「働くおっさん人形」は、あまりにもコミュニケーションの怖ろしさを映ししまっていたから。




ブレイキングバッド[海外TVドラマ]




癌を宣告された化学教師が、教え子の悪ガキとともに麻薬製造に手を染める…
一級品のエンターテインメント。
ハリウッドに代表される娯楽性から一歩二歩進んだ、現代アメリカ作品の旨味が凝縮されたような。
脚本が秀抜。登場人物にも視聴者にも容赦しない。
最悪だなあ、という状況から更に最悪さを突き詰めていく胃痛展開。
話がセオリーな進展をしない。
見覚えあるシルエットのパズルが、見慣れない手順で、異形のピースによって組み立てられていく。




ファイナルファンタジータクティクス[スクウェア][シミュレーションRPG]




シミュレーションRPGの最高峰。
ゲーム性、シナリオ、グラフィック、BGM、ちょっとしたギミックに至るまで褒めどころが多すぎて困る。
だから一回の戦闘に何時間かけても楽しい。
割り当てられるジョブの増加にしても多彩なアビリティの習得にしてもキャラクターを成長させていく楽しみが快感的ですらある。
さらにもう一つ、名作ゲームってどうしてこうも効果音がいいのだろう。
何も剣戟だとかのアクションに伴う音に限らず、コントローラー操作に割り当てられた効果音一つ一つが心地いい。
難易度はぬるめ。
それでも尋常のRPGとは比較にならない数多の変数要素を組み合わせてしっかりゲームバランスを成立させているのだから感動的。




風来のシレン[チュンソフト][RPG/SFC]




1000回遊べるRPGが当時のキャッチコピーだったはずだが、偽りない。
何度プレイしても楽しい。何度プレイしても楽しいようにできている。
難易調整と自由度、プレイヤーに委ねられた工夫の余地が抜群。
人がプレイするのを見ているだけでも楽しい。
和の世界観もシャレすぎない程度に仕上がってる。グラフィックやBGMも好き。


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