カゼノトオリミチ
もくじ過去未来


2010年11月23日(火) チイサナモノの午後




晩秋の午後
印象派の絵のように
色づく桜葉
しずしずと散り

いたずらっ子のように
植木の枝を渡る小鳥たち

この午後は
そうした
チイサナ生き物たちの
ためにあるようで

老犬は頭をたれ
落ち葉のなかを歩いて

黒い猫は首をあげ
弱々しい午後の日差しに
金色の目を細め
古いレンガの座に
気高く居る

風は
枯れ葉のニオイ
湿った土のニオイ
かすかに北の海のニオイ

秋の空気は
見えないベールで街を覆い

ヒヨドリや
シジュウカラの声を
街中に
ぴいんとひびかせる

柿の実は柿色に
橙は橙色に
空ははちみつ色に
色づいて

息をするもの
みんな水彩画の中へ
にじんでゆく




2010年11月17日(水) 太陽




頭のなかに
今日は ぐるぐる
うずができて

ぬるいびーるが
流れ込む

空には 太陽がない

町の音さえ消えた
時のとまった 午後

いまは いつだろう

なんで どうして
空は青いのに
太陽は ない

頭の電池は
しばらく 接触不良

老犬の寝言は
くふくふ
ぬるいびーるで
ほろほろ

ちょっと 夢見よう
まどろもう

ぴぴぴ
キイキイ
ちいさな庭の
トリたちよ

夢を ついばまないで

目を 覚まさせないで







2010年11月01日(月) ウサギ




くふんと焦げ茶の

老犬の寝言

しいんとひびく

表道路の車の音

ワタシはチクチク

時間を縫いとる

ラズベリー色の糸で

野バラの実色の糸で

草はらに 花を咲かせると

飛び出たウサギは たったいま

仕上げたばかりの

白いしっぽ

ふりふり笑う

友達 ダレ?

あなたの友達は 秋よ

あなたの隣の 風や草

朝の冷たい空気

玄関の黒いのらネコ

木々のそよぎと話す鳥

秋は

あなたに寄り添うから

秋は 友達






natu