カゼノトオリミチ
もくじ過去未来


2013年02月21日(木) カラス





ビルの谷間の

交差点の上空で

追いかけっこする

カラスが二羽

軽々空を切り

翻る

信号待ちの車も

トラックも皆

きっと

彼らの翼さばきに

目を奪われたに違いない

彼らは

信号が変わるまでの間

広い交差点の

空間のすべてを使い

自由を見せつけた

それは本当に

美しい舞だった





2013年02月20日(水) 夢の入り口


眠れぬ夜に
目を閉じると

いろんな人の
顔が浮かぶ

見たことない人の
顔もある

暗闇で
目をこらすと
景色が見える

遠い国の秋の湖
怪獣のような
ビルの谷間の
入道雲

白いキッチンに
揚げ菓子のニオイ

きらめく5月の
芝生の木陰

小さな歴史
暗闇の中の上映会

記憶の糸は
か細くなり

もうじききっと

眠りの国へと

入れますように










2013年02月19日(火) 紅梅




灰色の冷たい雨に

紅梅がぬれていた


春を呼ぶ雨だという

あなたの言葉に

ワタシの

優しくない部分が

ふんわり包まれる


梅の赤が

笑ったみたい

いえ

冷たい雫が

梅の花びらを

揺らしただけ


振り切って

振りほどいて

足を前に

出さなくちゃあ

ダメじゃないの


口元に

微笑みを戻して

紅梅の

古い紅をひいたように

くちびるを

少しだけ 緩めてみて





2013年02月08日(金) 記憶

あはは
こんなカッターナイフじゃ
何にも切れないね

それでいいんだよ
ふるいふるい
父の道具箱の奥から
みつけてきたんだよ

錆びついて
暗い片すみで
じいっとしていた

だからいいんだよ
こんどはあなたの
とおめいな引出しの
片すみで
眠らせてよ

役には立たないけど
そばに居るだけで
いいんだよ






2013年02月05日(火) へんくつばあさん


童話の中の

へんくつばあさん

ブツブツいつも ひとり言

アタシなんか

どうせ誰も 相手にしない
  


席替えは

イチバン最後に

空いた席に座ろう

そのほうが 傷つかない



老犬はわらう

母も父も知らぬまま

拾われてここにきて

こうしてもう何年だろう



たべものも

寝る場所もある

なにをそんなに

悲しむのだ



コトバを飲むと

ココロがイタイ

コトバは

ココロにはいると

針になる



鏡の向こうで

こっちを見ている

童話の中の

嫌われ者の

へんくつばあさん








2013年02月02日(土) いごこち良い場所


とおめいの牛乳瓶
とにかく
いごごちが良い

底のまあるいカーブに沿って
横になるも良し

あの
少しぶあついガラスの壁に
寄りかかるのも良しで

すこしにごったところとか

ぬくもりある形とか

底に座って
見上げる空は まあるくて

青だったり
灰色だったり
時には
水滴も落ちてきたり

枯葉もはらり
せっかちな
コトリも迷い込む

飛行機が
横切ったり

眠れぬ夜には
月の光も
時間をかけてとおりすぎる

何を考えているんだか
外からは
見えてるようで 見えてない

そのかわり
内側からも

外の世界が
見えてるようで やっぱり
見えていない

膝を抱えて過ごす

ぼんやりした
陽だまりのような空間で










natu