君が望もうと、望むまいと

ことばはたましいに触れ

カタチとなって時を刻む

音速で進化する尊き思想も

面はゆいほどありのままに


2007年04月29日(日)

夢現(3)







ちぐはぐな車が並ぶ

わがままな中古車屋



『 営業時間は、16時から20時までです。あしからず。』



店主は毎日洗車ばかりで

店番は夫人のご機嫌次第



珍しく陽気なこんな夜は

夢と気づかぬフリで寝返りを打つ



今日も売れなかったと

楽しそうに言ったのは



2時頃だったか

明け方だったか











2007年04月28日(土)

愛のうた

こんなにも
満ち足りて
愛のうたなど
陳腐すぎて
君の知らない
母親のように
触れあわなくても
地に落ちても
たとえばときに
許さなくても
全てが消えて
なくなったとしても








2007年04月26日(木)

理由

かさぶたをはがす
薄皮ができるのを待って
ゆっくりと
哀れな生傷は
広がり続けて
次を作ろうと
いたいけに
分裂を繰り返す
いとおしく
やるせなく
それは
ゆがんだ闇の底の
恍惚の時

2007年04月24日(火)

午後の王様

小さな小さな
透き通った手が
疲れた小指を
きゅっと握り締め


異国のことばで
得意げに
わらったり
おこったり


ほうら
新しい靴だよ


生意気にも
お気に召さない
雨の日の昼下がり
2007年04月22日(日)

夢現(2)

昨日のあのひとは
とても穏やかで
静かに笑って
わたしを見ていた
色と音のない世界で
いたいほどの
いとしさと懐かしさ
そしてにおい
それは
曖昧な記憶が形作った
ただの幻想だろう
それでもわたしは
満たされて
あのひとをずっと
みつめていた











2007年04月21日(土)

あの橋を渡る前に

あの橋を渡ったら
望む未来があるのだろう
見えているのは
大きな家と満たされた食卓


とどまる日々を洗ったり
無言の埃を払ったり
そんなことは
よくあることで


あの橋を渡ったら
少し上手に笑えばいい
口をつぐんで
目を伏せて


名前をなくした人になる








2007年04月19日(木)

法則






ここにも小さな
2割と8割


向かいの席は
7人掛けで


がたんごとん
川面は揺れる


あるべきものがかき消され
なくすべきが群れを成し


2割の人と8割の人と


ため息を乗せて
電車は揺れる









2007年04月17日(火)

デイトレード

先が見えないので
明日に持ち越さないようにしている
なくなるのが怖いので
できるだけ持たないようにしている
うっかり手に入れてしまったときには
早めに手放すようにしている


心配で眠れない日が続くより
ずっとマシ


それが
ケーキも食べられないような
ツマンナイ人生だとしたって






2007年04月16日(月)

つながっている

スロットも水泳も
読書もドライブも
洗車も戦車も
音楽もインテリアも
株と為替の値動きも
青い空も雨降る夜も
地球も月の裏側も
渦巻く歴史も宇宙の果ても
進み続けるオリオンも


電話の向こうの君のあくびも


ぜんぶ。









2007年04月13日(金)

奇跡

そのお姫様を
永遠の眠りから
目覚めさせたのは
王子のくちづけではなく
勇者の祝杯でもない


嫌われ者の少年が
ぽつりと口にした言葉


まっすぐで単純な
けれど
世界を変える


まほうのことば











2007年04月10日(火)

Home Sweet Home

シロアリの出る台所
大人4人で満席のリビング
暑くて 寒くて 真っ暗で
ずれた鉄製のドアの鍵は
外出するのに一仕事


けれど
なぜだか楽しかった
あのころ












2007年04月08日(日)

夢現

寝返りを打つたびに
こぼれ落ちる記憶は
あまりにも遠すぎて
いとしすぎて
からっぽの心さえ
締めつけるけれど


今はまだ
波に揺られて
このままじっと
目をとじて


果てなく続く暗闇を
夜のかけらで追い払ったら
早くおいでよ


夢で、待ってる

2007年04月06日(金)
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