カゼノトオリミチ
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2013年09月24日(火) 川面を行く


暗闇で目を閉じる

頬にあたる風の色は

眠った街の黒い色



秋の始まりの夜に

そおっと舟を出す

見なくても感じる



鼻先に湿った草を

かき分け 吹いてきた

風のニオイ

揺れて ささやく水の音



やがて

葦に覆われた川面に

月がひと筋 明かりを落とす



長く 続く そちらのほうへと

秋のほうへと

みんな 何も話さず

黒い陰と 揺られて行く

秋のほうへと








2013年09月18日(水) 風が


おーい今朝は

東からの風が吹いているよ


遠いどこかの秋の野を

渡ってきたと風は言う


コスモス畑を震わせて

育った稲穂をなびかせて


畑の横の

小菊の群れに

そろそろ咲けよと伝えて来たよと


とおめいなコトバで

西のほうへと去ってゆく


見送るワタシの思い出が

パチパチ はじけた


髪を舞い上げ山を見る

おーい 秋の風が

コロコロころがり

そっちの方へ飛んで行ったよ










2013年09月17日(火) 紫を待ちながら



ラベンダーのオイルに

顔を沈めれば

鼻先から広がる紫の魔法


おちついて

そのままでいいよ

スウと深呼吸

肺の中まで 紫が広がる

柔らかい渦を巻いて


空が今日は青すぎる

切り立った空気は

乾きすぎて まぶしくて


だいじょうぶ

羽を広げた秋の蝶が

フラフラ飛ぶ

沈んだらそう 

タメイキでもって浮かび上がれ


花も虫も誰もがみな

今日を生きている

紫の夕暮れを 待ちながら









2013年09月05日(木) はばたき




雨はあがり 空は青

とべ

とべとべ ワタシ

テレビで見た トリのように

海の上を

波頭かすめて 急降下



チイサナ森と

朝もやの湖の上を

ううん いまこの 古びた街の上でいい

ううん 明日の

夢の中で いい



ツバサに

風を含ませて それから

はばたき

どこまでもたかく

西の山の向こうへ

自由に とべ




natu