カゼノトオリミチ
もくじ過去未来


2016年03月19日(土) おはぎ





春の彼岸が近づく

スーパーのチラシにおはぎがのる

そうだなぁもう

何年 食べていないだろうか

いつのまにか私にとって

おはぎ とは

あの暗くて 湿った北側の

ちいさな木造の 台所の

狭くて丸いテーブルで

母が作ったおはぎ がおはぎになっていた



母の作る餡は 暗い台所で

いっそう黒く見えた

母の蒸したもち米は 

みごとにまっしろけ だった



母は布きんを使うと

くるりくるりと手の中から

あっというまにおはぎを出した

手品や魔法は 使っていない

目を見張るこどもたち



やってごらんとの言葉に

飛びつくように手を伸ばす

おもいおもいの おはぎが出来た

やっぱりあれが

わたしのおはぎだ



あれは 春だった

ずっと昔の 遠い日の

春の彼岸の おはぎのはなし





2016年03月14日(月) 三月の雨



うす灰色の雨がふる

街は静かに目を閉じて

あなたのことなど知らないと

はらり はらりと

木瓜や梅 

足元に散る 時の欠片



ココロのはしっこ

ちょこっと折り目 つけておこう

こんな日だったよ

わかるように

誰も知らない いちにちだけど

せめてせめて

私のココロにしるしをつけよう


雨のみち 

ひたひたと 時のかけらを

縫い取り集めて

あるくよ





2016年03月07日(月) じんちょうげ





薄い灰いろ とかした街は

しっとり ねむくて

ひたひた あるく

つい と 誰かに

呼ばれた気がして



それは 

アパートの曲がり角

じんちょうげ


お前だったか

うん 春が 

うん そうだね

来ているのだね


知らせてくれたの

降り続く 雨にぬれた

やさしい かわいい じんちょうげ




natu